臍帯血細胞を用いた脳損傷の処置
专利摘要:
本発明は、臍帯血細胞を用いた、脳卒中、外傷性脳傷害、および神経変性障害の処置に関する。 公开号:JP2011515470A 申请号:JP2011501820 申请日:2009-03-26 公开日:2011-05-19 发明作者:シュー,ウェイ−チャン;リー,フン;リン,シン−ツォン 申请人:ステムサイト インコーポレーテッドStemcyte,Inc.; IPC主号:A61K35-44
专利说明:
[0001] [関連出願] 本出願は、TREATMENTOF BRAIN DAMAGE USING UMBILICAL CORDBLOODCELLSと題された、2008年3月28日出願の米国仮出願第61/072,173号の優先権を主張し、その全内容が本明細書に参照として組込まれる。] [0002] [発明の分野] 本発明は、脳損傷を処置するための臍帯血細胞の使用に関する。] 背景技術 [0003] 脳卒中は一般的に、脳の全てまたは一部への血液供給を遮断または低減する任意の事象をいう。米国においては、死亡の三番目の主要原因であり、成人の身体障害の主要原因である。脳卒中は、毎年およそ750,000人に影響を及ぼす。脳卒中患者の3分の1は、脳卒中の発生から1週間以内に死亡する。生存者の大半には、限定するものではないが、顔面、四肢、または全身麻痺を含む、中度から重度の身体障害が残る。] [0004] 脳卒中に伴う慢性症状を処置するための様々な試みがなされてきた。最近では、G−CSF動員末梢血細胞が、急性および慢性の脳卒中の症状を処置することが報告されている。しかしながら、自家動員細胞治療が適切ではないであろう対象者を含む大部分の集団に好適な治療法の要望はいまだに存在する。] [0005] 本発明は、その最も広範な意味において、臍帯血細胞を用いて脳損傷を処置するための方法を提供する。特に重要であるのは、臍帯血細胞を用いた慢性脳卒中および神経変性疾患の処置である。驚くべきことに、本発明によれば、臍帯血細胞を慢性脳卒中対象の脳実質内に投与すると、対象が経験した脳卒中関連の身体障害のうち少なくともいくつかが好転することが見出された。] [0006] したがって、一側面において、本発明は、CD34+、CD133+、またはCD34+/CD133+臍帯血細胞を富化した単離臍帯血細胞集団を、脳組織損傷を処置するための有効量で、それを必要としているヒト対象の脳実質内へ投与することを含む、脳組織損傷を有する対象を処置するための方法を提供する。] [0007] 別の側面において、本発明は、慢性脳卒中を処置するための方法であって、脳卒中を経験したヒト対象の脳へ、CD34+、CD133+、またはCD34+/CD133+臍帯血細胞を富化した単離臍帯血細胞集団を、脳卒中を処置するための有効量で実質内投与することを含み、ここで単離集団を脳卒中から7日を超えて経過した後に投与する、前記方法を提供する。1つの態様において、脳卒中から1ヶ月を超えて経過した後に、集団を投与する。別の態様において、脳卒中から3ヶ月を超えて経過した後に、集団を投与する。別の態様において、脳卒中から6ヶ月を超えて経過した後に、集団を投与する。さらに別の態様では、脳卒中から1年を超えて経過した後に、集団を投与する。] [0008] 別の側面において、本発明は、外傷性脳傷害に起因する脳組織損傷を処置するための方法を提供する。より具体的には1つの態様において、本発明は、CD34+、CD133+、またはCD34+/CD133+細胞を富化した単離臍帯血細胞集団を、外傷性脳傷害に起因する脳組織損傷を有する対象の脳実質内へ投与することによって、脳組織損傷を処置するための方法を提供する。かかる脳損傷は、外傷性脳傷害の発生から何ヶ月か(例として、少なくとも1ヶ月)または何年か経過した後に存在するものを含む。したがって、外傷性脳傷害の発生から1ヶ月を超えて、3ヶ月を超えて、6ヶ月を超えて、1年を超えて、またはそれ以上経過した後でも、対象を処置し得る(すなわち、対象に細胞を投与し得る)。] [0009] また別の側面において、本発明は、CD34+またはCD133+臍帯血細胞を富化した単離集団を、神経変性障害を処置するための有効量で、そのような処置を必要としているヒト対象の脳へ実質内投与することを含む、神経変性障害を有する対象を処置するための方法を提供する。神経変性障害は、限定するものではないが、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、ハンチントン病、ピック病、小脳変性症、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)であり得る。] [0010] 1つの態様において、脳組織損傷の発生またはかかる損傷の最先の観察から1ヶ月を超えて経過した後に単離集団を投与する。別の態様において、脳組織損傷の発生またはかかる損傷の最先の観察から6ヶ月を超えて経過した後に単離集団を投与する。さらに別の態様において、脳組織損傷の発生またはかかる損傷の最先の観察から1年を超えて経過した後に単離集団を投与する。] [0011] 様々な態様を前記側面へと適用し、それらを以下に記載する。] [0012] 1つの態様において、集団は、CD34+臍帯血細胞を富化したものである。関連する態様において、集団は、少なくとも75%がCD34+、または少なくとも90%がCD34+である単核細胞を含む。] [0013] 別の態様において、集団は、CD133+臍帯血細胞を富化したものである。関連する態様において、集団は、少なくとも75%がCD133+、または少なくとも90%がCD133+である単核細胞を含む。] [0014] 1つの態様において、集団は、CD34+/CD133+臍帯血細胞を富化したものである。関連する態様において、集団は、少なくとも75%がCD34+/CD133+、または少なくとも90%がCD34+/CD133+である単核細胞を含む。] [0015] 1つの態様において、対象は、少なくとも60歳である。] [0016] 1つの態様において、少なくとも2×106個の細胞を対象に投与する。別の態様において、少なくとも5×106個の細胞を対象に投与する。さらに別の態様において、少なくとも8×106個の細胞を対象に投与する。] [0017] 1つの態様において、集団を、損傷がある皮質脊髄路に沿って3つの部位へと投与する。] [0018] 1つの態様において、集団は、単一の臍帯血ユニット由来である。別の態様において、集団は、複数の臍帯血ユニット由来である。関連する態様において、集団は、6つの組織適合性マーカーのうち4つ未満を対象と共有する。別の態様において、集団は、6つの組織適合性マーカーのうち少なくとも4つを対象と共有する。] [0019] これらならびに本発明の他の側面および態様を、より詳細に本明細書に記載する。] 図面の簡単な説明 [0020] 添付の図面は、縮尺通りに描かれていない。様々な図面に描写される同一のまたはほぼ同一の構成要素はそれぞれ、類似の番号で表される。明確にするために、全図面における全ての構成要素が標記され得るわけではない。] [0021] 図1Aは、実施したモデル研究の実験デザインを描いた模式図である。] 図1A [0022] 図1Bは、CD34およびCD133を富化した細胞集団の表現型を示す一連のグラフである。] 図1B [0023] 図2は、2つの実験群および1つの対照群におけるボディースウィングの回復を、時間の関数として示すグラフである。] 図2 [0024] 図3Aは、2つの実験群および1つの対照群における垂直方向の活動性(vertical activity)を、時間の関数として示すグラフである。] 図3A [0025] 図3Bは、2つの実験群および1つの対照群における垂直方向の運動の数(number of vertical movements)を、時間の関数として示すグラフである。] 図3B [0026] 図3Cは、2つの実験群および1つの対照群における垂直方向の運動の時間(vertical movement time)を、時間の関数として示すグラフである。] 図3C [0027] 図4は、2つの実験群および1つの対照群における握力の割合を示すグラフである。] 図4 [0028] 図5は、対照および実験動物におけるラットの脳のPET画像である。] 図5 [0029] 図6は、GFAPまたはNeu−N(緑色)およびビスベンズイミド(青色)で染色した脳組織切片を示す写真である。] 図6 [0030] 図7は、MAP−2またはvWF(緑色)およびビスベンズイミド(青色)で染色した脳組織切片を示す画像である。] 図7 [0031] 図8Aおよび8Bは、NG2(緑色)およびビスベンズイミド(青色)で染色した脳組織切片を示す画像である。] [0032] 図9は、A2B5(緑色)およびビスベンズイミド(青色)で染色した脳組織切片を示す画像である。] 図9 [0033] 図10は、CNPase(緑色)およびビスベンズイミド(青色)で染色した脳組織切片を示す画像である。] 図10 [0034] 図11は、ラミニン(緑色)およびビスベンズイミド(青色)で染色した脳組織切片を示す画像である。] 図11 [0035] 図12は、慢性脳卒中動物からの脳組織切片のMRI−T2スキャンおよびプルシアンブルー染色を示す。慢性脳卒中動物では皮質梗塞が認められる。注射した幹細胞は、注射の7日後に右基底核領域で認められた。これらの細胞は神経線維に沿って梗塞領域へと移動し、梗塞領域のサイズは移植の14日後において縮小していた。] 図12 [0036] 図13AおよびBは、注入した色素の、再生した皮質脊髄路に沿った運搬の模式図および実際の顕微鏡写真を示す。] [0037] [発明の詳細な説明] 本発明は一部、臍帯血細胞が慢性脳卒中に伴う症状を好転させることが可能であるという、注目すべきおよび驚くべき知見を基礎とする。従来、脳卒中の影響の多くが、好転不能であるとみなされてきたか、または他の処置を用いても改善されてこなかったことから、これは驚くべきことである。本発明は、臍帯血細胞を用いた慢性脳卒中対象、脳卒中の発生から何年も経過後であっても、の処置を意図する。] [0038] 本発明は一部、臍帯血細胞を脳の実質へ投与しなければならないという知見をもまた基礎とする。本発明の様々な側面および態様は、脳卒中に起因する損傷がある脳の領域への、より特定的な細胞の配置を提供する。臍帯血細胞のこれらの対象への全身投与では、どんな治療的有益性も得られなかった。] [0039] 本発明は一部、CD34およびCD133などの初期造血マーカーを1種または2種以上発現する臍帯血細胞が、慢性脳卒中を処置するうえで特に有用であるという知見をもまた基礎とする。したがって本発明は、造血前駆体の表現型を有する臍帯血細胞の、慢性脳卒中対象の脳実質への投与を含む方法を提供する。造血前駆体の表現型を有する細胞とは、CD34およびCD133のどちらか一方もしくは両方を発現するものである。] [0040] 本明細書で用いる場合、脳卒中とは、24時間を超えて持続する影響を伴う、血液供給の妨害およびそれ故の対象の脳の一部または全てへの酸素量の低減をいう。脳卒中は、血栓症、塞栓症または出血によって引き起こされ得、そして虚血性脳卒中(血栓性脳卒中および塞栓性脳卒中を含み、血栓症、塞栓症、全身の低灌流などに起因する)または出血性脳卒中(脳内出血、くも膜下出血、硬膜下出血、硬膜外出血などに起因する)といわれ得る。本明細書で用いる場合、脳卒中は、熱中症(heat stroke)および一過性脳虚血発作(TIA)を除外する。熱中症は上昇した体温から生じ、その脳内臨床所見は本明細書で定義される脳卒中(すなわち、脳内酸素量の低減を伴う血液供給の妨害)のそれとは異なる。TIAはしばしば、「ミニ脳卒中」と呼ばれるが、発生から24時間以内に完全に回復する能力のため、本明細書で定義される脳卒中と区別することができる。] [0041] 脳卒中は、影響を受けた対象における1または2以上の症状により明らかにされる。これらの症状およびその重篤度は患者ごとに変動し得る一方で、これらは一般的に筋力低下(半身麻痺)、しびれ、知覚および/または振動覚の低減を含む。多くの例において、これらの症状は身体の片側のみに影響を及ぼす(そして通常は、脳のもう片方の側に損傷が存在する)。他の症状には、意識消失、頭痛、嘔吐、嗅覚の、味覚の、聴覚のおよび視覚の(全体的または部分的な)変化、眼瞼下垂(下垂症)、眼筋力低下、反射減退(咽頭反射、嚥下反射および光への瞳孔反応反射を含む)、顔の感覚減退および筋力低下、平衡感覚の問題、不均衡、眩暈、眼振、呼吸および/または心拍数の変化、頭を片側へ回転できなくなる胸鎖乳突筋(SCM)の筋力低下、(突出不能および/または左右への移動不能を伴う)舌の力の低下、失語症(すなわち、言語の発話または理解の不能)、失行症(すなわち、随意運動の変化)、運動協調の変化、視野欠損、記憶障害、半側無視、性欲過剰行動(hypersexual gestrues)、膀胱および腸の制御欠如および認知機能低下(例として、認知症、支離滅裂な思考、錯乱、限られた注意持続時間、集中不能)、および歩行パターンの変化が含まれる。脳卒中特有の症状のいくつかとして、急性の顔面麻痺、腕のふらつき(arm drift)および異常発語が含まれる。患者の症状は通常、これに限定するものではないが、National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)などの、予め確立されたスコアリングシステムを用いて等級付けされる。] [0042] 脳卒中は、神経学的検査、血液試験、ならびに/またはCTスキャン(例として、造影剤なしのもの)、MRIスキャン、ドップラー超音波法、および動脈造影法などの医用画像技術を通じて診断される。] [0043] 本明細書で用いる場合、急性脳卒中とは、影響を受けた対象が、脳卒中発生後直ちに(すなわち、最初の7日間以内)経験する1つまたは2つ以上の症状および/または1つまたは2つ以上のリスクをいう。対象の約3分の1がこの7日枠以内に死亡することから、死亡が主なリスクである。この期間中に経験する症状として、限定するものではないが、異常発語、腕のふらつき、意識消失、頭痛、嘔吐、眼瞼下垂(下垂症)、平衡感覚の問題および不均衡、急性の顔面麻痺などを含む、上に列挙するものの多くが含まれる。何人かの患者にとって、時宜にかなった治療介入は症状の重篤度および数を低減することを可能とする。] [0044] しかしながら患者の大半は、1つまたは2つ以上のこれらの症状を長期にわたって経験し続けており、本発明が意図されるのはそれらの患者についてである。彼らの脳卒中症状は急性期を超えても存在すること(すなわち、これらが7日を超えて続くことおよび/またはこれらが脳卒中の発生後7日を超えても顕在化していること)から、これらの患者は慢性脳卒中を罹患していると考えられる(または、慢性脳卒中患者といわれる)。したがって、本明細書中に用いられる場合、慢性脳卒中とは、初期の脳卒中イベントに伴い、なおかつ7日を超えて以前に脳卒中を起こした患者において存在する、1つまたは2つ以上の症状および/あるいは1つまたは2つ以上のリスクをいう。一般的に、これらの症状の重篤度および集積は患者の能力障害をもたらす。例えば、慢性脳卒中患者は、言語を話すことまたは理解することができ得ず、(足取りの追跡から証拠付けられるように)歩くことができないかまたは歩くのが困難であり得、変化したまたは損なわれた顔面筋の制御を有し得、協調性運動または四肢の制御の欠損の結果となる、変化したまたは損なわれた総合的な筋肉制御を有し得、損なわれた視野を有し得、部分的にまたは完全に麻痺状態であり得、昏睡状態であり得る、などである。] [0045] 本発明によると、かかる対象らは、脳実質への臍帯血細胞投与から多大な恩恵を受けることが示されている。発明者らは、このようなやり方で処置された慢性脳卒中患者が、より普通の(または正常の)足取りまたは歩行パターンから証拠付けされるように筋力機能の制御、および/またはより大きな四肢制御を取り戻すことを実証している。] [0046] 本発明の方法は、処置の7日を超えて以前に脳卒中を起こした、および脳卒中に伴う1つまたは2つ以上の症状を経験し続ける如何なる患者にも用いることが可能である。本発明は、かかる患者を、急性期を過ぎたどの時期においてでも処置することを意図している。したがって、脳卒中発生から2週間目以内(すなわち、脳卒中の発生から8、9、10、11、12、13または14日経過後)に患者を処置し得る。いくつかの重要な態様において、脳卒中の発生から2週間を超えて(つまり、脳卒中の発生から15、16、17、18、19、20または21日経過後)、3週間を超えて、または4週間を超えて経過後に患者を処置し得る。さらに、他の患者は脳卒中の発生から1、2、3、4、5または6ヶ月経過後に処置され得、他の患者は、脳卒中の発生から7、8、9、10、11、または12ヶ月あるいは脳卒中の発生から1、2、3、4、5年またはそれ以上の年数を含む、6ヶ月を超える時点で処置され得る。本明細書で用いる場合、脳卒中の発生から、例えば、1年での処置は、患者が脳卒中を起こしてから最低でも1年が経過していることを意味する。これは、処置が脳卒中の1周年の日に行われるという意味ではない。本発明以前には、これらの患者の多くにおける傷害は好転不能または治療不能であるとみなされてきた。] [0047] 本発明によって処置する患者を、その脳卒中歴(すなわち、脳卒中発生時と処置時との間の時間)および任意にその脳卒中スコアに基づいて同定可能である。脳卒中スコアとは、患者が経験する症状の重篤度の数値的表現である。NIHSS,ESS,EMSおよびバーセルインデックスはすべて、患者における脳卒中症状の重篤度を定めるスコアシステムである。NIHSSの場合、より低いスコアは、より少ない症状およびより軽度の障害を示す。本明細書に記載の方法は如何なる脳卒中患者を処置するのにも使用可能である一方、好ましくは、より重篤な症状を有する患者を処置するのに用いる。したがって、1つの態様において、9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,および20のNIHSSスコアを有する患者を含む、9〜20のNIHSSスコアを有する患者を本発明によって処置する。9のNIHSSスコアを有する患者の例としては、反射運動または自律神経性効果にのみ反応する者であり、言語不自由者(すなわち、使用可能な発話または聴解力を有しない)であり、および顔の片側または両側において完全麻痺(すなわち、顔の上側および下側における顔面運動の欠如)を有する者である。医師はおそらくこのようなスコアについて熟知しており、本明細書で提供される時期的なおよび脳卒中スコアのガイダンスを用いて、本発明による処置が可能である対象を容易に同定可能である。] [0048] 本発明は、神経変性障害を有する対象の処置をもまた意図する。神経変性障害とは、ニューロンの進行性劣化および/または死を特徴とする障害である。例は、これに限定するものではないが、パーキンソニズム、アルツハイマー病、多発性硬化症、ハンチントン病、ピック病、クロイツフェルト・ヤコブ病、進行性核上性麻痺(PSP)、パーキンソン症、シャイ・ドレーガー症候群、小脳皮質萎縮症、フリードライヒ失調症、歯状核赤核の変性、マシャド・ジョセフ病、脊髄性筋萎縮、淡蒼球・橋・黒質の変性(pallidopontonigral degeneration)(PPND)、淡蒼球・黒質・ルイ体の変性(pallido-nigro-luysian degeneration)(PNLD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、グアムALS症候群(Guam-ALS syndrome)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、てんかん、虚血性脳傷害、老人性認知症、コルサコフ症候群、橋小脳の萎縮(pontocerebellar atrophy)、オリーブ橋小脳萎縮症または変性症、グルタル酸血症、びまん性レビー小体型認知症、17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP−17)、多発脳梗塞性認知症、脳炎症、多系統萎縮症(MSA)、および淡蒼球の変性を含む。] [0049] 本発明は、外傷性脳傷害(TBI)に起因する慢性脳損傷を有する対象の処置をもまた意図する。] [0050] 本発明の方法は、年齢または性別に関係なく如何なる患者においてでも実施することが可能であるが、高齢の対象が特に恩恵を受けるだろうと期待されている。本明細書で用いる場合、高齢の患者とは、60歳以上の者を指す。好適な対象はヒト対象であることが、本明細書の内容から理解されるだろう。] [0051] 本明細書で用いる場合、慢性脳卒中を有する対象を処置することは、1つまたは2つ以上の慢性脳卒中症状を改善、低減または完全に除去することを意味する。例として、脳卒中に起因する脳傷害の範囲を低減するために、脳卒中を有する対象を本発明によって処置する。脳傷害は、標準の医用画像技術を用いて梗塞サイズを決定することによって測定可能である。したがって、脳傷害の範囲の低減は、これらの画像技術を用いて視認される梗塞サイズの減少として測定可能である。いくつかの例において、梗塞巣(または容量)は少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%減少し得るか、または完全に消滅し得る。好ましい態様において、処置は梗塞巣を少なくとも10%低減させる。同様に、脳傷害の範囲を決定するのに神経機能を測定する実験を用いることが可能である。NIHSSなどのスコアシステムをもまた、対象における処置を評価するために用いることが可能である。例として、NIHSSスコアにおける1、2、3、4、5、10、15、または20ポイントの低減はすべて、処置の示唆となるであろう。好ましい態様において、処置は少なくとも4ポイント低減という結果となる。他の態様において、処置は0〜8のNIHSSスコアという結果となる。] [0052] 本発明の方法は、対象への臍帯血細胞の投与を含む。臍帯血細胞とは、臍帯の静脈および動脈から採取した細胞のことである。かかる細胞を臍帯から抽出する方法は従来技術により公知であり、公表されている(例えば、米国公開公報第20060275271号参照)。これらの細胞は、使用前に採取し凍結してもよく、または凍結せずに使用してもよい。かかる細胞の凍結方法は、従来技術により公知であり、公表されている(例えば、米国公開公報第20060275271号参照)。] [0053] 本明細書で用いる場合、単離細胞集団とは、自然に発生または存在する環境および/または状況から物理的に分離された細胞集団のことである。したがって、一旦臍帯から臍帯血細胞を取り出せば、それは単離されたと考えられる。] [0054] 本発明の重要な態様において、富化された細胞集団を生成するために、臍帯血細胞を分画する。本明細書で用いる場合、富化された細胞集団とは、操作以前の集団における特定の細胞型の出現頻度に比べて、その細胞型の出現頻度が増大するように操作された細胞集団のことである。富化される細胞型は操作以前の集団中に存在していたものであり、富化は、目的の細胞型の追加よりむしろ、集団からの他の細胞型の除去に起因すると理解されるべきである。本発明による特別な関心は、CD34+、CD133+、またはCD34+/CD133+細胞を富化した細胞集団にある。CD34およびCD133は、造血前駆細胞上(造血幹細胞上を含む)に存在することがすでに同定されている細胞表面タンパク質(またはマーカー)である。本明細書で用いる場合、CD34+細胞とは、その細胞表面上にCD34を発現する細胞のことである。同様に、CD133+細胞とは、その細胞表面上にCD133を発現する細胞である。CD34+/CD133+細胞とは、その細胞表面上にCD34およびCD133の両方を発現する細胞である。CD34+およびCD133+細胞はそれぞれ、全単核臍帯血細胞の約0.1%を代表する。さらに、多くのCD34+細胞はCD133をも発現し、その逆もまた然りというように、CD34+とCD133+細胞集団との間にはかなりの重複がある。本明細書で用いられる場合、CD34+細胞、CD133+細胞、またはCD34+/CD133+細胞を富化した集団とは、CD34+細胞、CD133+細胞、またはCD34+/CD133+細胞のそれぞれが、集団における単核臍帯血細胞の少なくとも60%を代表する集団のことである。これらの集団は、特定の細胞型のより高い出現頻度を有してよい。例えば、これらの細胞の単核細胞分画は、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%がCD34+、CD133+またはCD34+/CD133+であり得る。例として、少なくとも75%がCD34+である細胞集団とは、その単核細胞の少なくとも75%がCD34を発現する集団のことである。好適な態様において、投与される集団は、少なくとも90%がCD34+、少なくとも90%がCD133+、または少なくとも90%がCD34+/CD133+である。] [0055] 特定の細胞型を富化した細胞集団の製造方法は、当該技術分野において知られている。細胞表面マーカーによって定義づけられる細胞集団(CD34+、CD133+、およびCD34+/CD133+細胞など)の場合、これらの方法は大抵、発現マーカーに特異的な抗体を用いる。これらの抗体は、(例として、パニング法における)プレート、(例として、カラム富化法における)カラムマトリックス、(例として、磁気分離法における)磁気ビーズなどを含む数々の固体支持体に取り付けることが可能である。次に、これらの支持体と目的の細胞集団とを接触させ、目的のマーカーを発現している細胞を抗体へ結合させ、一方で残りの未結合細胞を除去する。結合した細胞を次に、いくつもの技術(例として、酵素的、機械的、競合的結合、温度等)によって除去する。濃縮した集団は、目的の抗体と細胞とを接触させた後、抗体の存在または不在に基づいて、蛍光活性化セルソーティングを用いて細胞をソートすることによってもまた製造可能である。抗体の存在は大抵、蛍光プローブ(例として、FITC)で抗体を標識化することで、または一次抗体を認識し、それ自体が蛍光プローブで標識化されている二次抗体と細胞とを接触させることで観察される。これらの方法は、他と同様に当該技術分野において知られており、当業者は容易に所望の集団を富化することができるだろう。] [0056] 抗−CD34抗体には、限定するわけではないが、Qbend10、563、HPCA−2、581、AC136およびBirma K3が含まれる。抗−CD133抗体には、限定するわけではないが、ANC9C5が含まれる。これらの抗体は、R&D Systems, Santa Cruz Biotechnologyなどの製造元から市販されている。] [0057] 濃縮した単離集団を、本明細書に記載するように患者を処置するための有効量(または数)で、患者に投与する。処置に必要な細胞数は、対象が経験する症状の重篤度(例えばNIHSSスコアから推定され得るように)、MRIなどの医用画像技術を用いて決定する梗塞サイズ(または領域)、投与集団における所望の細胞型の富化の程度、患者の年齢および/または体重などを含む因子の数に依存する。通常、1〜10×106個の範囲、より好ましくは2〜8×106個の範囲の細胞数が患者へ投与可能だと予想される。したがって、特定の患者および投与する集団によっては、投与細胞数が約2×106、約3×106、約4×106、約5×106、約6×106、約7×106、または約8×106個になることが可能である。これらの量は、態様および細胞中の富化の程度によって、CD34+、CD133+もしくはCD34+/CD133+細胞の総数、または患者への総投与単核細胞のことをいってよい。] [0058] 投与される細胞は、単一の臍帯血ユニットにて供給され得るが、いくつかの例においては、投与する細胞数を達成するために複数の臍帯血ユニットを組み合わせなければならない。本明細書で用いる場合、臍帯血ユニットとは、単一の臍帯から採取される臍帯血の量である。典型的には、各臍帯血ユニットは、約120〜150×107個の単核細胞を含み、その中ではおよそ0.1%のみがCD34+および/またはCD133+である。] [0059] 単一または複数のユニットを対象に投与するかに関係なく、いくつかの例においては、処置される対象と組織適合性のある細胞を投与することが望ましいだろう。本明細書で用いる場合、組織適合性とは、6つの主要な組織適合性マーカーのうち少なくとも4つが、移植される細胞と処置される対象とで共有されていることを意味する。本発明はもちろん、細胞および対象が同じ組織適合性マーカーのうち5つまたは6つまでもを共有する状況をもまた意図する。本発明によると、いくつかの例において、対象と4つ未満の、3つ未満の、2つ未満の組織適合性マーカーを共有する、または組織適合性マーカーを共有しない細胞もなお、その対象にとって治療上有益であり得ることが見出される。組織適合性マーカーには、クラスIマーカーのHLA−A、HLA−BおよびHLA−C、クラスIIマーカーのHLA−DP、HLA−DQおよびHLA−DR、ならびに非古典的クラスIマーカーのHLA−E、HLA−F、HLA−G、HLA−H、HLA−JおよびHLA−X、MICが含まれる。いくつかの態様において、6つの組織適合性マーカーは、HLA−A、HLA−B、HLA−C、HLA−DR、HLA−DQ、およびHLA−DPであり得る。他の組合せもまた意図される。] [0060] 集団を脳実質へ投与するため、合理的に可能な限り小容量の集団を投与することもまた重要である。投与容量は、数ある因子の中でもとりわけ、患者の年齢および/または体重、ならびに投与される細胞数によって変動し得る。通常、投与量は1mL未満、好ましくは0.75mL未満、より好ましくは約0.5mLまたはそれ未満である。いくつかの例においては、0.4、0.3、または0.2mLを投与する。] [0061] 細胞集団を脳実質(すなわち、脳の組織)へ投与する。これに関し、かかる投与は実質内投与といわれる。好ましくは、細胞が脳実質、好ましくは損傷領域の中および/または付近であり、損傷領域周辺部および損傷領域の境界部を含み得る、へと沈着する。] [0062] さらにより好ましくは、総投与集団のアリコートが、脳実質中の2つ、3つ、またはそれ以上の場所に沈着する。例として細胞は、関与したまたは影響を受けた皮質脊髄路に沿って沈着し得、それは損傷領域の向こう側に形成される1つの沈着、損傷領域の中心で形成される1つの沈着、および損傷領域と頭蓋骨との間で形成される1つの沈着を伴う。沈着領域は、定位装置を用いて決定することが可能である。注射および細胞蓄積の座標は患者間で変動するであろうが、当業者によって容易に決定可能なものだろう。] [0063] 細胞を、例えば26ゲージのハミルトンシリンジあるいは同等のシリンジまたはデバイスを用いて、脳実質へと投与し得る。描写目的のために、1つの態様においては、シリンジに細胞を装填し、針を、損傷がある皮質脊髄路に沿って脳実質へ、針先が損傷領域の向こう側(またはその境界)に到達するまで挿入する。細胞の約3分の1(またはシリンジバレル中の容量の同等量)を、この場所に沈着させる。針を次に、針先が損傷領域中(損傷の中心またはその付近であることが好ましいが、必ずしもそうである必要はない)の場所に到達するまで引っ込め、ここでは細胞(またはシリンジバレル中の容量)の別の3分の1を沈着させる。針を次に、針先が損傷領域の後ろ側(または境界)の場所に到達するまで再度引っ込ませる。細胞(またはシリンジバレル中の容量)の残り3分の1をこの場所に沈着させる。針を次に、各蓄積後およそ5分間所定位置で保持する。注射した容量の漏洩(および損失)を防止するために、一旦針を完全に引っ込めると入口部位を塞ぐ。これは、例としてボーンワックスを用いることで達成可能である。しかしながら本発明は、複数日間投与レジメンよりむしろ、損傷がある脳への単一の細胞移植を意図すると理解されるべきである。] [0064] 細胞を薬学的に許容し得る担体に懸濁し、投与し、この形態は医薬組成物または製剤であると考えられる。本明細書で用いる場合、薬学的に許容し得る担体とは、ヒトへの投与に好適な1つ以上の適合性液体充填剤、希釈剤などを意味する。本明細書で用いる場合、担体とは、効能および/または投与を促進するために活性成分と組み合わされる、天然のまたは合成の有機または無機成分を意味する。医薬製剤は、これに限定するものではないが、塩状態の酢酸;塩状態のクエン酸;塩状態のホウ酸;および塩状態のリン酸を含む、好適な緩衝剤を含み得る。医薬組成物は、任意に、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベンおよびチメロサールなどの好適な保存料もまた含み得る。医薬組成物の成分は、所望の薬学的効能を実質的に損なうであろう相互作用を生じないようなやり方で、細胞集団とおよび互いに混合される。医薬組成物または製剤は、それら自体が治療上有効であるかまたは投与細胞の治療効能を促進させる非細胞性剤を含む他の物質をもまた含み得る。これらの成分は、1つのバイアル中で一緒に、1キット中の別々のバイアルで、または別々のキットで提供され得る。] [0065] 投与に好適な組成物は、細胞の無菌水性懸濁液を含み得、それは好ましくは移植患者の血液と等圧である。この水性製剤は、好適な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いる公知の方法によって処方し得る。無菌注射用製剤は、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液などの、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒中の無菌注射用溶液または懸濁液でもあり得る。許容可能なビヒクルおよび溶媒の中でも採用され得るものは、水、リンゲル液、および等張食塩水である。加えて、無菌の不揮発性油は、溶媒または懸濁媒体として慣習的に使用されている。この目的のために、合成モノ−またはジ−グリセリドを含む任意の無刺激性の不揮発性油を採用し得る。加えて、オレイン酸などの脂肪酸を、注射用物の調製において用い得る。経口、皮下、静脈内、筋肉内等の投与に好適な担体の処方は、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PAの中に見出すことが出来る。] [0066] [実施例] 材料および方法 CD34+/133+hUCB(hUCB34/133)の精製および選択 単核細胞(MNCs)を、ヒト全臍帯血(hUCBW)(Stemcyte, USA)から調製した。MNC層を採取して、1mMEDTAのPBS溶液で2度洗浄した。CD34+およびCD133+MNCsの両方を、製造者の指示書に従い、磁気ビーズ分離法(MACS; Miltenyi Biotec, Gladbach, Germany)によって、2×108個のMNCsから分離した。簡潔には、MNCsを300μLのPBSおよび5mMのEDTA中で懸濁した。これらの細胞を、CD34およびCD133に対する、ハプテン抱合モノクローナル抗体(Miltenyi Biotec, Gladbach, Germany)、続けてマイクロビーズに結合した抗−ハプテン抗体で、108個の細胞毎に100μLのビーズの割合で、4℃で15分間標識した。ビーズ陽性細胞(すなわち、CD34+およびCD133+MNCs)を、磁界中にセットした陽性選択カラム上で富化した。MACSでソートした細胞のフィコエリトリン(PE)(Becton Dickinson, USA)標識化抗−CD34および抗−CD133抗体(Miltenyi Biotec, Gladbach, Germany)を用いたFACS分析は、図1Bに示すように、選択した細胞の90%±3%がCD34およびCD133の両方に陽性であったことを示した。そして、1μg/mLのビスベンズイミド(Hoechst 33342; Sigma, USA)で標識化し、2%FBS(Hyclone, Road Logan,UT)を加えた300μLのイスコフ改変ダルベッコ培地(Gibco/Invitrogen, UK)中で再懸濁した細胞を、37℃で5%CO2/95%大気の加湿雰囲気下で組換サイトカインおよびエリスロポエチン(StemCell Technologies, USA)を含む3mlのMethoCult GF H4434および抗生物質と1時間混合し、移植のために調製した。] 図1B [0067] ラット実験的脳卒中モデル。 体重およそ250〜300gの成熟雄Sprague-Dawleyラット30匹を、3本の血管結紮の対象とした。全ての外科的手技は、University Institutionalガイドラインに沿って、滅菌性/無菌性技術を用いて実施した。ラットを、抱水クロラール(0.4g/kg)で腹腔内麻酔した。右中大脳動脈(MCA)および両側の総頚動脈(CCAs)の結紮を、Chen et al.(Stroke, 1986, 17(4):738-743)に記載されたものを改変した方法によって、0日目に実施した。CCAsを非外傷性の動脈クリップでクランプした。手術用顕微鏡の下、頬骨が側頭骨鱗部(squamosal bone)に融合するところに2×2の開頭部を穿孔した。右MCAを、10−0ナイロン縫合糸で結紮した。麻酔をかけた動物において、皮質血流をレーザードップラー血流計(PF-5010, system, Perimed system, Perimed AB, Stockholm, Sweden)で連続的に測定した。光検出器を設置させるために、穿頭孔(直径1mm)を右前頭頭頂領域(frontoparietal region)に作った。プローブ(直径0.45mm)を定位的に皮質(ブレグマの1.3mm後方、2.8mm側方、および硬膜の1.0mm下方)に設置した。90分の結紮後、MCA上の縫合糸およびCCAs上の動脈クリップを取り外して再灌流させた。中核体温をサーミスタプローブでモニターし、麻酔中は加熱パッドで37℃に保った。各ラットが回復した後、加熱ランプで体温を37℃に保った。予測されたように全てのラットは、脳虚血後および如何なる細胞投与前である1日目に、顕著な身体の不均衡を発症し、虚血脳の反対側へ曲がった。] [0068] 脳内hUCB34/133細胞またはビヒクルで処置した実験動物。 次に、図1Aに示すように、ラットを3つの群に振り分けた。群1には、ビヒクル単独で実験的脳卒中後1日目に投与した。群2には、hUCB34/133細胞を実験的脳卒中後1日目に投与した。細胞を実験的脳卒中後1日目に投与するので、この群は急性脳卒中の実験モデルを表す。群3には、hUCB34/133細胞を7日目に投与した。この群は慢性脳卒中の実験モデルを表す。細胞またはビヒクル単独は、尾状核被殻の損傷した錐体路へと定位的に注射された。3〜5μLのPBS中で懸濁したビスベンズイミド細胞で標識化した約2×105個のhUCB34/133細胞を、26ゲージのハミルトンシリンジを用いて、硬膜の3〜5mm下方にある3つの皮質領域へ注射した。その皮質部のおおよその座標は(1)ブレグマの1.0〜2.0mm前方および正中線の3.5〜4.0mm側方、(2)ブレグマの0.5〜1.5mm後方および正中線の4.0〜4.5mm側方、ならびに(3)ブレグマの3.0〜4.0mm後方および正中線の4.5〜5.0mm側方である。針を、各注射後5分間所定の位置で保持し、注射溶液の漏洩を防ぐためにボーンワックスの一片を頭蓋骨欠陥へと適用した。ビヒクル群の実験ラットは、生理食塩水で定位的に処置した。シクロスポリンA(10mg/kg, ip, Novartis)の注射を各実験ラットへ毎日投与した一方で、ビヒクル対照には、同等の容量の生理食塩水を、以前に記載したように(Zhao et al., 2004)与えた。] 図1A [0069] 結果 神経機能および他の行動アセスメント。 3つの実験群において神経機能を評価するために、行動アセスメントを脳虚血の3日前(すなわち、−3日目)、ならびに虚血傷害の1、7、14、21、28および35日後に実施した。アセスメントでは、(a)身体の不均衡性、(b)自発運動活性、および(c)握力を測定した。脳虚血後に得られたものを正規化するために、基準値試験のスコアを記録した。] [0070] Borlongan et al.(Neuroreport, 1998, 9(12):2837-2842)に記載されたやり方で、持ち上げボディースウィング試験(elevated body swing test)(EBST)を用いて、MCA結紮後の身体の不均衡性を定量的に評価した。最初に、各ラットを、その身体を尻尾でつるされている間の水平運動について検査した。Chang et al.(Stroke. 2003;34(2):558-564)に記載されたやり方で、虚血側と反対側への初期のヘッドスウィングの頻度を20回の連続的なテストで計数し、正規化した。] [0071] 自発運動活性テストにおいて、各ラットに、行動記録のために約2時間Animal Activityモニタリング(Accuscan Instruments, Inc., Columbus, OH)を受けさせた。Animal Activityモニターは、87cm間隔を空けて離れた16個の水平方向および8個の垂直方向の赤外線センサーを含んでいた。垂直方向のセンサーを、チャンバーの床から10cmのところに配置した。自発運動活性を、チャンバー内のラットの運動によってビームが遮断された回数として計数した。製造元のメニューオプションにおいて定義されている3つの垂直方向のパラメーター:(i)垂直方向の活動性、(ii)垂直方向の時間、そして(iii)垂直方向の運動の数を、夜間2時間にわたって計算した。] [0072] 行動測定スコアを、ベースラインスコアに対して全て正規化した。図2に示すように、処置から14〜28または35日後、hUCBで処置したラットが、対照ラットと比較して顕著に低減された身体の不均衡性を示すことを見出した。hUCB群中のラットはまた、対照ラットと比較して垂直方向の活動性(図3A)、垂直方向の運動の数(図3B)、および垂直方向の運動の時間(図3C)において顕著な増加を示した。] 図2 図3A 図3B 図3C [0073] 握力を、Stephen(Neurosci. Lett. 1998, 264:1-4)に記載されたものの変法によって、Grip Strength Meter (TSE-Systems, Germany)を用いて分析した。簡潔には、握力比率を各前肢において測定し、虚血と反対側の20回の引っ張りからの平均握力と同側のそれとの間の比率として計算した。加えて、握力比率で処置前のもの(「PreTx」)および処置後のもの(28日目;「PostTx」)ならびにベースラインをもまた計算し、変化をベースライン値のパーセンテージとして表示する。図4に示すように、群1(対照)、2(1日目に投与)、および3(7日目に投与)の比率は約0.95、1.8および1.95であった。握力の結果は、hUCBを投与したラットが未処置の対照ラットより高い握力比率を示したことを明らかにする。] 図4 [0074] 脳代謝および解剖。 図5は、対照および処置を施した動物における、FDG PETスキャンでモニターした脳代謝を示す。図12は、対照および処置を施したネズミのMRI脳スキャンを示す。] 図12 図5 [0075] 免疫組織化学的検査。 免疫蛍光染色を実施し、投与したhUCB細胞が虚血脳においてニューロン、グリア細胞、または内皮細胞に分化することが可能であるかを決定した。共焦点顕微鏡観察を行い、細胞型特異的マーカーが外因性移植物(ビスベンズイミド標識化)と共存しているかを同定した。ラットを抱水クロラール(0.4g/kg、ip)で麻酔したあと、脳を生理食塩水と共に経心腔的灌流で固定し、続けて4%パラホルムアルデヒドで灌流および浸漬して、30%スクロース中に包埋した。一連の隣接する厚さ20pmの切片を、冠状面上の各脳から切り出した。] [0076] 各冠状切片を、細胞型特異的抗体:グリア線維性酸性タンパク質(「GFAP」、アストロサイト用、1:400、Sigma)、フォン・ウィルブランド因子(「vWF」、内皮細胞用、1:400、Sigma)、神経細胞核抗原(「Neu−N」、ニューロンの核用、1:200、Chemicon)、微小管関連タンパク質2(「MAP−2」、ニューロンの樹状突起用、1:200、BM)、CXCR4(CD184、1:100、Toney Pines Biolab)、またはダブルコルチン(Dcx、1:100、Santa Cruz Biotechnology)と共にインキュベートし、Cy3(Jackson Irnmunoresearch PA USA、1:500)染色した。] [0077] 結果は、hUCBで処置した虚血ラット脳のペナンブラにおいて、いくつかのビスベンズイミド標識化細胞(青色、自発的な細胞核の蛍光)が、MAP−2、Neu−NおよびGFAPに対する抗体(緑色、神経細胞型特異的マーカー)と共存することを示した(図6〜11)。] 図10 図11 図6 図7 図8A-8B 図9 [0078] hUCB処置が血管形成をもたらすかを決定するために、hUCBで処置したおよび対照のラットから得た脳スライスを、二重免疫蛍光染色法によって分析した。免疫蛍光染色は、上述したやり方で実施した。結果は、いくつかの外因性移植hUCB細胞(ビスベンゾイミド標識化)が、処置を施したラットの虚血半球の血管周囲および内皮領域のまわりで血管の表現型(vWF+)を示したことを示唆する(図7)。] 図7 [0079] 皮質脊髄路に沿った細胞移動。 図12および13は、細胞および/または注射した色素の、再生した皮質脊髄路に沿った存在および移動を実証する。] 図12 [0080] 要約すると、結果は、慢性脳虚血後にhUCB細胞を脳実質内に受けたラットは、対照ラットと比較すると、大幅に改善された神経機能を示したことを示唆する。hUCBで処置した群において、外因性移植幹細胞が、脳梗塞ゾーンへ移動して、グリア細胞(GFAP)、ニューロン(Nestin+、MAP−2+およびNeu−N+)および血管内皮細胞(vWF+)へと分化し、それによって虚血脳における神経可塑性を増強しているように見受けられた。] [0081] 本発明はその適用を、以上の記載に係るまたは図面に描写された構造の詳細および構成要素のアレンジに限定されない。本発明は、他の態様になることおよび多様な方法で実行または実施されることが可能である。また、本明細書で用いる用語および技術用語は、記載の目的であり、限定とみなされるべきではない。本明細書における、「含む(including)」、「含む(comprising)」または「有する(having)」、「含む(containing)」、「含む(involving)」、およびこれらのバリエーションの使用は、その前に列挙した項目およびこれらの同等物、ならびに追加項目をもまた包含することを意味する。] [0082] 本発明の少なくとも一態様の諸側面を記載したことにより、当業者は様々な変化、改変、および改善を容易に想定できるだろうと理解すべきである。かかる変化、改変、および改善は、本開示の一部であることを意図し、本発明の精神および範囲の内であることを意図する。したがって、以上の記載および図面は単に例示の目的にすぎない。]
权利要求:
請求項1 慢性脳卒中を処置するための方法であって、脳卒中を経験したヒト対象の脳へ、CD34+、CD133+、またはCD34+/CD133+細胞を富化した単離臍帯血細胞集団を実質内投与することを含み、ここで前記単離臍帯血細胞集団を脳卒中から7日を超えて経過した後に投与する、前記方法。 請求項2 単離臍帯血細胞集団が、CD34+臍帯血細胞を富化したものである、請求項1に記載の方法。 請求項3 単離臍帯血細胞集団が、CD133+臍帯血細胞を富化したものである、請求項1に記載の方法。 請求項4 単離臍帯血細胞集団が、CD34+/CD133+両方の臍帯血細胞を富化したものである、請求項1に記載の方法。 請求項5 単離臍帯血細胞集団が、少なくとも75%がCD34+である単核細胞を含む、請求項1または2に記載の方法。 請求項6 単離臍帯血細胞集団が、少なくとも90%がCD34+である単核細胞を含む、請求項1または2に記載の方法。 請求項7 単離臍帯血細胞集団が、少なくとも75%がCD133+である単核細胞を含む、請求項1または3に記載の方法。 請求項8 単離臍帯血細胞集団が、少なくとも90%がCD133+である単核細胞を含む、請求項1または3に記載の方法。 請求項9 単離臍帯血細胞集団が、少なくとも75%がCD34+/CD133+である単核細胞を含む、請求項1または4に記載の方法。 請求項10 単離臍帯血細胞集団が、少なくとも90%がCD34+/CD133+である単核細胞を含む、請求項1または4に記載の方法。 請求項11 対象が、少なくとも60歳である、請求項1に記載の方法。 請求項12 少なくとも2×106個の細胞を対象へ投与する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。 請求項13 少なくとも5×106個の細胞を対象へ投与する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。 請求項14 少なくとも8×106個の細胞を対象へ投与する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。 請求項15 単離臍帯血細胞集団を、脳卒中から1ヶ月を超えて経過した後に投与する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。 請求項16 単離臍帯血細胞集団を、脳卒中から6ヶ月を超えて経過した後に投与する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。 請求項17 単離臍帯血細胞集団を、脳卒中から1年を超えて経過した後に投与する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。 請求項18 単離臍帯血細胞集団を、損傷がある皮質脊髄路に沿って3つの部位へと投与する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。 請求項19 単離臍帯血細胞集団が、単一の臍帯血ユニット由来である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。 請求項20 単離臍帯血細胞集団が、複数の臍帯血ユニット由来である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。 請求項21 単離臍帯血細胞集団が、6つの組織適合性マーカーのうち4つ未満を対象と共有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。 請求項22 単離臍帯血細胞集団が、6つの組織適合性マーカーのうち少なくとも4つを対象と共有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。 請求項23 脳組織損傷を経験したヒト対象の脳へ、CD34+、CD133+、またはCD34+/CD133+臍帯血細胞を富化した単離臍帯血細胞集団を実質内投与することを含む、脳組織損傷を処置するための方法。 請求項24 単離臍帯血細胞集団が、CD34+臍帯血細胞を富化したものである、請求項23に記載の方法。 請求項25 単離臍帯血細胞集団が、CD133+臍帯血細胞を富化したものである、請求項23に記載の方法。 請求項26 単離臍帯血細胞集団が、CD34+/CD133+臍帯血細胞を富化したものである、請求項23に記載の方法。 請求項27 単離臍帯血細胞集団が、少なくとも75%がCD34+である単核細胞を含む、請求項23または24に記載の方法。 請求項28 単離臍帯血細胞集団が、少なくとも90%がCD34+である単核細胞を含む、請求項23または24に記載の方法。 請求項29 単離臍帯血細胞集団が、少なくとも75%がCD133+である単核細胞を含む、請求項23または25に記載の方法。 請求項30 単離臍帯血細胞集団が、少なくとも90%がCD133+である単核細胞を含む、請求項23または25に記載の方法。 請求項31 単離臍帯血細胞集団が、少なくとも75%がCD34+/CD133+である単核細胞を含む、請求項23または26に記載の方法。 請求項32 単離臍帯血細胞集団が、少なくとも90%がCD34+/CD133+である単核細胞を含む、請求項23または26に記載の方法。 請求項33 対象が少なくとも60歳である、請求項23に記載の方法。 請求項34 少なくとも2×106個の細胞を対象へ投与する、請求項23〜26のいずれか一項に記載の方法。 請求項35 少なくとも5×106個の細胞を対象へ投与する、請求項23〜26のいずれか一項に記載の方法。 請求項36 少なくとも8×106個の細胞を対象へ投与する、請求項23〜26のいずれか一項に記載の方法。 請求項37 単離臍帯血細胞集団を、脳組織損傷から1ヶ月を超えて経過した後に投与する、請求項23〜26のいずれか一項に記載の方法。 請求項38 単離臍帯血細胞集団を、脳組織損傷から6ヶ月を超えて経過した後に投与する、請求項23〜26のいずれか一項に記載の方法。 請求項39 単離臍帯血細胞集団を、脳組織損傷から1年を超えて経過した後に投与する、請求項23〜26のいずれか一項に記載の方法。 請求項40 単離臍帯血細胞集団を、損傷がある皮質脊髄路に沿って3つの部位へと投与する、請求項23〜26のいずれか一項に記載の方法。 請求項41 単離臍帯血細胞集団が、単一の臍帯血ユニット由来である、請求項23〜26のいずれか一項に記載の方法。 請求項42 単離臍帯血細胞集団が、複数の臍帯血ユニット由来である、請求項23〜26のいずれか一項に記載の方法。 請求項43 単離臍帯血細胞集団が、6つの組織適合性マーカーのうち4つ未満を対象と共有する、請求項23〜26のいずれか一項に記載の方法。 請求項44 単離臍帯血細胞集団が、6つの組織適合性マーカーのうち少なくとも4つを対象と共有する、請求項23〜26のいずれか一項に記載の方法。 請求項45 脳組織損傷が、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、またはハンチントン病に起因するものである、請求項23〜26のいずれか一項に記載の方法。 請求項46 脳組織損傷を処置するための方法であって、外傷性脳傷害に起因する脳組織損傷を有するヒト対象の脳へ、CD34+、CD133+、またはCD34+/CD133+臍帯血細胞を富化した単離臍帯血細胞集団を実質内投与することを含み、ここで前記細胞を外傷性脳傷害の発生から1ヶ月を超えて経過した後に投与する、前記方法。
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