专利摘要:
本発明は、ヒトc−Met受容体のチロシンキナーゼ(c−Met)に対し親和性を有する、ヒト涙液リポカリンから得られる新規の変異タンパク質に関する。本発明は更に、このような変異タンパク質をコード化する対応する核酸分子、及びその生成のための方法に言及する。本発明は更に、このような変異タンパク質を産生するための方法に言及する。最終的には、本発明は、このようなリポカリンの変異タンパク質を含む医薬組成物、ならびに変異タンパク質の様々な使用に関する。なし
公开号:JP2011514143A
申请号:JP2010544701
申请日:2009-01-29
公开日:2011-05-06
发明作者:トレントマン,シュテファン;ヒュールスメイヤー,マルティン;ホールバウム,アンドレアス;マチュイナー,ガブリエレ
申请人:ピーリス アーゲーPieris Ag;
IPC主号:C12N15-09
专利说明:

[0001] この出願は2008年1月30日付出願の米国仮特許出願第61/024,658号の優先権の利益を主張し、これによってその内容はすべての目的のために全体として引用によって組み込まれる。]
[0002] 本発明は、ヒトMet受容体のチロシンキナーゼ(c−Met)に対する検出可能な結合親和性を有するヒト涙液リポカリンの変異タンパク質(hTLc)、あるいはそのドメイン又はフラグメントに関する。このような変異タンパク質は、hTLCの配列位置26ないし34、56ないし58、80、83、104ないし106、及び108に対応する配列位置のうちの少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。本発明は更に、このような変異タンパク質をコード化する対応する核酸分子と、その産生方法に関する。本発明は更に、このような変異タンパク質を産生する方法に関する。最終的には、本発明はこのようなリポカリンの変異タンパク質を含む医薬組成物、ならびに変異タンパク質の様々な使用に関する。]
背景技術

[0003] Met受容体のチロシンキナーゼ(RTK)は最初、ヒト癌遺伝子Tpr−Met(Parkら,Proc.Natl.Acad.Sci,USA,Vol.84,ページ6379−6383,1987)の産物として同定された。c−Metに対するリガンドは肝細胞増殖因子(HGF)として同定された。HGFは最初は、培養における肝細胞用のマイトジェンとして同定された。HGFは散乱因子(SF)、上皮細胞のシートの分散を促進する線維芽細胞由来因子、ならびに三次元培養で成長する上皮の枝管形成と同一である。HGF/SFは従って、有糸分裂誘発、細胞運動性、及び形態発生を含む複数の細胞応答を誘発する固有の成長因子である。]
[0004] HGF/SF及びc−Metは、成体の多くの組織に発現する。c−Metタンパク質は多くの場合上皮細胞に発現するが、更に内皮細胞、神経系細胞、肝細胞、造血細胞、メラノサイトにもある。c−Metは最も重要な膜受容体のうちの1つとなりうる。その活性は有糸分裂誘発、運動原性の発生(motogenesis)、形態発生といった細胞生理で重要な役割を果たす。HGF/SFは間葉系起源の細胞によって実質的に産生されるように思われる。]
[0005] HGF/SFがc−Metを活性化する場合、下流で作用すべき最初のタンパク質はGrb2(成長因子受容体結合タンパク質2)、及びGab1(成長因子受容体結合タンパク質2関連型の結合剤1)である。Grb2は順々に多数のキナーゼ経路を活性化でき、RasないしRaf、ないしMek、ないしMAPK(マイトジェンで活性化されたタンパク質キナーゼ)の経路を含む。Gab1はPI3K(ホスホイノシチド3キナーゼ)を活性化し、STAT3(シグナル伝達性転写因子)を活性化する。c−Met活性は更に、核に移行し、かつ転写制御に関与するWnt経路の主要な成分であるβカテニンの活性化を誘発する。]
[0006] HGF/c−Met経路は、癌の発生に重要な役割を果たす。第1に主要な発癌過程(Ras、PI3K/STAT3、βカテニン)の活性化を通して、第2に内皮細胞増殖(血管新生)を通して、第3にプロテアーゼ産生の増加を通して、細胞解離は転移を導く。]
[0007] 一部が第I相又は第II相臨床試験にある、様々な新しい治療アプローチはHGF/c−Met経路を目標とする。これらのアプローチはAVEO社のヒト化した形態のAV299といった抗HGFモノクローナル抗体、あるいはAmgen社のもの(AMG102)といったAMB102と称される完全ヒト抗体を含む。別のアプローチはデコイとして作用するc−Metの切断型異性体の使用である。一のこのような例はCOMPUGEN社のCGEN241と呼ばれる切断型である。更にc−Met誘発性経路を遮断するタンパク質キナーゼ阻害剤(小分子)は治療目的で用いられる。このような小分子のタンパク質キナーゼ阻害剤の例は、ARQULE社のARQ197、EXELIXIS社のXL880、SGX Pharmaceuticals社のSGX523、SUPERGEN社のMP470、又はPFIZER社のPF2341066を含む。]
[0008] しかしながら、c−Metを結合し、例えば治療目的のために用いられうる利用可能な更なる化合物を有することは更に所望される。]
[0009] 従って、所定の標的に対し高い結合親和性を有するヒト涙液リポカリンの変異タンパク質を提供することが本発明の目的である。]
[0010] この目的は例えば、ヒトMet受容体のチロシンキナーゼ(c−Met)、あるいはそのドメイン又はフラグメントに対して検出可能な結合親和性を有するヒト涙液リポカリン(hTlc)変異タンパク質によって実現され、このような変異タンパク質は、hTLCの配列位置26ないし34、56ないし58、80、83、104ないし106、及び108に対応する少なくとも1の配列位置でのアミノ酸置換を含む。]
[0011] 関連する態様においては、本発明はヒト涙液リポカリンの変異タンパク質の産生方法を提供し、変異タンパク質は検出可能な結合親和性を有し、c−Metを結合する。この方法は、
(a)ヒト涙液リポカリンをコード化する核酸分子を、天然型の成体ヒト涙液リポカリンの、直鎖状のポリペプチド配列のアミノ酸配列位置26ないし34、56ないし58、80、83、104ないし106、及び108のうちのいずれかの少なくとも1のコドンでの突然変異誘発のために供するステップであって、成体ヒト涙液リポカリンの直鎖状のポリペプチド配列の配列位置61及び153で、システイン残基をコード化するコドンのうちの少なくとも1つが、その他のアミノ酸残基をコード化するように突然変異されており、これによって、ヒト涙液リポカリンの変異タンパク質をコード化する複数の核酸を得るステップと、
(b)発現系において、(a)で得られた1又はそれ以上の変異タンパク質の核酸分子を発現するステップであって、これによって、1又はそれ以上の変異タンパク質を得るステップと、
(c)ステップ(b)で得られた1又はそれ以上の変異タンパク質の核酸分子を濃縮し、選択及び/又は分離によって、Metに対し検出可能な結合親和性を有するステップと
を具える。]
[0012] この状況において、驚くべきことに、システイン残基61及び153によって形成される野生型の涙液リポカリンの(各々の未処理の核酸ライブラリの段階での)構造的なジスルフィド結合の除去によって(Breustedtら(2005),The 1.8−Å crystal structure of human tear lipocalin reveals an extended branched cavity with capacity for multiple ligands.J.Biol.Chem.280,484−493参照)、安定して折り畳まれるだけではなく、更に、低ピコモルの範囲で親和性を有して、所定の非天然型リガンドを結合することが可能な涙液リポカリンの変異タンパク質を提供することを発明者が見出したことは留意すべきである。]
[0013] 本明細書中で用いられる用語「突然変異誘発(mutagenesis)」は、ヒト涙液リポカリンの所定の配列位置で天然に存在するアミノ酸(Swiss−Prot data bank entry:P31025)が、各々の天然ポリペプチド配列中のこの特異的な位置に存在しない少なくとも1のアミノ酸によって置換できるように、実験条件が選択されることを意味する。用語「突然変異誘発」は更に、1又はそれ以上のアミノ酸の欠失又は挿入による配列セグメントの長さの(追加の)修飾を含む。従って、例えば、選択された配列位置での1のアミノ酸が伸長する3のランダムな突然変異によって置換され、野生型タンパク質の各セグメントの長さと比較して2のアミノ酸残基の挿入を引き起こすことは本発明の範囲内のことである。このような欠失の挿入は、本発明において突然変異誘発に供されうるペプチドセグメントのいずれかに互いに別個に導入してもよい。本発明の1の例示的な実施形態においては、数個の突然変異の挿入は、選択されたリポカリンの骨格のループABに導入してもよい(引用によって本明細書中に全体が取り込まれる国際公開第2005/019256号参照)。用語「ランダムな突然変異誘発(random mutagenesis)」は、所定の単一アミノ酸(突然変異)が特定の配列位置に存在しないが、少なくとも2のアミノ酸が突然変異誘発中に、既定の配列位置にある確率で取り込まれうることを意味する]
[0014] ヒト涙液リポカリンのコード配列(Redl,B.et al.(1992)J.Biol.Chem.267,20282−20287)は、本発明で選択されるペプチドセグメントの突然変異誘発のための開始点として用いられる。列挙されたアミノ酸位置の突然変異誘発について、当該技術分野の当業者は自由裁量で、部位特異的突然変異誘発のための様々に確立された標準的な方法を有する(Sambrook,J.et al.(1989)、上記を参照)。通常用いられる技術は、合成オリゴヌクレオチドの混合物を用いた、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)による突然変異の導入であり、所望の配列位置に変性した塩基組成物を有する。例えば、コドンNNK又はNNS(ここで、N=アデニン、グアニン、又はシトシン、あるいはチミン;K=グアニン又はチミン;S=アデニン又はシトシン)の使用は、20の総てのアミノ酸に加え、終止コドンであるアンバの取り込みを、突然変異誘発中に可能にするが、一方、コドンVVSはアミノ酸Cys、Ile、Leu、Met、Phe、Trp、Tyr、Valがポリペプチド配列の選択された位置に取り込まれるのを排除するために、取り込まれるアミノ酸の最大数を12に限定し、例えば、コドンNMS(ここで、M=アデニン又はシトシン)の使用は、アミノ酸Arg、Cys、Gly、Ile、Leu、Met、Phe、Trp、Valが選択された配列位置に取り込まれるのを排除するために、選択された配列位置でのアミノ酸の最大数を11に限定する。この点において、セレノシステインあるいはピロールリジンといった(天然に存在する通常の20のアミノ酸以外の)アミノ酸用のコドンは更に、変異タンパク質の核酸に取り込んでもよいことは留意すべきである。更に、Wang,L.ら(2001)Science292,498−500、又はWang,L.及びSchultz,P.G.(2002)Chem.Comm.1,1−11に記載されるように、他の特異的なアミノ酸、例えば、o−メチル−L−チロシン又はp−アミノフェニルアラニンを挿入するために、終止コドンとして通常認識される、UAGといった「人工的な(artificial)」コドンを用いることは可能である。]
[0015] 例えば、イノシン、8−オキソ−2’デオキシグアノシン、又は6(2−デオキシ−β−D−リボフラノシル)−3,4−ジヒドロ−8H−ピリミド(pyrimindo)−1,2−オキサジン−7−オン(Zaccolo et al.(1996)J.Mol.Biol.255,589−603)のような、還元型の塩基対特異性を有するヌクレオチド構成要素の使用は、選択された配列セグメントへの突然変異の導入のための、他の選択肢である。]
[0016] 更なる可能性はいわゆる三塩基組での突然変異誘発(triplet−mutagenesis)である。この方法は、別個のヌクレオチドの三塩基組の混合物を用いており、その各々が1のアミノ酸について、コード配列への取り込みのためにコードされる(Virnekas B,Ge L,Pluckthun A,Schneider KC,Wellnhofer G,Moroney SE.1994 Trinucleotide phosphoramidites:ideal reagents for the synthesis of mixed oligonucleotides for random mutagenesis.Nucleic AcidsRes22,5600−5607)。]
[0017] 各ポリペプチドの選択された領域に突然変異を導入するための1の可能なストラテジは、4のオリゴヌクレオチドの使用に基づいており、その各々は、変異導入すべき対応する配列セグメントのうちの1つから部分的に得られる。これらのオリゴヌクレオチドを合成する場合、当該技術分野の当業者は、総ての天然アミノ酸をコード化するコドンがランダムに生じるように、変異導入すべきアミノ酸位置に対応する、ヌクレオチドの三塩基組の合成用の核酸構成要素の混合物を用いることができ、最終的にはリポカリンのペプチドライブラリを産生する。例えば、第1のオリゴヌクレオチドはその配列中において、変異導入された位置から離れ、ペプチドセグメントがリポカリンのポリペプチドの最もN末端の位置で変異導入される、コーディング鎖に対応する。従って、第2のオリゴヌクレオチドは、ポリペプチド配列に続く第2の配列セグメント用の非コーディング鎖に対応する。第3のオリゴヌクレオチドは更に、対応する第3の配列セグメント用のコーディング鎖に対応する。最後に第4のオリゴヌクレオチドは、第4の配列セグメント用の非コーディング鎖に対応する。ポリメラーゼ連鎖反応は、第1及び第2のオリゴヌクレオチドの各々で実行でき、別個に必要に応じて、第1及び第2のオリゴヌクレオチドの各々で実行してもよい。]
[0018] これらの反応の双方の増幅産物は、第1ないし第4の配列セグメントの配列を含む単一核酸に、様々な所定の方法によって結合でき、突然変異は選択された位置で導入されていた。このため、産物の双方は、例えば隣接するオリゴヌクレオチド、ならびに1又はそれ以上のメディエータの核酸分子を用いて、新しいポリメラーゼ連鎖反応に供することができ、第2及び第3の配列セグメント間の配列を提供する。突然変異誘発に用いられるオリゴヌクレオチドの配列内の数及び配列の選択において、当該技術分野の当業者は自由裁量で、数多くの選択肢を有する。]
[0019] 上に規定された核酸分子は、リポカリンのポリペプチドをコード化する、欠損した核酸の5’−及び3’−配列及び/又はベクタでの核酸連結によって結合でき、周知の宿主生物中でクローン化できる。多数の確立した手順が核酸連結及びクローン化用に利用可能である(Sambrook,J.et al.(1989)上記参照)。例えば、クローニングベクタの配列中に更に存在する制限エンドヌクレアーゼの認識配列は、合成オリゴヌクレオチドの配列で操作されうる。従って、各々のPCR産物の増幅及び酵素切断後に、得られたフラグメントは対応する認識配列を用いて容易にクローン化されうる。]
[0020] 突然変異誘発用に選択されたタンパク質のためにコード化する遺伝子内の長い配列セグメントは更に、例えば、誤差率の増加条件下でのポリメラーゼ連鎖反応の使用によって、化学的な突然変異誘発によって、あるいは細菌性の突然変異誘発株を用いることによって、周知の方法を介してランダムな突然変異誘発に供されうる。このような方法は更に、リポカリンの変異タンパク質の標的の親和性又は特異性の更なる最適化のために用いられうる。実験的な突然変異誘発のセグメント外部に場合により生じる突然変異は多くの場合許容され、例えばリポカリンの変異タンパク質の折り畳みの効率又は折り畳みの安定性の改善に貢献する場合、利点にさえなりうる。]
[0021] 本明細書中で用いられる用語「ヒト涙液リポカリン(human tear lipocalin)」は、受入番号P31025でSWISS−PROT Data Bankで供託された成体ヒト涙液リポカリン、かつ本明細書で配列番号36で示されるアミノ酸配列のことである。]
[0022] 本発明の一実施形態においては、ヒト涙液リポカリンの変異タンパク質の産生方法は、成体ヒト涙液リポカリンの直鎖状のポリペプチド配列の、アミノ酸配列位置26ないし34、56ないし58、80、83、104ないし106、及び108のいずれかのコドンのうち、少なくとも2、3、4、5、6、8、10、12、14、15、16、又は17個を変異導入するステップを含む。別の実施形態においては、成体ヒト涙液リポカリンの直鎖状のポリペプチド配列の、アミノ酸配列位置26、27、28、29、30、31、32、33、34、56、57、58、80、83、104、105、106、及び108の、総ての18のコドンは変異導入される。従って、本発明のMet結合型の変異タンパク質は、成体ヒト涙液リポカリンの直鎖状のポリペプチド配列の、アミノ酸配列位置26ないし34、56ないし58、80、83、104ないし106、及び108の位置のうち、任意の2、3、4、5、6、8、10、12、14、15、16、17、又は18個での突然変異を含みうる。しかしながら、配列位置を突然変異誘発に供することが、選択された最大限のアミノ酸置換が本発明の変異タンパク質中に実際に生じることを必ずしも意味しないことは当該技術分野の当業者に明確である。逆突然変異又は構造機能相関によって、野生型の涙液リポカリン配列のアミノ酸残基は更に、本発明の変異タンパク質中に保持されうる。]
[0023] 別の態様においては、本発明はヒト涙液リポカリンの変異タンパク質の産生方法を含み、変異タンパク質は、検出可能な結合親和性を有するヒト涙液リポカリンの所定の非天然型リガンドとしてc−Metを結合し、
(a)成体ヒト涙液リポカリンの直鎖状のポリペプチド配列のアミノ酸配列位置34、80、及び104のいずれかのうち少なくとも1のコドンで、ヒト涙液リポカリンをコード化する核酸分子を突然変異誘発に供するステップであって、これによってヒト涙液リポカリンの変異タンパク質をコード化する複数の核酸を得るステップと、
(b)発現系において、(a)で得られた1又はそれ以上の変異タンパク質の核酸分子を発現するステップであって、これによって、1又はそれ以上の変異タンパク質を得るステップと、
(c)ステップ(b)で得られた1又はそれ以上の変異タンパク質の核酸分子を濃縮し、選択及び/又は分離によって、ヒト涙液リポカリンの所定の非天然型リガンドとしてのc−Metに対し、検出可能な結合親和性を有するステップと、
を具える。]
[0024] 上述の方法の一実施形態においては更に、成体ヒト涙液リポカリンの直鎖状のポリペプチド配列の、アミノ酸配列位置26ないし33、56ないし58、83、105ないし106、及び108のいずれかのコドンのうち、少なくとも2、3、4、5、6、8、10、12、14、又は15個が変異導入された。]
[0025] 本発明の更なる実施形態においては、本発明による方法は、成体ヒト涙液リポカリンの直鎖状のポリペプチド配列中の位置61及び153でシステインをコード化する、双方のコドンの突然変異を含む。双方の位置は例えば、セリン残基をコード化するのに変異導入されうる。]
[0026] 本明細書中に記載の本発明の別の実施形態においては、成体ヒト涙液リポカリンの直鎖状のポリペプチド配列のアミノ酸配列位置111及び/又は114をコード化するコドンは、例えば位置111でのプロリンと、位置114でのトリプトファンとをコード化するのに変異導入される。]
[0027] 本発明の方法の別の実施形態は、成体ヒト涙液リポカリンの直鎖状のポリペプチド配列の位置101でシステインをコード化するコドンの突然変異誘発を含み、このコドンがその他のアミノ酸をコード化する。一実施形態においては、位置101をコード化する変異導入されたコドンはセリンをコード化する。従って、いくつかの実施形態においては、位置61、101、及び153でのシステインコドンのうちの2個又は3個総ては、別のアミノ酸のコドンによって配置される。]
[0028] 本発明の方法によると、変異タンパク質はヒト涙液リポカリンをコード化する核酸から得られる。このような核酸は突然変異誘発に供されて、組換えDNA技術によって、好適な細菌性又は真核性の宿主生物に導入される。涙液リポカリンの核酸ライブラリを得ることは、抗体様の特性を有するリポカリンの変異タンパク質、すなわち、所定の標的に対する親和性を有する変異タンパク質を産生するのに好適な、当該技術分野の当業者に周知の任意の技術を用いて行われうる。このような組合せ型の方法の実施例は例えば、開示内容全体が本明細書中に引用によって取り込まれる、国際公開第99/16873号、国際公開第00/75308号、国際公開第03/029471号、国際公開第03/029462号、国際公開第03/029463号、国際公開第2005/019254号、国際公開第2005/019255号、国際公開第2005/019256号、国際公開第2006/56464号、及び国際特許出願PCT/EP2007/057971に詳細に記載されている。適切な宿主中で突然変異誘発に供された核酸配列の発現後、複数の各リポカリンの変異タンパク質用の遺伝情報を保有するクローンは、所定の標的を結合し、得られたライブラリから選択されうる。ファージディスプレイ(Kay,B.K.et al.(1996)上記を参照;Lowman,H.B.(1997)上記を参照;又はRodi,D.J.及びMakowski,L.(1999)上記参照;に概説)、コロニースクリーニング(Pini,A.et al.(2002)Comb.Chem.High Throughput Screen.5,503−510;に概説)、リボソームディスプレイ(Amstutz,P.et al.(2001)Curr,Opin.Biotechnol.12,400−405;に概説)、又はWilson,D.S.et al.(2001)Proc.Natl.Acad.Sci USA 98,3750−3755;に報告されるようなmRNAディスプレイ、あるいは、開示内容全体が本明細書中に引用によって取り込まれる、国際公開第99/16873号、国際公開第00/75308号、国際公開第03/029471号、国際公開第03/029462号、国際公開第03/029463号、国際公開第2005/019254号、国際公開第2005/019255号、国際公開第2005/019256号、国際公開第2006/56464号、及び国際特許出願PCT/EP2007/057971に明確に記載された方法といった公知の技術は、これらのクローンの選択用に用いられうる。]
[0029] この開示によると、c−Met結合型の涙液リポカリンの変異タンパク質を得る方法のステップ(c)は更に、上の方法の別の実施形態においては、
(i)所定のリガンドとして、c−Met又はそのドメイン又はフラグメントを提供するステップと、
(ii)前記リガンドと、当該リガンドに対し結合親和性を有する変異タンパク質との間で複合体の形成を可能にするように、複数の変異タンパク質を前記リガンドと接触させるステップと、
(iii)結合親和性を有さない、あるいは実質的に有さない変異タンパク質を除去するステップと、
を具える。]
[0030] c−Met結合型の涙液リポカリンの変異タンパク質の産生のために、ヒトMet受容体のチロシンキナーゼ(c−Met)の細胞外ドメインの任意の部分(例えば、フラグメント又は単一ドメイン)、あるいは細胞外ドメイン全体(成熟受容体全体のN末端のアミノ酸残基である、位置1のメチオニンないし位置932のスレオニンを含む(SWISSProt:P08581))は、これらの変異タンパク質をコード化する(未処理の)核酸ライブラリの発現から得られた(複数の)変異タンパク質と接触できる。商業上利用可能な細胞外ドメインを用いることは可能であり、例えば、(R&D Systems社、米国、品番358−MT)といったポリペプチドリンカを介したヒトIgGのFc領域に融合された残基1ないし932として例えば提供される。本明細書に記載の変異タンパク質を得るのに用いられうるc−Metのフラグメントの更なる実施例は限定しないが、7のセマドメインを含む、Stamosら,TheEMBO Journal Vol.23,No.12,2004,2325−2335ページ;に記載されるようなMetの残基25ないし567からなるフラグメントか、あるいは残基25ないし567を含む、より大きなフラグメントを含む。セマドメインを結合するフラグメントは、本発明の変異タンパク質がHGFのセマドメインへの結合と競合すると推定される場合に用いられうる。このような変異タンパク質はHGFのアンタゴニストであってもよい(しかし、必ずしも有しなければならない訳ではない、実施例参照)。残基568ないし932を含むものといったフラグメントを用いることは、セマドメインへの結合が回避されるべき場合に更に可能である。スクリーニングは更に、フラグメント、あるいはc−MetのPSIドメイン又はIgG様ドメインといった他のドメインを用いて行われうる。スクリーニング目的で、例えば、ヒトc−Metの(細胞外ドメインの)代わりに、通常のチンパンジーの相同体(学名:pan troglodytes(チンパンジー)、ヒトc−Metと99%同一)、マカクの相同体(学名:macaca mulatta(アカゲザル)、98%同一)、イヌの相同分子種(学名:canis familiaris(カニスファミリアリス)、88%同一)、マウスの相同分子種(SWISS Prot:A1A597、87%同一)、又はラットの相同分子種(学名:rattus norvegicus(ドブネズミ)、86%同一)を用いることは更に可能である。このようなアプローチは、例えばヒトと、マウス又はラットの相同分子種との間で交差反応性を有する変異タンパク質(又は、例えば細胞外ドメイン)が所望される場合に取られるであろう。上から明確なように、本発明においてHGFに対し拮抗作用を有しうる涙液リポカリンの変異タンパク質を産生することは可能である。代替的に、変異タンパク質はそれぞれ非拮抗結合モードを有してもよい(この点については実施例参照)。]
[0031] 本発明の方法の一実施形態においては、ステップ(c)における選択は、競合条件下で行われる。本明細書中で用いられるような競合条件は、変異タンパク質及びヒト涙液リポカリンの所定の非天然型リガンド(標的)がHGFといった更なるリガンドの存在時に接触する少なくとも1のステップを、変異タンパク質の選択が含みうることを意味し、それは変異タンパク質の標的への結合と競合する。この更なるリガンドは、HGFといったc−Metの生理学的リガンドか、抗c−Met抗体といったc−Metのその他の非生理学的リガンドか、又は本発明の変異タンパク質を認識するエピトープに、重複する若しくは部分重複するエピトープを少なくとも結合し、ひいては変異タンパク質の標的結合と干渉する、低分子タンパク質のチロシンキナーゼ阻害剤であってもよい。代替的に、この更なるリガンドは、アロステリック効果により、変異タンパク質のc−Metへの結合部位と異なるエピトープを複合体化することによって、変異タンパク質の結合と競合してもよい。]
[0032] 溶原性のM13ファージを用いた、ファージディスプレイ技術の、ある実施形態(Kay,B,K.et al.(1996)上記を参照;Lowman,H.B.et al.(1997)上記を参照;又は、Rodi,D.J.及びMakowski,L.(1999)上記を参照;に概説)は、本発明で用いられうる選択方法のある実施例として提供される。本発明の変異タンパク質の選択に用いられうるファージディスプレイ技術の別の実施形態(実験の項参照)は、Brodersによって記載のようなハイパーファージ(hyperphage)のファージ技術である(Brodersら(2003)“Hyperphage.Improving antibody presentation in phage display.”MethodsMol.Biol,205:295−302)。f1といった他の溶原性ファージ、又はT7といった溶菌性ファージは同様に用いてもよい。例示的な選択方法について、N末端でシグナル配列、好適にはOmpAシグナル配列を有し、かつ、C末端でファージカプシドに組み込まれうる、ファージM13のカプシドタンパク質pIII、又はそのフラグメントを有するシグナル配列融合タンパク質として、変異導入されるリポカリンの核酸配列の発現を可能にするM13ファージミドが産生される。野生型の配列のアミノ酸217ないし406を含むファージカプシドタンパク質のC末端のフラグメントΔpIIIは、融合タンパク質を産生するのに好適に用いられる。一実施形態において特に好適であるのは、pIIIのC末端のフラグメントであり、位置201でのシステイン残基は欠損しているか、あるいは別のアミノ酸に置換される。]
[0033] 従って、本発明の方法の更なる実施形態は、ヒト涙液リポカリンの複数の変異タンパク質をコード化する核酸を動作可能に融合するステップと、c−Metの結合用の少なくとも1の変異タンパク質を選択するように、M13ファミリの線維状ファージのコートタンパク質pIIIか、あるいはこのコートタンパク質のフラグメントをコード化する遺伝子で、3’末端での突然変異誘発を生じさせるステップとを含む。]
[0034] 融合タンパク質は親和性標識といった更なる成分を含んでもよく、融合タンパク質又はその一部分の固定化、検出、及び/又は精製を可能にする。更に、終止コドンは、リポカリン又はその変異タンパク質をコード化する配列領域と、ファージカプシド遺伝子又はそのフラグメントとの間に配置でき、終止コドン、好適にはアンバの終止コドンは、好適なサプレッサー株における翻訳時に、アミノ酸に少なくとも部分的に翻訳される。]
[0035] 例えば、国際特許出願PCT/EP2007/057971に記載の、pTlc27とも呼ばれるファスミドベクタpTLPC27は、ヒト涙液リポカリンの変異タンパク質をコード化するファージミドライブラリの調製に用いられうる。涙液リポカリンの変異タンパク質をコード化する本発明の核酸分子は、2のBstXI制限部位を用いてベクタに挿入されうる。核酸連結後、大腸菌のXL1−Blueといった好適な宿主株は、多数の別個のクローンを産生するために、得られた核酸混合物で形質転換される。各ベクタは必要に応じて、ハイパーファージミド(hyperphagemid)ライブラリの調製のために産生できる。代替的に、例えば本出願の実施例に用いられるベクタpTLPC59といった、その他の好適なファージミドベクタ(実施例1及び図1参照)は更に、ファージミドライブラリの調製のために用いられうる。ベクタpTLPC59は、ファージディスプレイ用のライブラリ遺伝子コントラクトが、tetプロモータ(tet p/o)の代わりにlacプロモータ(lac p/o)の制御下に置かれ、VCSM13ファージの全長遺伝子IIIに遺伝学的に融合されることを除いては、ベクタpTLc27と同一である。] 図1
[0036] 得られたライブラリはその後、機能的なファージミドを産生するために、液体培養中に適切なM13ヘルパーファージ又はハイパーファージに重感染できる。組換え型ファージミドは、コートタンパク質pIII又はそのフラグメントを有する融合物としてその表面上にリポカリンの変異タンパク質を表示する一方、融合タンパク質のN末端のシグナル配列は通常切断される。他方、ヘルパーファージによって供給される天然型カプシドタンパク質pIIIの1又はそれ以上のコピーを更に有し、従ってレシピエント、一般的にはF−又はF’−プラスミドを保有する菌種を感染させることができる。ハイパーファージディスプレイの場合において、ハイパーファージミドは感染性のコートタンパク質pIIIを有するが、天然型カプシドタンパク質を有しない融合物として、その表面にリポカリンの変異タンパク質を表示する。ヘルパーファージ又はハイパーファージの感染中又はその後に、リポカリンの変異タンパク質とカプシドタンパク質との間での融合タンパク質の遺伝子発現が、例えばアンヒドロテトラサイクリンの添加によって誘発できる。誘発条件は、実質的に一部分の得られたファージミドが、その表面上に少なくとも1のリポカリンの変異タンパク質を表示するように選択される。ハイパーファージディスプレイの場合においては、誘発条件は、リポカリンの変異タンパク質とカプシドタンパク質pIIIとからなる、3ないし5の融合タンパク質を保有するハイパーファージミドの集団を生じさせる。様々な方法がポリエチレングリコールでの沈殿といったファージミドを分離することで知られる。分離は一般的に、6ないし8時間のインキュベーション期間後に生じる。]
[0037] 分離されたファスミドはその後、所望の標的(すなわち、c−Metの細胞外ドメイン、あるいはその一部又はフラグメント)とのインキュベーションによって選択に供することができ、標的はそれらのコート中の融合タンパク質として、所望の結合活性を有する変異タンパク質を保有する、そのファージミドの少なくとも一時的な固定化を可能にする形態で示される。当該技術分野の当業者に周知の様々な実施形態の間で、標的は例えば、血清アルブミンといった担体タンパク質と接合され、この担体タンパク質を介してタンパク質結合面、例えばポリスチレンに結合されうる。ELISA技術に好適なマイクロタイタープレート、又はいわゆる「イムノスティック」は好適には、このような標的の固定化のために用いられうる。代替的に、ビオチンといった他の結合基での標的の接合が用いられうる。標的はその後、例えばマイクロタイタープレート、あるいはストレプトアビジン、ニュートラアビジン、又はアビジンでコーティングされた常磁性粒子といった、この群を選択的に結合する表面に固定化できる。標的が免疫グロブリンのFc部分に融合される場合、固定化は更に、例えばマイクロタイタープレート又は常磁性粒子といった、プロテインA又はプロテインGでコーディングされた表面で得られうる。]
[0038] 表面上にある非特異的なファージミド結合部位は、ELISA法で知られるようにブロッキング溶液で飽和できる。ファージミドは次いで、一般的には、生理学的バッファの存在下で表面に固定化される標的と接触する。結合されないファージミドは複数の洗浄によって除去される。表面上に残ったファージミド粒子はその後溶出される。溶出では、いくつかの方法が可能である。例えば、ファージミドはプロテアーゼの添加によって、あるいは酸、塩基、界面活性剤、又はカオトロピック塩の存在下で、あるいは適度な変性条件下で溶出できる。好適な方法は、pH2.2のバッファを用いた溶出であり、溶出物はその後中和される。代替的に、遊離型の標的(すなわち、c−Metの細胞外ドメイン、あるいはその一部又はフラグメント)の溶液は、ファージミドへの結合用に固定化された標的と競合するように添加でき、標的特異性のファージミドは、対象の標的に特異的に結合する免疫グロブリン又は天然型リガンドのタンパク質との競合によって溶出できる。]
[0039] その後、大腸菌細胞は溶出されたファージミドに感染する。代替的に、核酸は溶出されたファージミドから抽出でき、別の方法においては細胞の配列解析、増幅、又は形質転換のために用いられうる。この方法で得られた大腸菌クローンから、新しいファージミド又はハイパーファージミドが上述の方法によって、M13ヘルパーファージ又はハイパーファージでの重感染によって更に産生され、この方法で増幅されたファージミドは再度、固定化された標的の選択に供される。複数の選択サイクルは多くの場合、十分に濃縮された形態での本発明の変異タンパク質で、ファージミドを得るために必要である。選択サイクルの数は、その後の機能解析において、少なくとも0.1%の調査されたクローンが所定の標的に対する検出可能な親和性を有する変異タンパク質を産生するように、好適に選択される。用いられるライブラリの大きさ、すなわち、複雑度に依存して、2ないし8のサイクルが一般的にはこのために要求される。]
[0040] 選択された変異タンパク質の機能解析では、大腸菌株はその後、選択サイクルから得られるファージミドに感染でき、対応する二本鎖のファスミドDNAが分離される。このファスミドDNAから、あるいは更にファージミドから抽出される単鎖DNAから、本発明の選択された変異タンパク質の核酸配列は、当該技術分野に周知の方法によって決定でき、アミノ酸配列はそれから推定されうる。変異導入された領域、又は涙液リポカリンの変異タンパク質全体の配列は、別の発現ベクタでサブクローン化され、好適な宿主生物で発現されうる。例えば、国際特許出願PCT/EP2007/057971に記載のベクタpTlc26は、大腸菌TG1といった大腸菌株中の発現のために用いられうる。このように産生された涙液リポカリンの変異タンパク質は、様々な生化学的方法によって調製されうる。例えばpTlc26で産生された涙液リポカリンの変異タンパク質は、そのC末端で親和性ペプチドのStrep−tag(登録商標)II(Schmidt et al.上記参照)を保有し、従ってストレプトアビジン親和性クロマトグラフィよって好適に調製されうる。]
[0041] 選択は更に、他の方法によって行われうる。多くの対応する実施形態が当該技術分野の当業者に周知であるか、あるいは文献中に記載されている。更に、方法の組合せが適用されうる。例えば、「ファージディスプレイ」によって選択されるか、あるいは少なくとも濃縮されるクローンは更に、「コロニースクリーニング」に供されうる。この手順は、別個のクローンがc−Metに対する検出可能な結合親和性を有する涙液リポカリンの変異タンパク質、あるいは例えば、c−Metの細胞外ドメインの産生に対し、直接的に分離されうるといった利点を有する。]
[0042] 「ファージディスプレイ」技術又は「コロニースクリーニング」法における宿主生物としての大腸菌の使用に加えて、他の菌種、酵母、あるいは更に昆虫細胞又は哺乳類細胞はこの目的に用いられうる。上述のようなランダム(未処理)のライブラリからの、涙液リポカリンの変異タンパク質の選択に加えて、突然変異誘発の限定を含む発展的方法は更に、スクリーニングサイクルの反復後の標的に対する親和性又は特異性について、標的に対する結合活性を既に有する変異タンパク質を最適化するために適用できる。]
[0043] c−Metに対し親和性を有する変異タンパク質、あるいはそのドメイン又はフラグメントは一度選択されると、更に高い親和性の変異体、あるいは、高い熱安定性、血清安定性の改善、熱力学的安定性、溶解性の改善、単量体の挙動の改善、熱変性、化学変性、タンパク質分解、又は界面活性剤に対する耐性の改善等といった改善された特性を有する変異体を次に選択するために、このような変異タンパク質を別の突然変異誘発に供することが更に可能である。この更なる突然変異誘発は、高親和性を目的とする場合においては生体内での「親和性成熟(affinity maturation)」とみなしうるが、合理的設計に基づく部位特異的な突然変異、又はランダムな突然変異によって得られる。より高い親和性又は改善された特性を得るための別の可能なアプローチは、エラープローンPCRの使用であり、リポカリンの変異タンパク質の配列位置の選択した範囲にわたる点突然変異が生じる。エラープローンPCRはZaccoloら(1996)J.Mol.Biol.255,589−603:で記載されるものといった任意の周知のプロトコルによって行われうる。この目的に好適な他のランダムな突然変異誘発方法は、Murakami,H et al.(2002)Nat.Biotechnol.20,76−81:で記載のようなランダムな挿入/欠失(RID)か、あるいはBittker,J.Aら(2002)Nat.Biotechnol.20,1024−1029:で記載のような非相同性のランダムな組換えを含む。必要に応じて、親和性成熟は更に、国際公開第00/75308号、又はSchlehuber,S.et al.(2000)J.Mol.Biol.297,1105−1120:に記載の手順によって行うことができ、ジゴキシゲニンに対し高親和性を有するビリン結合型のタンパク質の変異タンパク質が得られた。親和性を改善する更なるアプローチは、位置的な飽和突然変異誘発を行うことである。このアプローチにおいて、「小さな」核酸ライブラリは、アミノ酸交換/突然変異が本明細書で規定される任意の4のループセグメント内の単一位置にのみ導入されて産生されうる(実施例21参照)。これらのライブラリはその後、更なるパニングのラウンドなしに、選択ステップ(親和性スクリーニング)に直接的に供される。このアプローチによって、所望の標的の結合の改善に寄与する残基の同定が可能となり、結合に重要な「ホットスポット(hot spot)」の同定が可能となる。このようなアプローチがあれば、最初の2のセグメント(配列位置24ないし36、又は56ないし58)内のキー残基の同定が例えば可能である。]
[0044] 更なる態様においては、本発明はc−Metに対し検出可能な結合親和性を有するヒト涙液リポカリンの変異タンパク質、あるいはそのドメイン又は一部に関し、上に詳述した本発明の方法によって取得可能であるか、あるいは取得される。]
[0045] 一実施形態においては、上の方法によって得られたヒト涙液リポカリンの変異タンパク質は、別のアミノ酸によって配列位置61及び153の各々で生じるシステイン残基のうちの少なくとも1つ又は双方の置換と、成体ヒト涙液リポカリンの直鎖状のポリペプチド配列の配列位置26ないし34、56ないし58、80、83、104ないし106、及び108のうちのいずれか1つでの、少なくとも1のアミノ酸残基の突然変異とを含む。位置24ないし36はABループに含まれ、位置53ないし66はCDループに含まれ、位置69ないし77はEFループに含まれ、位置103ないし110は涙液リポカリンのβバレル構造の開放端での結合部位におけるGHループに含まれる。これらの4のループの定義は、Flower(Flower,D.R.(1996)上記を参照、及びFlower,D.R.et al.(2000)上記を参照)に従って本明細書中で用いられる。通常、このような変異タンパク質は、成体ヒト涙液リポカリンの直鎖状のポリペプチド配列の配列位置26ないし34、56ないし58、80、83、104ないし106、及び108で、少なくとも2、3、4、5、6、8、10、12、14、15、16、17、又は18個の変異導入されたアミノ酸残基を含む。特定の実施形態においては、変異タンパク質はアミノ酸置換Cys61→Ala、Phe、Lys、Arg、Thr、Asn、Tyr、Met、Ser、Pro、又はTrpと、Cys153→Ser又はAlaとを含む。このような置換は天然に存在するジスルフィド架橋結合Cys61及びCys153の形成を防ぎ、ひいては変異タンパク質の処理を促進するのに有用であった。]
[0046] 更に別の実施形態においては、Arg111→Pro及びLys114→Trpから選択される少なくとも1の更なるアミノ酸置換を含む。本発明の変異タンパク質は更に、別のアミノ酸によって置換された天然型の成体ヒト涙液リポカリンの配置位置101でシステインを含んでもよい。置換は例えば、突然変異Cys101→Ser又はCys101→Thrであってもよい。]
[0047] 本発明のリポカリンの変異タンパク質は、変異導入されたアミノ酸配列位置の外部に野生型(天然型)アミノ酸配列を含んでもよい。他方、本明細書中に開示されたリポカリンの変異タンパク質は更に、その突然変異が結合活性及び変異タンパク質の折り畳み構造と干渉しない限りにおいては、突然変異誘発に供される配列位置の外部にアミノ酸突然変異を含んでもよい。このような突然変異は、確立した標準的な方法を用いてDNAレベルで非常に容易に得られうる(Sambrook,J.et al.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY)。可能なアミノ酸配列の変質は挿入又は欠失ならびにアミノ酸置換である。このような置換は保存的であってもよく、すなわち、アミノ酸残基は化学的に同様のアミノ酸残基で置換される。保存的置換の例は、以下の群:
1)アラニン、セリン、及びスレオニン;
2)アスパラギン酸及びグルタミン酸;
3)アスパラギン及びグルタミン;
4)アルギニン及びリジン;
5)イソロイシン、ロイシン、メチオニン、及びバリン;
ならびに、
6)フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン;
の要素間での置換である。他方では、アミノ酸配列中で非保存的変質を誘導することは更に可能である。更に、単一アミノ酸残基を置換する代わりに、涙液リポカリンの一次構造の1又はそれ以上の連続的なアミノ酸を挿入する、あるいは欠失させることは更に、この欠失又は挿入が安定して折り畳まれた/機能的な変異タンパク質(例えば、切断型のN及びC末端を有する変異タンパク質が産生される実験上の切片を参照)を生じさせる限りにおいては可能である。]
[0048] アミノ酸配列のこのような修飾は、特定の制限酵素に対し切断部位を組み込むことによって、変異導入されたリポカリン遺伝子又はその一部のサブクローン化を単純化するために、単一アミノ酸位置の定方向の突然変異誘発を含む。更に、これらの突然変異は所定の標的に対するリポカリンの変異タンパク質の親和性を更に改善するために、更に組み込まれうる。更に、突然変異は必要に応じて、折り畳みの安定性、血清安定性、タンパク質の耐性、又は水溶解性を改善するために、あるいは凝集傾向を低減するために、といった変異タンパク質の特定の特徴を調節するために導入できる。例えば、天然に存在するシステイン残基を他のアミノ酸に変異導入して、ジスルフィド架橋を防いでもよい。しかしながら、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、ビオチン、ペプチド、又はタンパク質といった他の化合物への接合用に、あるいは非天然に存在するジスルフィド結合の形成用に新しい反応基を導入するために、他のアミノ酸配列位置をシステインに計画的に変異することは更に可能である。システイン残基をヒト涙液リポカリンの変異タンパク質のアミノ酸配列に導入するための、このような突然変異の例示的な可能性は、置換Thr40→Cys、Glu73→Cys、Arg90→Cys、Asp95→Cys、Lys121→Cys、Asn123→Cys、及びGlu131→Cysを含む。アミノ酸位置40、73、90、95、121、123及び/又は131のいずれかの側で産生されたチオール部分は、変異タンパク質をPEG化又はHES化するために、例えば各々の涙液リポカリンの変異タンパク質の血清半減期を増加させるために用いてもよい。システインがこれらの任意の配列位置で導入される変異タンパク質S244.2−H08(実施例9参照)は、本発明のこのような変異タンパク質の例示的な実施例である。システイン残基のいずれかの側鎖は当然ながら血清半減期を増加させる化合物の接合のためだけではなく、数例の連結例を挙げると、有機分子、酵素標識、毒素、分裂停止剤(cystostatic agent)、薬学的に好適な放射性標識、蛍光標識、色素標識、発光標識、ハプテン、ジゴキシゲニン、ビオチン、金属錯体、金属、又はコロイド金といった任意の所望の接合相手の接合のためにも同様に用いることができる。接合は当該技術分野に周知の従来の結合方法を用いて行うことができ(例えば、実施例18参照)、システイン残基はトリス[2−カルボキシエチル]ホスフィン(TCEP)又はジチオトレイトール(DTT)といった試薬によって活性化でき、更には、3−N−マレイミド−6−ヒドラジニウムピリジン塩酸塩(HYNIC)といった試薬と反応させうる。]
[0049] 本発明は更に、上に規定されるような切断型の変異タンパク質(すなわちフラグメント)を含み、例えば、成体ヒト涙液リポカリンの配列の最初の4のN末端のアミノ酸残基(His−His−Leu−Leu;位置1ないし4)及び/又は成体ヒト涙液リポカリンの配列の最後の2のC末端のアミノ酸残基(Ser−Asp;位置157ないし158)は、欠失している(実施例及び添付の配列表を更に参照のこと)。]
[0050] 本発明のリポカリンの変異タンパク質は、検出可能な親和性、すなわち、少なくとも200nMの解離定数を有する所望の標的、すなわちc−Met受容体のチロシンキナーゼ、あるいはそのドメイン又はフラグメントを結合できる。いくつかの実施形態において現在好適なのはリポカリンの変異タンパク質であり、少なくとも100、20、1nM、又は更にそれ未満の所定の標的に対する解離定数で所望の標的を結合する。所望の標的に対する変異タンパク質の結合親和性は、蛍光滴定、競合ELISA、又は表面プラズモン共鳴(BIAcore)といった多数の方法によって測定できる。]
[0051] 複合体形成が結合相手の濃度、競合相手の存在、バッファ系のイオン強度等といった多くの因子に依存することは当業者に容易に明らかとなろう。選択及び濃縮は一般的には、リポカリンの変異タンパク質の分離が所望の標的(c−Met、あるいはそのドメイン又はフラグメント)と複合して、少なくとも200nMの解離定数を有することが可能な条件下で行われる。しかしながら、洗浄及び溶出ステップは、可変のストリンジェンシ下で行われうる。動的特性に関連する選択は同様に可能である。例えば、選択は複数の条件下で行うことができ、その条件は標的からの遅い解離、あるいは言い換えると低いkoff速度を示す、変異タンパク質と標的との複合体形成を支持する。代替的には、選択は複数の条件下で行うことができ、その条件は、変異タンパク質と標的との間の速い複合体形成、あるいは言い換えると高いkon速度を支持する。更なる例示的な選択肢として、スクリーニングは、変異タンパク質の熱安定性の(野生型の涙液リポカリン又は事前選択された標的に対する親和性を既に有する変異タンパク質のいずれかと比較した)改善のためか、あるいは変異タンパク質のpH安定性のために選択される条件下で行うことができる。]
[0052] 本発明の涙液リポカリンの変異タンパク質は一般的には、単量体タンパク質として存在する。しかしながら、本発明のリポカリンの変異タンパク質は自発的に二量体化するか、あるいは更に高次の低重合体を形成しうることは更に可能である。安定した単量体を形成するリポカリンの変異タンパク質の使用は、例えば更に速い拡散と良好な組織浸透のためといった、いくつかの用途に好適にできるが、安定した同質二量体又は多量体を自発的に形成するリポカリンの変異タンパク質の使用は、このような多量体が所定の標的に対する親和性及び/又は結合活性の(更なる)増加を提供できるため、その他の場合に有利になりうる。更に、リポカリンの変異タンパク質の低重合体の形成は更に遅い解離速度、あるいは長期の血清半減期を有しうる。安定した単量体を形成する変異タンパク質の二量体化又は多量体化が所望される場合、これは例えば、本発明の変異タンパク質にjun−fosドメイン又はロイシンジッパーといった各々の低重合体ドメインを融合することによって、あるいは「デュオカリン(Duocalin)の使用によって得られうる(更に以降を参照のこと)。]
[0053] 本発明の涙液リポカリンの変異タンパク質は、c−Metあるいはそのドメイン又はフラグメントとの複合体形成のために、例えば試験管内での生体外診断目的で、あるいは生体内での治療目的で用いてもよい。]
[0054] 一般的には、c−Metに対し本明細書中で用いられる用語「フラグメント(fragment)」は、N末端及び/又はC末端で短縮されたタンパク質又はペプチドのリガンドと関連し、本発明による変異タンパク質で認識及び/又は結合すべき全長型リガンドの性能を保持する。c−Metに対する用語「ドメイン」は当該技術分野で用いられる通常の意味に従って理解すべきである。例えば、用語「ドメイン」は、Stamos et al.,TheEMBO Journal,Vol.23,ページ2325−2335,2004(例えば、Stamosらの図3a又は4を参照);に構造上規定されるようなセマドメイン、PSIドメイン、IgG様ドメイン、膜貫通ドメイン、又は更に、Schieringら,Proc.Natl.Acad.Sci USA,Vol.100,No.22,ページ12654−12659,2003;に構造上規定されるようなチロシンキナーゼドメインを含む。用語「ドメイン」は更に、全長型受容体タンパク質の残基Met1ないしThr932によって形成されるc−Metの細胞外部分全体か、あるいは、例えば全長型受容体の残基2、3、4、5、6ないし残基920、925、930、又は931によって形成される切断型フラグメントを含む。上述のように、例えば細胞外ドメイン全体、又は、例えばセマドメインといった細胞外ドメインの一部のみの使用によって、HGF結合部位に結合する(その後、HGFに対しアンタゴニスト結合モードを有しうる)変異タンパク質か、HGF結合に対し非アンタゴニスト結合モードを有する変異タンパク質か、のいずれかを産生することが可能である。] 図3a
[0055] この文脈においては、各々の変異タンパク質と、c−Met、あるいはそのドメイン又はフラグメントとの間での複合体形成は、各々の結合相手の濃度、競合相手の存在、用いられるバッファ系のpH及びイオン強度、及び、解離定数KDの決定に用いられる実験的方法(数例だけを挙げると、例えば蛍光滴定、競合ELISA、又は表面プラズモン共鳴)又は実験データの評価に用いられる数学的アルゴリズムといった多くの異なる因子によって影響されることは更に留意されよう。]
[0056] 従って、本明細書で提供されるKD値(各々の変異タンパク質とそのリガンドとの間に形成される複合体の解離定数)は、特定の実験範囲内で変更してもよく、所定のリガンドに対する特定のリポカリンの変異タンパク質の親和性を決定するのに用いられる方法及び実験設定に依存することは更に、当業者に明らかである。このことは測定されたKD値にわずかな偏差、又は、例えば、KD値が表面プラズモン共鳴(Biacore)によって、あるいは競合ELISAによって決定されるかどうかに依存する許容範囲があり得ることを示す。]
[0057] 本発明の特定の実施形態においては、成体ヒト涙液リポカリンのアミノ酸配列について少なくとも6、8、10、12、14、16、又は17個のアミノ酸置換を含み、Arg26→Thr、Val、Pro、Ser、Gly;Glu27→Gln、Gly、Val、Ser;Phe28→Met、Asp;Pro29→Leu、Ile、Ala、Trp;Glu30→Leu、Gly、Arg、Phe;Met31→Ser;Asn32→Leu、Arg、Val、Gln;Leu33→Tyr、Val、Ile、Thr、Phe;Glu34→Val、Arg、Ala;Leu56→Asn;Ile57→Gln;Ser58→Ile、Val;Asp80→Tyr;Lys83→Ala;Glu104→Asp;Leu105→Thr;His106→Trp;及びLys108→Gly;からなる群から選択される。]
[0058] 更なる特定の一実施形態においては、本発明の変異タンパク質は更に、Thr37→Ser;Met39→Ile、Leu;Asn48→Ser;Lys52→Thr、Met;Met55→Leu;Lys65→Arg、Leu;Ala79→Leu、Ser;Ala86→Thr;及び、Ile89→Ser、Gln、Thr、His;からなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸置換を含む。]
[0059] 別の更なる特定の実施形態においては、変異タンパク質は、アミノ酸置換:Arg26→Thr;Glu27→Gln;Glu30→Leu;Met31→Ser;Asn32→Leu;Leu33→Tyr;Glu34→Val;Leu56→Asn;Ile57→Gln;Asp80→Tyr;Lys83→Ala;Glu104→Asp;Leu105→Thr;His106→Tip;及び、Lys108→Gly;を含む。]
[0060] 本発明の更に別の特定の実施形態においては、本発明の変異タンパク質は、アミノ酸置換:Met31→Ser;Leu56→Asn;Ile57→Gln;Asp80→Tyr;Lys83→Ala;Glu104→Asp;Leu105→Thr;His106→Trp;及び、Lys108→Gly;を含む。]
[0061] 別の実施形態においては、本発明の変異タンパク質は、以下のアミノ酸置換の集合:
(1)Arg26→Thr;Glu27→Gln;Phe28→Met;Glu30→Leu;Met31→Ser;Asn32→Leu;Leu33→Tyr;Glu34→Val;Leu56→Asn;Ile57→Gln;Ser58→Ile;Asp80→Tyr;Lys83→Ala;Glu104→Asp;Leu105→Thr;His106→Trp;、及びLys108→Gly;
(2)Arg26→Thr;Glu27→Gln;Phe28→Asp;Glu30→Leu;Met31→Ser;Asn32→Leu;Leu33→Tyr;Glu34→Val;Leu56→Asn;Ile57→Gln;Ser58→Val;Asp80→Tyr;Lys83→Ala;Glu104→Asp;Leu105→Thr;His106→Trp;、及びLys108→Gly;
(3)Arg26→Thr;Glu27→Gln;Phe28→Asp;Glu30→Leu;Met31→Ser;Asn32→Leu;Leu33→Tyr;Glu34→Val;Leu56→Asn;Ile57→Gln;Ser58→Ile;Asp80→Tyr;Lys83→Ala;Glu104→Asp;Leu105→Thr;His106→Trp;、及びLys108→Gly;
(4)Arg26→Val;Glu27→Gly;Phe28→Asp;Pro29→Leu;Glu30→Gly;Met31→Ser;Asn32→Arg;Leu33→Val;Glu34→Val;Leu56→Asn;Ile57→Gln;Ser58→Ile;Asp80→Tyr;Lys83→Ala;Glu104→Asp;Leu105→Thr;His106→Trp;、及びLys108→Gly;
(5)Arg26→Pro;Glu27→Gly;Phe28→Asp;Pro29→Ile;Glu30→Arg;
Met31→Ser;Asn32→Leu;Leu33→Ile;Glu34→Val;Leu56→Asn;
Ile57→Gln;Ser58→Ile;Asp80→Tyr;Lys83→Ala;Glu104→Asp;
Leu105→Thr;His106→Trp;、及びLys108→Gly;
(6)Arg26→Ser;Phe28→Asp;Pro29→Ala;Glu30→Phe;Met31→Ser;Asn32→Val;Leu33→Thr;Glu34→Val;Leu56→Asn;Ile57→Gln;Ser58→Ile;Asp80→Tyr;Lys83→Ala;Glu104→Asp;Leu105
→Thr;His106→Trp;、及びLys108→Gly;
(7)Arg26→Val;Glu27→Val;Phe28→Asp;Pro29→Trp;Glu30→
Arg;Met31→Ser;Asn32→Gln;Leu33→Val;Glu34→Arg;Leu56
→Asn;Ile57→Gln;Ser58→Ile;Asp80→Tyr;Lys83→Ala;Glu104
→Asp;Leu105→Thr;His106→Trp;、及びLys108→Gly;ならびに、
(8)Arg26→Gly;Glu27→Ser;Phe28→Asp;Pro29→Trp;Met31→
Ser;Asn32→Val;Leu33→Phe;Glu34→Ala;Leu56→Asn;Ile57→Gln;Ser58→Ile;Asp80→Tyr;Lys83→Ala;Glu104→Asp;Leu105→Thr;His106→Trp;、及びLys108→Gly;
のうちの少なくとも1つを含んでもよい。]
[0062] c−Metあるいはそのドメイン又はフラグメントを結合するヒト涙液リポカリンの変異タンパク質は、配列番号1、配列番号4ないし9、配列番号22ないし26、あるいは配列番号32ないし35及び37ないし49のいずれか1つに記載のアミノ酸配列あるいはそのフラグメント又は変異体のうちのいずれか1つを含むか、そのいずれか1つで実質的に構成されるか、あるいはいずれか1つで構成してもよい。一実施形態においては、本発明による変異タンパク質は配列番号1、4、5、6、7、8、9、22ないし26、32ないし35、又は42ないし49に記載のアミノ酸配列あるいはそのフラグメント又は変異体を含むか、そのいずれか1つで実質的に構成されるか、あるいはいずれか1つで構成してもよい。この点においては、本明細書中に開示された総ての変異タンパク質は、N又はC末端のいずれかで、ペンタヒスチジンタグ、ヘキサヒスチジンタグ、又はStreptag(登録商標)といった親和性標識に結合できることは留意すべきである(例えば、配列番号37ないし41参照、ヘキサヒスチジンタグが変異タンパク質に融合されている)。従って、本出願は更に、このようなタグが具備される総ての明確かつ一般的に記載される変異タンパク質を含む。]
[0063] 本発明の変異タンパク質に関連して、本発明中で用いられる用語「フラグメント(fragment)」は、N末端及び/又はC末端で短縮された、すなわち、N末端及び/又はC末端のアミノ酸のうちの少なくとも1つを欠失する全長の成体ヒト涙液リポカリンから得られたタンパク質又はペプチドに関連する。このようなフラグメントは、成体ヒト涙液リポカリンの一次配列である、好適には少なくとも10個の、より好適には20個の、最も好適には30個以上のアミノ酸を含み、成体ヒト涙液リポカリンの免疫測定において通常検出可能である。]
[0064] 本発明で用いられる用語「変異体(variant)」は、例えば置換、欠失、挿入、又は化学修飾による、アミノ酸配列の修飾を含むタンパク質又はペプチドの誘導体に関連する。好適には、このような修飾はタンパク質又はペプチドの官能性を低減しない。このような変異体はタンパク質を含み、1又はそれ以上のアミノ酸は、各々のD型の立体異性体によって、あるいは、例えばオルニチン、ヒドロキシプロリン、シトルリン、ホモセリン、ヒドロキシリジン、ノルバリンといった、天然に存在する20個のアミノ酸以外のアミノ酸によって置換されている。しかしながら、このような置換は保存的であってもよく、すなわち、アミノ酸残基は化学的に同様のアミノ酸残基に置換される。保存的置換の例は、以下の群:
1)アラニン、セリン、及びスレオニン;
2)アスパラギン酸及びグルタミン酸;
3)アスパラギン及びグルタミン;
4)アルギニン及びリジン;
5)イソロイシン、ロイシン、メチオニン、及びバリン;
ならびに、
6)フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン;
の要素間での置換である。]
[0065] この文脈においては、本発明の変異タンパク質は、pH約2.5ないしpH約9.5の大きなpH範囲内、例えばpH約3.0ないしpH約9.2の範囲内のpHで安定であることが見出されてきたことに留意すべきである。]
[0066] 本発明の範囲に更に含まれるのが、上の変異タンパク質であり、その潜在的な免疫原性について変更されてきた。]
[0067] 細胞毒性のT細胞は、クラスIの主要組織適合抗原複合体(MHC)分子と関連して、抗原呈示細胞の細胞表面でペプチド抗原を認識する。MHC分子に結合すべきペプチドの性能はアレル特異的であり、その免疫原性と相関する。所定のタンパク質の免疫原性を低減するために、タンパク質中のどのペプチドが所定のMHC分子に結合する可能性を有するかを予測する性能は、価値が大きい。潜在的なT細胞エピトープを同定する計算機でのスレッディングアプローチを用いたアプローチは、MHCのクラスI分子に対する所定のペプチド配列の結合を予測するために既に述べられている(Altuvia et al.(1995)J.Mol.Biol.249:244−250)。]
[0068] このようなアプローチを更に用いて、本発明の変異タンパク質における潜在的なT細胞エピトープを同定し、免疫原性の予測による特異的な変異タンパク質の選択をその使用目的に依存させてもよい。更には、T細胞エピトープを含むのを予測させるペプチド領域を、更なる突然変異誘発に供して、これらのT細胞エピトープを低減又は除去し、ひいては免疫原性を最小化することが可能であってもよい。遺伝学的に操作された抗体からの両親媒性のエピトープの除去は述べられてきており(Mateo et al.(2000)、Hybridoma19(6):463−471)、本発明の変異タンパク質に適用してもよい。こうして得られた変異タンパク質は、最小限の免疫原性を有することができ、以下に記載のような治療及び診断用途での使用が所望される。]
[0069] いくつかの用途においては、接合形態で本発明の変異タンパク質を用いることは更に有用である。従って、本発明は更に、酵素標識と、呈色標識と、分裂停止剤と、光活性化でき、かつ光線力学的治療で用いるのに好適な標識と、ハプテンと、ジゴキシゲニンと、ビオチンと、化学療法用金属(a chematherapeutic metal,or a chemotherapeutic metal)と、コロイド金とからなる群から選択できる接合相手に接合される、リポカリンの変異タンパク質に関連する。変異タンパク質は更に、有機薬剤の分子に接合してもよい。本明細書中に用いられる用語「有機分子(organic molecule)」は好適には、少なくとも2の炭素原子と、好適には7又は12以下の回転可能な炭素結合とを含み、100ないし2000ダルトン、好適には100ないし1000ダルトンの範囲に分子量を有し、選択的に1又は2の金属原子を含む有機分子を意味する。]
[0070] 一般的には、適切な化学物質又は酵素で本明細書中に記載の涙液リポカリンの変異タンパク質を標識することは可能であり、化学的、物理的、光学的又は酵素学的な反応で検出可能な化合物又はシグナルを直接的又は間接的に産生する。物理的反応及び同時の光学的反応/標識の例は、照射での蛍光の放出である。アルカリホスファターゼ、ホースラディシュペルオキシダーゼ、又はβ−ガラクトシダーゼは、発色反応産物の形成を触媒する酵素標識(及び同時の光標識)の例である。一般的に、抗体に通常用いられる総ての標識は更に(免疫グロブリンのFc部分内の糖部分で排他的に用いられるものを除いて)、本発明の変異タンパク質への接合のために用いてもよい。本発明の変異タンパク質は更に、例えば、所定の細胞、組織又は器官への標的送達のために、あるいは周囲の正常細胞に影響を与えることなく細胞、例えば腫瘍細胞を選択的に標的化するために、このような薬剤の任意の好適な治療用活性剤と接合させてもよい。このような治療用活性剤の例は、放射性核種、毒素、小さな有機分子、及び(細胞表面受容体のアゴニスト/アンタゴニストとして作用するペプチド、あるいは所定の細胞内標的にタンパク質結合部位に対し競合するペプチドといった)治療用ペプチドを含む。好適な毒素の例は限定しないが、百日咳毒素、ジフテリア毒素、リシン、サポリン、緑膿菌外毒素、カリチアマイシン又はその誘導体、タキソイド、マイタンシノイド、ツブリシン、又はドラスタチンアナログを含む。ドラスタチンアナログは、アウリスタチンE、モノメチルアウリスタチンE、アウリスタチンPYE、及びアウリスタチンPHEであってもよい。分裂停止剤の例は限定しないが、シスプラチンと、カルボプラチンと、オキサリプラチンと、5−フルオロウラシルと、タキソテール(ドセタキセル)と、パクリタキセルと、アントラサイクリン(ドキソルビシン)と、メトトレキサートと、ビンブラスチンと、ビンクリスチンと、ビンデシンと、ビノレルビンと、ダカルバジンと、シクロホスファミドと、エトポシドと、アドリアマイシンと、カンプトテシンと、コンブレタスタチンA−4関連化合物と、スルホンアミドと、オキサジアゾリンと、ベンゾ[b]チオフェンと、合成型スピロケタールピランと、モノテトラヒドロフラン化合物と、クラシン及びクラシン誘導体と、メトキシエストラジオール誘導体と、ロイコボリンとを含む。本発明のリポカリンの変異タンパク質は更に、アンチセンス核酸分子、低分子干渉RNA、マイクロRNA、又はリボザイムといった治療用活性核酸で接合させてもよい。このような接合体は当該技術分野で周知の方法によって産生できる。]
[0071] 一実施形態においては、本発明の変異タンパク質は更に、本発明の変異タンパク質を身体内の所望の領域又は区域に送達するために、特異的な身体領域を標的とする標的部分に結合してもよい。このような修飾が所望されうる一実施例は、血液脳関門の通過である。血液脳関門を通過するために、本発明の変異タンパク質はこのバリアを通過する能動輸送を促進する部分に結合できる(Gaillard PJ,et al.,Diphtheria−toxin receptor−targeted brain drug delivery.International Congress Series.2005 1277;185−198、又はGaillard PJ,et al.,Targeted delivery across the blood−brain barrier.Expert Opin Drug Deliv.2005 2(2):299−309参照)。このような部分は例えば、商品名2B−Trans(登録商標)(オランダ国ライデンのto−BBB technologies BV5社)で入手可能である。]
[0072] 上述のように、本発明の変異タンパク質はいくつかの実施形態においては、変異タンパク質の血清半減期を延長する部分に接合されうる(これに関しては、更に、国際特許出願PCT/EP2007/057971、又は国際公開第2006/56464号参照のこと。このような接合ストラテジは、CTLA−4に対する結合親和性を有するヒト好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリンの変異タンパク質について述べられている)。血清半減期を延長する部分は数例のみを挙げると、ポリアルキレングリコール分子、ヒドロキシエチルデンプン、パルミチン酸といった脂肪酸分子(Vajo&Duckworth2000,Pharmacol Rev.52,1−9)、免疫グロブリンのFc部分、免疫グロブリンのCH3ドメイン、免疫グロブリンのCH4ドメイン、アルブミン又はそのフラグメント、アルブミン結合ペプチド、アルブミン結合タンパク質、IgG−Fc部結合タンパク質、あるいはトランスフェリンであってもよい。アルブミン結合タンパク質は、細菌性のアルブミン結合タンパク質、抗体、ドメイン抗体を含む抗体フラグメント(例えば、米国特許第6,696,245号参照)、リポカリンの変異タンパク質、あるいはアルブミンに対し結合活性を有する別のタンパク質又はタンパク質ドメインを含む。従って、本発明のリポカリンの変異タンパク質の半減期を延長するための好適な接合相手は、アルブミン(Osborn,B.L.et al.(2002)Pharmacokinetic and pharmacodynamic studies of a human serum albumin−interferon−alpha fusion protein in cynomolgus monkeys J.Pharmacol.Exp.Ther.303,540−548)、又は、例えば、連鎖球菌性プロテインGのもののような細菌性アルブミン結合ドメインといった、アルブミン結合タンパク質(Konig,T.及びSkerra,A.(1998)Use of an albumin−binding domain for the selective immobilisation of recombinant capture antibody fragments onELISAplates.J.Immunol.Methods218,73−83)を含む。接合相手として用いられうるアルブミン結合ペプチドの別の例は、例えばCys−Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Cysの共通配列を有するものであり、米国特許出願第2003/0069395号又はDennisら(Dennis,M.S.,Zhang,M.,Meng,Y.G.,Kadkhodayan,M.,Kirchhofer,D.,Combs,D.&Damico,L.A.(2002)“Albumin binding as a general strategy for improving the pharmacokinetics of proteins.”J Biol Chem277,35035−35043)に記載のように、Xaa1はAsp、Asn、Ser、Thr、又はTrpであり、Xaa2はAsn、Gln、His、Ile、Leu、又はLysであり、Xaa3はAla、Asp、Phe、Trp、又はTyrであり、Xaa4はAsp、Gly、Leu、Phe、Ser、又はThrである。]
[0073] 他の実施形態においては、アルブミン自体又はアルブミンの生物学的活性のフラグメントは、本発明のリポカリンの変異タンパク質の接合相手として用いられうる。用語「アルブミン(albumin)」は、ヒト血清アルブミン、又はウシ血清アルブミン、又はラットアルブミンといった総ての哺乳類アルブミンを含む。アルブミン又はそのフラグメントは、米国特許第5,728,553号、又は欧州特許出願EP0330451及びEP0361991に記載のように組換えて産生されうる。Novozymes Delta社(英国、ノッティンガム)の組換えヒトアルブミン(Recombumin(登録商標))は、変異タンパク質の半減期を延長するために、リポカリンの変異タンパク質に接合又は融合できる。]
[0074] アルブミン結合タンパク質が抗体フラグメントである場合は、ドメイン抗体であってもよい。ドメイン抗体(dAbs)は生物物理学的な特性にわたる正確な制御を可能にするように操作され、生体内での半減期は、最適な安全性及び産生効率特性を生成するように設計される。ドメイン抗体は例えば、Domantis社(英国ケンブリッジ及び米国マサチューセッツ州)から商業上入手可能である。]
[0075] 本発明の変異タンパク質の血清半減期を延長する部分としてトランスフェリンを使用する場合、変異タンパク質は非グリコシル化トランスフェリンのN又はC末端、あるいはその双方に遺伝学的に融合できる。非グリコシル化トランスフェリンは14ないし17日の半減期を有し、トランスフェリン融合タンパク質は延長された半減期を同様に有する。担体であるトランスフェリンは更に、高いバイオアベイラビリティ、体内分布、及び循環安定性を提供する。この技術はBioRexis(米国ペンシルベニア州のBioRexis Pharmaceutical Corporation社)から商業上入手可能である。タンパク質安定剤/半減期延長相手として用いるための組換えヒトトランスフェリン(DeltaFerrin(登録商標))は更に、Novozymes Delta社(英国ノッティンガム)から商業上入手可能である。]
[0076] 免疫グロブリンのFc部分が本発明の変異タンパク質の血清半減期を延長するために用いられる場合、Syntonix Pharmaceuticals社(米国マサチューセッツ州)から商業上入手可能なSynFusion(登録商標)の技術を用いてもよい。このFc融合技術の使用によって、長時間作用する生物製剤の産生が可能となり、例えば抗体のFc領域に結合される変異タンパク質の2のコピーからなり、薬物動態、溶解性、及び産生効率を改善できる。]
[0077] 本発明の変異タンパク質の半減期を延長するための更に別の選択肢は、本発明の変異タンパク質のN又はC末端に、長く不定形でフレキシブルなグリシンリッチな配列(例えば、約20ないし80個の連続的なグリシン残基を有するポリグリシン)を融合することである。国際公開第2007/038619号に公開されたこのアプローチは更に、例えば、用語「rPEG(組換えPEG)」等である。]
[0078] ポリアルキレングリコールが接合相手として用いられる場合、ポリアルキレングリコールは置換型、非置換型、直鎖型、又は分岐鎖型にできる。ポリアルキレングリコールは更に、活性化したポリアルキレン誘導体にできる。好適な化合物の例はインターフェロンに関連して、国際公開第99/64016号、米国特許第6,177,074号、又は米国特許第6,403,564号に記載のような、あるいは、PEG修飾アスパラギナーゼ、PEG−アデノシンデアミナーゼ(PEG−ADA)、又はPEG−スーパーオキシドジスムターゼといった他のタンパク質について記載されたような(例えば、Fuertgesら(1990)The Clinical Efficacy of Poly(Ethylene Glycol)−Modified Proteins J.Control.Release11,139−148参照)、ポリエチレングリコール(PEG)分子である。このような高分子、好適にはポリエチレングリコールの分子量は、約300ないし約70.000ダルトンの範囲にでき、例えば約10.000、約20.000、約30.000、又は約40.000ダルトンの分子量を有するポリエチレングリコールを含む。更に、例えば米国特許第6,500,930号、又は6,620,413号に記載されるように、デンプン又はヒドロキシエチルデンプン(HES)といった炭水化物の低重合体及び高分子は血清半減期延長のために本発明の変異タンパク質に接合できる。]
[0079] 上述の部分のうちの1つが本発明のヒト涙液リポカリンの変異タンパク質に接合される場合、アミノ酸側鎖に対する接合が有利になりうる。好適なアミノ酸側鎖はヒト涙液リポカリンのアミノ酸配列中に自然発生させてもよく、あるいは突然変異誘発によって導入してもよい。好適な結合部位が突然変異誘発を介して導入される場合、一の可能性はシステイン残基による適切な位置でのアミノ酸置換である。一実施形態においては、このような突然変異は、Thr40→Cys、Glu73→Cys、Arg90→Cys、Asp95→Cys、Lys121→Cys、Asn123→Cys、又はGlu131→Cysの置換のうちの少なくとも1つを含む。これらの位置のいずれかで新しく産生されたシステイン残基は、以下のようにPEG又はその活性化された誘導体といった変異タンパク質の血清半減期を延長する部分に接合するように用いることができる。]
[0080] 別の実施形態においては、上述の部分のうちの1つを本発明の変異タンパク質に接合すべく好適なアミノ酸側鎖を提供するために、人工アミノ酸は突然変異誘発によって導入してもよい。一般的に、このような人工アミノ酸はより反応性に、ひいては所望の部分への接合を促進するように設計される。人工tRNAを介して導入できるこのような人工アミノ酸の一例はパラアセチルフェニルアラニンである。]
[0081] 本明細書中で開示される変異タンパク質のいくつかの用途について、融合タンパク質の形態で用いることは有利になりうる。いくつかの実施形態においては、本発明のヒト涙液リポカリンの変異タンパク質は、そのN末端又はC末端で、タンパク質、タンパク質ドメイン、又はシグナル配列及び/又は親和性標識といったペプチドに融合される。]
[0082] 薬学的な用途のために、本発明の変異タンパク質は、変異タンパク質の生体内での血清半減期を延長する融合相手に融合されうる(国際公開第2006/56464号を再度参照。好適な融合相手は、CTLA−4に対し結合親和性を有するヒト好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリンの変異タンパク質について記載されている)。上述の接合と同様に、融合相手は数例のみを挙げると、免疫グロブリンのFc部分、免疫グロブリンのCH3ドメイン、免疫グロブリンのCH4ドメイン、アルブミン、アルブミン結合ペプチド、又はアルブミン結合タンパク質であってもよい。また、アルブミン結合タンパク質は細菌性のアルブミン結合タンパク質、又はアルブミンに対し結合活性を有するリポカリンの変異タンパク質であってもよい。従って、本発明のリポカリンの変異タンパク質の半減期を延長するための好適な融合相手はアルブミン(Osborn,B.L.et al.(2002)上記を参照、J.Pharmacol.Exp.Ther.303,540−548)、例えば、連鎖球菌性プロテインGのもののような細菌性アルブミン結合ドメインといった、アルブミン結合タンパク質(Konig,T.及びSkerra,A.(1998)上記を参照、J.Immunol.Methods218,73−83)を含む。Cys−Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Cysの共通配列を有し、Xaa1はAsp、Asn、Ser、Thr、又はTrpであり、Xaa2はAsn、Gln、His、Ile、Leu、又はLysであり、Xaa3はAla、Asp、Phe、Trp、又はTyrであり、Xaa4はAsp、Gly、Leu、Phe、Ser、又はThrである、Dennis(2002)ら、上記を参照、又は米国特許出願第2003/0069395号に記載のアルブミン結合ペプチドは更に、融合相手として用いられうる。本発明のリポカリンの変異タンパク質の融合相手としてアルブミン自体、又はアルブミンの生物学的な活性フラグメントを用いることは更に可能である。用語「アルブミン」はヒト血清アルブミン、又はウシ血清アルブミン、又はラット血清アルブミンといった総ての哺乳類アルブミンを含む。アルブミン又はそのフラグメントの組換え産生は当該技術分野の当業者に公知であり、例えば米国特許第5,728,553号、欧州特許出願EP0330451又はEP0361991に記載されている。]
[0083] 融合相手は、他の分子用の酵素活性又は結合親和性といった新しい特性を、本発明のリポカリンの変異タンパク質に与えてもよい。好適な融合タンパク質の例は、アルカリホスファターゼ、ホースラディシュペルオキシダーゼ、グルタチオンSトランスフェラーゼ、プロテインGのアルブミン結合ドメイン、プロテイン、抗体フラグメント、低重合体化ドメイン、同一又は異なる結合特異性(「デュオカリン」の形成を得る。Schlehuber,S.及びSkerra,A.(2001),Duocalins,engineered ligand−binding proteins with dual specificity derived from the lipocalin fold.Biol.Chem.382,1335−1342参照。)のリポカリンの変異タンパク質、又は毒素である。]
[0084] 特に、得られた融合タンパク質の双方の「要素(component)」が互いに所定の治療標的に作用するような、別個の酵素活性部位を有する本発明のリポカリンの変異タンパク質を融合することは可能である。リポカリンの変異タンパク質の結合ドメインは病気を引き起こす標的に付着し、酵素ドメインは標的の生物学的機能を破壊するのを可能にする。]
[0085] Strep−tag(登録商標)又はStrep−tag(登録商標)II(Schmidt,T.G.M.ら(1996)J.Mol.Biol.255,753−766)、myc−tag、FLAG−tag、His6−tag、又はHA−tagといった親和性標識、あるいはグルタチオンSトランスフェラーゼといったタンパク質は更に簡単な検出を可能にし、及び/又は組換えタンパク質の精製は好適な融合相手の更なる例である。最後に、緑色蛍光タンパク質(GFP)又は黄色蛍光タンパク質(YFP)といった、発色又は蛍光特性を有するタンパク質は、同様に本発明のリポカリンの変異タンパク質に対する好適な融合相手である。]
[0086] 本明細書中で用いられる用語「融合タンパク質(fusion protein)」は、シグナル配列を有する、本発明によるリポカリンの変異タンパク質を更に含む。ポリペプチドのN末端でのシグナル配列は、このポリペプチドを、特定の細胞内区画、例えば大腸菌のペリプラズム又は真核細胞の小胞体に向かわせる。大多数のシグナル配列は当該技術分野において周知である。ポリペプチドの大腸菌のペリプラズム内への分泌のための好適なシグナル配列は、OmpAシグナル配列である。]
[0087] 本発明は更に、本明細書中に記載のように、変異タンパク質用にコード化したヌクレオチド配列を含む核酸分子(DNA及びRNA)に関する。遺伝コードの縮重は同一のアミノ酸を特定する他のコドンによって、特定のコドンの置換を可能にするため、本発明は、本発明の変異タンパク質をコード化する特異的な核酸分子に限定されず、機能的な変異タンパク質をコード化するヌクレオチド配列を含む総ての核酸分子を含む。]
[0088] 従って、本発明は更に、天然型の成体ヒト涙液リポカリンの直鎖状のポリペプチド配列の、アミノ酸配列位置26ないし34、56ないし58、80、83、104ないし106、及び108のいずれかの少なくとも1のコドンに突然変異を有する、本発明により変異タンパク質をコード化する核酸配列を含み、成体ヒト涙液リポカリンの直鎖状のポリペプチド配列の、配列位置61及び153でのシステイン残基のうちの少なくとも1つをコード化するコドンは、その他のアミノ酸残基をコード化するために変異導入されている。]
[0089] 本明細書中に開示される発明は更に、涙液リポカリンの変異タンパク質をコード化する核酸分子を含み、実験的な突然変異誘発の確定配列位置の外側に更なる突然変異を含む。このような突然変異は、例えば変異タンパク質の折り畳み効率、血清安定性、熱安定性、又はリガンド結合親和性の改善に寄与する場合、多くの場合許容されるか、あるいは更に有利にもなり得る。]
[0090] 本出願に開示された核酸分子は、この核酸分子の発現を可能にするように、制御配列(又は複数の制御配列)に「動作可能に結合(operably linked)」できる。]
[0091] DNAといった核酸分子は、転写及び/又は翻訳制御に関する情報を有する配列要素を含む場合、「核酸分子を発現可能である」と見なされるか、あるいは「ヌクレオチド配列の発現を許容」できると見なされ、このような配列はポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列に「動作可能に結合」される。動作可能な結合は、制御配列要素及び発現すべき配列が遺伝子発現を可能にする方法で結合される結合部のことである。遺伝子発現に必要な制御領域の詳細な性質は種の間で変りうるが、一般的にはこれらの領域は、原核生物においてはプロモータ自体、すなわち、転写の開始に関するDNA要素、ならびにRNAに転写されるときに翻訳の開始を伝えるDNA要素の双方を有するプロモータを含む。このようなプロモータ領域は通常、原核生物における−35/−10ボックス及びシャインダルガノ配列、あるいは真核生物におけるTATAボックス、CAAT配列、及び5’キャッピング配列といった、転写及び翻訳に関連する5’非コード配列を含む。これらの領域は更に、エンハンサ又はリプレッサ配列、ならびに宿主細胞の特異的な区画を天然型ポリペプチドが標的にするための翻訳シグナル及びリーダ配列を含みうる。]
[0092] 更に、3’非コード配列は転写終結又はポリアデニル化に関する制御配列を含んでもよい。しかしながら、これらの終結配列が特定の宿主細胞において十分に機能的ではない場合、その細胞内で機能的な信号と置換されうる。]
[0093] 従って、本発明の核酸分子は制御配列、好適にはプロモータ配列を含むことができる。別の好適な実施形態においては、本発明の核酸分子はプロモータ配列と、転写終結配列とを含む。好適な原核生物のプロモータは例えば、tetプロモータ、lacUV5プロモータ、又はT7プロモータである。真核細胞の発現に有用なプロモータの例は、SV40プロモータ又はCMVプロモータである。]
[0094] 本発明の核酸分子は更に、プラスミド、ファージミド、ファージ、バキュロウイルス、コスミド、又は人工染色体といった、ベクタの一部又は任意のその他のクローニング媒体にできる。]
[0095] 一実施形態において、核酸分子はファスミドに含まれる。ファスミドベクタは、M13又はf1といった溶原性ファージの遺伝子間領域をコード化するベクタか、あるいは対象のcDNAに融合されるその機能的部分を意味する。このようなファージミドベクタ、及び好適なヘルパーファージ(例えば、M13K07、VCS−M13、又はR408)での細菌性宿主細胞の重感染後に、無傷のファージ粒子が産生され、これによってファージ表面に表示されたその対応するポリペプチドへの、コード化した異種cDNAの物理的結合を可能にする(例えば、Kay,B.K.et al.(1996)Phage Display of Peptides and Proteins − A Laboratory Manual,1st Ed.,Academic Press,New York NY;Lowman,H.B.(1997)Annu.Rev.Biophys,Biomol.Struct.26,401−424;又はRodi,D.J., 及びMakowski,L.(1999)Curr.Opin.Biotechnol.10,87−93に概説)。]
[0096] このようなクローニング媒体は、上述の制御配列、及び本発明のリポカリンの変異タンパク質をコード化する核酸配列とは別に、発現用に用いられる宿主細胞と種から得られる互換性のある複製及び制御配列と、形質転換又は形質移入された細胞上に選択可能な表現型を与える選択マーカとを含みうる。多数の好適なクローニングベクタは当該技術分野で周知であり、商業上利用可能である。]
[0097] 本発明のリポカリンの変異タンパク質をコード化するDNA分子、特にこのようなリポカリンの変異タンパク質を含むクローニングベクタは、遺伝子を発現可能な宿主細胞に形質転換されうる。形質転換は標準的な技術を用いて行われうる(Sambrook,J.et al.(1989)、上記を参照)。従って、本発明は本明細書中に記載のように、核酸分子を含む宿主細胞に関する。]
[0098] 形質転換された宿主細胞は本発明の融合タンパク質をコード化するヌクレオチド配列の発現に好適な条件下で培養される。好適な宿主細胞は、大腸菌(E.coli)又は枯草菌といった原核細胞か、あるいはサッカロマイセスセレビシエ、ピキアパストリス、SF9若しくはHigh5昆虫細胞、哺乳類の不死化細胞株(例えば、HeLa細胞若しくはCHO細胞)、又は哺乳類の初代細胞といった真核細胞にできる。]
[0099] 本発明は更に、本発明の変異タンパク質の産生方法に関し、変異タンパク質、変異タンパク質のフラグメント、又は変異タンパク質と別のポリペプチドとの融合タンパク質は、遺伝子工学的方法によって、変異タンパク質をコードする核酸から産生される。本方法は生体内で行うことができ、変異タンパク質は例えば細菌性又は真核の宿主生物で産生し、次いでこの宿主生物又はその培養物から分離できる。生体外、例えば生体外の翻訳系の使用によって、タンパク質を産生することは更に可能である。]
[0100] 生体内で変異タンパク質を産生する場合、本発明の変異タンパク質をコード化する核酸は、(上に既に概説したように)組換えDNA技術によって、好適な細菌性又は真核の宿主生物に導入される。この目的のために、確立した標準的な方法を用いて(Sambrook,J.et al.(1989)、上記を参照)、宿主細胞は、本発明の変異タンパク質をコード化する核酸分子を含むクローニングベクタで最初に形質転換される。宿主細胞は次いで、複数の条件下で培養され、異種DNAの発現、ひいては対応するポリペプチドの合成を可能にする。その後、ポリペプチドは細胞から、又は培養培地のいずれかから回収される。]
[0101] いくつかの本発明の涙液リポカリンの変異タンパク質においては、Cys61とCys153との間に天然に存在するジスルフィド結合が除去される。従って、このような変異タンパク質(又は分子内ジスルフィド結合を含まないその他の涙液リポカリンの変異タンパク質)は、還元した酸化還元環境を有する細胞区画中、例えばグラム陰性菌の細胞質中に産生できる。本発明のリポカリンの変異タンパク質が分子内ジスルフィド結合を含む場合、適切なシグナル配列を用いて、酸化した酸化還元環境を有する細胞区画に新生ポリペプチドを向けることが好ましい。このような酸化環境は、グラム陽性菌の細胞外環境において、あるいは真核細胞の小胞体の内腔において、大腸菌といったグラム陰性菌のペリプラズムによって提供してもよく、通常、構造的なジスルフィド結合の形成を支持する。しかしながら、宿主細胞、好適には大腸菌の細胞質ゾルにおいて本発明の変異タンパク質を産生することは更に可能である。この場合においては、ポリペプチドは溶解可能及び折り畳まれた状態で直接的に得られるか、あるいは封入体の形態で回収して、その後生体外で復元するかのいずれかにできる。更なる選択肢は酸化した細胞内環境を有する特異的な宿主株の使用であり、このように細胞質ゾル中のジスルフィド結合の形成を可能にする(Venturi M,Seifert C,Hunte C.(2002)“High level production of functional antibodyFabfragments in an oxidizing bacterial cytoplasm.”J.Mol.Biol.315,1−8)。]
[0102] しかしながら、本発明の変異タンパク質は、遺伝子工学の使用のみによって産生又は生成されるとは限らない。逆に、リポカリンの変異タンパク質は更に、Merrifieldの固相ポリペプチド合成といった化学合成によって、あるいは生体外での転写及び翻訳によって得ることができる。例えば、有望な突然変異は分子モデリングを用いて同定され、その後、生体外で所望の(設計された)ポリペプチドを合成し、所定の標的に対する結合活性を検討することが可能である。タンパク質の固相及び/又は溶液相合成のための方法は当該技術分野に公知である(例えば、Lloyd−Williams,P.et al.(1997)Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins.CRCPress,Boca Raton;Fields,G.B.及びColowick,S.P.(1997)Solid−Phase Peptide Synthesis.Academic Press,San Diego;又はBruckdorfer,T.et al.(2004)Curr.Pharm.Biotechnol.5,29−43に概説)。]
[0103] 別の実施形態においては、本発明の変異タンパク質は、当該技術分野の当業者に周知の確立した方法を用いて、生体外での転写/翻訳によって産生してもよい。]
[0104] 本発明は更に、少なくとも1の本発明のヒト涙液リポカリンの変異タンパク質あるいはその融合タンパク質又は接合体と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物に関する。]
[0105] 本発明によるリポカリンの変異タンパク質は、タンパク薬剤で治療上有効である任意の非経口的又は非経口的ではない(腸内)経路を介して投与できる。非経口的な適用方法は例えば、注射液、輸液、又はチンキ剤の形態といった皮内、皮下、筋肉内、気管内、鼻腔内、硝子体内、又は静脈内の注射及び注入技術と、煙霧混合物、噴霧、又は粉末の形態でといった煙霧導入及び吸入とを含む。すなわち、煙霧の吸入(鼻腔内投与で用いることができる)又は気管内導入のいずれかを介した肺内薬剤送達についての概要は、例えば:J.S.Pattonら、The lungs as a portal of entry for systemic drug delivery.Proc.Amer.Thoracic Soc.2004 Vol.1、ページ338−344;によって提供される。非経口ではない送達モードは、例えば経口的に、丸剤、錠剤、カプセル剤、溶剤、又は懸濁剤といった形態、あるいは直腸的に坐剤といった形態である。本発明の変異タンパク質は、従来の非毒性で薬学的に許容可能な、所望されるような賦形剤又は担体、添加剤、及び媒体を含む剤形で全身的又は局所的に投与できる。]
[0106] 本発明の一実施形態においては、医薬品は哺乳類、特にヒトに非経口的に投与される。対応する投与方法は限定しないが、例えば、注射液、輸液、又はチンキ剤の形態といった皮内、皮下、筋肉内、気管内、又は静脈内の注射及び注入技術と、煙霧混合物、噴霧、又は粉末の形態といった煙霧導入及び吸入とを含む。静脈内及び皮下の注入及び/又は注射の組合せは、比較的短い血清半減期を有する化合物の場合に最も好都合になりうる。医薬組成物は水溶液、水中油型乳剤、又は油中水型乳剤であってもよい。]
[0107] この関連で、Meidan VM及びMichniak BB(2004)Am.J.Ther.11(4):312−316;に記載の、例えばイオン導入、超音波導入、又はマイクロニードル式の経皮送達技術は更に、本明細書中に記載の変異タンパク質の経皮送達に用いられうることは留意すべきである。非経口ではない送達モードは例えば経口的に、丸剤、錠剤、カプセル剤、溶剤、又は懸濁剤といった形態の経口投与、あるいは坐剤といった形態の直腸投与である。本発明の変異タンパク質は、従来の非毒性で薬学的に許容可能な、種々の賦形剤又は担体、添加剤、及び媒体を含む剤形で全身的又は局所的に投与できる。]
[0108] 適用される変異タンパク質の用量は、所望の予防効果又は治療反応を得るために、広範な範囲で変えてもよい。例えば、選択したリガンド用の化合物の親和性と、生体内での変異タンパク質とリガンドとの間の複合体の半減期とに依存する。更に、最適な用量は変異タンパク質又はその融合タンパク質若しくはその接合体の体内分布と、投与モードと、治療中の疾患/障害の重症度と、患者の医学的状態とに依存する。例えば、局所塗布用に軟膏で用いられる場合、高濃度の涙液リポカリンの変異タンパク質が用いられうる。しかしながら所望される場合、変異タンパク質は更に、例えば、PolyActive(登録商標)又はOctoDEX(登録商標)(Bos et al.,Business Briefing:Pharmatech2003:1−6参照)といった、リポソーム分散液又はヒドロゲルを基剤とした高分子ミクロスフェアなどの徐放性製剤で提供してもよい。入手可能な他の徐放性製剤は例えば、PLGAを基剤とした高分子(PR pharmaceuticals社)、PLA−PEGを基剤としたヒドロゲル(Medincell社)、及びPEAを基剤とした高分子(Medivas社)である。]
[0109] 従って、本発明の変異タンパク質は、薬学的に許容可能な成分ならびに確立された調整方法を用いた組成物に調剤できる(Gennaro,A.L.及びGennaro,A.R.(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Ed.,Lippincott Williams & Wilkins,Philadelphia,PA)。医薬組成物を調製するために、薬学的に不活性な無機又は有機賦形剤が用いられうる。例えば、丸剤、粉末、ゼラチンカプセル剤、又は坐剤を調製するために、例えばラクトース、滑石、ステアリン酸及びその塩、脂肪、ろう、固体又は液体ポリオール、天然及び硬化油は用いることができる。使用前に溶剤又は煙霧混合物に再構成するための溶剤、懸濁剤、乳剤、煙霧混合物、又は粉末の産生に好適な賦形剤は、水、アルコール、グリセロール、及びその好適な混合物、ならびに植物油を含む。]
[0110] 医薬組成物は更に、例えば充填剤、結合剤、湿潤剤、流動促進剤、安定剤、保存剤、乳化剤といった添加剤と、更なる溶剤若しくは可溶化剤、又は畜性効果を得るための薬剤とを含んでもよい。後者は、リポソーム及びマイクロカプセルといった緩効系若しくは徐放系又は標的送達系に取り込まれてもよいものである。]
[0111] 製剤は細菌保持性フィルタを通した濾過を含む多数の手段によって、あるいは、使用の直前に滅菌水又は他の滅菌手段で溶解又は分散できる無菌の固体組成物の形態で、滅菌剤を組み込むことによって滅菌できる。]
[0112] 本発明の別の態様は、それを必要とする対象の疾患又は障害を治療する方法に関する。この疾患はc−Met受容体のチロシンキナーゼの結合/相互作用を含んでも含まなくともよい。疾患はHGF/c−Met経路が関連する発達中の疾患であってもよい。このような疾患又は障害は細胞増殖性障害であってもよい。細胞増殖性疾患の例が癌である。治療すべき癌の例は限定しないが、例えば肝臓癌、結腸癌(例えば原発性結腸癌、例として、Clin Cancer Res.2003,9(4),ページ1480−1488について参照)、結腸直腸癌(Zengら,Clin.Exp.Metastasis,200004,21(5),ページ409−417参照)、肝細胞癌、乳頭型腎癌、頭頸部扁平上皮癌(HNSC)、頭頸部扁平上皮癌のリンパ節転移(例えば、Schieringら,PNAS,Vol.100,No.22,ページ12654−12559,2003;あるいはTrusolino & Comoglio(2002),Nat.Rev.Cancer,289−300;又はMaulikら(2002)Cytokine Growth Faktor Rev.13,41−59;の概説参照)。このような治療目的のために、HGF/c−Met経路と拮抗する涙液リポカリンの変異タンパク質、及び/又は涙液リポカリンの変異タンパク質の毒素融合物又は接合体、あるいは上述したような分裂停止剤を有する涙液リポカリンの変異タンパク質の接合体は用いられうる。]
[0113] このような治療を必要とする対象はいくつかの例示のみを挙げると、ヒト、イヌ、マウス、ラット、豚、カニクイザルのようなサルであってもよい。]
[0114] 上の開示から明らかなように、本発明の変異タンパク質、あるいはその融合タンパク質又は接合体は、多くの用途に用いられうる。一般的に、このような変異タンパク質は、Fc部分の糖鎖付加に特異的に依拠するものを除いて、抗体が用いられる総ての用途で用いられうる。]
[0115] 従って本発明の別の態様においては、本発明のヒト涙液リポカリンの変異タンパク質は、生体外での所定のリガンド、すなわちc−Met受容体又はそのドメイン又はフラグメントの検出のために用いられうる。このような使用は、好適な条件下で所定のリガンドを有するとされるサンプルと変異タンパク質を接触させて、これによって、変異タンパク質と所定のリガンドとの間の複合体の形成を可能にして、好適なシグナルによって複合体化された変異タンパク質を検出するステップを具えてもよい。]
[0116] 検出可能なシグナルは、上に説明されるような標識によって、あるいは結合、すなわち複合体形成そのものによる物理的特性の変化によって生じうる。一例は表面プラズモン共鳴であり、その値は、一方が金箔といった表面上に固定される結合相手の結合時に変更される。]
[0117] 本明細書中に開示されるヒト涙液リポカリンの変異タンパク質は更に、ヒト涙液リポカリンの所定のリガンドの生体外での分離のために用いてもよい。このような使用は、好適な条件下で前記リガンドを含むとされるサンプルと変異タンパク質を接触させ、これによって、変異タンパク質と所定のリガンドとの間で複合体の形成を可能にし、サンプルから変異タンパク質/リガンドの複合体を分離するステップを具えてもよい。]
[0118] 所定のリガンドの検出ならびに所定のリガンドの分離のための変異タンパク質の使用の双方において、変異タンパク質及び/又は標的は好適な固相に固定化してもよい。]
[0119] ヒト涙液本発明のリポカリンの変異タンパク質は更に、事前選択された部位を化合物が標的とするように用いてもよい。このような一実施形態においては、ヒト涙液リポカリンの変異タンパク質は、生物又は組織中の事前選択された部位を薬学的に能動的な化合物が標的にするのに用いられ、
a)変異タンパク質を前記化合物と接合するステップと、
b)変異タンパク質/化合物の複合体を事前選択された部位に送達するステップと、
を具える。]
[0120] 薬学的に能動的な化合物は、毒素、分裂停止剤、又はc−Metアンタゴニストからなる群から選択してもよい。c−Metアンタゴニストの例は、モノクローナル抗体(一般的にはc−Metの細胞外ドメインを結合する)か、あるいは細胞内ドメイン(特に、チロシンキナーゼドメイン)を標的にする阻害剤を含む。低分子阻害剤の例は限定しないが、国際公開第2004/031184号に記載のような1,3,5,トリアジン−2,4−ジアミン誘導体と、2−(2−,6−ジクロロフェニル−イミダゾール誘導体と、窒素含有型で二環式の誘導体と、5−ベンジルスルホニル及びスルホンアミド置換型のピロールインドリン(pyrrole indoline:例えば、Sugenによって開発され、Christenson J.G.AACR,Abst 4963及び6200,2003;又はSattler Mら,AACR,Abst 1005,2003;によって記載された化合物PHA−665752)とを含む]
[0121] このような目的のために、変異タンパク質は複合体形成を可能にするようにc−Met受容体のチロシンキナーゼ又はドメインと接触する。次いで、変異タンパク質と、対象の化合物とを含む複合体は事前選択された部位に送達される。この使用は限定しないが、薬剤で治療されることとなる、感染した身体部分、組織又は器官といった、生物における事前選択された部位に(選択的に)薬剤を送達するのに特に好適である。変異タンパク質と対象の化合物との間での複合体の形成の他に、変異タンパク質は更に所定の化合物と反応させて、変異タンパク質と化合物との接合体を提供できる。上の複合体と同様に、このような接合体は化合物を事前選択された標的部位に送達するのに好適であってもよい。変異タンパク質と化合物とのこのような複合体は更に、変異タンパク質と化合物とを相互に共有結合するリンカを含んでもよい。選択的に、このようなリンカは血流中で安定であるが、細胞内環境においては切断可能である。]
[0122] 本明細書中で開示される変異タンパク質及びその誘導体は従って、抗体又はそのフラグメントと同様、多くの分野で用いられうる。担体に結合させる使用に加えて、所定の変異タンパク質の標的、あるいはこの標的の接合体又は融合タンパク質を固定化又は分離するのが可能であるため、変異タンパク質は酵素、抗体、放射性物質、あるいは生化学的活性又は規定される結合特性を有するその他の群で標識されるように用いられうる。そのようにすることによって、各々の標的、あるいはその接合体又は融合タンパク質は検出又は接触できる。例えば、本発明の変異タンパク質は確立した分析方法(例えば、ELISA又はWestern Blot)によって、あるいは顕微鏡又は免疫センサによって、化学的構造を検出するのに役立つ。ここで検出シグナルは、好適な変異タンパク質、接合体、又は融合タンパク質の使用によって直接的に、あるいは抗体を介して結合された変異タンパク質の免疫化学的検出によって間接的に、のいずれかで産生できる。]
[0123] 本発明の変異タンパク質について可能な多数の用途が更に医学に存在する。生体外での診断及び薬剤送達における使用に加えて、本発明の変異ポリペプチドは、例えば組織特異型又は腫瘍特異型の細胞表面分子を結合して産生されうる。]
図面の簡単な説明

[0124] 本発明は以下の限定されない実施例及び添付の図面によって更に例示される。]
[0125] 図1は、ファスミドベクタpTLPC59のマップを示し、図1aはベクタの制御配列の概略的な表示を示し、図1bは未処理のライブラリを発現するために用いられる、涙液リポカリンの変異タンパク質の遺伝子構造の概略的な拡張を示す。
図2は、発現ベクタpTLPC10のマップを示す。
図3は、野生型涙液リポカリンのポリペプチド配列と一直線になる、涙液リポカリンの変異タンパク質S225.4−K24(配列番号1)のポリペプチド配列を示す。
図4は、ELISAを介した親和性スクリーニングの方法と、c−Metに対し親和性を有する変異タンパク質について得られた結果とを示す。
図5は、涙液リポカリンの変異タンパク質S225.4−K24(配列番号1)、及びS244.2−H08、S244.2−L01、S244.4−N05、S244.5−J05、S244.8−I20、S244.8−I07(配列番号4ないし9)のポリペプチド配列の配列比較を示す。
図6は、本発明のヒト涙液リポカリンの変異タンパク質(S244.2−H08;配列番号4)のc−Metへの結合のBIAcore測定値を示す。
図7は、HT−29細胞の細胞内状況におけるc−Met結合型の変異タンパク質S244.2−H08、S244.2−L01、S244.4−N05、S244.5−J05、S244.8−I20、S244.8−I07(配列番号4ないし9)の親和性評価の結果を示す。
図8は、ELISAを介した親和性スクリーニングの方法と、c−Metに対し親和性を有する変異タンパク質について得られた結果とを示す。
図9は、涙液リポカリンの変異タンパク質S225.4−K24(配列番号1)、S244.2−H08(配列番号4)、S261.1−L12、S261.1−J01、及びS261.1−L17(配列番号32ないし34)のポリペプチド配列の配列比較を示す。
図10は、発現ベクタpTLPC47のマップを示す。
図11は、HT−29細胞の細胞内状況におけるc−Met結合型の変異タンパク質S261.1−L12、S261.1−J01、及びS261.1−L17(配列番号32ないし34)の親和性評価の結果を示す。
図12は、本発明のヒト涙液リポカリンの変異タンパク質(S261.1−L17;配列番号34)のc−Metへの結合の競合ELISA測定値を示す。
図13は、HT−29細胞の細胞内状況におけるc−Met結合型の変異タンパク質S261.1−L12_C123(配列番号35)の親和性評価の結果を示す。
図14は、涙液リポカリンの変異タンパク質S261.1−J01(配列番号33)のpH安定性試験の結果を示す。
図15は、c−Metへの結合に対するKD値とともに(更なる単一の突然変異が導入された)更なる本発明の涙液リポカリンの変異タンパク質のポリペプチド配列の配列比較を示す。
図16は、HT−29細胞の細胞内状況におけるc−Met結合型の変異タンパク質S318.1−C10、S318.1−L13、S318.1−A16、S318.2−I24、及びS318.1−O12(配列番号42、44、45、46、及び49)の親和性評価の結果を示す。] 図1 図10 図11 図12 図13 図14 図15 図16 図1a 図1b
[0126] [実施例]
他に示されない限り、確立された組換え遺伝子技術の方法は、例えば、Sambrookら(上記を参照)に記載のように用いられた。]
[0127] [実施例1:1.6×1010の別個のTlc変異タンパク質を有するライブラリの産生]
高い複雑性を有する涙液リポカリン(Tlc)のランダムライブラリは本質的にはPCT出願PCT/EP2007/057971に記載のように調製され、その開示は、ファージディスプレイpTLPC59用のライブラリ遺伝子コントラクト(図1a及び1b)がtetプロモータの代わりにlacプロモータの制御下に置かれ、VCSM13ファージの全長遺伝子IIIに遺伝学的に融合されることを除いて、全体として本明細書中に引用によって組み込まれる。] 図1a
[0128] 多価性ファージディスプレイフォーマットにおける涙液リポカリンの変異タンパク質のファージ産生は、文献(M.Kirschら/Journal of Immunological Methods301(2005)173−185)に記載のような標準的な方法で、大腸菌感染に対しM13K07Hyperphage(Progen社)を用いて実現された。]
[0129] [c−Met受容体に対し親和性を有するTlc変異タンパク質のファージミドの提示又及び選択]
ファージミドの提示及び選択は以下の修飾で、国際公開第2005/019256号の実施例3に記載のように実質的に、実施例1で得られたファージミドを用いて行われた:標的タンパク質(c−Met受容体−Fc、R&D systems社)は200nMの濃度で用いられ、プロテインGビーズ(Dynal社)を用いた、ファージと標的との複合体の後の捕捉とともに、Fc融合タンパク質としてライブラリに提示された。天然リガンドHGFに対し非拮抗に作用する結合剤を選択するために、更なる洗浄ステップは、c−Met結合型ライブラリのファージが塩基性条件下で溶出される前に、200nMの可溶性のHGF(R&D systems社)を用いて導入された。4回の選択が行われた。]
[0130] [実施例3:高スループットELISAスクリーニングを用いたc−Met受容体特異的な変異タンパク質の同定]
実施例2により選択された変異タンパク質のスクリーニングは、国際公開第2006/56464号の実施例3に記載のように実質的に行われた。修飾プロトコルは以下に述べられる:発現ベクタはpTLPC10であった(図2)。用いられた標的タンパク質は1μg/mlのc−Met受容体−Fc(R&D Systems社)であり、3%の乳状液がヒト血清アルブミンの代わりに関連づけられないコントロールの標的として用いられた。] 図2
[0131] 実施例2に記載されるように選択される2880のクローンの選択は、ライブラリからの変異タンパク質の完全な分離が生じたことを示す342のプライマリヒットの同定を導いた。このアプローチを用いて、クローンS225.4−K24(配列番号1)が同定された。S225.4−K24の配列は更に図3に示される。] 図3
[0132] [実施例4:エラープローンPCRを用いた変異タンパク質S225.4−K24の親和性成熟]
変異タンパク質S225.4−K24(配列番号1)に基づく変異体のライブラリの産生は、平均して構造遺伝子につき5の置換を有するライブラリに生じる、オリゴヌクレオチドTL50 bio:TATCTGAAGGCCATGACGGTGGAC(配列番号2)とTL51 bio:TGCCCACGAGCCACACCCCTGGGA(配列番号3)とを有する国際公開第2006/56464号の実施例5に記載のように実質的に実行される。]
[0133] ファージミドの選択は実施例2に記載のように行われるが、限定された標的濃度(2nM、0.5nM、及び0.1nM)のc−Met受容体−Fcを用いて行い、ポリスチロールプレートに固定化された抗ヒトIgG−Fcに特異的なmAbを介して、標的及びファージミドの複合体を捕捉する。同一条件下であるが、結合した標的の限定(1nM)及び短いインキュベーション時間(5分)で、あるいはpH3、60℃で15分間の、又はpH10、RTで30分間のファージミドのインキュベーションと組合わせた標的の限定(5nM、0.5nM、及び0.1nM)での更なる選択が行われた。4回の選択が行われた。]
[0134] [実施例5:高スループットELISAスクリーニングを用いたc−Met受容体結合型の変異タンパク質の親和性スクリーニング]
スクリーニングは、2.5μg/ml又は0.6μg/mlの濃度のc−Met受容体−Fc(R&D Systems社)が用いられる修飾で、実施例3に記載のように行った。全部で2880のクローンがスクリーニングされ、1510のヒットを生じさせ、ライブラリからの成熟した変異タンパク質の完全な濃縮が生じていることを示した。更に、代替的なスクリーニング設定においては、モノクローナル抗T7抗体は、ポリスチロールプレート上にコーディングされ、発現された変異タンパク質は限定された濃度のc−Met受容体−Fc(60nM、15nM、及び2.5nM)でインキュベーション前に、T7タグを介して捕捉された。c−Met受容体−Fcの結合は、ヒトIgG−Fcドメインに対するHRP接合型のポリクローナル抗体を用いて検出された。]
[0135] このようなスクリーニングの結果は図4に示される。実施例4及び5に記載されるように選択される大多数の変異タンパク質は、親和性成熟のための基剤として作用する変異タンパク質S225.4−K24(配列番号1)と比較されるように、c−Met受容体に対する親和性を改善して同定された。このアプローチを用いて、変異タンパク質S244.2−H08、S244.2−L01、S244.4−N05、S244.5−J05、S244.8−I20、S244.8−I07(配列番号4ないし9)が同定された。S244.2−H08、S244.2−L01、S244.4−N05、S244.5−J05、S244.8−I20、S244.8−I07の配列は更に、図5に示される。] 図4 図5
[0136] [実施例6:c−Met受容体結合型の変異タンパク質の産生]
c−Met受容体型の変異タンパク質の産生の調製のために、発現ベクタpTLPC10(図2)上にコード化される各々の変異タンパク質を有する大腸菌K12株JM83は、2L振盪フラスコの培養において、Schlehuber,S et al.(J.Mol.Biol.(2000),297,1105−1120)に記載されるプロトコルによるLBアンピシリン培地で成長させた。多量のタンパク質が必要とされる場合、各々の発現ベクタを有する大腸菌株W3110は、Schiweck,W.及びSkerra,A.Proteins(1995)23,561−565;に記載のプロトコルに基づいて、1l又は10l容器中の卓上の発酵培養を介した周辺質の産生に用いられた。] 図2
[0137] 変異タンパク質は、Skerra,A.及びSchmidt,T.G.M.(2000)(Use of the Strep−tag and streptavidin for detection and purification of recombinant proteins.MethodsEnzymol.326A,271−304)により記載の手順により、好適な総容積のカラムを用いたストレプトアビジン親和性クロマトグラフィを介する単一ステップで、周辺質画分から精製された。高純度を得るために、かつ、任意の凝集性組換えタンパク質を除去するために、変異タンパク質のゲル濾過は最終的に、PBSバッファの存在下で、Superdex75HR10/30カラム(24mlの総容積、Amersham Pharmacia Biotech社)上で行われた。単量体タンパク質の画分は貯蔵され、SDS−PAGEによって純度について点検され、更なる生化学的特徴に用いられた。]
[0138] [実施例7:表面プラズモン共鳴分光法(SPR)を用いた親和性測定]
親和性測定は、約9000RUのc−Met受容体−Fc(R&D Systems社)が(国際公開第2006/56464号において標的として用いられる2000RUのヒトCTLA−4又はマウスCTLA−4−Fcの代わりに)、CM5チップの表面上に直接的に固定化され、かつ、80μlの変異タンパク質が(国際公開第2006/56464号における標的として用いられるような、5ないし0.3μMの濃度で調製されたリポカリンの変異タンパク質の40μlのサンプルの代わりに)、0.2ないし0.5μMの濃度で注入された修飾とともに、国際公開第2006/56464号の実施例9に記載のように実質的に行われた。チップの表面は測定の間に、pH10の50mMのNaOH、2.5MのNaClの5ないし10μlの注入によって再生された。流速は10μl/分で一定に維持された。]
[0139] S244.2−H08、S244.2−L01、S244.4−N05、S244.5−J05、S244.8−I20、S244.8−I07を用いる親和性測定による結果は、表1に要約され、S244.2−H08の例のセンサグラムの評価は図6に示される。] 図6
[0140] ]
[0141] 表1は、SPRによって決められるようなc−Met受容体用に選択された本発明の変異タンパク質の親和性である。平均値は少なくとも3の別個の測定から算出される。]
权利要求:

請求項1
ヒト涙液リポカリンの所定の非天然型リガンドに対し検出可能な結合親和性を有する、ヒト涙液リポカリンの変異タンパク質(hTLc)であって、前記非天然型リガンドが、ヒトMet受容体のチロシンキナーゼ(c−Met)、あるいはそのドメイン又はフラグメントであり、前記変異タンパク質が、hTLCの配列位置26ないし34、56ないし58、80、83、104ないし106、及び108に対応する配列位置の少なくとも1つのアミノ酸置換を含むことを特徴とする変異タンパク質。
請求項2
請求項1に記載の変異タンパク質において、当該変異タンパク質が成体ヒト涙液リポカリンの直鎖状のポリペプチド配列の配列位置26ないし34、56ないし58、80、83、104ないし106、及び108で少なくとも2、3、4、5、6、8、10、12、14、16、又は18個の変異導入されたアミノ酸残基を含むことを特徴とする変異タンパク質。
請求項3
請求項1又は2に記載の変異タンパク質において、当該変異タンパク質が配列位置26、27、28、30、31、32、33、34、56、57、58、80、83、104、105、106、及び108で変異導入されたアミノ酸残基を含むことを特徴とする変異タンパク質。
請求項4
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の変異タンパク質において、当該変異タンパク質がアミノ酸置換:Cys61→Ser;Cys101→Ser;及びCys153→Ser;のうちの少なくとも1つを更に含むことを特徴とする変異タンパク質。
請求項5
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の変異タンパク質において、当該変異タンパク質が、Arg111→Pro及びLys114→Trpから選択される、少なくとも1の更なるアミノ酸置換を含むことを特徴とする変異タンパク質。
請求項6
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の変異タンパク質において、当該変異タンパク質がそのN末端又はそのC末端で、酵素、タンパク質若しくはタンパク質ドメイン、ペプチド、シグナル配列、及び/又は親和性標識に動作可能に融合されることを特徴とする変異タンパク質。
請求項7
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の変異タンパク質において、当該変異タンパク質が有機薬剤の分子と、酵素標識と、毒素と、分裂停止剤(cytostaticagent)と、光活性化でき、かつ光線力学的治療に好適な標識と、薬学的に好適な放射性標識と、ハプテンと、ジゴキシゲニンと、ビオチンと、化学療法用金属錯体又は金属と、コロイド金と、前記変異タンパク質の血清半減期を延長する部分とからなる群から選択される接合相手に接合することを特徴とする変異タンパク質。
請求項8
請求項7に記載の変異タンパク質において、前記血清半減期を延長する部分がポリアルキレングリコール分子、ヒドロキシエチルデンプン、パルミチン酸又は他の脂肪酸分子、免疫グロブリンのFc部分、免疫グロブリンのCH3ドメイン、免疫グロブリンのCH4ドメイン、アルブミン又はアルブミンフラグメント、アルブミン結合ペプチド、アルブミン結合タンパク質、及びトランスフェリンからなる群から選択されることを特徴とする変異タンパク質。
請求項9
請求項8に記載の変異タンパク質において、前記アルブミン結合タンパク質が、アルブミンに向けられる細菌性のアルブミン結合タンパク質、抗体、又は抗体フラグメントか、あるいはアルブミンに対し結合活性を有するリポカリンの変異タンパク質であることを特徴とする変異タンパク質。
請求項10
請求項9に記載の変異タンパク質において、細菌性のアルブミンドメインが連鎖球菌性プロテインGのアルブミン結合ドメインであることを特徴とする変異タンパク質。
請求項11
請求項8に記載の変異タンパク質において、前記アルブミン結合ペプチドが式Cys−Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Cysを有し、Xaa1がAsp、Asn、Ser、Thr、又はTrpであり、Xaa2がAsn、Gln、His、Ile、Leu、又はLysであり、Xaa3がAla、Asp、Phe、Trp、又はTyrであり、Xaa4がAsp、Gly、Leu、Phe、Ser、又はThrであることを特徴とする変異タンパク質。
請求項12
請求項8に記載の変異タンパク質において、前記ポリアルキレングリコールがポリエチレン(PEG)又はその活性誘導体であることを特徴とする変異タンパク質。
請求項13
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の変異タンパク質において、前記非天然型リガンドが、前記ヒトMet受容体のチロシンキナーゼの細胞外領域又はドメインであることを特徴とする変異タンパク質。
請求項14
請求項7に記載の変異タンパク質において、前記毒素が百日咳毒素、ジフテリア毒素、リシン、サポリン、緑膿菌外毒素、カリチアマイシン又はその誘導体、タキソイド、マイタンシノイド、ツブリシン、及びドラスタチンアナログからなる群から選択されることを特徴とする変異タンパク質。
請求項15
請求項14に記載の変異タンパク質において、前記ドラスタチンアナログがアウリスタチンE、モノメチルアウリスタチンE、アウリスタチンPYE、及びアウリスタチンPHEからなる群から選択されることを特徴とする変異タンパク質。
請求項16
請求項7に記載の変異タンパク質において、前記分裂停止剤がシスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、5−フルオロウラシル、タキソテール(ドセタキセル)、パクリタキセル、アントラサイクリン(ドキソルビシン)、メトトレキサート、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ダカルバジン、シクロホスファミド、エトポシド、アドリアマイシン、カンプトテシン、コンブレタスタチンA−4関連化合物、スルホンアミド、オキサジアゾリン、ベンゾ[b]チオフェン、合成型スピロケタールピラン、モノテトラヒドロフラン化合物、クラシン及びクラシン誘導体、メトキシエストラジオール誘導体、及びロイコボリンからなる群から選択されることを特徴とする変異タンパク質。
請求項17
請求項1ないし16のいずれか1項に記載の変異タンパク質において、当該変異タンパク質が、ヒト肝細胞増殖因子(HGF)又はヒト散乱因子(SF)のアンタゴニストとして作用しないことを特徴とする変異タンパク質。
請求項18
請求項1ないし17のいずれか1項に記載の変異タンパク質において、当該変異タンパク質が200nM以下のKDで細胞外領域又はMet受容体のドメインを結合することを特徴とする変異タンパク質。
請求項19
請求項18に記載の変異タンパク質において、当該変異タンパク質が100nM以下のKDで細胞外領域又はMet受容体のドメインを結合することを特徴とする変異タンパク質。
請求項20
請求項19に記載の変異タンパク質において、当該変異タンパク質が20nM以下のKDで細胞外領域又はMet受容体のドメインを結合することを特徴とする変異タンパク質。
請求項21
請求項20に記載の変異タンパク質において、当該変異タンパク質が1nM以下のKDで細胞外領域又はMet受容体のドメインを結合することを特徴とする変異タンパク質。
請求項22
請求項1ないし21のいずれか1項に記載の変異タンパク質において、当該変異タンパク質が、前記成体ヒト涙液リポカリンのアミノ酸配列について少なくとも6、8、10、12、14、16、又は17個のアミノ酸置換を含み、Arg26→Thr、Val、Pro、Ser、Gly;Glu27→Gln、Gly、Val、Ser;Phe28→Met、Asp;Pro29→Leu、Ile、Ala、Trp;Glu30→Leu、Gly、Arg、Phe;Met31→Ser;Asn32→Leu、Arg、Val、Gln;Leu33→Tyr、Val、Ile、Thr、Phe;Glu34→Val、Arg、Ala;Leu56→Asn;Ile57→Gln;Ser58→Ile、Val;Asp80→Tyr;Lys83→Ala;Glu104→Asp;Leu105→Thr;His106→Trp;及びLys108→Gly;からなる群から選択されることを特徴とする変異タンパク質。
請求項23
請求項22に記載の変異タンパク質が、Thr37→Ser;Met39→Ile、Leu;Asn48→Ser;Lys52→Thr、Met;Met55→Leu;Lys65→Arg、Leu;Ala79→Leu、Ser;Ala86→Thr;及びIle89→Ser、Gln、Thr、His;からなる群から選択される少なくとも1個のアミノ酸置換を更に含むことを特徴とする変異タンパク質。
請求項24
請求項22又は23に記載の変異タンパク質において、当該変異タンパク質がアミノ酸置換:Arg26→Thr;Glu27→Gln;Glu30→Leu;Met31→Ser;Asn32→Leu;Leu33→Tyr;Glu34→Val;Leu56→Asn;Ile57→Gln;Asp80→Tyr;Lys83→Ala;Glu104→Asp;Leu105→Thr;His106→Trp;及びLys108→Gly;を含むことを特徴とする変異タンパク質。
請求項25
請求項22又は23のうちのいずれか1項に記載の変異タンパク質において、当該変異タンパク質がアミノ酸置換:Met31→Ser;Leu56→Asn;Ile57→Gln;Asp80→Tyr;Lys83→Ala;Glu104→Asp;Leu105→Thr;His106→Trp;及びLys108→Gly;を含むことを特徴とする変異タンパク質。
請求項26
請求項22ないし25のいずれか1項に記載の変異タンパク質において、当該変異タンパク質がアミノ酸置換:Cys61→Ser;Cys101→Ser;Arg111→Pro;Lys114→Trp;及びCys153→Ser;を含むことを特徴とする変異タンパク質。
請求項27
請求項22ないし26のいずれか1項に記載の変異タンパク質において、当該変異タンパク質がアミノ酸置換の集合:(1)Arg26→Thr;Glu27→Gln;Phe28→Met;Glu30→Leu;Met31→Ser;Asn32→Leu;Leu33→Tyr;Glu34→Val;Leu56→Asn;Ile57→Gln;Ser58→Ile;Asp80→Tyr;Lys83→Ala;Glu104→Asp;Leu105→Thr;His106→Trp;及びLys108→Gly;(2)Arg26→Thr;Glu27→Gln;Phe28→Asp;Glu30→Leu;Met31→Ser;Asn32→Leu;Leu33→Tyr;Glu34→Val;Leu56→Asn;Ile57→Gln;Ser58→Val;Asp80→Tyr;Lys83→Ala;Glu104→Asp;Leu105→Thr;His106→Trp;及びLys108→Gly;(3)Arg26→Thr;Glu27→Gln;Phe28→Asp;Glu30→Leu;Met31→Ser;Asn32→Leu;Leu33→Tyr;Glu34→Val;Leu56→Asn;Ile57→Gln;Ser58→Ile;Asp80→Tyr;Lys83→Ala;Glu104→Asp;Leu105→Thr;His106→Trp;及びLys108→Gly;(4)Arg26→Val;Glu27→Gly;Phe28→Asp;Pro29→Leu;Glu30→Gly;Met31→Ser;Asn32→Arg;Leu33→Val;Glu34→Val;Leu56→Asn;Ile57→Gln;Ser58→Ile;Asp80→Tyr;Lys83→Ala;Glu104→Asp;Leu105→Thr;His106→Trp;及びLys108→Gly;(5)Arg26→Pro;Glu27→Gly;Phe28→Asp;Pro29→Ile;Glu30→Arg;Met31→Ser;Asn32→Leu;Leu33→Ile;Glu34→Val;Leu56→Asn;Ile57→Gln;Ser58→Ile;Asp80→Tyr;Lys83→Ala;Glu104→Asp;Leu105→Thr;His106→Trp;及びLys108→Gly;(6)Arg26→Ser;Phe28→Asp;Pro29→Ala;Glu30→Phe;Met31→Ser;Asn32→Val;Leu33→Thr;Glu34→Val;Leu56→Asn;Ile57→Gln;Ser58→Ile;Asp80→Tyr;Lys83→Ala;Glu104→Asp;Leu105→Thr;His106→Trp;及びLys108→Gly;(7)Arg26→Val;Glu27→Val;Phe28→Asp;Pro29→Trp;Glu30→Arg;Met31→Ser;Asn32→Gln;Leu33→Val;Glu34→Arg;Leu56→Asn;Ile57→Gln;Ser58→Ile;Asp80→Tyr;Lys83→Ala;Glu104→Asp;Leu105→Thr;His106→Trp;及びLys108→Gly;ならびに、(8)Arg26→Gly;Glu27→Ser;Phe28→Asp;Pro29→Trp;Met31→Ser;Asn32→Val;Leu33→Phe;Glu34→Ala;Leu56→Asn;Ile57→Gln;Ser58→Ile;Asp80→Tyr;Lys83→Ala;Glu104→Asp;Leu105→Thr;His106→Trp;及びLys108→Gly;のうちの1つを含むことを特徴とする変異タンパク質。
請求項28
請求項1ないし27のいずれかに記載の変異タンパク質が、Thr40→Cys;Glu73→Cys;Arg90→Cys;Asp95→Cys;Lys121→Cys;Asn123→Cys;及びGlu131→Cys;からなる群から選択される、成熟野生型の配列に対する突然変異のうちの少なくとも1つを更に含むことを特徴とする変異タンパク質。
請求項29
請求項28に記載の変異タンパク質が、配列位置40、73、90、95、121、123、又は131でのCys残基のいずれかを介して前記変異タンパク質に結合されている接合相手を更に含むことを特徴とする変異タンパク質。
請求項30
請求項29に記載の変異タンパク質において、前記接合相手が、有機分子と、酵素標識と、毒素と、分裂停止剤と、薬学的に好適な放射性標識と、蛍光標識と、色素標識と、発光標識と、ハプテンと、ジゴキシゲニンと、ビオチンと、金属錯体と、金属と、コロイド金と、前記変異タンパク質の血清半減期を延長する部分とからなる群から選択されることを特徴とする変異タンパク質。
請求項31
請求項1ないし27のいずれか1項に記載の変異タンパク質において、当該変異タンパク質が配列番号1、配列番号4ないし9、配列番号22ないし26、配列番号32ないし35、又は配列番号37ないし49、あるいはそのフラグメント又は変異体のうちのいずれか1つに示されるようなアミノ酸配列を有することを特徴とする変異タンパク質。
請求項32
請求項1ないし31のいずれかに記載の変異タンパク質が、約2.5ないし約9.5の範囲のpHで安定することを特徴とする変異タンパク質。
請求項33
請求項32に記載の変異タンパク質が、約3.0ないし約9.3の範囲のpHで安定することを特徴とする変異タンパク質。
請求項34
請求項1ないし33のいずれか1項に記載の変異タンパク質をコード化するヌクレオチド配列を含むことを特徴とする核酸分子。
請求項35
ベクタに含まれることを特徴とする、請求項34に記載の核酸分子。
請求項36
ファージミドベクタに含まれることを特徴とする、請求項34に記載の核酸分子。
請求項37
請求項34ないし36のいずれか1項に記載の核酸分子を含むことを特徴とする宿主細胞。
請求項38
請求項1ないし33のいずれか1項に記載のヒト涙液リポカリンの変異タンパク質と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含むことを特徴とする医薬組成物。
請求項39
請求項1ないし33のいずれかに記載のヒト涙液リポカリンの変異タンパク質を産生する方法であって、前記変異タンパク質が、遺伝子工学的方法によって、細菌性又は真核の宿主生物において前記変異タンパク質をコード化する核酸から産生され、前記宿主生物又はその培養物から分離されることを特徴とする方法。
請求項40
疾患又は障害を治療する方法であって、請求項1ないし33のいずれかに記載の変異タンパク質を含む医薬組成物か、あるいは請求項38に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを具えることを特徴とする方法。
請求項41
請求項40に記載の方法において、前記疾患又は障害が細胞増殖性障害であることを特徴とする方法。
請求項42
請求項40又は41に記載の方法において、前記疾患又は障害が癌であることを特徴とする方法。
請求項43
請求項42に記載の方法において、前記癌が肝臓癌、結腸癌、結腸直腸癌、肝細胞癌、乳頭型腎がん、頭頸部扁平上皮癌(HNSC)、又は頭頸部扁平上皮癌のリンパ節転移であることを特徴とする方法。
請求項44
ヒトMet受容体のチロシンキナーゼ(Met)あるいはそのドメイン又はフラグメントの生体外検出のための、請求項1ないし33のうちのいずれか1項に記載のヒト涙液リポカリンの変異タンパク質の使用であって、a)好適な条件下で、ヒトMet受容体のチロシンキナーゼ(Met)あるいはそのドメイン又はフラグメントを有するとされるサンプルと前記変異タンパク質を接触させ、これによって前記変異タンパク質と、ヒトMet受容体のチロシンキナーゼ(Met)あるいはそのドメイン又はフラグメントとの間での複合体形成を可能にするステップと、b)好適なシグナルによって、複合体形成された前記変異タンパク質を検出するステップと、を具えることを特徴とする使用。
請求項45
ヒトMet受容体のチロシンキナーゼ(Met)あるいはそのドメイン又はフラグメントの生体外分離のための、請求項1ないし33のうちのいずれか1項に記載のヒト涙液リポカリンの変異タンパク質の使用であって、a)好適な条件下で、ヒトMet受容体のチロシンキナーゼ(Met)あるいはそのドメイン又はフラグメントを有するとされるサンプルと前記変異タンパク質を接触させ、これによって前記変異タンパク質と、ヒトMet受容体のチロシンキナーゼ(Met)あるいはそのドメイン又はフラグメントとの間での複合体形成を可能にするステップと、b)前記サンプルから前記変異タンパク質/Metの複合体を分離するステップと、を具えることを特徴とする使用。
請求項46
請求項44又は45に記載の使用であって、前記変異タンパク質/c−Metの複合体が固体担体上に結合されることを特徴とする使用。
請求項47
ヒトc−Met受容体のチロシンキナーゼ(c−Met)機能に関連する疾病又は障害の生体外診断のための請求項1ないし33のうちのいずれか1項に記載のヒト涙液リポカリンの変異タンパク質の使用であって、a)好適な条件下で、ヒトMet受容体のチロシンキナーゼ(c−Met)あるいはそのドメイン又はフラグメントを有するとされるサンプルと前記変異タンパク質を接触させ、これによって前記変異タンパク質と、前記ヒトMet受容体のチロシンキナーゼ(c−Met)あるいはそのドメイン又はフラグメントとの間での複合体形成を可能にするステップと、b)好適なシグナルによって、複合体形成された前記変異タンパク質を検出するステップと、を具えることを特徴とする使用。
請求項48
生物又は組織中の事前選択された部位を、薬学的に能動的な化合物が標的とするための、請求項1ないし33のうちのいずれか1項に記載のヒト涙液リポカリンの変異タンパク質の使用であって、a)前記変異タンパク質を前記化合物と接合するステップと、b)前記変異タンパク質/化合物の複合体を前記事前選択された部位に送達するステップと、を具えることを特徴とする使用。
請求項49
請求項48に記載の使用において、前記薬学的に能動的な化合物が、毒素、分裂停止剤、又はc−Metアンタゴニストからなる群から選択されることを特徴とする使用。
請求項50
請求項49に記載の使用において、前記毒素が百日咳毒素、ジフテリア毒素、リシン、サポリン、緑膿菌外毒素、カリチアマイシン又はその誘導体、タキソイド、マイタンシノイド、ツブリシン、及びドラスタチンアナログからなる群から選択されることを特徴とする使用。
請求項51
請求項50に記載の使用において、前記ドラスタチンアナログが、アウリスタチンE、モノメチルアウリスタチンE、アウリスタチンPYE、及びアウリスタチンPHEからなる群から選択されることを特徴とする使用。
請求項52
請求項49の使用において、前記分裂停止剤が、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、5−フルオロウラシル、タキソテール(ドセタキセル)、パクリタキセル、アントラサイクリン(ドキソルビシン)、メトトレキサート、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ダカルバジン、シクロホスファミド、エトポシド、アドリアマイシン、カンプトテシン、コンブレタスタチンA−4関連化合物、スルホンアミド、オキサジアゾリン、ベンゾ[b]チオフェン、合成型スピロケタールピラン、モノテトラヒドロフラン化合物、クラシン及びクラシン誘導体、メトキシエストラジオール誘導体、及びロイコボリンからなる群から選択されることを特徴とする使用。
請求項53
請求項49に記載の使用において、前記c−Metアンタゴニストが、モノクローナル抗体と、1,3,5,トリアジン−2,4−ジアミン誘導体と、2−(2,6−ジクロロフェニル−イミダゾール誘導体と、窒素含有型で二環式の誘導体と、5−ベンジルスルホニル及びスルホンアミド置換型のピロールインドリン(pyrroleindoline)とからなる群から選択されることを特徴とする使用。
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