专利摘要:
血管動脈瘤の処置のために結合組織安定剤を制御放出するためのデリバリービヒクルを記載する。当該デリバリービヒクルを一般に結合組織安定剤と組み合わせて、治療組成物を形成する。動脈瘤の処置は、当該デリバリービヒクルから動脈瘤への結合組織安定剤の放出により達成できる。結合組織安定剤は、コラーゲン安定剤、エラスチン安定剤、またはその組み合わせであってよい。別個のデリバリービヒクルに埋め込まれたコラーゲン安定剤およびエラスチン安定剤で、個別に、同時に、または連続して、動脈瘤を処置することができる。
公开号:JP2011513220A
申请号:JP2010547649
申请日:2009-02-20
公开日:2011-04-28
发明作者:イーゼンバーグ,ジェーソン・シー;オグル,マシュー・エフ;ブヤバヘア,ナレンドラ・アール
申请人:ヴァトリックス・メディカル・インコーポレーテッド;
IPC主号:A61K9-06
专利说明:

[0001] 関連出願の引照
本出願は、米国仮特許出願番号61/066,688(2008年2月21日出願、Isenburgら、「デリバリーシステムに埋め込まれたエラスチン安定剤の適用による動脈瘤の処置」)に基づく優先権を主張し、これを本明細書に援用する。]
[0002] 発明の分野
本発明は一般に、血管動脈瘤を処置するための治療組成物の一部としてのデリバリービヒクルに関する。本発明はさらに、当該デリバリービヒクルを製造および使用する方法に関する。]
背景技術

[0003] 動脈瘤は、アテローム硬化性疾患、動脈成分の欠損、遺伝的感受性、高血圧その他を始めとする多様なメカニズムにより生じる可能性がある。特に腹部大動脈瘤(AAA)は、最終的には致命的な破裂に至る可能性がある、動脈構築の破壊およびそれに続く拡張を特徴とする変性疾患である。他の動脈瘤と同様にAAAは、特に高齢者集団にとって健康上の重大問題である。現在、承認されている唯一のAAA処置は、罹患した動脈の外科的置換または血管内ステント移植修復である。これらの外科的選択肢はしばしば有効であるが、それら自身の欠点がないわけではない。たとえば血管内ステントは、解剖学的には発症時のAAA患者のわずか30%〜60%に適するにすぎず、内部漏出および移植片排除のリスクを示す。さらに、実物大移植片を挿入するための切開外科処置は侵襲性が高く、それの使用は高い手術リスクに耐えられる患者に限定される。したがって動脈瘤疾患の早期の診断および治療は、なお対処すべき未解決の臨床要求である。]
[0004] 第1の観点において、本発明は患者の動脈瘤を処置するための治療組成物に関する。この治療組成物は、結合組織安定剤をデリバリービヒクルと組み合わせて含む。このデリバリービヒクルは、ヒドロゲル、ナノ粒子またはその組み合わせを含む。1つの態様において、デリバリービヒクルのヒドロゲルはゲル状ペンタ−ガロイルグルコースを含む。ある態様において、ヒドロゲルはプルロニック(商標)(Pluronic)ヒドロゲルを含む。1つの態様において、ヒドロゲル、ナノ粒子またはその両方に、ペンタ−ガロイルグルコース、グルタルアルデヒドまたはその組み合わせが組み入れられている。1つの態様において、ナノ粒子はポリ(乳酸−コ−グリコール酸)を含む。1つの態様において、ヒドロゲルはプルロニック(商標)F−127ヒドロゲルを含む。]
[0005] 治療組成物の結合組織安定剤は、エラスチン安定剤、コラーゲン安定剤またはその組み合わせを含む。エラスチン安定剤は、疎水性領域と水素結合可能な複数の官能基とを含む。ある態様において、エラスチン安定剤は、タンニン酸またはその誘導体、フラボノイドまたはフラボノイド誘導体、フラボリグナン(flavolignan)またはフラボリグナン誘導体、フェノール性リゾーム(phenolic rhizome)またはフェノール性リゾーム誘導体、フラバン−3−オールまたはフラバン−3−オール誘導体、エラグ酸(ellagic acid)またはエラグ酸誘導体、プロシアニジンまたはプロシアニジン誘導体、アントシアニン、ケルセチン、(+)−カテキン、(−)エピカテキン、ペンタガロイルグルコース、ノボタニン(nobotanin)、エピガロカテキンガレート、ガロタンニン、オリーブオイル抽出物またはオリーブオイル抽出物誘導体、カカオ豆またはカカオ豆誘導体、ツバキ(camellia)またはツバキ誘導体、甘草または甘草誘導体、ムチヤギ(sea whip)またはムチヤギ誘導体、アロエベラ(aloe vera)またはアロエベラ誘導体、カモミールまたはカモミール誘導体、それらの組み合わせまたはそれらの医薬的に許容される塩を含む。コラーゲン安定剤は、コラーゲン中の官能基の架橋剤を含む。ある態様において、コラーゲン安定剤は、グルタルアルデヒド、ジアミン、ゲニピン(genipin)、アシルアジド、エポキシアミン、その組み合わせまたはその医薬的に許容される塩を含む。1つの態様において、結合組織安定剤は、没食子酸スカベンジャー、脂質低下薬、抗菌剤、抗真菌剤またはその組み合わせをさらに含む。]
[0006] 第2の観点において、本発明は患者の動脈瘤を処置するための治療組成物を製造する方法に関する。この方法は、体液と接触すると結合組織安定剤が動脈瘤に一定時間にわたって放出されるように、結合組織安定剤をデリバリービヒクルと組み合わせて治療組成物を形成することを含む。ある態様において、この組み合わせ工程は、ヒドロゲルの前駆体と結合組織安定剤との溶液を形成することを含む。1つの態様において、この組み合わせ工程は、プルロニック(商標)ブロックコポリマーとペンタ−ガロイルグルコース、グルタルアルデヒドまたはその組み合わせとの溶液を形成することを含む。ある態様において、この組み合わせ工程は、結合組織安定剤をナノ粒子に埋め込むことを含む。1つの態様において、結合組織安定剤はエマルジョン溶媒蒸発法を使用してナノ粒子の内部に埋め込まれる。ある態様において、前記の組み合わせ工程は、結合組織安定剤を埋め込んだナノ粒子をヒドロゲル中に添加して制御放出治療組成物を形成することをさらに含む。1つの態様において、前記の組み合わせ工程は、グルタルアルデヒドが組み入れられたポリ(乳酸−コ−グリコール酸)ナノ粒子を場合により添加して、ペンタ−ガロイルグルコースが組み入れられたポリ(乳酸−コ−グリコール酸)ナノ粒子とのプルロニック(商標)ブロックコポリマーの分散物を形成することを含む。ある態様において、治療組成物は医薬的に許容される担体および/または賦形剤をさらに含む。]
[0007] 第3の観点において、本発明は患者の動脈瘤を処置するための治療組成物を使用する方法に関する。この方法は、治療組成物を動脈瘤に適用することを含む。治療組成物は結合組織安定剤をデリバリービヒクルとともに含み、動脈瘤に結合組織安定剤が一定時間にわたって放出される。治療組成物を、血管内、血管周囲またはその組み合わせを通して前記動脈瘤に適用することができる。ある態様において、処置方法は、血管内に配置された装置を使用して動脈瘤を血管内から分離すること、および治療組成物の適用前に、当該装置を使用して分離した動脈瘤を吸引することを含む。1つの態様においては、治療組成物を、血管周囲ラップを通して前記動脈瘤に適用する。ある態様においては、この処置方法を患者の動脈瘤に複数回適用する。]
[0008] 第4の観点において、本発明は、結合組織安定剤をヒドロゲル、ナノ粒子またはその組み合わせの形で動脈瘤に適用することによる、患者の動脈瘤の処置方法に関する。1つの態様において、結合組織安定剤は、ペンタガロイルグルコース、エピガロカテキンガレートまたはその組み合わせである。]
[0009] 第5の観点において、本発明は、ヒドロゲルおよび当該ヒドロゲル内に分散されたナノ粒子を含む活性剤デリバリービヒクルに関する。当該ナノ粒子は、活性剤および生体吸収性高分子バインダーを含む。]
図面の簡単な説明

[0010] 図1は、腹部大動脈瘤(AAA)の説明図である。
図2は、AAAに対する外科処置選択肢の説明図である:(A)血管内ステント移植修復;(B)切開外科修復/置換;および(C)血管周囲ガードルラップ。
図3は、ペンタ−ガロイルグルコース(PGG)の化学構造である。
図4は、(上)本明細書に記載する治療組成物のデリバリーのためのデリバリー装置の側面模式図、および(下)このデリバリー装置の軸の横断面図である。
図5は、血管の内側に配置されて動脈瘤を分離および吸引している図4のデリバリー装置の模式図である。
図6は、(上)純粋な大動脈エラスチンへのタンニン酸(TA)の累積結合量を示す図、および(下)TAとエラスチンの相互作用を表わす模式図である。
図7は、(左)タンニン酸仲介による、エラスターゼの作用に対する純エラスチンの安定化を示す図、ならびに(右)新鮮なブタ大動脈(A)、純粋な大動脈エラスチン(B)、エラスターゼに曝露された大動脈エラスチン(C)、およびTAで安定化したエラスチン(D)の組織学的所見である。
図8は、エラスチン安定剤としてのTAおよびPGGの保護効力を示す図である。
図9は、人為的に部分消化したエラスチンを使用してPGGの保護効果を推定する方法の概念を説明するフローダイヤグラムである。
図10は、第1ラウンドのエラスターゼ処理後に収集した乾燥重量に対する第2ラウンドのエラスターゼ処理後の乾燥組織重量の変化を、対照(食塩水)およびPGG処理(第2ラウンド前のみ)試料において示す図である。
図11は、ラットにおける0日目に対比した28日目の腹部大動脈の直径の平均変化率パーセントを示す図である。
図12は、(左)外科処置をしない対照ラット大動脈(0日目)について実施したデスモシン分析からの結果を、化学的傷害後28日目に採集したPGG処理グループおよび食塩水処理グループの大動脈と比較して示す図、ならびに(右)同じ大動脈試料の組織学的所見である。
図13は、ラットにおいて動脈瘤大動脈へのPGGのデリバリーがAAAの進行を阻止することを示す図、表および組織学的所見である。
図14は、種々の治療組成物で処理され、エラスターゼ消化に対する多様な抵抗能を示す、ブタ頚動脈の部分の消化率パーセントのプロットであり。
図15は、種々の治療組成物で処理され、多様な一軸引張り強さを示す、ブタ頚動脈の部分の応力対ひずみのプロットであり。
図16Aは、横方向に切断して環状セグメントにするブタ大動脈の透視図を示す写真、および切り開かれる環状セグメントの上面図の写真である。
図16Bは、種々の組織処理後に切り開いて弛緩させた処理済み環状セグメントの一連の写真、および大動脈環の開放角度を測定する方法である。
図16Cは、種々の処理について比較した大動脈環の開放角のプロットである。
図17は、組織の種々の処理について比較した、処理組織のコラゲナーゼ曝露後の消化率パーセントのプロットである。
図18は、インビトロでのPGG−ポリマー配合物の調製および特性解明、続いてインビボでのPGGデリバリーの評価を実施することができる方法の概念を説明する模式的フローダイヤグラムである。
図19は、本明細書に記載する処置の有効性を評価するために提示した動物実験の模式図であり、ラットの動脈瘤大動脈へのPGGのインビボ適用、続いてその分析を示す。
図20は、ラット大動脈の回収および調製を示す写真である。] 図1 図10 図11 図12 図13 図14 図15 図16A 図16B 図16C
[0011] 本明細書に記載するデリバリービヒクルは、動脈瘤への1種類以上の結合組織安定剤の制御放出を提供して安定剤の効力を向上させ、望ましいデリバリー方法を提供する。本明細書の記載はさらに、デリバリービヒクルの製造方法、ならびにデリバリービヒクル、たとえばプルロニック(商標)ヒドロゲルおよび/またはポリマーナノ粒子に埋め込まれたおよび/またはそれらに付随する結合組織安定剤を血管内または血管周囲に適用することにより動脈瘤を処置する方法を提供する。安定剤とデリバリービヒクルの組み合わせにより形成される治療組成物を、血管の外側または内側のいずれかで動脈瘤にデリバリーすることができる。本明細書の記載は大動脈瘤に焦点を当てているが、当該処置方法は本明細書の教示に基づいて他の動脈瘤にまで一般化することができる。]
[0012] 動脈瘤の処置に使用する安定剤および装置ならびに診断バイオマーカーの若干の態様が、下記に記載されており、これらのすべてを本明細書に援用する:米国特許7,252,834(’834特許、Vyavahareらに付与、「結合組織のエラスチンの安定化」)、米国仮特許出願61/113,881(’881出願、Isenburgら、「組織安定化のための組成物」)、米国特許出願12/173,726(’726出願、Ogleら、「血管動脈瘤の処置のための装置」)、米国特許出願12/355,384(’384出願、Ogleら、「血管動脈瘤の診断バイオマーカー」)。本明細書中の方法および組成物は、ある態様において、’834特許および’881出願中の処置方法および治療組成物の改良を提供する。後記の実施例はエラスチン安定剤としてのペンタ−ガロイルグルコース(PGG)およびコラーゲン安定剤としてのグルタルアルデヒド(GLU)の使用に焦点を当てる。他の結合組織安定剤(それらのうち若干を後記に述べる)も、本明細書の記載に基づいて制御された持効性様式で同様に放出することができる。]
[0013] ある態様において、本明細書に記載する治療配合物はデリバリービヒクルと組み合わせた1種類以上の組織安定剤を含む。デリバリービヒクルはヒドロゲルポリマーであってよい。ヒドロゲルポリマーは、安定剤の漸次放出および動脈瘤へのより制御されたデリバリーを提供する。同様に、安定剤をポリマーナノ粒子内において供給することができる。ナノ粒子は、動脈瘤への組織安定剤の制御放出を提供する。さらに、安定剤を注入したナノ粒子をヒドロゲル内に組み合わせることに関して、さらに利点のある可能性がある。]
[0014] 動脈瘤における治療組成物の局所デリバリーを提供するデリバリー方法、たとえば’726出願に記載された方法が開発された。本発明のデリバリービヒクルの使用は、動脈瘤における組織安定剤の一定時間にわたる持続放出を提供する。この漸次放出は、より推定可能な治療効果を得るために、経時変化がより少ない濃度の安定剤による動脈瘤組織の処置を提供する。また、デリバリービヒクルの特性を選択して、動脈瘤組織の安定化に関して対応する安定剤効力を提供することができる。一般に、動脈瘤の処置に使用する治療組成物の有効量は、後記に述べる実施例に例示するように動脈瘤組織の測定可能な安定化により決定される。]
[0015] 動脈瘤および臨床管理
動脈瘤は動脈の一部の異常な拡大(widening)または風船様拡大(ballooning)であり、図1に示す腹部大動脈瘤(AAA)のように血管壁の構造脆弱性に関連する。動脈瘤に一般的な若干の位置には、腹部大動脈(腹部大動脈瘤、AAA)、胸部大動脈、および脳動脈が含まれる。動脈瘤は数年間にわたって成長し、健康に対して大きなリスクをもつ。動脈瘤は解離または破裂して多量の出血、発作、および出血性ショックを引き起こす潜在性をもち、これらは80%を超える症例において致命的になる可能性がある。AAAは特に高齢者集団にとって健康上の重大問題であり、50歳を超える患者について上位10の死因に含まれる。腹部大動脈瘤の推定発病率は年間100,000人毎に約50人である。米国では腹部大動脈瘤だけで毎年およそ60,000の手術が行なわれる。小児では、AAAは腹部鈍傷により、またはマルファン症候群、すなわち主動脈壁、たとえば大動脈の弾性線維欠損により生じる可能性がある。] 図1
[0016] 高解像度イメージング技術(CT、MRI)が開発されたことにより、動脈瘤拡大の程度を診断および同定するための方法が得られる。小さな動脈瘤(直径2cmより大)が最初に診断された後、最も一般的な医学的方法は、それの発達を定期的に(たとえば6カ月毎に)モニターし、それが一定の病期(一般に直径5.5cmより大)に達した場合には外科処置を施すことである。これは、図2Aおよび2Bにそれぞれ示すように、血管内ステント移植修復(血管の内側にチューブを配置する)、または人工メッシュ血管移植片による罹患大動脈の完全置換を伴う。動脈瘤の外科処置は毎年数千の命を救い、生活の質を改善している。しかし、外科処置関連の合併症または装置関連の問題のため、生存率が術後10年目にはわずか50%に低下する可能性がある。さらに、血管内ステントは解剖学的には発症時のAAA患者のわずか30%〜60%に適するにすぎず、かつ内部漏出および移植片排除のリスクを示す。さらに、実物大移植片を挿入するための切開外科処置は侵襲性が高く、それの使用は高い手術リスクに耐えられる患者に限定される。小さいかまたは中等度の動脈瘤をもつ患者、すなわち全AAA患者の最大パーセントを占めるグループについては、処置選択肢が特に制限される。したがって、診断後に速やかにAAAの進行を阻止することを目標とする新規な治療方法があれば、動脈瘤患者にとってきわめて有益であろう。] 図2A
[0017] 小さいかまたは初期の動脈瘤をもつ多数の患者について、残念ながら現在は選択肢または治療法がない。これらの症例では、前記のように大動脈の直径を臨界閾値(一般に5.5cm)に達するまで定期的にモニターし、その時点で外科的な修復または置換を実施する。しかし、破裂する腹部大動脈瘤の10%も5cm未満の直径で破裂すると推定されているので、この「待機および観察」する方法はリスクがないわけではない。したがって、たとえばエラスチンおよびコラーゲンなど組織成分の安定化により大動脈拡張を制限することを目標とする代替処置は、破裂の発生率を低下させ、かつ外科修復の必要性を回避するのに役立つ可能性がある。]
[0018] 動脈瘤を早期検出しかつその進行を追跡するために、実験室検査、たとえば血液検査、尿検査またはその組み合わせを使用した新技術が開発された。早期検出技術は、たとえば出願中の米国特許出願番号12/355,384(2009年1月16日出願、Ogleら、「血管動脈瘤の診断バイオマーカー」)に記載されており、これを本明細書に援用する。動脈瘤組織に関連する結合組織分解生成物および組織分解に関連する酵素が診断バイオマーカーとして有用であることが見いだされた。これらのバイオマーカーには、たとえばエラスチン分解生成物、たとえばデスモシン、イソデスモシンおよびエラスチン分解ペプチド、コラーゲン分解生成物、たとえばピリジノリン(pyridinoline)、デオキシピリジノリン、プロ−コラーゲン−IIIN末端プロペプチド、およびI型コラーゲンのN−テロペプチド、分解酵素、たとえばマトリックスメタロプロテイナーゼ1、2、8、9、12、13および18、またはその組み合わせを含めることができる。これらの診断バイオマーカーは、動脈瘤の早期診断のための簡便で費用効率の高い方法を提供し、したがって治療組成物、たとえば本明細書に記載するものによる処置の機会および早期介入措置を提供する。]
[0019] エラスチンおよびコラーゲンを安定化する組成物および方法、たとえば米国特許7,252,834(’834特許、Vyavahareらに付与、「結合組織のエラスチンの安定化」)、米国仮特許出願61/113,881(’881出願、Isenburgら、「組織安定化のための組成物」)に記載のものが、動脈瘤を処置するための外科処置に対する薬理学的代替としてそれぞれ開発された。そのような薬理学的代替は、特に初期および中期の動脈瘤を処置するための未解決の臨床要求に対処する。本明細書に記載する配合物は、薬理学的処置のための改良されたデリバリー選択肢を提供する。この処置は、たとえば米国特許出願12/173,726(’726出願、Ogleら、「血管動脈瘤の処置のための装置」)に開示された装置の使用により達成でき、これを本明細書に援用し、後記にさらに記載する。本明細書に開示する方法およびデリバリービヒクルは、’726出願のデリバリー装置を使用して、動脈瘤へデリバリーされる治療組成物を調製するための’834特許および’881出願中の安定剤の制御放出を提供する。]
[0020] 本明細書に開示する方法および組成物は、普通は外科的介入により処置されない初期および中等度の動脈瘤のための処置選択肢を提供する。早期の検出および処置は、動脈瘤を後期まで処置しない状況と比較して、疾患の進行およびその後の危険性を制限し、動脈瘤患者の生活の質を改善し、かつ経費を節減する機会を提供する。本明細書に開示する方法および組成物はさらに、外科的介入を適用できない状態、たとえば深部組織の動脈瘤に対する処置の可能性を提供する。診断、装置および治療組成物のこの組み合わせは、救命をもたらし/代替法を変更し、これを疾患の初期および中期に効果的に適用して罹病患者を減少させ、かつ社会的経費を節減することができる。]
[0021] 動脈瘤内の結合組織変性、および結合組織安定化
結合組織は枠組みであり、これに他のタイプの組織、すなわち上皮組織、筋肉組織および神経組織が支持されている。多数の特殊化したタイプの結合組織があり、一例は動脈である。多くの症例において、動脈瘤の特徴は、エラスチンおよびコラーゲンを始めとする動脈構造タンパク質の変性、炎症性浸潤物、石灰化、ならびに動脈構築の全般的な破壊である。その結果、機械的特性の喪失および進行性の動脈拡張が生じる。動脈構築の著しい変性、中膜エラスチン含量の低下、および弾性層板の破断または分断により証明されるように、これらの動脈瘤組織内において激しいエラスチン分解が報告されている。かなり動的な他のあるマトリックス成分と異なりエラスチンは速やかには復活できないこと(70年近いそれの生物学的半減期により証明されるように)を考慮すると、この分解は特に重大である。さらに、エラスチンの分解の結果、プロテアーゼのアップレギュレーション、走化性、細胞増殖において活性である可溶性エラスチンペプチド、および他の種々の生物活性物質が放出される。エラスチンペプチドの強い生物活性は、動脈瘤組織内のエラスチン分解の臨床的重大性、およびエラスチンを変性から保護するという次の必要性を強調する。]
[0022] さらに、コラーゲンは動脈瘤組織全体に存在する。たとえばLoftusIM, Thompson MM. Vasc Med 2002; 7(2): 117-133を参照;本明細書に援用する。動脈瘤発達の経過中にコラーゲンの分解と再生のプロセスが交互に起きることが示唆されている。コラーゲン分解が特定の程度に達すると、動脈瘤組織の破裂が起きる場合がある。たとえば、Choke E, Cockerill G, Wilson WR, et al, Eur J Vasc Endovasc Surg 2005; 30(3): 227-244を参照;本明細書に援用する。動脈瘤組織内のコラーゲンの安定化は、動脈瘤に関連する血管損傷を処置するための有効な観点である可能性がある。]
[0023] 前記’834特許に記載されたように、結合組織の分解は組織のエラスチン成分をフェノール性化合物で安定化することにより阻止または減速できる。特に、多数の天然および合成フェノール性化合物のいずれかがエラスチンを結合し、これによりたとえばエラスチンをエラスチン分解酵素の作用による分解から保護することができると考えられる。ある態様において、エラスチンを安定化するフェノール性化合物には、たとえば疎水性コアに結合した少なくとも1つのフェノール基を含むいずれかの化合物が含まれる。いずれか特定の理論により拘束されたくはないが、フェノール性化合物とエラスチンタンパク質の相互作用はそれらの分子のヒドロキシル基および疎水性コアの両方を伴う面をもつと考えられる。特定の態様において、フェノール性化合物は1以上の二重結合を含むことができ、これによりこれらのフェノール性化合物はエラスチンに共有結合して、フェノール性化合物と結合組織のエラスチンとの間にさらに強くかつより永久的な保護会合を形成することができる。さらに、エラスチンタンパク質の大きな疎水性領域(これらはエラスターゼ仲介による開裂に対して感受性の部位を含むと考えられる)も、フェノール性化合物の疎水性コアと当該タンパク質との会合部位を含むと考えられる。したがって、フェノール性化合物と当該タンパク質分子との会合は、酵素がターゲティングするタンパク質上の特異的結合部位をタンパク質と疎水性コアとの会合により保護し、大きな三次元架橋構造の発達により当該タンパク質の分解を立体的に妨げることもできると考えられる。]
[0024] フェノール性化合物は、ある態様において、疎水性コア、およびその分子の疎水性コアから伸びる1以上のフェノール基を含むことができる。たとえば、フェノール性化合物の例は下記のものを含むことができるが、これらに限定されない:フラボノイド類およびそれらの誘導体(たとえばアントシアニン類、ケルセチン)、フラボリグナン類、フェノール性リゾーム類、フラバン−3−オール類:(+)−カテキンおよび(−)エピカテキンを含む;他のタンニン類およびその誘導体(たとえばタンニン酸、ペンタガロイルグルコース、ノボタニン、エピガロカテキンガレート、およびガロタンニン類)、エラグ酸、プロシアニジン類など。]
[0025] フェノール性化合物には合成および天然のフェノール性化合物が含まれる。たとえば、天然のフェノール性化合物には天然の植物ベースの供給源からの抽出物中にみられるものを含めることができる:たとえばオリーブオイル抽出物(たとえばヒドロキシチロソール(3,4−ジヒドロキシフェニルエタノール)およびオレウロペイン(oleuropein)、カカオ豆抽出物:これはエピカテキンおよび類似化合物を含有する可能性がある;ツバキ抽出物:チャの木(C.senensis)(green tea)およびカメリア・アサイミック(C.assaimic)を含む;甘草、ムチヤギ、アロエベラ、カモミールなどの抽出物。]
[0026] 1つの態様において、フェノール性化合物はタンニン類およびその誘導体であってよい。タンニン類は多くの植物種中にみられる。たとえばチャの木(Camellia sinensis)は天然状態で高いタンニン含量をもつ。チャの葉は、タンニン酸および没食子酸のグループだけでなく、プロアントシアニジンの一種であるプロデルフィニジン(prodelphinidin)をも含有するので、タンニン類の主要な植物源である。タンニン類はワイン、特に赤ワイン中、ならびにブドウの皮および種子中にもみられる。ザクロ(pomegranate)も多様な一連のタンニン類、特に加水分解性タンニン類を含有する。ペンタ−ガロイルグルコース(PGG)およびタンニン酸(TA)は、タンニンファミリー、すなわち天然由来ポリフェノール性化合物のグループのメンバーである。PGGはより毒性の少ないタンニン酸誘導体である。PGGは自然界に存在し、比較的無毒性であり、著しい副作用を示さないと期待される。化学構造を図3に示すPGGは、5個すべてのヒドロキシル部分において没食子酸(3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸)でエステル化されたD−グルコース分子を特徴とする。PGGによる動脈周囲処置は、AAAの臨床関連モデルにおいてエラスチン線維の統合性を保存し、腹部大動脈の動脈瘤拡大を阻止する。一般に、PGG分子は1〜4個のガロイル基をもつことができ、これらのガロイル基は異なる立体化学形態をとることができると理解される。たとえば、PGGはアルファまたはベータのいずれの形態であってもよい。] 図3
[0027] さらに、コラーゲン架橋/安定化組成物は動脈瘤その他の血管変性を伴う血管組織の高度の安定化を提供することが、出願中の米国仮特許出願番号61/113,881(Ogleら、「組織安定化のための組成物」)中で見いだされたが、これを本明細書に援用する。ある態様においては、コラーゲン架橋/安定剤をエラスチン安定剤と効果的に組み合わせることができる。これらの処置剤を同時にまたは連続して組織と接触させることができる。]
[0028] 多官能性作用剤、たとえばグルタルアルデヒド、ジアミン、ゲニピン、アシルアジドおよびエポキシアミンは、コラーゲン中の官能基を架橋し、これによりコラーゲンおよびコラーゲン成分含有組織を安定化することが知られている。コラーゲン架橋について知られている若干の官能基は、コラーゲンおよび/または近縁タンパク質中のアミノ、チオール、ヒドロキシルおよびカルボニルである。コラーゲンおよび/または近縁タンパク質に結合して架橋することにより、これらの多官能性作用剤は組織の機械的強度を高めることができる。動脈瘤の症例において、動脈瘤血管の機械的強度の増大は処置した動脈瘤組織の破裂圧に対する耐容性をそれに応じて高めることができ、したがって血管破裂のリスクを低下させる。エラスチン安定剤と組み合わせてまたは組み合わせずにコラーゲン架橋/安定剤で処置した組織は、実施例7〜11に示すように、増強された機械的特性、エラスターゼおよびコラゲナーゼなどの酵素による分解に対する抵抗性、ならびに高い熱変性温度を示すことができる。]
[0029] あるコラーゲン安定剤を、デリバリー装置を用いる有効なインビボ処置に使用し、続いてエラスチン安定剤により追加処置することができる。作用剤は急性インビボ毒性をもつ場合があるので、デリバリーおよび処置プロセス中に処置部位を分離しておくのが有利な可能性がある。あるコラーゲン安定剤は、動脈瘤の部位に徐々に放出するために、たとえばステントのコーティングの形で、動脈瘤血管の周囲を包む外科用ガードルに埋め込んで、または本明細書に記載するデリバリービヒクル中において使用できる。]
[0030] グルタルアルデヒドその他の多官能性アルデヒド化合物は、血管壁のコラーゲンに結合して安定化することが知られている。グルタルアルデヒドは特に自己重合(塊状重合)してポリマー鎖を形成し、これがコラーゲン線維間の架橋に有効であると考えられる。グルタルアルデヒドは、それ自身で、ならびに/あるいはコラーゲンおよび/または他のタンパク質に由来する近辺の活性基と重合して、処置した組織中に架橋を形成する。組織中の化学架橋は、処置した組織の分解に対する抵抗性の増大に寄与することができる。しかし、グルタルアルデヒドから残留する未反応の遊離アルデヒド基は、毒性および石灰化に関する一因となる可能性がある。毒性を低下させるために生体補綴組織を処理することは、米国特許6,471,723(Ashworthらに付与、「生体適合性補綴組織」)に記載されており、これを本明細書に援用する。]
[0031] グルタルアルデヒドは、コラーゲンに結合して架橋することにより組織の機械的強度を高める。グルタルアルデヒドを単独で、およびPGGと組み合わせてインビボ適用することが、動脈の処置に関して’834特許および’881出願に簡単に述べられている。しかし、血管の内側の動脈瘤の部位におけるインビボ処置のために、グルタルアルデヒドの量、処置濃度、処置時間、および毒性抑制剤(1以上)の適用を選択して、要望する処置効果を達成し、一方では過度の処置による望ましくない作用、たとえば過度の細胞毒性および血管ウェルの過剰硬直を避けることができる。グルタルアルデヒド、および/またはエラスチン安定剤、たとえばPGGもしくはタンニン酸を使用する予備実験結果を、実施例7〜11中にさらに詳細に提示および考察する。]
[0032] 他のコラーゲン安定剤のひとつには、ジアミン類、一般に少なくとも2個の遊離第一級アミン基をもつもの、たとえば1,6−ヘキサンジアミンおよび1,7−ヘプタンジアミンが含まれる。ジアミン類はタンパク質中のカルボキシル基に結合して架橋構造を形成する。カップリング剤およびカップリング増強剤は、ジアミン類とのこの架橋/安定化プロセスを促進することが見いだされた。たとえば、適切なカップリング剤にはカルボジイミド、たとえば1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)および/またはN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)が含まれる。カルボジイミドは架橋/安定化反応においてカップリング剤として機能し、一般にカップリング増強剤と一緒に使用される。たとえば、EDCは、この反応に対する増強剤として作用するN−ヒドロキシスルホスクシンイミド(スルホ−NHS)と併せて使用できる。他の適切なカップリング増強剤には、たとえばN−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)およびN−ヒドロキシスクシンイミドが含まれる。この処理は、このアミン基と組織内のカルボキシル基とのカップリングにより、タンパク質の間および/または内部にアミド結合または橋を形成し、こうして組織を架橋する。生体補綴組織とジアミン類ならびにカップリング剤および/またはカップリング増強剤とのインビトロ架橋が、公開された米国特許出願2006/0159641A(Girardotら、「多様に架橋した組織」)に記載されており、これを本明細書に援用する。]
[0033] コラーゲンの安定化は、他の活性剤または別法を使用して達成できる。たとえば、組織中のコラーゲンの安定化は、Carbomedicsが生体補綴心臓弁のために使用したPhotoFix(商標)技術と同様に感光色素により誘発することができる;ゲニピン(genipin)はコラーゲンを架橋しうる天然の植物性化合物である;エポキシ化合物はタンパク質中にみられる数種類の官能基と反応性である官能基をもち、そのようなエポキシ類は組織内のタンパク質、特にコラーゲンを架橋するために使用できる。さらに、エポキシアミンポリマー化合物も適切なコラーゲン架橋剤であり、それらはさらに米国特許6,391,538(Vyavahareらに付与、「移植用生体補綴組織の安定化」)に記載されており、これを本明細書に援用する。コラーゲン架橋剤として適切なポリ−エポキシアミン化合物の一例は、トリエポキシアミンの一種のトリグリシジルアミンである。さらに、コラーゲン上の遊離カルボキシル基をアシルアジド基に変換することができ、これらは隣接側鎖上のアミノ基と反応してコラーゲン組織を架橋する。この架橋法はPetite et al, Biomaterials 1995; 16(13): 1003-1008に記載されており、これを本明細書に援用する。]
[0034] 一般に、前記の治療剤(1以上)または治療組成物(1以上)でターゲティングした結合組織を、タンパク質分解に対する感受性がより低くなるように、かつ天然形状のひずみおよび破裂の可能性に対して抵抗するための向上した機械的強度をもつように、安定化することができる。ある態様においては、コラーゲン架橋/安定剤を単独で投与することができる。他の態様においては、コラーゲン架橋/安定剤をエラスチン安定剤と組み合わせることができる。さらに他の態様においては、コラーゲン架橋/安定剤およびエラスチン安定剤を別個の適用段階で連続して動脈瘤の部位へ投与することができる。コラーゲン架橋/安定剤およびエラスチン安定剤は、それぞれ適宜な適用時間、組成、デリバリービヒクル、および濃度をもつことができる。処置パラメーター、たとえば濃度、組成、デリバリービヒクル、適用装置、およびデリバリー方法を調整して、コラーゲンおよび/またはエラスチン成分を含む組織の安定化に関する多様な要求に合わせることができる。]
[0035] デリバリービヒクルおよび治療組成物
特に重要な治療組成物は、動脈瘤における結合組織を安定化するのに有効な組織安定剤と組み合わせた1種類以上のデリバリービヒクルを含む。デリバリービヒクルを選択して、安定剤(1以上)の持続放出を提供し、かつ安定剤と組織との接触条件を制御することができる。適切なデリバリービヒクルには、たとえば、安定剤から形成されたゲル、ヒドロゲル組成物、安定剤を取り込んだナノ粒子、またはその組み合わせを含めることができる。詳細には、特定の有効な治療組成物は、安定剤(1以上)をナノ粒子に取り込ませ、次いでこれらをヒドロゲルに取り込ませることにより調製できる。ある態様においては、治療組成物を複数回投与して、要望する治療効果を達成することができる。各投与の間隔の長さは、使用する治療組成物の固有の放出プロフィールと動脈瘤の状態との組み合わせにより判定できる。処置期間全体を通して、診断法、たとえば’384出願に開示された診断バイオマーカーを利用して動脈瘤の状態をモニターすることができる。本明細書に開示するデリバリービヒクルは、目的とするいずれかの活性剤の放出を制御するように同様に適合させることができる。]
[0036] 本明細書に開示する持続放出は、あるいは制御放出と呼ばれ、これは安定剤がインビボで投与後の一定期間にわたって連続デリバリーされることを表わす。安定剤の制御放出は、たとえばその安定剤の経時的な持続した治療効果により証明できる。あるいは、安定剤の制御放出は、インビボで経時的にその安定剤の存在を検出することにより証明できる。後記の想定実施例は、PGGを組み入れたポリマーのインビトロおよびインビボ放出プロフィールを証明するための方法を概説する。ある態様において、制御放出は約1週間未満であり、4日未満であってもよい。しかし、前記組成物を使用して制御放出が1週間より長い期間である可能性も考慮される。ある態様において、放出期間は約1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、またはその組み合わせであってもよい。他の態様において、放出期間は約5週間、10週間、15週間、20週間、25週間、30週間、35週間、40週間、45週間、50週間、または55週間より長い。1つの態様において、放出期間は約26週間である。これらの明記した範囲内における他の範囲の時間が考慮され、それらが本発明の開示に含まれることは、当業者に認識されるであろう。]
[0037] ある態様において、ヒドロゲルはインビボで、ヒドロゲルの前駆体、たとえばヒトの生理的体温など閾値温度に達した時点で架橋するブロックコポリマーから形成される。温度がこれとほぼ同じかまたはより高い状態に維持されれば、形成されたヒドロゲルは一般に架橋の結果として水溶液に溶解しない。使用するコポリマーはより低い温度、たとえば室温では可溶性である。これらのブロックコポリマーの熱ゲル化特性のため、組織安定剤を適量のブロックコポリマーと組み合わせて治療組成物溶液を形成することができる。この治療組成物を患者の動脈瘤の部位に投与すると、その場でヒドロゲルを形成し、これが動脈瘤に留まって組織安定剤の持続放出を提供する。pH、ゲル化温度、溶解度、含水率および粘弾性などの変数の影響を調べることにより、得られるゲル配合物に対する組織安定剤の物理化学的作用を考慮に入れる。ヒドロゲルは生分解性であってもよい。これらの態様について、生分解性ヒドロゲルの放出プロフィールはさらにヒドロゲル自身の生分解により影響される。ある態様において、組織安定剤は、ヒドロゲルの前駆体とともに分散物を形成する前に、さらにポリマーに埋め込まれてナノ粒子を形成する。]
[0038] ヒドロゲル用の市販ブロックコポリマーのひとつは、プルロニック(商標)ポリマーであり、これらは一般にポリオキシ−プロピレン/ポリオキシ−エチレンまたはポリオキシ−エチレン/ポリオキシ−プロピレン/ポリオキシ−エチレンブロックコポリマーを含む。これらのブロックコポリマーおよび類似する組成物の架橋から得られるヒドロゲルを、プルロニック(商標)ヒドロゲルと呼ぶことができる。得られたヒドロゲルはさらに生分解性である。特にポロキサマー(Poloxamer)407ヒドロゲルは短期間のドラッグデリバリービヒクルとして使用され、またこのヒドロゲルと他のデリバリービヒクル、たとえばPLGAナノ粒子との組み合わせとして使用されて長期間の徐放プロフィールを提供する。ポロキサマー407は、中心のポリプロピレングリコールの疎水性ブロックがポリエチレングリコール(PEG)の親水性ブロック2つで囲まれたものからなるトリブロックコポリマーである。2つのPEGブロックのおおよその長さは101反復単位であり、一方、プロピレングリコールブロックのおおよその長さは56反復単位である。ポロキサマー407は、12.6kDaの平均分子量および56℃の融点をもつ。ポロキサマー407はBASFの商品名プルロニック(商標)F127によっても知られ、BASFから販売されている。ポロキサマー407などのゲル形成ポリマーはその場でゲル化しうるヒドロゲルであり、それらは体液に対して柔軟な透過性かつ親水性の界面を生じるのでデリバリービヒクルとして重要である。それらは米国薬局方、欧州薬局方、およびFDAの不活性成分データベースにも挙げられている。ポロキサマー407はそれの毒性ポテンシャルについて評価がなされており、ドラッグデリバリーを達成するためのビヒクルとしての使用が許容されている。ゲル化に使用するブロックコポリマーは、ゲル化温度、および最終ヒドロゲルの他の重要な特性、たとえば活性剤がヒドロゲルから放出される速度に、直接影響を与える。]
[0039] プルロニック(商標)ブロックコポリマーは、さらに修飾すると、種々のデリバリー要求に対処するための多様なゲル化特性を示すことができる。たとえば、プルロニック(商標)ポリマーは、生物活性物質を導入するためにさらに修飾しうる官能基をもつ作用剤とカップリングさせることができる。得られる最終ポリマーは、改良された熱ゲル化温度および細胞に対する親和性をもつことができる;たとえばWO2007/064152A(Hanら、「組織再生のための生物活性物質とカップリングした注入可能な感熱性プルロニックヒドロゲルおよびその調製法」)に開示されたもの;本明細書に援用する。あるいは、プルロニック(商標)ポリマーを他のポリマー、たとえばPLGAポリマー構成ブロックと組み合わせて、感熱性の生分解性ヒドロゲルを形成することができる;たとえばPCT出願公開WO01/41735A(Shahら、「低分子量プルロニックをベースとする感熱性の生分解性ヒドロゲル」)に開示されたもの;本明細書に援用する。本明細書中で考察するブロックコポリマーおよび患者に導入するのに適した他のヒドロゲル前駆体を同様に使用できる。]
[0040] プルロニック(商標)ヒドロゲルのみからの薬物放出速度は、ポアサイズ、架橋度、および取り込まれた薬物の性質に応じて比較的速やかな傾向があり、一般に一次反応速度に従う。患者に導入するための他のヒドロゲル配合物が当技術分野で知られており、本明細書に記載するデリバリービヒクルとしての使用に適合させることができる。一般に、最終的な治療組成物中のポリマーの最終濃度は約5%〜約98%(重量)の範囲であってよく、治療組成物中の組織安定剤の濃度は約0.05〜約100mg/mLの範囲であってよい。さらに、ヒドロゲルは5〜95%、7〜80%、8〜75%、9〜70%、10〜60%、12〜50%、または15〜40%(重量)の範囲であってよく、組織安定剤はヒドロゲル前駆体溶液において約0.05〜100mg/mL、0.1〜95mg/mL、0.2〜90mg/mL、0.5〜80mg/mL、1.0〜70mg/mL、2.0〜60mg/mL、5〜50mg/mL、または10〜40mg/mLの範囲の濃度をもつことができる。ある態様において、使用するヒドロゲルはプルロニック(商標)F−127であり、治療組成物の全重量に対して約20〜40重量%の範囲である。ある態様において、組織安定剤はPGGであり、ヒドロゲル前駆体溶液において約0.1〜50mg/mLの範囲の濃度をもつ。1つの態様において、PGGの濃度は約0.1〜2mg/mLである。これらの明記した範囲内における他の範囲の濃度が考慮され、それらが本発明の開示に含まれることは、当業者には認識されるであろう。]
[0041] ドラッグデリバリーのためのポリマー粒子には一般にたとえば生体適合性ポリマーが含まれ、それらは球形であっても球形でなくてもよい。ポリマー粒子は一般に約5ミクロンを超えない、他の態様においては1ミクロンを超えない、さらに他の態様においては約250ナノメートルを超えない平均粒子直径をもつことができ、その際、非球形粒子については直径は粒子の中心を通る平均寸法である。ナノ粒子およびマイクロ粒子を使用するドラッグデリバリーは、さらにたとえば公開された米国特許出願2006/0034925(Auら、「薬物を組み入れた腫瘍ターゲティング粒子」)に記載されており、これを本明細書に援用する。]
[0042] 一般に、生体吸収性高分子バインダーからナノ粒子を作製するのが有利な可能性がある;これらのポリマーの漸次溶解により粒子から安定剤を放出させることができるからである。いずれか適切な生体適合性の生体吸収性ポリマーを一般に使用できる。適切な生体吸収性ポリマーには、たとえばデキストラン、ヒドロキシエチルデンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリドンおよびその組み合わせが含まれる。他の態様において、適切な生体吸収性ポリマーにはポリヒドロキシ酸およびそのコポリマー、たとえばポリ(カプロラクトン)、ポリ(ジメチルグリコール酸)またはポリ(ヒドロキシブチレート)、ならびに乳酸および/またはプリコール酸のポリマーおよびコポリマーが含まれる。ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)からのナノ粒子の形成を後記の実施例に記載する。PLGAはポリ乳酸(PLA)とポリグリコール酸(PGA)のコポリマーである。重合に使用するラクチドとグリコリドの比率に応じて、種々の形のPLGAを得ることができる。主にPLAまたはPGAのみからなるポリマーも使用できる。後記にさらに記載するように、組織安定剤を埋め込んだマイクロ/ナノ粒子の、ヒドロゲル内における組み合わせの使用は、相乗デリバリーの利点をもたらすことができる。したがって、本明細書に記載する動脈瘤安定化組成物のデリバリーの向上によって、本明細書に記載するヒドロゲルおよび/または粒子を使用してより効果的にデリバリーすることができる。]
[0043] 長期間の組織安定剤デリバリーのために、他の制御放出デリバリービヒクル(たとえばナノ粒子)を何ら有害作用なしにヒドロゲル内に捕獲することができる。ナノ粒子の取り込みは、封入された安定剤の良好な放出制御を提供するほか、薬物の隔離、より遅い放出速度、向上した滞留時間、および種々の放出プロフィールの達成など、さらに他の利点をもつことができる。ナノ粒子のみを使用して数週間ないし数カ月間という長期間の薬物放出を達成することができるが、そのようなビヒクルは一般に定常的な放出プロフィールを生じない。ナノ粒子は、表面に会合した安定剤の結果として、初期の急速な爆発的放出を示す可能性がある。さらに、その部位にナノ粒子を局在化するのは困難な可能性がある。]
[0044] ヒドロゲル内に埋め込まれた粒子、たとえばナノ粒子は、特に重要である;ヒドロゲルマトリックスが安定剤の分解を阻止し、局所デリバリーを可能にし、かつ安定剤の放出速度に対する追加制御をも可能にするからである。さらに、配合パラメーター、たとえば安定剤−対−ポリマー比、ポリマー分子量および組成を変更することにより、ナノ粒子から放出される安定剤の持続時間およびレベルを容易に調節することができる。ヒドロゲル内のナノ粒子の組み入れを調整して、要望する量の組織安定剤を患者に到達させることができる。ある態様において、ナノ粒子はエラスチン安定剤を粒子形成ポリマーと組み合わせて含む。ある態様において、ナノ粒子はコラーゲン安定剤を粒子形成ポリマーと組み合わせて含む。さらに他のある態様において、ナノ粒子はコラーゲン安定剤とエラスチン安定剤の組み合わせを含む。ある態様において、ナノ粒子はヒドロゲル中に約0.5〜95、1.0〜90、2.0〜80、2.5〜70、5〜60、7〜50、10〜40または20〜30重量%の範囲であってよい。1つの態様において、ナノ粒子は治療組成物全体の約2〜60重量%の範囲である。ヒドロゲルベースの治療組成物中における他の範囲のナノ粒子組み入れ量が考慮され、それらが本発明の開示に含まれることは、当業者に認識されるであろう。]
[0045] 詳細には、たとえば、想定実施例1に詳細に開示するエマルジョン溶媒蒸発法によりPGG−PLGAナノ粒子を製造することができる。ポリマー組成、薬物の組み入れ量、および粒度分布は、臨床要求に基づいて選択すべき重要なパラメーターである。ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)コポリマーは、多様な比率の乳酸またはラクチド(LA)とグリコール酸またはグリコリド(GA)から構成することができる。このコポリマーは種々の平均鎖長をもつことができ、その結果、種々の内部粘度およびポリマー特性の相異が生じる。ある態様において、ナノ粒子は約0.1nm〜約5μm、約1nm〜約1μm、約10nm〜約1μm、約50nm〜約1μm、約100nm〜約1μm、約250nm〜約900nm、約600nm〜約800nmの平均サイズをもつ。ある態様において、ナノ粒子のサイズは約50〜500nmの範囲の平均直径をもつ。1つの態様において、ナノ粒子は約100〜200nmの平均直径をもつ。ある態様において、ナノ粒子に埋め込まれた組織安定剤は、ナノ粒子に対して約0.05〜99、0.1〜95、0.5〜90、1.0〜80、2.5〜70、5〜60、7〜50、10〜40または20〜30重量%の範囲であってよい。ある態様において、組織安定剤はナノ粒子に対して約0.05〜50重量%の範囲である。これらの明記した範囲内における他の範囲の濃度が考慮され、それらが本発明の開示に含まれることは、当業者には認識されるであろう。]
[0046] ある態様において、組織安定剤自身をデリバリービヒクルとして使用することが有利な場合がある。たとえば、PGG配合物は特定の条件下でゲルを形成することが示された。PGGの濃度およびゲル形成に際してのpHなどの条件は、得られるゲル特性に影響を与える。ある態様において、PGGゲルを約37℃、すなわち患者の体温で溶解するように配合することができる。さらに、あるいは、約37℃またはより高い温度でそれのゲル形態を維持するゲルとして、PGGを配合することができる。ゲル形態のPGGは、ドラッグデリバリービヒクルとして、たとえばコラーゲン安定剤のための徐放性デリバリービヒクルとして、要望に応じて特性を調整して使用できる。したがって、PGGはデリバリービヒクルおよび安定剤の両方であろう。ゲル形態のPGGを、他のデリバリービヒクル、たとえばヒドロゲルおよび/またはポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)ナノ粒子と組み合わせて使用して、安定剤について短期または長期の放出プロフィールを得ることもできる。]
[0047] ポリペプチドベースの処置剤のデリバリーのためにPGG配合物を使用することは、たとえば米国特許7,323,169(Goldenbergらに付与、「持続放出配合物」)に記載されており、これを本明細書に援用する。PGGは目的とする作用剤との沈殿を形成し、次いでこれを分離および乾燥して粉末を調製する。この粉末を、動脈瘤へ処置のためにデリバリーされるナノ粒子として使用できる。エピガロカテキンガレート(EGCG)も同様にデリバリービヒクルとして使用できる。これらの方法を、PGGまたはEGCG自身、およびコラーゲン安定剤、たとえばGluのデリバリーに適応させることができる。これらの粒子を他のデリバリービヒクル、たとえばヒドロゲルおよび/またはナノ粒子と組み合わせ、場合によりこのヒドロゲルおよび/またはナノ粒子内に封入したコラーゲン安定剤とともに使用することもできる。]
[0048] 後記の実施例にさらに記載するように、組織安定剤、たとえばPGGの局所適用(溶液として浸漬ガーゼを使用して適用)は、ラットにおいてAAAの抑制に有効であった。PGGデリバリーのための種々の方法を本明細書中の考察および関連の一般法に展開する。コラーゲン安定剤、たとえばグルタルアルデヒド(Glu)も、単独で、またはエラスチン安定剤、たとえばPGGと組み合わせて、同様に取り込ませることができる。たとえば、AAAその他の動脈瘤の処置に、(1)組織安定剤、たとえばPGGおよび/またはGluを含むヒドロゲル、たとえばプルロニック(商標)ゲル、(2)組織安定剤を組み入れたポリマーナノ粒子:PGG単独、Glu単独、またはPGG+Glu、(3)(2)のポリマーナノ粒子を含むヒドロゲル、(4)PGGおよび/またはGluを含みさらに(2)のポリマーナノ粒子を含むプルロニック(商標)ゲルなどを使用して、要望する制御放出プロフィールを備えた治療組成物を調製することができる。]
[0049] デリバリービヒクルによって、安定剤の濃度を、より効果的な組織安定化に関して要望する効果を達成するのに十分な期間、有効ウインドウ内に維持すること、および動脈瘤の部位に副作用を生じる可能性のある過度の濃度を避けることが一般に有用である。濃度のウインドウは個々の組織安定剤に依存する可能性があり、適切な濃度は後記の実施例および想定実施例に概説した経験的な評価とともに本明細書中の教示に基づいて評価することができる。デリバリービヒクルの制御放出プロフィールは、デリバリービヒクルに関連するヒドロゲルおよび/またはナノ粒子の一般的特性のほか、pH、安定剤の塩形態および濃度などの条件によってさらに調節することができる。]
[0050] 治療組成物のデリバリー選択肢
本明細書中で考察する治療組成物は、血管内手法、血管周囲手法またはその組み合わせで動脈瘤部位に適用することができる。ある態様において、治療組成物は動脈瘤血管の外側に適用することができ、これは動脈瘤血管の周囲でゲル化するであろう。動脈瘤血管の周囲でゲル化した際の治療組成物の機械的特性は、ゲル化した治療組成物が血管の周囲に留まりさらにそれ自身を周辺組織に繋ぎ止めるように調整することができる。非侵襲性のデリバリー方法、たとえば腹腔鏡検査法を利用して組成物をデリバリーすることができる。]
[0051] 組織安定剤による処置を機械的安定化と組み合わせることができる。特に、図2Cに示すように、血管周囲ガードルラップを動脈瘤の外側に配置して、化学的安定化とともに機械的安定化をもたらすことができる。たとえば、治療組成物をラップの内側に沿ってコーティングし、および/またはラップの材料に埋め込むことができる。このラップは、本明細書に記載するデリバリービヒクルに加えて、一貫した薬物放出のための動脈瘤部位への緊密な接触をもたらす。これらの態様において、ガードルラップは動脈瘤部位の血管構造を物理的に補強して、それが破裂するのを阻止する。安定剤は、その位置の血管がそれ以上分解するのを抑制するとともに、血管の組織を安定化および補強する作用をする。デリバリービヒクルは、治療組成物中の組織安定剤の放出速度を調節する。ラップは生体適合性ポリマー、たとえばポリエステルから作製することができ、これらを織布または不織布の形態にすることができる。あるいは、ラップは生体吸収性材料、たとえば米国特許No.6,258,122(Twedenらに付与、「生体吸収性の環状形成補綴物」)に開示されたものから作製することができ、これを本明細書に援用する。] 図2C
[0052] ある態様において、動脈瘤部位を血流から一時的に分離できれば、血管内方法で治療組成物をその部位に適用することができる。動脈瘤の分離した容積へ治療組成物をデリバリーするデリバリー装置は、たとえば米国特許出願12/173,726(’726出願、Ogleら、「血管動脈瘤の処置のための装置」)に記載されており、これを本明細書に援用する。このデリバリー装置は、正規の血流が動脈瘤の部位を迂回するようにしながら安定剤で処置するために動脈瘤を分離する可能性をもたらす。普通はまずデリバリー装置で動脈瘤を吸引して圧力を軽減し、続いて組織安定剤を含有する治療組成物をデリバリーする。デリバリー装置は種々の適用要求に合わせるために多様な態様をもつ。これらのデリバリー装置は場合により、動脈瘤の圧力を軽減する能力に基づいて処置の有効性を向上させるための、かつ動脈瘤付近の組成物を除去する能力をもつ、吸引装置を備えている。図4および5に示す装置は、’726出願に開示された一般的な概念を説明する。装置の他の態様が’726出願に説明されている。ある態様において、’726出願に開示された装置を使用する血管内処置を、血管周囲処置、たとえば腹腔鏡検査法を使用して治療組成物を動脈瘤の外側にデリバリーするものまたは前記の血管周囲ガードルを使用するものと組み合わせることができる。] 図4
[0053] 迅速交換デリバリー装置を図4(上)に模式的に示す。分離/デリバリー装置100は、軸102、シーリングエレメント104、誘導口108を備えた誘導管腔106、および3つの対応する管腔を通した流体のデリバリーまたは取り出しを行なう3つのアクセス口110、112、114を含む。軸に取り付けた別個の誘導管腔106を通って伸びた誘導線120を示す。図4(下)は、軸102の横断面を示す;これは3つの流動管腔122、124、126を含み、これらはそれぞれアクセス口110、112、114と流体連絡している。] 図4
[0054] 図5に示すように動脈瘤136を分離するために血管134の内側に配置されると、装置100のシーリングエレメント104は伸長した構造に変わって血管134の内側に分離した容積138を形成する。伸長した構造への変移は、装置の特定の設計に基づいて行なうことができる。たとえば、伸長した構造への変移は、たとえば1以上のバルーンの充填により、鞘からの自己伸長部材の解放により、または作動エレメントの使用により行なうことができる。血管内の流れは、シーリングエレメント104のバイパスチャネル140により維持される。流体交換部分142は、装置100の124などの管腔と分離した容積138との間で流体を交換するための構造をもつ。任意の段階で、装置100の流体交換部分142および管腔124を通して、分離した容積138から血液を取り出す。血液の取り出しは分離した容積138内の圧力を低下させ、その結果、動脈瘤136における血管のひずみを軽減または排除することができる。] 図5
[0055] 装置100のアクセス口110、112、114を、流動装置、たとえば注射器、ポンプもしくはこれらに類するもの、またはその組み合わせに接続することができる。たとえば、空の注射器を口110に接続して、分離した容積138から体液を取り出して動脈瘤136の部位の圧力を低下させることができる。本明細書に開示する治療組成物を装填した他の注射器を口112に接続して、本明細書中で考察する治療組成物を動脈瘤136の分離した容積138へ血管134の内側でデリバリーすることができる。ルアー取付け部品その他の適切な取付け部品、たとえば当技術分野で既知のものを使用して、流動装置をアクセス口に取り付けることができる。]
[0056] ある態様において、患者に適用した際、前記で考察したデリバリー/分離装置を使用して動脈瘤の部位へデリバリーされた後にゲル化するようにヒドロゲルを選択することができる。ゲル化プロセスにより組成物が動脈瘤組織に付随して保持される。材料が適正に設置された時点で、デリバリー/分離装置を取り出すことができる。同様に、このデリバリー/分離装置を使用して、組織安定剤が埋め込まれたナノ粒子を分散物として適用することができる。分散物中のナノ粒子は動脈瘤組織内へ浸透して、それの効果をもたらすことができる。あるいはナノ粒子をヒドロゲルとともにデリバリーすることができ、このヒドロゲルがナノ粒子を動脈瘤組織付近に保持する。]
[0057] ある態様において、本明細書に記載するデリバリー装置を使用して、有効量のコラーゲン安定剤、たとえばグルタルアルデヒドを、分離した動脈瘤組織へ、最初に体液を吸引して圧力を軽減した後にデリバリーする。コラーゲン安定剤を動脈瘤組織と一定期間相互作用させた後、吸引排出する。この期間は、たとえば約5、10、15、20、25または30分間であってよく、ある態様においてはより長くてもよい。場合により、コラーゲン安定剤で処置した動脈瘤組織を緩衝液、たとえば食塩水ですすいだ後、本明細書に記載する治療組成物を使用してさらに処置することができる。デリバリー装置は複数の流動装置に接続した複数の口をもつことができるので、流動装置の内容物を切り替える間、デリバリー装置を血管内に保持しておくことができる。コラーゲン安定剤による初回処置の後、エラスチン安定剤、たとえばPGGを、たとえば本明細書に記載するブロックコポリマーとともに動脈瘤へデリバリーすることができる。ブロックコポリマーは、動脈瘤組織に到達するとその場でヒドロゲルを形成して、長期放出のためにPGGをヒドロゲルの内部に閉じ込める。ヒドロゲルは場合によっては、より長期の放出のためにPGGを封入したナノ粒子を含むことができる。あるいは、PGGを封入したナノ粒子をヒドロゲルなしで分散物として投与することができる。この分散物中の溶液はPGGおよび/またはグルタルアルデヒドを含むことができる。]
[0058] コラーゲン安定剤処置段階およびエラスチン安定剤処置段階は、デリバリー装置を取り出さずに連続して行なうことができ、あるいは間でデリバリー装置を取り出して別個の段階として行なうことができる。動脈瘤の状態に基づいて、処置段階を異なる組み合わせの治療組成物および時間間隔で複数回行なうことができる。時には、周期的に、または組織安定剤の持続放出が有意に低減した時点で、処置段階を繰り返すことができる。’384出願に開示された診断バイオマーカーを使用するなどの診断法を用いて、処置の用量および期間の判定を補助することができる。]
[0059] 治療組成物の輸送および貯蔵選択肢
組織安定剤は、デリバリービヒクルと組み合わせて多様な条件下で輸送および貯蔵することができる。たとえば、安定剤はデリバリービヒクルのほかに医薬的に許容される担体および/または賦形剤をさらに含むことができる。本明細書中で用いる「医薬的に許容される担体」には、生理的に適合するあらゆる溶媒、分散媒質、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤、ならびに吸収遅延剤などが含まれる。賦形剤には、医薬的に許容される安定剤および崩壊剤が含まれる。]
[0060] 前記の組成物またはそれらの成分は、一般に流通に適した無菌容器内に貯蔵される。容器には一般に、安全な保存期間に基づく有効期限が標記される。また、容器は一般に適切なFDA承認の指示および警告を添えて輸送される。ある態様において、組織安定剤とデリバリービヒクルは患者に投与する直前まで別個に貯蔵される。他のある態様においては、組織安定剤をデリバリービヒクルと混合して治療組成物を調製し、それに応じて貯蔵する。さらに他のある態様においては、組織安定剤の一部分をデリバリービヒクルと組み合わせて混合物を調製することができ、一方、組織安定剤の他の部分は患者に投与する直前までこの混合物と組み合わせられて最終的な治療組成物を調製することはない。ある態様においては、治療組成物を注射器の管腔内にパッケージして流通させることができる。ある態様においては、多様な成分または形態の治療組成物を異なる注射器の管腔内にパッケージすることができる。]
[0061] 前記の態様は説明のためのものであって、限定のためのものではない。他の態様が特許請求の範囲に含まれる。さらに、本発明を特定の態様に関して記載したが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく形態および細部において変更をなしうることは当業者に認識されるであろう。前記文書の援用はいずれも、本明細書の明白な開示内容に反する主題を含まないように限定されている。本明細書中で参照したすべての特許、特許出願および刊行物を、援用するものが本明細書の明白な開示内容のいずれかに反しない限りにおいて本明細書に援用する。]
[0062] フェノール性タンニン、たとえばPGGは大動脈のエラスチン成分に結合し、エラスターゼによる分解に対して動脈組織の抵抗性を高める。このエラスターゼに対する抵抗性は、あるレベルの酵素分解を既に受けている組織にPGGを適用した場合ですら有効であった。実施例5および6に提示する一連のインビボパイロット試験において、PGG溶液の血管周囲適用はラットモデルの腹部大動脈瘤の形成および進行を制限することが示される。いずれか特定の理論により拘束されるべきではないが、動脈エラスチンへのPGGの結合はエラスチンを酵素分解から保護し、したがって動脈瘤の進行を制限すると考えられる。さらに、コラーゲンの安定剤、たとえばGluは、単独でまたはPGGとの組み合わせで大動脈組織に対してさらに保護を示した。]
[0063] 実施例1.純粋な大動脈エラスチンへのタンニンの結合
タンニンがエラスチンに結合する反応速度を判定するために、ブタ大動脈から得た純エラスチンストリップをタンニン酸(TA)とともに最高24時間インキュベートした。溶液中のTAの濃度をフォリン−デニス(Folin−Denis)法でアッセイした。図6の上の図は、純エラスチンストリップの乾燥重量に対して規準化したTAの結合値を示す。この反応速度はTAの速やかな取り込みを示し、これはエラスチンへのタンニンの結合の明らかな指標となる。0〜6時間のすべてのデータ点は、p<0.05で統計的に差がある。図6の下の図は、TAとエラスチンの相互作用を表わす模式図である。疎水性ドメイン(2、黒いセグメント)はエラスチン分子内のエラスターゼ開裂に感受性の領域である。これらの疎水性領域に対する親和性をもつTAおよびPGG分子(4、丸い構造体)は、エラスチン分子内のこれらの領域に結合し、それらのヒドロキシル部分と隣接エラスチン分子の領域との間に多数の水素結合(5、点線)を樹立し、その結果エラスチン安定化が向上すると思われる。デスモシンはエラスチン分子の親水性領域(1)内で架橋している(3、X)。] 図6
[0064] 実施例2.タンニンは純粋な大動脈エラスチンを分解から保護する
エラスチン安定剤としてのタンニンの効力を調べるために、ブタ大動脈から得た純エラスチンをタンニン酸(TA)で処理し、処理したブタ大動脈のエラスターゼに対する抵抗性を試験した。大量の新鮮な組織が容易に得られるのでブタ大動脈を選択した。図7は、エラスターゼの作用に対するタンニン酸仲介による純エラスチンの安定化を示す。新鮮なブタ大動脈の組織学的所見を図7Aに示す。ブタ大動脈からの純エラスチンは、水酸化ナトリウム処理に続くコラゲナーゼ消化を用いて得られた。平滑筋細胞、コラーゲンおよび基質マトリックスは、精製した大動脈エラスチンには存在しない。その結果、図7Bに示す無傷の高度に精製されたエラスチンが得られ、これに含まれるランダムペプチド開裂は最小限度であり、ヘキソサミンレベルは低く、かつタンパク質不純物は検出不可能である。図7の左のグラフに示す質量損失(p<0.05、n=6)により評価されるように、エラスターゼは純エラスチンストリップを完全に消化し、一方、0.3% TAの前処理段階を加えると酵素消化に対する安定性がほぼ50%増大した。重量法によるデータをさらに組織学的検査により確認し、図7A〜Dに示した。エラスターゼ消化したエラスチン対照の組織学的分析は48時間目には完全(約100%)分解のため不可能だったので、純エラスチンを1.5時間、すなわち約50%の消化および質量損失が得られる期間だけエラスターゼに曝露した。図7Cに示すように、部分消化したエラスチンは広汎なほつれ(fraying)および著しい線維損失を示した。しかし、図7Dに示すように、TA安定化したエラスチンのエラスターゼ処理は、48時間目までエラスチン統合性の著しい損失なしに大動脈構造が顕著に保存されたことを示した。] 図7 図7A 図7B 図7C 図7D
[0065] 実施例3.PGGおよびTAは新鮮な大動脈をインビトロで酵素分解から保護する
新鮮な未処理大動脈および0.3% TAまたは0.15% PGG(等モル濃度)で処理した大動脈を使用して、エラスターゼ消化に対する抵抗性を試験した。図8に示すように、TAまたはPGGによる処理はエラスターゼに対する大動脈の抵抗性を劇的に増大させ、対照である未処理の新鮮な大動脈のものより有意に低い消化値が得られた(p<0.05)。TAとPGGの試料における消化値の差は有意でなかった(p>0.05)。これは高濃度の酵素を使用した促進消化試験である。そのような高い酵素活性がインビボで起きるとは予想されない。] 図8
[0066] 実施例4.PGGは部分消化されたエラスチンに結合して保護する
臨床状況では、PGGは既にあるレベルの組織分解を受けていると思われる罹患組織に適用されるであろう。したがって、多様な量および質のエラスチンを含む動脈検体に対するPGGの効力を評価するのは価値がある。これらの多様なエラスチンレベルは、図9に示すように、ある範囲のエラスチン分解酵素濃度を組織に個別に施して、動脈瘤の種々の発達時期、たとえば初期、中等度および後期の動脈瘤にみられる分解を模倣することによりシミュレートできる。ブタ大動脈の試料に下記のいずれかの濃度のエラスターゼを24時間施した:20U/mL、1U/mL、0.5U/mL、または0U/mL(緩衝液対照)。第1ラウンドの消化の後、試料を0.1% PGG(または対照としての食塩水)により37℃でちょうど30分間処理した。処理した時点で、試料を第2ラウンドのエラスターゼに曝露して(5U/mL、48時間)、それ以上の分解に抵抗するPGG処理の有効性を評価した。質量損失パーセントを計算するために、第1ラウンドのエラスターゼ後の乾燥重量を第2ラウンドのエラスターゼ後の乾燥重量と比較した。図10に示すように、初期または中等度の動脈瘤をシミュレートして0.5U/mLおよび1U/mLのエラスターゼで軽度または中等度に分解した組織に対し、PGGは食塩水対照と比較して最も有効である。しかし、図10において20U/mLエラスターゼで最初に重度に分解したPGG処理試料ですら、食塩水処理対照と比較した場合、それ以上のエラスチン溶解性分解に対する抵抗性において同様にある程度の改善を示した(p<0.05)点に注目することが重要である。] 図10 図9
[0067] 実施例5.外膜周囲PGG処理は腹部動脈瘤の形成を低下させる
げっ歯類の腎臓下の腹部大動脈への塩化カルシウム(CaCl2)の血管周囲適用は、受け入れられているラット動脈瘤モデルである。それは、正中線切開により腹部大動脈を露出させ、ガーゼを使用してCaCl2溶液を大動脈上に15分間、直接適用し、続いて外科的に縫合することを伴う。この動脈瘤モデルを使用して、ラットにおける腹部大動脈瘤の発達に対する1回のPGG適用の効果を評価した。この試験のために、成体ラット(n=12)の腹部大動脈を露出させ、ディジタル写真撮影を使用して大動脈直径を測定し、浸漬ガーゼを使用して食塩水中0.03% PGG溶液を15分間適用した。食塩水中ですすいだ後、0.5mol/L CaCl2溶液の15分間適用により大動脈傷害を誘発した。対照ラット(n=12)を食塩水で15分間処理し、すすぎ、次いで0.5mol/L CaCl2溶液で15分間処理した。28日後、全身麻酔下で腹部大動脈を再び露出させ、外径を測定し、次いでラットを安楽死させて分析のために大動脈を採集した。外科処置後ゼロ日目および28日目の対照(食塩水処理)ラットの大動脈外径の比較測定(それぞれ1.395±0.052mmおよび1.939±0.112mm)により、42±10%(p<0.05)の平均直径増大が明らかになった。これと比較して、PGGに曝露した大動脈は、図11に示すように、28日後に1.564±0.064mmから1.676±0.097mmへの最小(8±7%)の直径増大を示した。] 図11
[0068] 血管周囲へのCaCl2の適用は、大動脈拡張とともに、エラスチンに特有のアミノ酸であるデスモシンの分析により示される血管のエラスチン含量および統合性、ならびに組織学的所見に、大きな変化を誘発した;すべて図12に示す。同齢のラット(0日目として表わす)から採集した非外科処置対照大動脈と比較して、食塩水処理した対照グループの大動脈エラスチン含量は図12の左のグラフにおいてデスモシン含量の著しい低下により示唆されるようにほぼ50%低下した。この同じグループについてヴァーヘフ・ファン・ギエッソン(Verhoeff van Giesson)(VVG)染色の使用により示される組織学的所見は、傷害後28日目に特徴的な弾性膜の平坦化および断片化を示した;図12の右中パネルに示す。] 図12
[0069] これに対し、PGGグループからの大動脈は、正常な非外科処置対照大動脈と比較してエラスチン含量の低下をほとんど示さず(非外科処置対照と対比して15%未満のデスモシン損失、p>0.05)、かつ弾性膜の統合性および波状性の卓越した保存度を示した;これはPGGデリバリーがこの動物モデルにおいてエラスチン変性を効果的に阻止したことを示唆する。さらに、外植大動脈の定量PGG含量分析は、PGG適用後28日目に外植したラット大動脈が、0日目にPGG適用直後に外植したラット大動脈と比較してわずかに低い(データは示していない)けれども統計的に差はない量のPGGを含むことを明らかにした:1.2±0.4μg PGG/mg乾燥組織−対−1.8±0.6μg PGG/mg乾燥組織;p>0.05。これらのデータは、大動脈組織へのPGGのインビボ結合がこの促進モデルにおいて最低28日間は比較的安定であることの指標となる。]
[0070] 実施例6.げっ歯類においてPGGによる動脈瘤大動脈の外膜周囲処置は動脈瘤の進行を制限する
先に記載したものと同じ血管周囲CaCl2大動脈傷害モデルを使用して、増殖している動脈瘤の進行を停止させるPGGの能力を評価した。先に述べたインビボ実験は本質的に、PGGをCaCl2ベースの動脈瘤誘発の直前に健康な腹部大動脈に適用することにより、動脈瘤形成に対するPGGの影響を評価した。しかし、より臨床関連の筋書を作成するために、動脈瘤性であったラット腹部大動脈にもPGGを適用して、PGGが動脈瘤の進行を妨害または停止する能力を調べた。これを行なうために、ラットの大動脈を塩化カルシウムで処理し、動物を縫合し、AAAを28日間発達させた。]
[0071] この時点で、動脈瘤大動脈を2回目の外科処置により露出させ、ガーゼを使用してPGGを血管周囲に適用した。対照として、食塩水を同じ手段で残りの動脈瘤大動脈に適用した。両グループにおいてAAAの進行をさらに28日間追跡した。直径が次第に増大して56日目に平均47.1±11%の増大に達するのが対照グループ(n=11)において測定され、その結果を図13に示した。約半数の動脈瘤大動脈の直径が28日目から56日目までに有意に増大し、これはこの動物モデルにおける慢性的なAAA進行の指標となる。] 図13
[0072] これに対し、PGGに曝露した動脈瘤大動脈は、図13に示すように28日目の平均値と比較して56日目に平均直径の増大を示さなかった(n=11)。PGGグループの100%の大動脈(11中の11)が28日目と比較して56日目に同じ直径を維持し、あるいは大動脈直径の縮小を示したことは、特に注目に値する;図13の下半分の表に示す。PGGグループについて56日目の平均直径値は実際に28日目のものよりわずかに低かったが、統計的に有意ではなかった(p>0.05)。] 図13
[0073] 傷害後56日目に、対照グループでは動脈瘤大動脈が弾性膜の広汎な平坦化、断片化および変性を示した。動脈瘤大動脈に多孔質の「スポンジ状」外観を与えている無数のギャップまたは裂孔(lacunae)によっておおまかに示されるように、全般的な組織構築は著しい組織変性を表わしていた。これに対し、PGG処理した大動脈は、図13に示すように弾性膜の統合性および波状性の保存度の改善ならびに全般的に保存された構築を示した。全般的にこれらの結果は、動脈瘤大動脈へのPGG適用がこの実験モデルにおいて動脈拡張を効果的に妨げ、それ以上の分解を制限したことの指標となる。] 図13
[0074] 実施例7.処理後のエラスターゼ分解に対する組織抵抗性
種々の作用剤で処理した後のエラスターゼ分解に対する組織抵抗性を試験した。詳細には、ブタ頚動脈を食塩水(対照、20分間)、グルタルアルデヒド(Glut)(20分間)、PGG(20分間)、またはこれら2つの組み合わせ(Glut+PGGで20分間、またはGlutで10分間、続いて別個にPGGとともに10分間のインキュベーション)で処理した。使用した作用剤の濃度は、Glutについては0.6%(w/v)、PGGについては0.15%(w/v)、生理食塩水については9g/Lであった。]
[0075] 次いで処理組織についてインビトロエラスターゼ消化アッセイを行なって、処理組織に24時間の消化を施した。すべての実験を37℃で実施した。動脈の消化率パーセントをアッセイ後に測定し、結果を図14に示す。示した数値は消化のパーセントであるので、数値が低いほど使用した作用剤はエラスターゼ分解抵抗においてより良好な性能を示した。個別には、GlutおよびPGGはそれぞれ、食塩水対照と比較して分解に対する組織の抵抗性をわずかに改善した。GlutとPGGを前記に示したように一緒にカクテルとしてまたは連続して使用した場合、これら2つの作用剤間に相乗効果があるように思われ、組織の分解はごくわずかになった。この実験に使用した消化モデルはきわめて促進された攻撃的な消化モデルであることに注目すべきである。] 図14
[0076] 実施例8.処理した組織の剛性を判定するための機械的試験
ブタ頚動脈を、実施例7に詳述した条件を使用して処理した。次いで処理組織に一軸引張り試験を施し、結果を図15に示す。組織の剛性度は曲線の傾きにより表わされる。より垂直な曲線はより大きな剛性に相当する。より水平な曲線はより小さな剛性に相当する。図15に示すように、食塩水処理した対照組織は本質的に新鮮な自然の組織であるので、剛性が最も小さい。Glut処理は最も硬い組織を生じた。処理プロセスにPGGを含めると、組織はわずかに小さな剛性になった。得られる組織の剛性は、GlutとPGGの種々の比率の濃度の組み合わせを使用して調節することができる。] 図15
[0077] 実施例9.処理した組織の機械的特性を判定するための開放角試験
図16Aに示すように、ブタ大動脈を横方向に切断して高さ約1cmの環状セグメントにした。これらの環を未処理のままとし(新鮮な試料)、あるいはGlut、PGG、またはGlutに次いでPGG(Glut/PGG)で処理した。Glut処理は、0.6%(w/v)Glutで1日間、次いで0.2%(w/v)Glutで7日間実施され、すべて室温で行われた;PGG処理は、0.15%(w/v)PGGで37℃において4日間実施された。Glut/PGG処理は、0.6%(w/v)Glutで1日間、次いで0.2%(w/v)Glutで7日間、室温において、続いて0.15%(w/v)PGGで37℃において4日間、実施された。] 図16A
[0078] 処理が完了した後、大動脈の断面を上に向け、大動脈組織が自由に動けるようにして、大動脈環を水に浸漬した。図16Aに示すように大動脈環を半径方向に一度切断し、水中で15分間「弛緩」および開放させ、次いでディジタル写真撮影した。それらの写真を図16Bに示した。次いでディジタル写真を用いてAdobe Photoshop 7.0によりそれぞれの大動脈環の開放角を図式的に計算した。それぞれの大動脈環の開放角を図16Cにグラフ方式で比較した。図16Cに示すように、新鮮な試料は160度に近い開放角をもつが、Glutによる処理は、40度近くまでの著しい開放角低下により示されるように大動脈環の機械的特性を著しく変化させた。PGG単独での処理は開放角をさらにいっそう低下させた。最も著しい低下は、Glut、次いでPGGによる処理にみられ、開放角は10度未満である。] 図16A 図16B 図16C
[0079] 実施例10.処理後のコラゲナーゼ分解に対する組織抵抗性
種々の作用剤で処理した後のコラゲナーゼ分解に対する組織抵抗性を考察する。詳細には、ブタ大動脈壁の試料を未処理のままとし(新鮮)、あるいはGlut単独、またはGlutに続いてタンニン酸(TA)で処理した。Glut処理は、0.6%(w/v)Glutで1日間、次いで0.2%(w/v)Glutで7日間、室温において実施された;Glut/TA処理は、0.6%(w/v)Glutで1日間、次いで0.2%(w/v)Glutで7日間、室温において、続いて0.15%(w/v)TAで37℃において4日間、実施された。処理した試料を100mLの水中で3回すすぎ(1時間ずつ)、凍結乾燥して乾燥重量を記録した。乾燥重量約15〜25mgの量の試料を、50mMトリス緩衝液、10mM CaCl2、pH7.4に溶解した1.2mLのI型コラゲナーゼ(150U/mL)に浸漬し、37℃において650rpmでオービタル振とうしながら24時間インキュベートした。このコラゲナーゼ曝露後、試料を遠心分離し(10000rpm、10分間、4℃)、個別に1mLの水中で3回すすぎ、凍結乾燥してコラゲナーゼ後の乾燥重量を求め、消化された組織のパーセントを計算した。]
[0080] 組織消化のパーセントを図17にグラフ方式で比較した。図17に示すように、新鮮な試料の85%以上が消化されたが、消化された試料のパーセントはGlut処理後には20%をわずかに上回るまで低下した。GlutとTAで処理した大動脈についての質量損失値は本質的にゼロであり、これはGlutがコラーゲンを酵素分解から保護する能力をタンニンがさらに増強しうることを示唆する。] 図17
[0081] 実施例11.処理した組織の熱変性温度
コラーゲン架橋密度の一般的な指標である熱変性温度(Td)を、処理グループからの試料において、示差走査熱量測定器(DSC)(Perkin−Elmer DSC 7;マサチュセッツ州ボストン)を使用して測定した。試料を実施例10に概説した条件下で処理した。処理した大動脈壁試料(約2mm×2mm)をアルミニウム皿内にシールし、10℃/分の速度で20℃から110℃まで加熱した。Tdを吸熱ピークで測定された温度として決定した。この観察した吸熱ピークは、コラーゲン線維がほぐれて、または変性して、測定可能なエネルギー放出を生じた温度で起きる。したがって、より高い変性温度はコラーゲン架橋の向上と相関する。試料からのTdデータを表1に記録する。表1のデータによれば、新鮮な未処理試料はGlut処理試料より有意に低いTdをもち、これはコラーゲン架橋度の有意の増大の指標となる。Glut処理に続くTAによる追加処理は、有意のTd上昇を生じなかった。]
[0082] ]
[0083] 想定実施例:PGGが組み入れられたポリマーの放出速度の評価
以下の想定実施例はPGGが組み入れられたポリマーを特性解明し、これらの短期(プルロニック(商標))および持続(プルロニック(商標)中に分散したナノ粒子)放出ビヒクルの放出速度を測定するためのものである。PGGがこれらのビヒクルによって適切にデリバリー/放出されることを確認するためのインビボ試験を設計する。本明細書に記載する処理は、AAAの特徴であるエラスチン分解を局所的に妨げる。フェノール性タンニン、たとえばタンニン酸およびペンタ−ガロイルグルコース(PGG)はエラスチンに結合し、こうして膵臓エラスターゼに対するそれの抵抗性を高める。インビボ結果は、PGGが動脈瘤の形成および進行を抑制するのに有効であったことをも指摘する。これらの試験において、PGGは単に浸漬ガーゼを配置することによりデリバリーされた。しかし、理想的には侵襲性が最小の外科処置でPGGを局所デリバリーすることができる。]
[0084] この例では、血管周囲に、または腹腔鏡適用により、PGGを動脈瘤部位へデリバリーする。薬理作用剤をデリバリーするためのFDA承認された配合物中で使用される2種類のポリマー、ポロキサマー407(プルロニック(商標)ゲル)およびポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)をデリバリーポリマーとして選択する。これらのポリマーを使用してPGGを即時ボーラス様投与(プルロニック(商標)ゲル)で、または持続放出(プルロニック(商標)ゲル+PLGAナノ粒子)によりデリバリーする。AAAの増殖/拡大に対して有効であるのに必要な量のPGGを局所デリバリーするために、PGGが組み入れられたポリマーの短期(プルロニック(商標))および持続(プルロニック(商標)中に分散したナノ粒子)放出ビヒクルの放出速度を測定した。]
[0085] PGGをプルロニック(商標)および/またはPLGAナノ粒子配合物に取り込ませる。インビトロでの配合物の放出プロフィール、ポリマーのゲル化、および機械的特性を最適化する。PGGを短期(プルロニック(商標)ヒドロゲルのみ)および持続放出(プルロニック(商標)ヒドロゲル中に分散したPLGAナノ粒子)でデリバリーする2種類の最適化した放出配合物をインビボで試験した。放射性標識PGGをラットAAAモデル内に投与し、28日後に評価して、ポリマー配合物からのPGGの放出ならびに結合および臓器分布をインビボで判定する(図18)。] 図18
[0086] 想定実施例1:PGGが組み入れられたデリバリービヒクルの配合
PGG−プルロニック(商標)ゲルのインサイチュー熱可逆性配合物の調製
ポロキサマーゲルを冷間法で調製する。この方法は、ポロキサマーの溶解を促進し、変質の可能性を制限する。適量のプルロニック(商標)F−127(20〜30% w/w)を低温の無菌蒸留水(約4℃)に添加し、続いてPGG(それぞれの適用につき100μgを組み入れる)および等張塩化ナトリウム(9g/L)を添加し、最終的にpH7.4に調整する。37℃でゲル化を実施するまで、この配合物を4℃で貯蔵して完全な溶解を維持する。得られるゲル配合物に対するPGGの物理化学的影響を、pH、ゲル化温度、溶解度、含水率および粘弾性を調べることにより評価する。]
[0087] PGGを組み入れたナノ粒子の調製
PGG−PLGAナノ粒子をエマルジョン溶媒蒸発法により調製する。要約すると、PGGの水溶液を塩化メチレン中のPLGA(種々のコポリマー比)溶液中へプローブソニケーターにより乳化する。この油中水型エマルジョンをさらにポリビニルアルコール(PVA)の水溶液中へ音波処理により乳化して、水中油中水型エマルジョン(w/o/w)を得る。ナノ粒子を得るために乳化条件および配合物組成を最適化する。この多重エマルジョンを約24時間撹拌し、続いてデシケーター内に真空下で1時間置いて残留塩化メチレンを除去する。ナノ粒子を25,000回転/分での超遠心分離により回収する。ナノ粒子を蒸留水中で洗浄してPVAおよび捕獲されていないPGGを除去し、次いで48時間凍結乾燥して乾燥粉末を得る。封入効率、薬物の組み入れ量、収率パーセント、粒度分布(粒度分析計)、表面形態(走査型電子顕微鏡)およびゼータ電位を測定する。]
[0088] プルロニック(商標)ゲル中へのPGGナノ粒子の組み入れ
前記と同じ方法でプルロニック(商標)溶液を調製し、冷却する。PGGを組み入れたPLGAナノ粒子を種々の容量の水に分散させたものを、何ら補助溶媒を使用せずにプルロニック(商標)溶液に添加する。十分な撹拌の後、200μlの溶液をゲル化のために37℃に保持し、それらのゲル化時間を記録する。]
[0089] 想定実施例2:ゲルおよびナノ粒子デリバリービヒクルのインビトロ特性解明
流動学的挙動
流動学的挙動は、プルロニック(商標)ゲル製剤の配合における重要な部分である。粘度は、体温におけるゲルの挙動を評価するための品質管理方法であると考えられる。これには、ゲルのニュートン挙動および非ニュートン挙動、ならびにゾル−ゲル転移に対する温度の影響を判定するための、流動曲線試験(剪断応力−対−剪断速度)が含まれる。クリープ粘度計を使用した振動試験は、粘弾性、ゲル化速度およびゲル化時間の時間依存性変化に関する情報を与える。]
[0090] プルロニック(商標)ゲルの特性解明
ゲル強度のインビトロ測定は、適切なコンシステンシーおよび強度の製剤を配合するための重要な情報を提供する。プルロニック(商標)ゲルの膨潤を2方法により特性解明する:(1)寸法変化を、一定の負荷のもとでの浸漬時間の関数として熱機械分析計(TMA)によりモニターする。PGG−ポリマー配合物を、気泡の導入を避けるように注意を払いながら5mLのビーカーに移して一定の高さにする。分析プローブ(直径10mmのエボナイト円柱)を各試料中へ一定速度(1mm/秒)で15mmの深さまで圧入し、次いでそれの元の通路を通って引き出す。獲得パラメーターは、獲得速度50ポイント/秒で5kgの負荷セルを使用して、5mm/秒の前接触、1mm/秒の試験速度、10mm/秒の後接触である。得られたプロフィールを、すべてのゲル配合物の硬さ、凝集性およびコンシステンシーについて分析する。ゾル−ゲル転移を行なうビヒクルの機械的特性の変化を推定するために、ヤング率の質的変化も測定する。風乾した試料および完全水和した試料のヤング率および弾性率、生体接着性、ならびに凝集性を測定する。(2)リン酸緩衝化生理食塩水(PBS、pH7.4)中における重量変化をモニターする。PBS中で室温において、および37℃においても膨潤実験を行なう。風乾した試料(M0)を秤量し、そして20mLの脱イオン水またはPBS緩衝液のいずれかに浸漬し、加熱した水浴内に48時間保持する。次いで膨潤した試料から過剰の流体を慎重に除去し、乾燥質量に対する重量変化(M−M0)を記録し、これにより膨潤に際しての質量変化率パーセントを計算する。]
[0091] インビトロPGG放出試験
これらの試験は、インビボゲル配合物の開発に際しての比較手段として役立つ。ゲルからのPGGの放出を2コンパートメント拡散セルにより試験する。このシステムでは、セルロース膜(分子量カットオフ=3000;Spectrapore)が、ドナーコンパートメント内のPGG含有ゲル(2.0g)をレセプターコンパートメント内のリン酸緩衝化生理食塩水(pH7.4、37℃、150mL)と分離している。有効拡散面積は3.8cm2である。PGGの放出データを時間方程式の平方根に対してプロットする。種々の時間間隔で試料を取り出し、UV分光光度計により289nmのλmaxにおいて分析する。このインビトロ放出プロフィールにより、薬物−対−ポリマー比、薬物装填量、および薬物放出速度など幾つかのパラメーターを最適化する。]
[0092] 分解したナノ粒子の形態特性解明
環境走査電子顕微鏡(ESEM)を使用してナノ粒子の分解をモニターする。調製したナノ粒子およびヒドロゲルに分散したナノ粒子について実験を行なう。それらの形態を種々の間隔で4週間の試験期間にわたって比較する。]
[0093] 想定実施例3:インビボPGG放出および臓器分布(表2)
2種類の放出配合物、すなわちPGGを24時間デリバリーするもの(プルロニック(商標)ヒドロゲルのみ)および28日間持続放出するもの(プルロニック(商標)ヒドロゲルに分散したPLGAナノ粒子)が最適化されると、それらの適用をインビボで試験する。]
[0094] AAAモデル
36匹の成体雄Sprague−Dawleyラット(約250g)の腹部大動脈に、塩化カルシウム(CaCl2)の血管周囲適用を採用して動脈瘤を誘発する;Gertz et al., J Clin Invest 1988; 81(3): 649-656、「インビボで塩化カルシウムの動脈周囲適用により誘発したウサギ総頚動脈の動脈瘤」により最初に記載されたものに従い、Vyavahare et al,Circulation 2007; 115(13): 1729-1737、「腹部大動脈瘤の処置のためのエラスチン安定化」、およびCirculation 2004; 110(22): 3480-3487、「腹部大動脈傷害モデルにおけるエラスチンの分解および石灰化:マトリックスメタロプロテイナーゼの役割」により概説されたわずかな改変を伴う;すべてを本明細書に援用する。ガーゼ仲介によるCaCl2の適用に続いて、大動脈を暖かい無菌食塩水でフラッシする。]
[0095] プルロニック(商標)ヒドロゲルの調製および適用
放射性標識(3H)PGG(ゲルまたは動物当たり100μg;詳細は後記)を2グループのうち一方に取り込ませる:(1)プルロニック(商標)ヒドロゲル(n=12)、または(2)プルロニック(商標)ヒドロゲル+PLGAナノ粒子(n=12)。後者の場合、PGGをPLGAナノ粒子に組み入れ、次いでこれをプルロニック(商標)溶液に分散させる。対照として(n=12)、ラット大動脈をCaCl2で処理し、それ以上の処理を施さない。ラット腹部大動脈を露出させてCaCl2で処理した時点で、2種類のPGG−プルロニック(商標)配合物のうち一方を溶液として適用し(対照を除く)、腹部大動脈へ局在化させる。体温にまで暖まると、これらのゲル配合物は組織周囲においてその場でゲル化する。プルロニック(商標)溶液が完全にゲル化した時点で、腹壁を縫合し、皮膚切開部を縫合およびステープル固定する。標準条件でラットを回復させ、維持する。外科処置後28日目に、両グループのすべてのラットを麻酔し、腹部大動脈を再び露出させ、付着物を取り除く。次いでラットをCO2窒息により安楽死させ、分析のために大動脈を回収する。]
[0096] ]
[0097] 放射性標識PGG
PGGをトリチウム(3H)で標識する:液体シンチレーション計数器で容易に定量できる放射性化合物。そのような注文標識を専門とする企業であるAmerican Radiolabeled Chemicals,Inc.(ミズーリ州セントルイス)へPGGを送って標識する。外科処置(および(3H−PGG)−ポリマー配合物の初回デリバリー)の後28日目に腹部大動脈試料を採集し、放射能を分析する。切除した時点で組織を緩衝化食塩水中において一夜洗浄し、次いでSolvable(Perkin−Elmer,Inc.;マサチュセッツ州ウェルズリー)、すなわち液体シンチレーションを妨げないように配合された水酸化ナトリウムの市販製品中で消化する。これらの消化物を次いで液体シンチレーション液(Hionic−Fluor、Perkin−Elmer,Inc.)中に希釈し、トリチウム含量を測定する。目的とする主要領域である腹部大動脈内の3H−PGGを定量するほか、隣接する他の組織および臓器全体におけるPGGの分布も分析する。ポリマー配合物がいかに良好にPGGの放出を局在化させるかについての洞察、およびPGGの「漏出」があれば潜在的にどのような影響を及ぼす可能性があるかを示す。切除した胸部大動脈、心臓、肺、肝臓および腎臓内においても、腹部大動脈について前記に述べた消化および定量の方法を使用してトリチウムを定量する。]
[0098] 想定実施例4:プルロニック(商標)ヒドロゲルまたは高分子マイクロ粒子によるPGGの血管周囲適用で動脈瘤を処置する
前記の高分子デリバリービヒクルがPGGを投与してAAAの進行を遅延または阻止する効力をラットにおいて試験する。AAAの特徴は、大動脈のMMP仲介によるエラスチン変性、血管構築の劇的な変化、構造弱体化、拡張、および最終的な破壊である。PGGは、それが酵素変性に対するエラスチンの感受性を低下させる能力により、AAA進行の制限において大きな有望性を示している。臨床関連のポリマーベースのデリバリービヒクルにより投与した場合のPGGのインビボ効力を評価する:ラットにおいて、一方はPGGを即時ボーラス様の投与でデリバリーするのに対し、他方はPGGを28日の期間にわたって漸次デリバリーする。この実験は、初期または中期の動脈瘤をPGG適用によって安定化できる臨床状況を、より厳密に反映する。図19に概説した実験法に示すように、ラットにおいてAAA形成を誘発し、PGG適用について2つの異なるポリマーベースのデリバリービヒクルの効力を試験する。これらのデリバリービヒクル(プルロニック(商標)ヒドロゲルおよびポリマーマイクロ粒子)を、それらがPGGを投与する能力および動脈瘤の進行に対する後続効果を比較して調べる。CaCl2仲介による大動脈傷害の数週間後にPGGを適用し、したがってPGG処理は中等度に動脈瘤性の大動脈に施される。ビヒクル処理対照と比較した時間依存性の直径拡大をモニターし、AAAの主徴、詳細には大動脈エラスチン統合性、MMP活性、およびホスト細胞の浸潤を分析する。] 図19
[0099] AAAモデル
48匹の成体雄Sprague−Dawleyラット(約250g)の腹部大動脈に、想定実施例3に概説したプロトコルを使用して動脈瘤を誘発する。]
[0100] 動脈瘤大動脈へのPGGデリバリービヒクルの適用(表3)
腎下の腹部大動脈を正中線切開による開腹術により露出させ、大動脈の直径をディジタル写真撮影により測定し、15×5mmの0.5M CaCl2予備浸漬した8重の無菌ガーゼ片を大動脈の前面に15分間適用することにより大動脈を外膜周囲処理し、続いて暖かい無菌食塩水で3回、短時間すすぐ。切開部を閉じ、ラットを回復させる。PGG−ポリマー配合物(または対照としてポリマービヒクルのみ)による後続処理を外科処置後28日目に施し、これにより、既に動脈瘤を生じた大動脈を処理する。28日目に腹部大動脈を再び露出させ、大動脈の直径を測定し、次いで下記の4グループのうちのいずれかで処理する。グループA(PGG−プルロニック(商標)処理;n=12のラット数)については、予め定めた濃度および比率のプルロニック(商標)酸およびPGGの溶液を動脈瘤部位(CaCl2処理の部位)に投与する。このプルロニック(商標)溶液は、37℃、すなわちインビボで遭遇するおおよその温度でゲル化するように配合される。グループBのラット(PGG−プルロニック(商標)+ナノ粒子;n=12)は同様に、ただしPGGをPLGAナノ粒子中に組み入れ(最適条件を前記の実施例から求める)、これらのナノ粒子をプルロニック(商標)溶液とともに含むもので処理される。グループCおよびD(それぞれ、プルロニック(商標)ビヒクル、およびプルロニック(商標)+ナノ粒子ビヒクル;n=12)は、ビヒクルのみの対照として用いられる。すべてのグループの場合、プルロニック(商標)溶液が大動脈の周囲で完全にゲル化した時点で腹壁を縫合し、皮膚の切開部を縫合し、ステープル固定する。標準条件でさらに28日間ラットを回復させ、維持する。外科処置後56日目(PGG適用後28日目)に、各グループのラットを麻酔し、腹部大動脈を再び露出させ、付着物を取り除き、直径測定のために撮影する。次いでラットをCO2窒息により安楽死させ、分析のために大動脈を回収する。]
[0101] ]
[0102] 大動脈の回収および分析
安楽死の前にディジタル写真撮影により大動脈直径の測定を行なう。安楽死させた後、腹部大動脈を切除し、分析のために図20に示すようにセグメントに分割する:2つのセグメントを、エラスチンペプチドの抽出とザイモグラフィー、およびデスモシン/ヒドロキシプロリンアッセイのために直ちにドライアイス上で凍結させ、1つのセグメントを免役組織化学的分析および組織学的分析のためにOCTに埋め込み、1つをTEMのためにカルノフスキー(Karnowsky)固定剤中に固定する。] 図20
[0103] エラスチン変性およびMMP活性の評価ならびに可溶性エラスチンペプチドの検出
組織をグアニジン緩衝液中に抽出し、透析し、遠心分離する。上清をエラスチンペプチドの存在についてELISA法により分析する;Lee et al., Am J Pathol 2006; 168: 490-498、「ラット皮下モデルにおけるエラスチン石灰化のメカニズム:エラスチン分解および異所性骨形成に関連する遺伝子発現」により概説;本明細書に援用する。これらの抽出物を、MMP−2およびMMP−9活性の評価のためのゼラチンザイモグラフィーにも使用する;Vyavahare et al, Cardiovasc Pathol 2004; 13(3): 146-155、「エラスチン石灰化におけるマトリックスメタロプロテイナーゼおよびテナスシン−Cの関与」により概説;本明細書に援用する。デスモシン/ヒドロキシプロリン分析のための試料を凍結乾燥し、秤量し、HCl中で加水分解し、ラジオイムノアッセイにより分析する;Basalyga et al,Circulation 2004; 110(22): 3480-3487、「腹部大動脈傷害モデルにおけるエラスチンの分解および石灰化:マトリックスメタロプロテイナーゼの役割」により概説;本明細書に援用する。これらの同じ酸加水分解物について、原子吸収分光光度法によりカルシウムの定量を行なう;Vyavahare et al, Am J Pathol 1999; 155(3): 973-982、「エラスチンの石灰化および塩化アルミニウム前処理によるそれの阻止」により概説された方法を採用;本明細書に援用する。]
[0104] 組織学的所見および超構造
回収した大動脈を、全般的な構造についてヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で、エラスチンについてヴァーヘフ・ファン・ギエッソンで、カルシウム沈着物についてアリザリンレッドで染色する;Vyavahare et al, Am J Pathol 2000; 157(3): 885-893、「マトリックスメタロプロテイナーゼ活性の阻害はラットにおいてテナスシン−Cの産生および移植した精製エラスチンの石灰化を減衰させる」により概説された方法を採用;本明細書に援用する。遅延PGG適用に適切なタイミングは慎重な評価が要求される。このタイミングは、想定実施例3から得られる結果に基づいて反復することができる。大動脈直径の25〜50%増大を2回目の外科処置で介入することができる。]
実施例

[0105] 研究の設計および方法のための統計学
先の予備試験から計算した変数を使用して本明細書に概説した想定実験を設計し、適用可能なデリバリー方法で動脈瘤のインビボ処置にPGGを使用できることを証明した。アルファ(誤って差があると主張する確率)が0.01となり、ベータ(誤って差がないと主張する確率)が0.01となり、かつ実験試料が場合により失われた際にこれらの条件が満たされるように、試料サイズ(大部分のインビトロ試験についてn=6、大部分のインビボ試験についてn=12)を選択した。完全ランダム設計のための分散分析をすべてのデータについて行ない、最小有意差(LSD)を用いた平均を比較する。]
[0106] 100 分離/デリバリー装置
102 軸
104シーリングエレメント
106誘導管腔
108誘導口
110、112、114アクセス口
120誘導線
122、124、126流動管腔
134 血管
136動脈瘤
138 動脈瘤の分離した容積
140バイパスチャネル
142流体交換部分
2エラスチン分子内の疎水性領域
3 エラスチン分子内のデスモシンの架橋
4 TAおよびPGGの分子
5 2と4の間の水素結合]
权利要求:

請求項1
結合組織安定剤を、デリバリービヒクルと組み合わせて含み、当該デリバリービヒクルが、ヒドロゲル、ナノ粒子またはその組み合わせを含む、患者の動脈瘤を処置するための治療組成物。
請求項2
前記ヒドロゲルが、ゲル状ペンタ−ガロイルグルコースを含む、請求項1に記載の治療組成物。
請求項3
前記ヒドロゲルが、プルロニック(商標)ヒドロゲルを含む、請求項1に記載の治療組成物。
請求項4
前記ヒドロゲル、前記ナノ粒子またはその両方に、ペンタ−ガロイルグルコース、グルタルアルデヒドまたはその組み合わせが組み入れられている、請求項1に記載の治療組成物。
請求項5
前記ナノ粒子が、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)を含む、請求項1に記載の治療組成物。
請求項6
前記結合組織安定剤が、エラスチン安定剤、コラーゲン安定剤またはその組み合わせを含む、請求項1に記載の治療組成物。
請求項7
前記エラスチン安定剤が、疎水性領域と水素結合可能な複数の官能基とを含んでなる、請求項6に記載の治療組成物。
請求項8
前記エラスチン安定剤が、タンニン酸またはその誘導体、フラボノイドまたはフラボノイド誘導体、フラボリグナンまたはフラボリグナン誘導体、フェノール性リゾームまたはフェノール性リゾーム誘導体、フラバン−3−オールまたはフラバン−3−オール誘導体、エラグ酸またはエラグ酸誘導体、プロシアニジンまたはプロシアニジン誘導体、アントシアニン、ケルセチン、(+)−カテキン、(−)エピカテキン、ペンタガロイルグルコース、ノボタニン、エピガロカテキンガレート、ガロタンニン、オリーブオイル抽出物またはオリーブオイル抽出物誘導体、カカオ豆またはカカオ豆誘導体、ツバキまたはツバキ誘導体、甘草または甘草誘導体、ムチヤギまたはムチヤギ誘導体、アロエベラまたはアロエベラ誘導体、カモミールまたはカモミール誘導体、それらの組み合わせまたはそれらの医薬的に許容される塩を含む、請求項7に記載の治療組成物。
請求項9
前記コラーゲン安定剤が、コラーゲン中の官能基の架橋剤を含む、請求項6に記載の治療組成物。
請求項10
前記コラーゲン安定剤が、グルタルアルデヒド、ゲニピン、アシルアジド、エポキシアミン、その組み合わせまたはその医薬的に許容される塩を含む、請求項6に記載の治療組成物。
請求項11
前記結合組織安定剤が、没食子酸スカベンジャー、脂質低下薬、抗菌剤、抗真菌剤またはその組み合わせをさらに含む、請求項6に記載の治療組成物。
請求項12
患者の動脈瘤を処置するための治療組成物を製造する方法であって、当該方法が、体液と接触すると結合組織安定剤が動脈瘤に一定時間にわたって放出されるように、結合組織安定剤をデリバリービヒクルと組み合わせて治療組成物を形成することを含み、当該デリバリービヒクルが、ヒドロゲル、ナノ粒子またはその組み合わせを含む、上記方法。
請求項13
前記組み合わせ工程が、前記ヒドロゲルの前駆体と前記結合組織安定剤との溶液を形成することを含む、請求項12に記載の方法。
請求項14
前記組み合わせ工程が、プルロニック(商標)ブロックコポリマーとペンタ−ガロイルグルコース、グルタルアルデヒドまたはその組み合わせとの溶液を形成することを含む、請求項12に記載の方法。
請求項15
前記組み合わせ工程が、前記結合組織安定剤を前記ナノ粒子に埋め込むことを含む、請求項12に記載の方法。
請求項16
前記結合組織安定剤が、エマルジョン溶媒蒸発法を使用してナノ粒子の内部に埋め込まれる、請求項15に記載の方法。
請求項17
組み合わせ工程が、前記結合組織安定剤を埋め込んだナノ粒子を前記ヒドロゲルと組み合わせることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
請求項18
前記組み合わせ工程が、ペンタ−ガロイルグルコースが組み入れられたポリ(乳酸−コ−グリコール酸)ナノ粒子とのプルロニック(商標)ブロックコポリマーの分散物を形成することを含む、請求項12に記載の方法。
請求項19
組み合わせ工程が、前記分散物にグルタルアルデヒドが組み入れられたポリ(乳酸−コ−グリコール酸)ナノ粒子を添加することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
請求項20
前記結合組織安定剤が、エラスチン安定剤、コラーゲン安定剤またはその組み合わせを含む、請求項12に記載の方法。
請求項21
前記治療組成物が、医薬的に許容される担体および/または賦形剤をさらに含む、請求項12に記載の方法。
請求項22
患者の動脈瘤を処置するための治療組成物を使用する方法であって、当該方法が、治療組成物を動脈瘤に適用することを含み、当該治療組成物が結合組織安定剤をデリバリービヒクルとともに含み、デリバリービヒクルを通して動脈瘤に結合組織安定剤が一定時間にわたって放出され、当該デリバリービヒクルが、ヒドロゲル、ナノ粒子またはその組み合わせを含む、上記方法。
請求項23
前記治療組成物を、血管内、血管周囲またはその組み合わせを通して前記動脈瘤に適用する、請求項22に記載の方法。
請求項24
血管内に配置された装置を使用して前記動脈瘤を血管内から分離すること、前記治療組成物の適用前に、当該装置を使用して分離した動脈瘤を吸引することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
請求項25
前記治療組成物を、血管周囲ラップを通して前記動脈瘤に適用する、請求項22に記載の方法。
請求項26
前記結合組織安定剤が、コラーゲン安定剤、エラスチン安定剤またはその組み合わせである、請求項22に記載の方法。
請求項27
前記処置を、前記患者の動脈瘤に複数回適用する、請求項22に記載の方法。
請求項28
ヒドロゲル状の結合組織安定剤、ナノ粒子またはその組み合わせを動脈瘤に適用することを含む、患者の動脈瘤の処置方法。
請求項29
前記結合組織安定剤が、ペンタガロイルグルコース、エピガロカテキンガレートまたはその組み合わせである、請求項28に記載の方法。
請求項30
ヒドロゲルおよび当該ヒドロゲル内に分散されたナノ粒子を含み、当該ナノ粒子が、活性剤および生体吸収性高分子バインダーを含む、活性剤デリバリービヒクル。
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引用文献:
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