专利摘要:
本発明は、感染物を含む微生物コロニー中のプラスミドの蔓延を減少させるための方法および組成物を提供し、かつ感染を治療するための治療組成物、方法、およびさらなるそのような組成物を同定するための方法を含む。抗生物質耐性遺伝子のコピー数を減少させるため、およびファージに対する受容体を欠いている細胞にファージ結合を付与するための手段を提供する。
公开号:JP2011512874A
申请号:JP2010550806
申请日:2009-03-10
公开日:2011-04-28
发明作者:シー.ビー. アパイア;ブハラティ スリラム;ジャヤシーラ マナー
申请人:ガンガゲン インコーポレーテッド;
IPC主号:C12N15-09
专利说明:

[0001] 関連出願の相互参照
本出願は、2008年3月10日に出願した米国特許出願第61/035,304号の優先権を主張する。]
[0002] 発明の分野
本発明は、細菌感染を含む微生物コロニー中に見出される様々なプラスミドの数または質量としての量を減少させるための方法および組成物を提供し、コロニーを処理するための組成物、方法、およびさらなるそのような組成物を同定するための方法を含む。種々の態様において、本発明は、標的細菌培養物中に保有される抗生物質耐性マーカーの蔓延を有意に減少させることを提供する。]
背景技術

[0003] 発明の背景
細菌は遍在性であり、これまで生息に適さないと考えられていた環境において見出される。細菌は生態学的に共通性および多様性があり、生存のために独自のおよび共通の生態的適所を見出す。細菌は環境の至る所に存在し、土壌中、粉塵中、水中、および実質的にあらゆる自然表面上に存在する。多くは正常かつ有益な細菌株であり、宿主と共に相乗関係を提供する。それほど有益ではないか、または特定の条件下で利点と共に問題を引き起こすものもある。]
[0004] 病原菌は、ヒト、他の動物、およびまた植物においても、感染症または重篤な症状を引き起こし得る。細菌の宿主特異性に応じて、特定の宿主にしか影響し得ない細菌もいるが;多くの宿主において問題を引き起こす細菌もいる。他の細菌は、ある特定の環境では無害であるかまたは休止状態である可能性があり、他の状況または状態において問題として現れ得る。単独であろうと組み合わせであろうと、細菌によって起こる疾患は細菌自体と同様に多様であり、これには食中毒、齲歯、炭疽、全身感染症、およびさらにある特定の形態の癌が含まれる。これらの臨床的問題は、典型的に、臨床微生物学の分野の主題である。]
[0005] 細菌は、ある種のウイルス、例えばバクテリオファージまたはファージの天然の標的である。ファージはそれらの天然宿主において進化し、複製および進化の速度は非常に速い。ファージは、それらの宿主の生理学または生物学が呈する最小の脆弱性を利用することができる。したがって、ファージの構造、生理学、および原理を適切に利用することは、細菌学的に生じる問題を最小限に抑えるまたは制御するのに有用であるはずである。]
[0006] ある種の細菌は通常は無害であるが、適切な機会を提示すると病原性になり、または異常な部位もしくは状態に導入すると問題をはらむようになる。さらに、ある種の細菌の組み合わせは共に進化し、コロニーの個々のメンバーに欠けている機能を補完するように相乗的に作用し得る。しかしながら、例えば多細胞生物では、多くの調和した機構が存在して、異なる量の細菌学的攻撃を処理し、細菌培養物の完全な根絶は必要でない場合が多い。多くの場合、細菌集団の不完全な根絶によって、感染の影響は減少して、系が別の機構によって問題を解決できるようになり、例えば免疫系がこれに当たる。]
[0007] 統計学的に、感染症は主要な医学的問題である。例えば、Watstein and Jovanovic (2003) Statistical Handbook on Infectious Diseases Greenwood, ISBN: 1573563757(非特許文献1)を参照されたい。米国では、毎年、約4万〜7万件の死亡は血流院内(病院由来)感染に起因する。]
[0008] 特に、抗生物質は、過去半世紀にわたって、臨床医学に大変革をもたらした。抗生作用の現象が最初に発見されて以来、このクラスの注目すべき治療実体の作用機構および開発は、桁外れに進展した。例えば、Therrien and Levesque (2000) FEMS Microbiol. Rev. 24:251-62(非特許文献2);Durgess (1999) Chest 115(3 Suppl):19S-23S(非特許文献3);Medeiros (1997) Clin. Infect. Dis. 24(Suppl 1):S19-45(非特許文献4);Jones (1996) Am. J. Med. 100(6A):3S-12S(非特許文献5);Ford and Hait (1993) Cytotechnology 12:171-212(非特許文献6);およびLiu (1992) Compr. Ther. 18:35-42(非特許文献7)を参照されたい。抗生物質の2002年の世界的販売高は、約320億ドルであった。]
[0009] 抗生物質耐性菌が広範囲に出現したことから、現在の抗微生物処置が細菌の順応に対して脆弱であることが強調された。例えば、Wise (2007) 「An overview of the Specialist Advisory Committee on Antimicrobial Resistance (SACAR)」 J. Antimicrob. Chemother. 60 Suppl 1:i5-7.PMID: 17656382(非特許文献8);Finch (2007) 「Innovation - drugs and diagnostics」 J. Antimicrob. Chemother. 60 Suppl 1:i79-82, PMID: 17656390(非特許文献9);Walsh (1992) Antibiotics: Actions, Origins, Resistance Amer. Soc. Microbiol., ISBN: 1555812546(非特許文献10);Cunha (1992) Antibiotic Essentials Physicians Press, ISBN: 1890114413(非特許文献11);Amyes (2003) Magic Bullets, Lost Horizons: The Rise and Fall of Antibiotics Taylor & Francis, ISBN: 0415272033(非特許文献12);Axelsen (2001) Essentials of Antimicrobial Pharmacology: A Guide to Fundamentals for Practice Humana Press, ISBN: 0896038424(非特許文献13);およびMainous and Pomeroy (eds. 2001) Management of Antimicrobials in Infectious Diseases: Impact of Antibiotic Resistance Humana Press, ISBN: 0896038211(非特許文献14)を参照されたい。]
[0010] 加えて、抗生物質耐性の機構は、最小限の選択条件下で(例えば、低濃度の抗生物質で)発生し、これらの機構は宿主間で伝達される場合が多い。したがって、異なる生物において機構が進化し、これがしばしば新たな宿主に導入され、そこでこうした同じ機構がさらに精緻化され、かつ最適化される。多くの場合に機構の組み合わせが生じ、共に遺伝的に連鎖し、そして細菌宿主間で共に伝達される。これらの組み合わせは、連鎖した多剤耐性マーカーをコードする、DNAセグメントの遺伝子クラスター形成を引き起こす場合が多い。]
[0011] したがって、耐性コードプラスミドの蔓延、増殖、もしくは生存を減少させるため、または細菌の毒性もしくは病原性を制限するための改良方法は、大いに有用であると考えられる。この有用性は、環境の、局部的な、局所的な、または特にインビボのコロニー形成に適用できる可能性がある。本発明は、これらおよびその他の重要な問題に取り組む。]
先行技術

[0012] Watstein and Jovanovic (2003) Statistical Handbook on Infectious Diseases Greenwood, ISBN: 1573563757
Therrien and Levesque (2000) FEMS Microbiol. Rev. 24:251-62
Durgess (1999) Chest 115(3 Suppl):19S-23S
Medeiros (1997) Clin. Infect. Dis. 24(Suppl 1):S19-45
Jones (1996) Am. J. Med. 100(6A):3S-12S
Ford and Hait (1993) Cytotechnology 12:171-212
Liu (1992) Compr. Ther. 18:35-42
Wise (2007) 「An overview of the Specialist Advisory Committee on Antimicrobial Resistance (SACAR)」 J. Antimicrob. Chemother. 60 Suppl 1:i5-7.PMID: 17656382
Finch (2007) 「Innovation - drugs and diagnostics」 J. Antimicrob. Chemother. 60 Suppl 1:i79-82, PMID: 17656390
Walsh (1992) Antibiotics: Actions, Origins, Resistance Amer. Soc. Microbiol., ISBN: 1555812546
Cunha (1992) Antibiotic Essentials Physicians Press, ISBN: 1890114413
Amyes (2003) Magic Bullets, Lost Horizons: The Rise and Fall of Antibiotics Taylor & Francis, ISBN: 0415272033
Axelsen (2001) Essentials of Antimicrobial Pharmacology: A Guide to Fundamentals for Practice Humana Press, ISBN: 0896038424
Mainous and Pomeroy (eds. 2001) Management of Antimicrobials in Infectious Diseases: Impact of Antibiotic Resistance Humana Press, ISBN: 0896038211]
[0013] 発明の簡単な概要
本発明は、多くの異なる宿主に感染することができる様々な広宿主域ファージが存在するという認識に一部基づく。例えば、Grahn, et al. (2006) 「PRD1: Dissecting the Genome, Structure and Entry」 Calendar (ed.) The Bacteriophages (2d ed.) Oxford Univ. Press, ISBN-13: 9780195148503を参照されたい。PRD1は、構造的および機能的に明らかにされている属テクティウイルス科(Tectiviridae)の例示的なメンバーである。しかしながら、分類表が発展していき、高等動物アデノウイルス機能に対するファージの類似性が認識されている。このことから、ある種の基本的構造特性が共有され、これらのファージが、多種多様な宿主細菌種において感染および複製するという共通の目的を達成するためにこれを利用することが示される。特に、これらの広宿主域はグラム陰性とグラム陽性の区別にまたがり、これによって、結合および感染の過程においてある種の構造特性が共有されることが示唆される。抗生物質耐性の機構をコードする多くの遺伝子エレメントは、そのような遺伝子エレメントを含む細胞の脆弱性のための手段を含み得る。例えば、抗生物質耐性遺伝子をコードするある種の細菌プラスミドは、宿主細胞をバクテリオファージによる結合(および死滅)に対して脆弱にし得る受容体もまたコードする。あるいは、プラスミドは、さもなければプラスミドを欠いている細胞に伝達され得る遺伝子または構造をコードしてよく、それによって耐性遺伝子および連結されている脆弱性マーカーが伝達される。この機構は、耐性または毒性コードプラスミドを、耐性マーカーを欠いている類似の宿主に平行伝達するための手段として役立ち得る。脆弱性遺伝子も同様に伝達されると、これらの宿主は排除のための手段に対して感受性を示すようになる。]
[0014] 本発明は、抗生物質耐性または毒性をコードするある種の遺伝子エレメント、特に伝達性形態を含む細胞を効率的に標的化するための手段を提供する。他の態様において、本発明は、多種多様な標的宿主細菌に対して、ファージ結合感受性および/または死滅感受性を伝達するための手段を提供する。]
[0015] 本発明は、不均一な細菌培養物中の、ファージ受容体、例えばテクティウイルス(tectivirus)受容体をコードする接合性プラスミドの蔓延を減少させる方法を提供する。本方法は、その抗菌活性(抗生物質耐性、毒性等のような望ましくない特性を有する細菌の数を排除/減少させる)のために、細菌の接合対形成システム(接合線毛またはその一部によって例証される)に依存する生物システム(ファージまたはその一部によって例証される)を用いて、遺伝子エレメントを含む細胞を標的化する。]
[0016] 任意の第1段階として、細菌培養物を、ファージ受容体をコードする接合性プラスミドを該細菌培養物のドナーメンバーからレシピエントメンバーへ伝達することを提供する接合対形成システムに曝露し、該システムによる該接合性プラスミドを該細菌培養物の該ドナーメンバーから該レシピエントメンバーへの伝達の達成を可能にすることによって、接合性プラスミドを含みかつファージ受容体を発現する宿主細菌を生成する。第2段階(または、前の段階を行わない場合は、第1段階)として、ファージ受容体を発現する宿主細胞が存在する時点で、細菌培養物を、受容体と結合する適切なファージに曝露する。その生活環の一部として、ファージは宿主細菌を死滅させ、したがって不均一な細菌培養物中のファージ受容体をコードする接合性プラスミドの蔓延が減少する。]
[0017] 1つの態様において、蔓延の減少は、該細菌培養物中の該接合性プラスミドの相対数もしくは絶対数の減少;または該細菌培養物のメンバー当たりの該接合性プラスミドの相対数もしくは絶対数の減少、または不均一な細菌培養物中に見出される該プラスミド含有宿主の相対数もしくは絶対数の減少である。さらなる態様において、蔓延の減少は、接合対システムに曝露する前の蔓延の少なくとも2分の1である。]
[0018] 1つの態様において、ファージは、例えば、テクティウイルスを含む広宿主域脂質含有ファージ;RPD1ファージ群のメンバー;プラスミド依存性広宿主域バクテリオファージ;テクティウイルス科、正二十面体形態、脂質含量、直径55〜65 nmの頭部、および12〜130 nmの尾部のうちの少なくとも1つもしくは複数を特徴とするファージであるか;またはPRD1、PRR1、PR3、PR4、PR5、L17、PR772、GILO1、pGILO1、BAM35、もしくはGIL16と称されるファージの群より選択される。]
[0019] 1つの態様において、接合性プラスミドは、例えば、不和合性群N、P、もしくはWプラスミドより選択される;ファージの複製に重要な1つもしくは複数の付加的タンパク質(例えば、プラスミド上の、結合、感染、複製、または溶解において機能するタンパク質)をコードする;1つもしくは複数の抗生物質耐性マーカー、選択マーカー、もしくは毒性マーカーをコードする;該メンバーの染色体とは別のDNAの形態である;または1つもしくは複数の線毛遺伝子をコードする。]
[0020] 1つの態様において、不均一な細菌培養物は、例えば、対数増殖期にある;定常状態増殖期にある;ラクトバチルス培養物もしくは乳製品加工培養物である;水処理施設中に存在する;真核細胞もしくは器官培養物中に存在する;真核生物宿主中に存在する;脊椎動物生物中もしくは脊椎動物生物上に存在する;または哺乳動物中もしくは哺乳動物上に存在する。]
[0021] 1つの態様において、接合対形成システムは、例えば、少なくとも1つの線毛接合遺伝子;または形質導入もしくはエレクトロポレーションなどの別の移動性エレメント伝達系を含む。適切なプラスミドを導入するための別の系には、ファージベースのDNA送達系が含まれる。]
[0022] さらなる態様において、遺伝物質の伝達は、例えば、少なくとも30℃の温度で;複数の線毛遺伝子が発現される温度で行われる。変更が可能な別の条件は伝達の時間であり、例えば2時間〜12時間またはそれ以上、好ましくは2時間である。1つの態様において、ドナー細胞はF+細菌細胞である。別の態様において、レシピエント細胞はF-細菌細胞である。好ましい態様では、遺伝物質の伝達により、該接合性プラスミドを含む該細菌培養物のメンバーが増加する。別の好ましい態様において、ドナー細胞とレシピエント細胞の比は1:1の2対数単位内であり、例えば100:1〜1:100である。]
[0023] 不均一な細菌培養物にテクティウイルスファージを添加することに関連して、1つの態様では、前記受容体をコードする前記接合性プラスミドを含む各細菌細胞に対して、すなわちテクティウイルスを含むファージよる感染に感受性のある各細胞に対して、少なくとも10個のファージを添加する。1つの態様では、ファージによって該接合性プラスミドの数が減少する。別の態様において、ファージは、例えば、接合性プラスミドを含む宿主細胞を含む不和合性機構を含む、感染、複製、または溶解の欠陥のために、宿主細菌中で複製することができない。さらなる態様において、ファージは、該接合性プラスミドを含む宿主細菌中で、そのゲノムを複製することができない。したがって、宿主細菌中で複製能のあるファージは、本発明の方法に必要とされない。]
[0024] 1つの局面において、本発明は、不均一な細菌培養物内で、ファージ、例えばテクティウイルスによる付着に対する感受性を付与する移動性遺伝子エレメントを伝達する方法を提供する。不均一な細菌培養物は、ファージ結合に感受性のあるドナー細菌細胞、およびファージ結合に非感受性のレシピエント細菌細胞を含む。遺伝子エレメントの伝達は、適切な条件下で、ドナー細菌細胞とレシピエント細菌細胞の間で起こる。遺伝子エレメントがレシピエント細菌細胞に伝達されると、レシピエント細菌細胞は、ファージによる結合に対して感受性を示すようになり、典型的にレシピエント細胞は死滅する。]
[0025] 移動性エレメントは、典型的には、例えば、テクティウイルスファージ受容体遺伝子または線毛遺伝子をコードするプラスミドである。プラスミドは、以下のプラスミド:F、R386、R1、Col B-K99、Col B-K166、R124、R62、R64、R483、R391、R46、R724、RP4、RK2、R751、RSF1010、R401、R388、もしくはS-aのいずれかより選択され得る;Inc群N、P、もしくはWの中にあってよい;またはInc群D、M、X、P1、U、C、もしくはJの中にあってよい。]
[0026] テクティウイルスファージに感受性のあるドナー細菌細胞の例は、例えば、F+細胞である;グラム陰性細菌種に由来する;エシェリキア属(Escherichia)、シュードモナス属(Pseudomonas)、サルモネラ属(Salmonella)、プロテウス属(Proteus)、ビブリオ属(Vibrio)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、バチルス属(Bacillus)、またはミクロコッカス属(Micrococcus)などの属に由来する。]
[0027] レシピエント細菌細胞の例は、F-細胞である;グラム陰性細菌種に由来する;エシェリキア属、シュードモナス属、サルモネラ属、プロテウス属、ビブリオ属、アシネトバクター属、バチルス属、もしくはミクロコッカス属などの属に由来する;または抗生物質耐性遺伝子もしくは毒性遺伝子の運搬体である。]
[0028] テクティウイルスファージの例には、PRD1、AP50、Bam35、NS11、PR3、PR4、PR5、PR722、L17、またはP37-14が含まれる。]
[0029] 1つの態様において、ドナー細菌細胞と該レシピエント細菌細胞は、異なる細菌種または異なる細菌属に由来する。]
[0030] さらなる態様において、本方法は、ファージ、例えばテクティウイルスを投与して、受容体を発現するファージ感受性宿主細胞に感染させて、感受性宿主細胞を死滅させるか、または不均一な細菌培養物中の抗生物質耐性遺伝子もしくは細菌毒性遺伝子をコードする移動性エレメントの数を減少させる段階を含む。ファージと共に抗生物質を投与することもでき、例えば連続投与または同時投与することができる。]
[0031] 1つの局面において、本発明は、ファージ受容体成分、例えばテクティウイルス受容体成分をコードする核酸を含む組換え遺伝子構築物を提供する。ファージ受容体成分の発現は、宿主細菌細胞内で機能的である強力な異種プロモーターによって駆動され得る。1つの好ましい態様において、プロモーターは、受容体遺伝子の発現を、誘導状態と比較して誘導状態において少なくとも2倍、4倍、5倍、10倍、またはそれ以上のレベルにまで駆動し得る誘導性プロモーターである。組換え遺伝子構築物は、テクティウイルス受容体をコードする核酸に連結された選択可能マーカーもまた含み得る。宿主細菌は、例えばグラム陰性細菌であってよい。]
[0032] 別の局面において、本発明は、溶菌ファージに結合するファージ受容体(溶菌ファージは、ファージ受容体を発現する細菌細胞を死滅させる)をコードする伝達性DNA、および薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物を提供する。ある特定の態様において、伝達性DNAは、N、P、W、D、M、X、P1、U、W、C、もしくはJより選択されるIncプラスミドである;または溶菌ファージは、PRD1、PRR1、PR3、PR4、PR5、L17、PR772、GIL01、pGIL01、BAM35、もしくはGIL16と称されるファージである。さらに、溶菌ファージおよび薬学的組成物を伴う1つまたは複数の区画を含むキットを提供する。]
[0033] 本発明は、不均一な細菌集団中の、抗生物質耐性および/または毒性因子をコードする接合性プラスミドの蔓延を減少させる方法を提供する。本方法は、接合性プラスミドの核酸成分によってコードされる受容体タンパク質との相互作用を介して、接合性プラスミドを有する細菌宿主細胞に結合するか、またはこれに侵入するファージ、例えばテクティウイルスと、不均一な細菌集団を接触させる段階を含む。ファージが接触し、そのゲノムを細菌宿主細胞中に挿入した時点で、宿主細胞は適切な受容体を発現することができる。その受容体と結合するファージは、宿主細菌細胞およびその中に含まれる関連プラスミドを死滅させるか、または宿主細菌細胞およびその中に含まれる関連プラスミドの複製を減少させることができる。さらなる局面において、本方法は、抗生物質耐性および/または毒性因子ならびにファージ受容体をコードするプラスミドで、割合の増加した細菌集団を形質転換する段階を含む。したがって、適切なファージによる感染後に、感染性または病原性の細菌集団は、死滅または増殖の減少に感受性のある細菌集団に変換され得る。]
[0034] 1つの態様において、不均一な細菌集団中のそのようなプラスミド保有細菌の絶対数は、例えば、開始総数の10%、20%、25%、40%、50%、75%、80%、または90%減少する。存在する細菌の数は、例えば、血球計数器を用いる細胞計数によって、または適切な選択条件下を含む適切な培地上への段階希釈によって、測定することができる。]
[0035] 別の態様において、ファージは広宿主域ファージである。広宿主域ファージの例には、テクティウイルス科のバクテリオファージ;プラスミド依存性広宿主域バクテリオファージ;正二十面体形態、脂質含量、直径55〜65 nmの頭部;および12〜130 nmの尾部のうちの少なくとも1つまたは複数を特徴とするファージ;ならびに以下の群:PRD1、PRR1、PR3、PR4、PR5、L17、PR772、GIL01、Bam35、PhiNS11またはGIL16、AP50、P23-62、-65、-65H、-71、-72、-77、P37-2、-4、-4A、-4B、-6、-6A、-7A、-8、-8B、-9、-9A、-3、-13B、-13C、-13L、-14A、-21、-21C、-21T、-26、-26S、-28、-36、-41、-41A、-41B、-43、-45、-50、-50L、-61、61L、-62、-63、-64、-64C、-64L、-64T、-71、-72、-72L、-73、-74、-76、-77、-81、-82、-83、-84、-87、-88、P78-76より選択されるファージが含まれる。]
[0036] 別の態様において、接合性プラスミドは以下の特徴の1つまたは複数を有する:不和合性群、例えば、例えば実質的な配列もしくは機能関連性を示すそれらの変種を含む、N、P、W、L/M、T、U、W、Y、B/O、FII、I1、K、com9、FI、HI1、HI2、X、A/C、D、FIV、FV/FO、FVI、H13、HII、I2、Iγ、J、V等のメンバーである;テクティウイルスファージの複製に重要な1つもしくは複数の付加的遺伝子をコードする;1つもしくは複数の抗生物質耐性マーカー、選択マーカー、もしくは毒性マーカーをコードする;宿主細菌細胞の染色体とは別のDNAの形態である;または染色体の一部である;細菌接合のための1つもしくは複数の線毛遺伝子をコードする。]
[0037] 別の態様において、不均一な細菌集団は、対数増殖期または定常状態増殖期にある。細菌集団は、様々な環境中、例えば食品加工装置;または水処理施設中;下水処理場;医療施設中;海洋環境、河口水域、もしくは温泉などの環境中に見出され得る。細菌集団は、バイオフィルムまたはシロアリの腸において見られるような、異なる種が相互作用して生存コロニーを生成する相乗的コロニー中にあってよい。そのようなコロニーでは、重要なメンバーの排除によって、集団の生存能が排除され得る。細菌集団は、真核細胞または器官培養物中に見出され得る。さらなる態様において、細菌集団は、例えば、真核生物宿主中に;脊椎動物生物中もしくは脊椎動物生物上に;または哺乳動物中もしくは哺乳動物上に見出され得る。]
[0038] 別の態様において、細菌宿主細胞とファージとの間の接触は、細菌細胞表面上、または線毛などの細菌細胞の付属器上の接合複合体において起こる。接合複合体は、接合性プラスミドまたは移動性プラスミドのいずれかに付随し得る。接触は、上記接合複合体を認識し、これに結合するバクテリオファージ関連タンパク質を介しても起こり得る。ファージと宿主細菌細胞との間の接触には、37℃が好ましい温度であるが、接触はその他のより低い温度またはより高い温度でも起こる。接触のための好ましいpH至適は7.0であるが、接触はより高いpH値またはより低いpH値でも起こる。]
[0039] 別の態様において、細菌宿主細胞とファージとの間の接触は、ファージ増幅を伴うかまたは伴わずに、様々な感染効率で、宿主細菌細胞に結合することができるファージを用いて起こる。]
[0040] 別の局面において、本発明は、伝達性遺伝子エレメント中にコードされるファージ結合感受性を、ファージ結合に感受性のあるドナー細菌細胞から該ファージ結合に非感受性のレシピエント細菌細胞に伝達する方法を提供する。本方法は、伝達性遺伝子エレメントがドナー細胞からレシピエント細胞に伝達される条件下で、非感受性細菌細胞を感受性細胞に曝露する段階を含む。]
[0041] 1つの態様において、伝達性遺伝子エレメントはプラスミドまたは染色体断片である。伝達性遺伝子エレメントは、テクティウイルスファージ受容体;または線毛;または細菌接合複合体の成分をコードすることが好ましい。さらなる態様において、伝達性遺伝子エレメントはプラスミドである。プラスミドの好ましい例には、例えば、F、R386、R1、Col B-K99、Col B-K166、R124、R62、R64、R483、R391、R46、R724、RP4、RK2、R751、RSF1010、R401、R388、またはS-aが含まれる。プラスミドは、N、P、W、L/M、T、U、W、Y、B/O、FII、I1、K、com9、FI、HI1、HI2、X、A/C、D、FIV、FV/FO、FVI、H13、HII、I2、Iγ、J、およびV、またはそれらの変種などの不和合性群(Inc群)内にあってよい。ファージ感受性ドナーは、例えば、F+細胞であるか;またはエシェリキア属、シュードモナス属、サルモネラ属、プロテウス属、ビブリオ属、アシネトバクター属、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、バチルス属、もしくはミクロコッカス属などの属に由来するか;または抗生物質耐性遺伝子もしくは毒性遺伝子の運搬体であってよい。ファージ非感受性レシピエント細菌細胞は、例えば、F-細胞であるか;またはエシェリキア属、シュードモナス属、サルモネラ属、プロテウス属、ビブリオ属、アシネトバクター属、スタフィロコッカス属、ストレプトコッカス属、バチルス属、もしくはミクロコッカス属などの属に由来してよい。本方法においてテクティウイルスファージを用いる場合、好ましいテクティウイルスには、例えば、PRD1、PRR1、PR3、PR4、PR5、L17、PR772、GIL01、Bam35、PhiNS11またはGIL16、AP50、P23-62、-65、-65H、-71、-72、-77、P37-2、-4、-4A、-4B、-6、-6A、-7A、-8、-8B、-9、-9A、-3、-13B、-13C、-13L、-14A、-21、-21C、-21T、-26、-26S、-28、-36、-41、-41A、-41B、-43、-45、-50、-50L、-61、61L、-62、-63、-64、-64C、-64L、-64T、-71、-72、-72L、-73、-74、-76、-77、-81、-82、-83、-84、-87、-88、P78-76が含まれる。好ましい態様では、細菌コロニーまたは感染物において、テクティウイルスファージ感受性細胞の割合は増加する。]
[0042] 別の態様では、ファージ、例えばテクティウイルスを用いて、受容体を発現するようにした細胞に感染させ、その結果、好ましくは以下の結果が起こる:ファージ感染によって、感受性細胞の死滅が起こる;感受性細胞集団において、抗生物質耐性遺伝子または細菌毒性遺伝子をコードする他の移動性エレメントの伝播が減少する;抗生物質およびファージ耐性のならびに毒性の細菌集団が減少する。]
[0043] 本発明の別の局面では、上記の方法のいずれかにおいて、適切な抗生物質をファージと共に投与する。好ましい態様では、ファージと抗生物質の併用投与により、不均一な細菌集団中の感受性細菌細胞が相乗的に減少するか、または集団中に見出されるプラスミドDNAコピーの数が減少する。]
[0044] 発明の詳細な説明
I. 序論
世界の多様な地域から単離されたファージの特異な群は、接合性プラスミドを有するグラム陰性細菌に感染することが特徴づけられた。Grahn, et al. (2006) 「PRD1: Dissecting the Genome, Structure and Entry」 Calendar (ed.) The Bacteriophages (2d ed.) Oxford Univ. Press, ISBN-13: 9780195148503を参照されたい。非常によく似た分離株はまた、グラム陽性宿主細菌に感染する。これらの密接に関連したファージは共にテクティウイルス科に分類され、これには、例えば、PR3、PR4、PR5、PR772、L17、AP50、NS11、およびP37-14と称されるファージが含まれる。これらのファージの様々な興味深い特徴の中には、ヒトアデノウイルスのものと非常によく似た複製機構、キャプシド構造、主要コートタンパク質折りたたみ、および頂点構造がある。このことから、これらのウイルスが、生命の細菌領域と真核生物領域の分岐に先行する共通の祖先を有する独自の系統に属するという示唆がもたらされた。テクティウイルス科(以下、テクティウイルスと称する)の構造特性から、これらのファージが、グラム陰性宿主細菌およびグラム陽性宿主細菌の両方に機能的に適用可能な結合および感染の機構を有することと一致するいくつかの基本原理が示唆される。したがって、宿主結合および感染における高選択性に関する一般的なファージ生物学教義は、記載の通り、これらの特定の広宿主域ファージに、およびおそらくはその他のものに当てはまらないようである。]
[0045] テクティウイルスは、典型的に、正二十面体外皮タンパク質キャプシド、脂質膜二重層、およびウイルスDNAゲノムを有する。最も良く特徴づけられたPRD1ファージメンバーは、広宿主域を有し、ドナー特異的ファージであり、かつ多剤耐性接合性プラスミドであるIncP、IncN、またはIncWを保有する宿主細胞にのみ感染する。Incプラスミドは、同じ不和合性群の他のプラスミドが宿主を共有することを効率的に妨げるが、ファージが感染するのに必要であると考えられる「不和合性」群プラスミドである。したがって、このプラスミドは、ファージが感染するのに必要ないくつかの機能、推定によるとファージ受容体をコードするようである。異なる不和合性群プラスミドは、単一の宿主中に共存できるようであるが、同じ群の複数のプラスミドが単一の宿主に同時感染することを妨げる機構が存在する。このプラスミドは典型的にファージ受容体をコードし、宿主細菌に対してファージ結合(および最終的には感染)感受性を付与する。このことは、最初は感受性ではない宿主細胞に感受性が伝達され得ることを意味する。]
[0046] 多くの異なるInc群が存在し、その群において1つまたは複数のプラスミドが記載されている。例えば、F1群は、プラスミドFおよびR386によって代表される;FII群は、プラスミドR1によって代表される;FIII群は、プラスミドCol B-K99およびCol B-K166によって代表される;FIV群は、プラスミドR124によって代表される;I群は、プラスミドR62、R64、およびR483(少なくとも5つの亜群)によって代表される;J群は、プラスミドR391によって代表される;N群は、プラスミドR46によって代表される;O群は、プラスミドR724によって代表される;P群は、プラスミドRP4、RK2、およびR751によって代表される;Q群は、プラスミドRSF1010によって代表される;T群は、プラスミドR401によって代表される;ならびにW群は、プラスミドR388およびS-aによって代表される。代表するものがより少ない他の同様の群も存在し、これらは時間と共に同定されていくであろう。]
[0047] II. 定義
「細菌培養物」とは、その一部またはすべてが細菌である細胞の集団である。実験の状況においては、典型的に培養物は均一であり、多くの場合はクローンである。臨床の状況においては、「不均一な細菌培養物」が存在する場合が多い。培養物は、それぞれがしばしば遺伝子変種を含む、複数の細菌種を含む場合が多く、これらは相互作用し、共同集団において体系的な生物学効果を示し得る。不均一な細菌培養物は、2つ以上の細菌種を含み得る。いくつかの態様においては、不均一な細菌培養物中に、2、3、5、または10を超える細菌種が見出される。不均一な細菌培養物の動的局面により、培養物中の異なる亜集団の相対量および蔓延、ならびに結果として生じる集団動向の方向に変化が生じ得る。他の状況において、特定の分離株はクローンであってよく、ある種の亜集団は異なる感染症症状の中心または原因であってよい。培養物の異なるメンバーはクローンであってよく、多クローン性であってもよく、または培養物は混合種を含んでもよい。集団は相乗的な集団成分を有してよく、この成分はしばしばバイオフィルム構造を形成する。例えば、Talsma (2007) 「Biofilms on medical devices」 Home Healthc. Nurse 25(9):589-94PMID: 18049256;Paju and Scannapieco 「Oral biofilms, periodontitis, and pulmonary infections」 Oral Dis. 13(6):508-512 PMID: 17944664;Visai, et al. (2007) 「Staphylococcus biofilm components as targets for vaccines and drugs」 Int. J. Artif. Organs 30(9):813-819 PMID: 17918127;del Pozo and Patel (2007) 「The challenge of treating biofilm-associated bacterial infections」 Clin. Pharmacol. Ther. 82(2):204-209 PMID: 17538551;およびRyan (2007) 「Infection following soft tissue injury: its role in wound healing」 Curr. Opin. Infect. Dis. 220(2):124-128 PMID: 17496569、ならびに一般的な臨床微生物学の教科書を参照されたい。不均一な細菌培養物には、バイオフィルムなどの相乗的な/共生生物の培養物が含まれる。この種の不均一な細菌培養物では、培養物の成分を1つ排除すると、培養物は全体として生存不能となる可能性がある。例えば、Colin and Moran (2006) 「Molecular Interactions between Bacterial Symbionts and Their Hosts」 Cell 126: 453-465を参照されたい。]
[0048] 哺乳動物の細菌感染の典型的な部位、および感染部に見出される不均一な細菌培養物の例を以下に記載する。いずれの感染部位も、以下に記載する種の少なくとも2つまたはそれ以上を含み得る。]
[0049] ヒト/動物の腸:エシェリキア属種、サルモネラ属種、シゲラ属(Shigella)種、シュードモナス属種、クレブシエラ属(Klebsiella)種、およびプロテウス属種。]
[0050] ヒト咽頭(および誤嚥性肺炎、副鼻腔感染、中耳感染等):スタフィロコッカス属種、ストレプトコッカス属種、ヘモフィルス属(Haemophilus)種、コリネバクテリウム属(Cornybacterium)種、およびナイセリア属(Neisseria)種。]
[0051] 皮膚創傷/熱傷創傷:シュードモナス属種、スタフィロコッカス属種、クレブシエラ属種。交通事故創傷感染:主に土壌生物+嫌気性生物(クロストリジウム属(Clostridium)種、バクテロイデス属(bacterioides)種)。]
[0052] 環境中に見出される不均一な細菌培養物は、以下の種の1つを含む、少なくとも2つの細菌種を含み得る:エシェリキア属種、サルモネラ属種、シゲラ属種、シュードモナス属種、クレブシエラ属種、プロテウス属種、バチルス属種、土壌マイコバクテリア、およびストレプトマイセス(Streptomyces)属。このリストは、集団中に示され得る他の種類の細菌種を排除しない。]
[0053] プラスミドを含む小集団または亜集団が存在する場合があり、例えば、いくつかの細菌は、ある特定の条件下で種々の選択的利点を付与し得る様々な異なるプラスミドまたはそれらの組み合わせを有し得る。ある種のプラスミドは、1つまたは複数の抗生物質耐性遺伝子または毒性遺伝子をコードし得る。Inc群プラスミドは、典型的に、不和合性群の他のプラスミドが同じ宿主中に共存するのを妨げるのに役立つ。例えば、Fernandez-Lopez, et al. (2006) 「Dynamics of the IncW genetic backbone imply general trendsin conjugative plasmid evolution」 FEMS Microbiol. Rev. 30(6):942-66PMID: 17026718;およびAdamczyk and Jagura-Burdzy (2003) 「Spread and survival of promiscuous IncP-1 plasmids」 Acta Biochim. Pol. 50(2):425-53 PMID: 12833168を参照されたい。多くの場合、種の不均一性は、異なる形態間の選択圧の欠如、または単一の好ましい表現型の不完全な選択を反映し得る。]
[0054] テクティウイルス科のメンバーであるテクティウイルスは、ある種の広宿主域ファージを指す。テクティウイルスは広宿主域ファージの1つの形態であり、他のものも存在し、他のものは、適切な特徴づけまたは関連の選択基準に基づいて発見される。分類基準は、群または種のメンバー間で共有される構造特性および機能特性の組み合わせに基づき得る。特に、その感染性がプラスミド依存的である、例えばイノウイルス科(Inoviridae)、レビウイルス科(Leviviridae)、およびポドウイルス科(Podoviridae)カテゴリーの他の類似のファージが存在する。特に、これらの例には、例えばそれぞれのファージの受容体をコードする、宿主の有する特定のプラスミドによって宿主域が規定されるファージが含まれる。したがって、これらのプラスミドは、そのプラスミドと適合する宿主のファージ結合およびファージ感染の能力を付与する。]
[0055] 他のプラスミド依存性ファージの中には、以下のものが含まれる:IncPプラスミドは、ある種のイノウイルス科ファージ、例えばPR64FSおよびIf1に対する感受性を提供する。他所に記載されているように、IncP、IncN、およびIncWは、ある種のテクティウイルス科ファージ、例えばPRD1、PR4、PR3、PR5、PR772、およびL17に対する感受性を提供する。IncDプラスミドは、例えばファージDを含むある種のレビウイルス科ファージまたはRNAファージに対する感受性を提供する;R687、R711b、R778b、およびR840;このプラスミドは、ファージMおよびpilHαに類似した構造をコードし、ファージは線毛の側面および末端に付着する。プラーク形成はいくらかの温度感受性を示し、より低い温度で感受性がより高くなる場合が多い。IncMは、RNAファージ、例えばファージMに対する感受性を提供し、このプラスミドを含む多くの生物において働くようである。IncX、IncM、IncN、IncP1、IncU、IncW、およびプラスミドR775は、例えばファージXおよびR6Kを含む、線毛の先端に吸着する繊維状ファージに対する感受性を提供するようである。IncCは、例えばファージC-1を含むRNAファージ:または例えばファージC-2を含む繊維状ファージに対する感受性を提供する。IncC、IncD、およびIncJは、例えばファージJを含むシホウイルス科(siphoviridae)ファージに対する感受性を提供する。Folacプラスミドは、ファージFolacに対する感受性を提供する。IncPプラスミドはまた、繊維状ファージPf3に対する感受性を提供し(Luiten, et al. (1985) J. Virol. 56(1)268-276を参照されたい)、その中の受容体結合セグメントを用いて、無傷のファージであろうと、受容体結合ドメインに連結された他の活性であろうと、殺傷剤を標的化することができる(例えば、WO2007/130655;PCT/US2007/010972を参照されたい)。同様に、IncIまたはIncNプラスミドは、繊維状ファージIkeに対する感受性を提供し;IncI、IncN、およびIncPプラスミドは、繊維状ファージI2-2に対する感受性を付与する。例えば、Bradley, et al. (1983) J. Bact. 154(1):505-507を参照されたい。]
[0056] 記載されている様々なテクティファージは、異なるグラム陽性生物に影響を及ぼし、例えば、Bam35はB.チューリンゲンシス(B. thuringenesis)に;AP50は炭菌(B. antracis)に;PhiNS1はB.アシドカルダリウス(B. adiocalarius)に;GIL16およびGIL01はB. チューリンゲンシスに;ならびにpBCLINはB.セレウス(B. cereus)に作用する。]
[0057] 広宿主域ファージとは、宿主域が典型的に、高特異的細菌宿主特異性の教義よりも広いファージである。例えば、Bamford, et al. (1995) 「Bacteriophage PRD1 : a broad host range DSDNA tectivirus with an internal membrane」 Adv. Virus Res. 45:281-319PMID: 7793328;およびSaren, et al. (2005) 「A snapshot of viral evolution from genome analysis of the tectiviridae family」 J. Mol. Biol. 350(3):427-40 PMID: 15946683を参照されたい。典型的に、広宿主域ファージは、適切な受容体分子を発現する多くの宿主に感染することができるが、異なる属、科、または目分類カテゴリーに分類される宿主に由来し得る。受容体は、所望通りに結合、感染、および/または死滅に必要な遺伝子を提供するべく、接合性プラスミド上または他所にコードされ得る。]
[0058] 接合性プラスミドは、典型的に、好ましくは接合によるそれ自体の細胞間伝播に必要とされる機能をコードする。本明細書において用いる状況においては、必要な遺伝子の大部分をコードする機能が意図され、これにより、プラスミド自体に欠けている成分を補完し得る構築物を選択するかまたは操作する可能性が残される。低特異性複製起点、または所望の宿主域と適合する複数の起点のいずれかを含む、既に広宿主域を示すプラスミドを添加または選択することによって、プラスミドの宿主域を広げる手段もまた存在する。接合性プラスミドは、典型的に細菌種および表現型の多様化を達成させる物理的手段である、「移動性エレメント」の1つの形態である。例えば、多様な可動性DNAエレメントの水平遺伝子伝達(LGT)は、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、およびゲノムアイランドの手段によって起こり得る。最も一般的に考慮される手段はプラスミドであるが、類似の機能は、ファージ、トランスポゾン等の間で記載されている原理を同様に適用することによっても達成され得る。]
[0059] 接合性プラスミドの減少は、宿主細胞中の絶対数であろうと蔓延であろうと、多くの方法で達成され得る。大きなプラスミドを保有することの選択的不利点のために、そのプラスミドを有する宿主に対して選択を行ってもよく、さもなくば宿主はプラスミドのすべてもしくは一部を失い得る。対照的に、プラスミドは、有利な表現型、例えば抗生物質耐性を付与することができ、細胞のすべてがプラスミドを有し得る。他の状況においては、プラスミドはファージの受容体をコードしてよく、これにより、ファージは、プラスミドを有する宿主を死滅させるまたは排除する手段となる。いくつかの態様において、接合性プラスミドは、接合性プラスミドの機能、すなわち細胞間で伝達する能力、および宿主細胞で発現された場合にテクティウイルスの受容体をコードする核酸配列の存在を維持しつつ、そのサイズを減少させる(ヌクレオチドの総数を減少させる)ように操作された組換えプラスミドである。減少は、プラスミドの絶対数、プラスミドを有する培養物中の関連宿主の数、またはプラスミドを有する宿主の相対的割合の減少であってよい。]
[0060] 接合対形成システムとは、DNAが1つの細胞から別の細胞に伝達される手段である。これは、2つの細胞を生じる細胞分裂とは異なり、この場合、2つの細胞が一方から他方にDNAのいくつかの成分を伝達する。例えば、Schaechter (2004) The Desk Encyclopedia of Microbiology (2d ed.) Academic Press, ISBN 0126213615, 9780126213614;Funnell and Phillips (eds. 2004) Plasmid Biology ASMPress, ISBN-10: 1555812651, ISBN-13: 978-1555812652;Streips and Yasbin (2003) Modern Microbial Genetics (2d ed.) Wiley-IEEE, 2003, ISBN 0471461083, 9780471461081;Schrodera and Lankab (2005) 「The mating pair formation system of conjugative plasmids - A versatile secretion machinery for transfer of proteins and DNA」 Plasmid 54(1):1-25;Francia, et al. (2004) 「A classification scheme for mobilization regions of bacterial plasmids」 FEMS Microbiol Rev. 28(1):79-100;Frost, et al. (1994) 「Analysis of the sequence and gene products of the transfer region of the F sex factor」 Microbiol Rev. 58(2):162-210;Novotny, et al. (1969) 「Functions of F Pili in Mating-Pair Formation and Male Bacteriophage Infection Studied by Blending Spectra and Reappearance Kinetics」 J. Bact. 98(3):1307-1319;Delmonte-Corrado, et al. (2007) 「Lectin-Binding Sites Involved in Paramecium primaurelia Mating Pair Formation」 Journal of Eukaryotic Microbiology 44(6):603-608;Murakami and Haga (1995) 「Interpecific Pair Formation Induced by Natural Mating Reaction in Paramecium」 Zoological Sci 12:219-223、Mating pair formation in Gram-positive Bacteria: Dale and Park (2004) Molecular Genetics of Bacteria (4th ed.) John Wiley and Sonsを参照されたい。典型的には伝達は接合機構を介して起こるが、形質転換、ファージまたは部分的ファージゲノム伝達、形質導入、または他の関連過程を含むその変化形が、所望の目的を達成する場合が多い。接合過程において、システムは典型的に、線毛を生じるための、ならびに関連の遺伝子マーカーまたはカセット、例えば抗生物質耐性マーカー、毒性マーカー、またはファージ受容体マーカーの伝達および使用を可能にする、必須の機能を含む。例えば1つまたは複数のヘルパー構築物を用いて、不完全なシステムを補充するまたは補完するための手段が存在する。]
[0061] 「GMP条件」とは、例えば米国政府の食品医薬品局によって定義されているような、医薬品の製造管理および品質管理に関する基準を意味する。類似した実施基準および規則が、欧州、日本、および大半の先進諸国に存在する。]
[0062] 例えば「実質的に純粋な」の上記定義における「実質的に」という用語は、一般的に、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、またはより好ましくは少なくとも約90%、およびさらにより好ましくは少なくとも約95%純粋であることを意味し、タンパク質、核酸、または他の構造的分子もしくは他のクラスの分子を問わない。]
[0063] 本発明の実施は、組換え核酸の構築、および宿主細胞、好ましくは細菌宿主細胞における遺伝子の発現を伴い得る。特定の宿主に対して最適化したコドン使用が適用できる場合が多い。これらの目的を達成するための分子クローニング技法は、当技術分野において公知である。発現ベクターなどの組換え核酸の構築に適した多種多様なクローニング法およびインビトロ増幅法が、当業者に周知である。当業者を多くのクローニング実習に導くのに十分なこれらの技法および説明書の例は、Berger and Kimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methodsin Enzymology volume 152 Academic Press, Inc., San Diego, CA(Berger);およびCurrent Protocols in Molecular Biology, Ausubel, et al., eds., Current Protocols, a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc., (1999 Supplement)(Ausubel)に見出される。組換えポリペプチドの発現に適した宿主細胞は当業者に公知であり、これには、例えば、大腸菌(E. coli)などの原核細胞、ならびに昆虫細胞、哺乳動物細胞、および真菌細胞(例えば、クロコウジカビ(Aspergillus niger))を含む真核細胞が含まれる。]
[0064] 当業者を、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)、リガーゼ連鎖反応法(LCR)、Qβ-レプリカーゼ増幅法、およびRNAポリメラーゼを介したその他の技法を含むインビトロ増幅法に導くのに十分なプロトコールの例は、Berger、Sambrook、およびAusubel、ならびにMullis, et al. (1987) 米国特許第4,683,202号;PCR Protocols A Guide to Methodsand Applications (Innis, et al. eds) Academic Press Inc. San Diego, CA (1990)(Innis);Arnheim and Levinson (October 1, 1990) C&EN 36-47;The Journal Of NIH Research (1991) 3:81-94;Kwoh, et al. (1989) Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 86:1173;Guatelli, et al. (1990) Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 87:1874;Lomell, et al. (1989) J. Clin. Chem. 35:1826;Landegren, et al. (1988) Science 241:1077-1080;Van Brunt (1990) Biotechnology 8:291-294;Wu and Wallace (1989) Gene 4:560;およびBarringer, et al. (1990) Gene 89:117に見出される。インビトロで増幅された核酸をクローニングする改良法は、Wallace, et al.、米国特許第5,426,039号に記載されている。]
[0065] 「核酸」という用語は、一本鎖または二本鎖型いずれかのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド重合体を指し、他に限定されない限り、天然ヌクレオチドと同様の様式で核酸とハイブリダイズする天然ヌクレオチドの公知の類似体も包含する。特記しない限り、特定の核酸配列はその相補配列も含む。]
[0066] 「組換え発現カセット」または単に「発現カセット」とは、そのような配列と適合する宿主において構造遺伝子の発現に影響を及ぼし得る核酸エレメントを有する、組換えまたは合成によって作製された核酸構築物である。発現カセットは、少なくともプロモーター、および任意に転写終結シグナルを含む。典型的には、組換え発現カセットは、転写されるべき核酸(例えば、所望のポリペプチドをコードする核酸)およびプロモーターを含む。本明細書に記載するように、発現をもたらすのに必要なまたは役立つ付加的な因子もまた用いられ得る。例えば、発現カセットは、宿主細胞からの発現されたタンパク質の分泌を指示するシグナル配列をコードするヌクレオチド配列もまた含み得る。転写終結シグナル、エンハンサー、および遺伝子発現に影響を及ぼす他の核酸配列もまた、発現カセット中に含めることができる。好ましい態様において、ファージ受容体を含むアミノ酸配列をコードする組換え発現カセットが、細菌宿主細胞において発現される。別の態様において、治療タンパク質を含むアミノ酸配列をコードする組換え発現カセットが、細菌宿主細胞において発現される。さらなる態様において、ファージ受容体を含むアミノ酸配列をコードする多シストロン性発現カセットが、細菌宿主細胞において発現される。さらなる態様においては、例えばファージ受容体および治療タンパク質といった2つ以上のタンパク質の産生のために、多シストロン性発現カセットが細菌細胞において発現される。2つ以上の組換えタンパク質を発現させる別の例においては、発現カセットは2つ以上の単シストロン性発現カセットを含み得る。]
[0067] 本明細書で使用する「異種配列」または「異種核酸」とは、特定の宿主細胞にとって外来性の供給源に由来するか、または同じ供給源に由来する場合には、本来の形態から改変されたものである。したがって、細菌宿主細胞中の異種ファージ受容体遺伝子は、特定の宿主細胞にとって内因性である、改変された受容体コード遺伝子を含む。異種配列の改変は、例えば、DNAを制限酵素で処理して、プロモーターに機能的に連結され得るDNA断片を作製することによって、さらに起こり得る。部位特異的突然変異誘発などの技法もまた、異種配列の改変に有用である。]
[0068] 「機能的に連結された」という用語は、核酸発現制御配列(プロモーター、シグナル配列、または一連の転写因子結合部位など)と、第2の核酸配列との間の機能的な連結を指し、この場合、発現制御配列は、第2配列に対応する核酸の転写および/または翻訳に影響を及ぼす。]
[0069] 「タンパク質」、「ポリペプチド」、または「ペプチド」とは、単量体がアミノ酸であって、それらがアミド結合を介して共に結合している重合体を指し、あるいはポリペプチドとも称される。アミノ酸がα-アミノ酸である場合、L-光学異性体またはD-光学異性体のいずれかが用いられ得る。加えて、例えばβ-アラニン、フェニルグリシン、およびホモアルギニンといった非天然アミノ酸もまた含まれる。遺伝子によってコードされないアミノ酸もまた、本発明において用いられ得る。さらに、反応基を含むように修飾されたアミノ酸もまた、本発明において用いられ得る。本発明において用いられるアミノ酸はすべて、D-異性体またはL-異性体のいずれかであってよい。L-異性体が一般的に好ましい。加えて、他のペプチド模倣体もまた本発明において有用である。一般的な総説については、Spatola, A. F., CHEMISTRY AND BIOCHEMISTRY OF AMINO ACIDS, PEPTIDESAND PROTEINS, B. Weinstein, eds., Marcel Dekker, New York, p. 267 (1983)を参照されたい。]
[0070] 細胞に関して用いられる場合の「組換え」という用語は、細胞が異種核酸を複製するか、または異種核酸によってコードされるペプチドもしくはタンパク質を発現することを示す。組換え細胞は、天然(非組換え)型の細胞中には見出されない遺伝子を含み得る。組換え細胞はまた、人為的な手段によって改変され、細胞中に再導入された、天然型の細胞中に見出される遺伝子を含み得る。この用語はまた、細胞から核酸を取り出すことなく改変された、細胞にとって内因性の核酸を含む細胞も包含する;このような改変には、遺伝子置換、部位特異的変異、および関連技法によって得られる改変が含まれる。「組換えタンパク質」とは、組換え細胞によって産生されたタンパク質である。好ましい態様において、組換えファージ受容体は、組換え細菌細胞によって産生される。]
[0071] III. 一般的な抗生物質耐性機構、MDRクラスター、毒性因子
上記のように、抗生物質は、感染症によって示される問題の多くを回避することに関して、医学の実践に大変革をもたらした。ペニシリンの発見によってこのアプローチが始まり、微生物叢の増殖を妨げるための多くの異なる作用機序が活用されてきた。それに応じて、多くの細菌機構が抗生物質の活性を逃れるように進化し、実質的にすべての抗生物質によって、宿主標的が採用する耐性戦略が導かれた。多くの作用機序の中でも、細胞壁合成、細胞膜機能、タンパク質合成、核酸合成、および代謝作用を破壊する抗生物質が開発されてきた。さらに、多くの耐性手段は、しばしば染色体外に、遺伝的に共にクラスター化されるかまたは連鎖している場合が多く、効率的な様式で宿主間を伝達できるようになる。一般に、染色体外クラスターはRプラスミド上に存在するが、例えばFプラスミドまたはファージといった他の関連遺伝子形態上に存在してもよい。例えば、Torres, et al. (2007) 「Current concepts in antibiotic-resistant gram-negative bacteria」 Expert Rev. Anti Infect. Ther. 5(5):833-43を参照されたい。]
[0072] 毒性因子とは、微生物病原性において重要な機能を提供する構造である。例えば、Finlay and Falkow (1997) 「Common themes in microbial pathogenicity revisited」 Microb. Mol. Biol. Rev. 16: 136-169を参照されたい。微生物病原性の様々な定義が存在し、病原体は、そのような毒性遺伝子の存在によってそれらの非毒性対応物から区別され得る。いくつかのグループは、何が毒性因子をまさに構成するのかという難問を探った。病原性に必要であると考えられるタンパク質は、3つのカテゴリー:(1) 「真の」毒性遺伝子、(2) 「真の」因子の発現調節因子など、毒性と関連しているもの、および(3)宿主のコロニー形成を可能にするために細菌によって必要とされる毒性「生活習慣」遺伝子に分類されることが示唆された。本質的に、毒性因子は、宿主において疾患を引き起こすのに不可欠である、病原体によって産生される任意の成分である。例えば、Wassenaar and Gaastra (2001) 「Bacterial virulence: can we draw the line?」 FEMS Microbiol. Lett. 9995: 1-7を参照されたい。]
[0073] 細菌の毒性因子は、毒性の機構および機能に基づいて、大まかにいくつかの群に分類され得る。これらには、一般的に、粘着性およびコロニー形成因子、インベイシン、莢膜および表面成分、内毒素、外毒素、シデロフォア、ならびに毒素輸送体が含まれる。]
[0074] 多くの侵入病原体に対する最初の宿主障壁は、通常は、腸または気道などの粘膜表面である。これらの環境において上皮細胞の代謝回転はおよそ48時間であるため、細菌は、一掃されないように十分に付着し、複製しなければならない。したがって、多くは、障壁を乗り越え、侵入するために、鞭毛および線毛(pili)/線毛(fimbriae)のような運動性エレメントまたは付着エレメントを進化させてきた。単純な付着は、宿主細胞表面上の受容体、および細菌細胞表面上のアドヘシンを介して媒介される。種特異的またはさらには株特異的であるものもあれば、組織指向性を示すものもあり、すなわち、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)は歯にコロニーを形成するが、舌上皮にはコロニーを形成しない。他の例には、宿主細胞表面上のD-マンノースと結合するビブリオ属種、ナイセリア属種、およびシュードモナス属種の線毛タンパク質サブユニットが含まれる。大腸菌(Escherichia coli)もまたこの戦略を利用するが、線毛先端タンパク質を変化させて、シアル酸のような他の受容体と結合することができる(S-線毛)。]
[0075] インベイシンは、細胞外で作用して、局所レベルで宿主防御を打ち破り、感染の通過を容易にするという事実によって、付着因子とは異なる。大部分は酵素であり、組織基質および細胞膜のような物理的障壁に影響を及ぼす。このようにして、細菌は細胞間隙を通じて素早く拡大することができる。外毒素によっては短期間の侵入特性を有する場合もあるが、真の侵入と識別可能であり、すなわちボルデテラ属(Bordetella)由来の百日咳毒素がこれに当たる。侵入酵素にはいくつかのクラスがある。あるものは、結合組織のヒアルロン成分のように頑丈な組織を溶解する(クロストリジウムのヒアルロニダーゼ)。他のタンパク質は細胞膜に穴を開け、細胞溶解を引き起こす(クロストリジウム属およびグラム陽性球菌由来のレシチナーゼおよびホスホリパーゼ)。他の偏性細胞内細菌タンパク質(例えば、リステリア属(Listeria)由来)は「インベイシン」と称されてきたが、これらはもっぱら宿主のアクチン線維上で作用し、コロニー形成のために微生物の貪食を誘導する。]
[0076] 莢膜および表面成分は、食作用を回避するために用いられ得る。多くの病原体は、マクロファージおよび他の宿主細胞免疫応答による付着および貪食を妨げる表面成分を進化させてきた。これは、膜結合タンパク質、粘液性多糖類莢膜、または微生物によって除去され、その細胞表面に結合される「自己」成分という形をとり得る。後者の例は、梅毒の原因病原体である梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)である。この細菌は宿主フィブロネクチンを除去し、この部分をその細胞外膜に結合させる。]
[0077] グラム陽性菌は、生来、周囲の環境に対して透過性が低い厚い細胞壁で囲まれており、一方、グラム陰性菌のリポ多糖(LPS)または「内毒素」は、補体媒介性溶解を防御することができる。加えて、連鎖球菌プロテインM、連鎖球菌プロテインA、およびチフス菌(Salmonella typhi)のVi抗原のような、両クラスによって産生されるいくつかの抗原は、吸着を阻害することができる。]
[0078] いくつかの化膿性細胞内球菌はまた、食細胞を死滅させる能力を有する。化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)および病原性ブドウ球菌はいずれも溶解酵素を排出し、これによって好中球リソソームが細胞質中に破裂し、宿主細菌は死滅する。グラム陰性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)外毒素Aもまた、細胞内タンパク質合成機構を中断することによって、食細胞を死滅させることができる。]
[0079] 内毒素は、ほぼグラム陰性生物のみが保有する。内毒素またはリポ多糖(LPS)は宿主補体経路を活性化し、炎症の強力な誘導因子である。これは、3つの部分:外膜中に繋留されている毒性脂質(リピドA)、免疫原性多糖コア、および細胞外表面における抗原性のO結合型系オリゴ糖からなる外膜化学成分である。これは、グラム陰性菌の病理学の一部であると考えられている。ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)および髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)といった多様な種が、細胞表面上にLPSを発現する。]
[0080] 内毒素はほとんどの哺乳動物に対して毒性があり、非常に高い用量で遭遇させた場合には致命的となり得る。具体的には、宿主循環中にLPSが放出されると、「LPS結合複合体」と称されるある種のタンパク質による結合が促進される。これは様々な単球およびマクロファージ上のCD14受容体と相互作用し、炎症性サイトカインの放出、ならびに補体カスケードおよび凝固カスケードの活性化を誘発する。発熱性および分裂促進性を含む生理的困難は、最終的には敗血症および死を招く。しかしながら、例えばアジュバントとして用いられる低レベルのLPSは、宿主の微生物耐性を有利に高め、抗ウイルス作用を増強するγインターフェロンをより多く産生するようT細胞を誘導する。LPSのリピドA成分は強力な生物増強剤であり、免疫系を高めることができる。]
[0081] 外毒素は、生存病原細胞によって分泌される。細菌タンパク質外毒素は、公知の最も強力な毒素の中の1つである。バクテリオファージまたはプラスミドによってコードされる場合が多く、多くのクラスが存在し、いずれも強力な抗原性があるが本質的には不安定である。宿主細胞表面上で作用するものもあるが、大多数(A/B毒素)は受容体を伴う標的膜に結合し(Bサブユニット)、第2成分(Aサブユニット)を細胞質中に直接送達する。より特殊化した毒素は、独特の「III型」分泌系を介してタンパク質を宿主中に「注入」することを含む。後者は、いくつかのグラム陰性腸管病原体でのみ見られる。毒素はまた、白血球毒素、神経毒等のように、ある種の細胞におけるそれらの生物活性に従って分類され得る。]
[0082] 十分に研究された典型的なA/B毒素は、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)由来のジフテリア外毒素(DT)である。用いられる特異的受容体は、ヘパリン結合上皮増殖因子である;A-サブユニットはタンパク質合成を中断し、細胞死を引き起こす。しかしながら、この毒素はまた、受容体媒介性エンドサイトーシス(RME)を用いて、エンドソームを通して細胞に侵入することもできる。細胞質中の1つのA-サブユニットで死滅させるのに十分であり、細菌は1時間に最大で5,000分子を放出することができる。]
[0083] 表面作用性の毒素は、通常、標的細胞分子に結合するか、またはそれを通して細胞溶解が起こる膜孔を形成することによって、それらの効果を誘発する。この群には、ピロリ菌(Helicobacter pylori)の空胞化毒素、大腸菌溶血素、ならびに化膿性連鎖球菌および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に属する「スーパー抗原」が含まれる。結晶構造の解明から、そのようなタンパク質の機能を分子レベルで解明することができる。MHC-II複合体を介してナイーブT細胞受容体と非特異的に結合することによって、大量の炎症性サイトカイン放出が誘発され、毒素ショック症候群のような化膿熱が生じる。]
[0084] いくつかのグラム陰性腸管病原体のIII型分泌系は、外毒素の稀な群である。それらは、細菌染色体上の大きな病原性アイランド上に共にコードされる2群のタンパク質:構造部分およびエフェクターから構成される。大部分のTTSSタンパク質構造成分は配列相同性を示すが、エフェクターは、細菌の拡大を促進するために様々な方法で宿主細胞に影響を及ぼす。例えば、ペスト菌(Yersinia pestis)の6つの分泌Yop外毒素は、アクチン細胞骨格に大々的な影響を及ぼし、インテグリン媒介性食作用を妨げ、通性細胞内細菌の取り込みを可能にする。S.フレックスネリ(S. flexneri)由来のIpaタンパク質は、壊死による好中球の死滅に寄与し、したがって、病原体が上皮障壁の破壊を介して宿主細胞に侵入できるようになる。これらのエフェクターが共有するいくつかの特徴には:いくつかの他の分泌外毒素で見られるような伝統的なsecシグナルの欠如、細菌細胞質中でのアクセサリータンパク質(同様にTTSS病原性アイランド中にコードされる)による広範な介添え、および各毒素をコードしているmRNA内の転座シグナルの可能性が含まれる。]
[0085] 宿主環境は典型的に、1つを除けばあらゆる点で細菌にとって理想的である;鉄は豊富であるが、ヘム、フェリチン、トランスフェリン、またはラクトフェリンに強固に結合している。これは、感染における限定因子となり得る。したがって、いくつかの病原体は、寄生性消費のために宿主鉄の放出を媒介するシデロフォア毒性を進化させた。例として、高い結合定数によって宿主から結合鉄を除去する、エシェリキア属種およびサルモネラ属種に由来するエンテロケリンが含まれる。サルモネラ属から7つのエンテロケリン遺伝子を欠失させることを含む実験から、マウスモデルに注射した場合に、病原体はそれらの毒性を失うことが示された。したがって、シデロフォアは毒性に不可欠である。]
[0086] 大部分のグラム陰性菌病原体は、4つの分泌系を用いて、それらの細胞質から宿主または細胞外基質にタンパク質毒素を輸送する。系はそれぞれI〜IV型と番号付けされ、ペリプラズムを介した大腸菌溶血素の1型分泌のように、外毒素の異なる群に用いられる。1型タンパク質は分泌シグナルを有するが、輸送に際して切断されるものはなく、全過程が、内膜および外膜を通じる孔を含む1段階機構で機能する。特異的に分泌される外毒素の遺伝子の多くは、それらそれぞれの分泌装置遺伝子に隣接して、病原性アイランド上にクラスター化されている。]
[0087] ジフテリア菌およびコレラ菌(Vibrio cholerae)のもののように、A/B外毒素の大多数は、2段階のII型系を介して細菌細胞表面に輸送される。細菌細胞質中でアミノ末端が切断され、sec機構によりタンパク質が輸送された後、ペリプラズム中間体が形成される。これは次に、第2の膜貫通タンパク質セットを通過する。IV型分泌外毒素もまた内膜secタンパク質を用いるが、ピロリ菌のCagA部分のように、それらのカルボキシル末端を介して外膜を通過する。既に上記したIII型分泌系は、外毒素を宿主細胞の細胞質中に直接注入する特殊化した巨大分子「針」を通じてエフェクターを分泌する。]
[0088] これらの多くの毒性因子は、宿主細菌株間で伝達されるプラスミド上にコードされている場合が多い。そのようなプラスミドを有する集団内の宿主またはプラスミドの数を減少させる手段は、本明細書に記載する方法を用いて達成することができる。プラスミド標的または移動性エレメント標的は、単なる抗菌耐性プラスミドよりもはるかに幅広い可能性があるが、これには、これらの様々な異なる毒性特性のいくつかまたはすべてをコードするものが含まれる。]
[0089] IV.接合システム;移動性エレメント;DNA伝達
プラスミドは典型的に、染色体外状態で安定して受け継がれる、レプリコンまたはDNAの複製断片である。古い文献では、エピソームという用語は、染色体に組み込まれ得るプラスミドに用いられたが、この用語はほとんど使用されなくなった。プラスミドは典型的に、自律的に複製する能力を有する二本鎖DNAの共有結合閉環断片として存在し、この性質のために、その単離および物理的認識がもたらされる。それらの構造の閉環共有結合性質のために、ゲル電気泳動または塩化セシウム浮遊密度勾配によって、それらを染色体DNAから分離することが可能となる。例えば、bact.wisc.edu、または微生物学もしくは分子生物学に関する基本的な教科書もしくは研究書を参照されたい。]
[0090] 実質的にすべてのプラスミドによって2つの特徴が共有され、それらは複製機能を有し、典型的には、単一の宿主中にどのプラスミドが共存できるかを制限する不和合性群に分類される。]
[0091] 最も単純な場合には、複製機能は、プラスミド自体によってコードされるか、または正常な宿主複製機構から「借用される」、複製に必要なトランス作用性タンパク質を伴う、1つまたは複数の複製起点に由来する。いくつかのプラスミドが広宿主域であることは、少なくとも一部は、例えば無差別の(promiscuous)複製起点、複数の別の起点、組み合わせ等といった、種々の異なる宿主においてそれらが機能することを可能にする、それらの多重複製システムによって説明される。]
[0092] プラスミドは典型的に、多くの既存の不和合性群のうちの1つにのみ分類される。2つのプラスミドは、いずれか一方が、それだけで存在するよりももう一方の存在下で安定がより低い場合に、不和合性である。30を超える不和合性群がこれまでに記載されているが、上限は見えない。不和合性は、遺伝子型の名称はincであり、多くの場合、細胞内に一定のコピー数を維持するというプラスミドの要求の必然的帰結である。所与の不和合性群のプラスミドが、それらが維持しようと試みる一定のコピー数を有するならば、同じ不和合性群の2つのプラスミドが同じ細胞中に見出される場合に、競合が起こる。どちらのプラスミドがより速く複製できるか、または他の何らかの利点を有するかは、不和合性システムによって許容されるコピー間の不均衡な程度に表れる。驚くべきことに、プラスミドは、それら両者が、娘細胞への分割に関して同じ機能を有する場合にも、不和合性となり得る。]
[0093] プラスミドには、様々な付加的な特徴が見出される場合が多い。多くのプラスミドは、複製にも不和合性にも関与しない遺伝子を含む。そのような遺伝子は、抗生物質耐性(したがって、「耐性」または「R」因子という用語が生まれる)、巨大分子複合体の分解、バクテリオシンの産生、様々な重金属に対する耐性、抗生物質の合成、または動物宿主もしくは植物宿主の感染に必要な毒性因子のような特性をコードし得る。]
[0094] 第2の共通した特性は、接合能と称される、1つの細胞から別の細胞へのプラスミド自体の伝達を促進する能力である。接合は、細胞間接触による細胞間の遺伝情報の一方向性伝達である。したがって、接合はプラスミドに限定されず、細胞中に重要なエレメントが存在する限り、いかなるDNAでも起こり得る。このように細胞接触が必要であることで、接合は形質導入および形質転換と区別される。「一方向性」という用語は、プラスミドのコピーが、「ドナー」と称される1つの細胞から「レシピエント」と称される別の細胞に伝達されるという事実を指す。接合能に関与する2つの異なる機能が存在する:1つ目は、oriTまたはmobと称される、伝達の開始部位である。前者の用語は「伝達の起点(origin of transfer)」の簡略記号であり、2つ目は「移動性(mobility)」の省略形である。いずれの場合にも、それらはDNA上の部位を参照し、拡散性産物を参照することはない。機能の2つ目の群は、これらの部位において作用し、移動が起こるのに必要な機能の範囲をもたらすタンパク質によって提供される。これらはtra遺伝子によってコードされ、レシピエント細胞と接触し、ドナー細胞とレシピエント細胞を共に引き付けることに関与すると思われる線毛の形成を含む、様々な機能を有する。これによって膜接触の領域が生じ、何らかの接合橋が形成されるように見える。tra遺伝子の産物は、これらの事象の調節および物理的構築の両方に関与する。このひと続きの中のいくつかの事象は、特異的一本鎖ヌクレアーゼにより、oriTと称される部位にニックを入れる段階、およびそのDNAの遊離5'末端に1つまたは複数の「パイロット」タンパク質を結合させる次の段階を誘発する。これらのタンパク質は、伝達されるDNAのその後の複製において機能すると考えられ、1つは「プライマーゼ」として役立つようである。次に、ドナー中で「ローリングサークル」型の複製を起こしつつ、一本鎖はこの末端からレシピエントに伝達される。伝達されるDNAがプラスミドである場合、これはレシピエント中で二本鎖かつ環状化され、おそらくはそこで複製することができる。伝達DNAが染色体である場合には、環状化は起こり得ないが、何らかの方法で相補鎖が作製され、染色体との相同組換えが起こり得る(いずれの場合にも、入ってくるDNAは、それが受け継がれるべきであるならば、レプリコンに付随するようになる)。oriT部位がプラスミド上にコードされる(oriT部位を有するものが伝達される)限り、プラスミドは非接合性なおかつ移動性(tra産物が別のプラスミドによって供給される場合)となる可能性がある。最後に、tra機能およびoriT機能を両方とも欠いているプラスミドは、非接合性かつ非移動性である。逆遺伝学における多くの適用は、oriT領域を含む小さなプラスミドを利用するものであり、この場合、tra機能は細胞中の別のプラスミドによって供給される。]
[0095] プラスミドは、多くの場合、細胞分裂後に両娘細胞がプラスミドのコピーを含む可能性を高める機構を有する。分割機能(しばしばparと称される)は、プラスミド多量体の単量体化(少数の多量体よりも多くの単量体を有する方がよい)およびプラスミドと膜との会合(見かけ上、プラスミドを物理的に分離するのを助ける)を含む様々な機構によって、この作業を担う。我々は、プラスミドは細胞によって「失われる」と言うが、実際の機構はほぼ確実に、不適切な分割に起因して、前の細胞分裂時に細胞がプラスミドを受け取らなかったというものである。そのような喪失は分離と称される。低コピー数および高コピー数のプラスミドの両方に関して、この「喪失」は(非常に大まかに)1%の頻度で起こるが、並はずれて安定ないくつかのプラスミドが見出されており、これはおそらくは一連の異なるpar機能のためである。いくつかのプラスミドは、プラスミドを受け取らなかったすべての娘細胞を死滅させることによって分離を「妨げる」、parシステムのような効果を有するシステムを進化させた。それらは、比較的長期の死滅機能(kil)および短期の死滅無効化(kor)機能を生じることによって、これを行う。プラスミドをもたない娘はkil産物を有するが、生存のために必要な量のkor産物を維持することができない。これらを欠いている変異体では、プラスミドを含まない分離個体がより高頻度に検出されるため、実験者にとって、これらのシステムは分割システムのように見える。それらはまた、inc機能であるようにも見え得る。]
[0096] 場合によっては、現時点でプラスミドを含む株のプラスミド不含派生物を単離することが必要であり、この手順はキュアリングと称される。これらは、(i)自然発生的に(おそらく、プラスミドがスコア化可能な表現型を付与する場合に、レプリカプリントで単離されるコロニー);(ii)濃縮後に(同様に、プラスミドが増殖表現型を付与する場合);(iii)細胞中に、異なるが不和合性であるプラスミドを選択することによって;または(iv)高温、もしくはアクリジン、臭化エチジウム、ドデシル硫酸ナトリウム、およびノボビオシン(最初の2つの化学物質は変異源として知られているため、それらは制限して用いるべきである)などの化学物質で処理することによって、探し求めることができる。特に、本発明は、ファージ結合感受性またはファージ感染感受性を付与するプラスミドを有する細胞を除去することによる「キュアリング」の1つの形態を提供する。]
[0097] F因子は、接合能の特性を有する、最もよく研究されている不和合性群である。その染色体外状態において、この因子は分子量およそ62kbを有し、少なくとも20のtra遺伝子をコードする。これはまた、3コピーのIS3、1コピーのIS2、および1コピーのA配列、ならびに不和合性および複製のための遺伝子を含む。F因子は3つの異なる状態で存在し得る:「F+」は、上記の遺伝情報のみを含む、自律的な染色体外状態にある因子を指す。「Hfr」(「高頻度組換え(high frequency recombination)」を指す)状態は、おそらくはその様々な挿入配列に起因して、この因子がそれ自体を染色体中に組み込んだ場合の状態を表す。最後に、「F'」または(Fプライム)状態とは、それが染色体外エレメントとして存在するが、それに共有結合している染色体DNAのいくらかの部分を含むという付加的必要条件を伴う因子を指す。F因子を含まない株は、「F-」であると称される。]
[0098] F+株をF-株との接合では、F+の迅速で効率的な伝達(1時間でおよそ50%の伝達)が認められるが、染色体の伝達は、ドナー細胞当たり10E-5〜10E-7というレベルに過ぎない。これはおそらく、稀で自然発生的なHfr形成に起因する。上記の通り、Hfrは、プラスミド上の挿入配列に起因する染色体中への組込みによって生じる。これらは好ましい部位で組込みを引き起こすようであり、その結果、それらの伝達の起点および伝達の方向に関して種々の異なるHfrが見出される。Hfr株とF-株との間で交差を行う場合、高頻度(10E-2〜10E-5)での染色体マーカーの伝達が認められる。この伝達は両配向性であり、時間依存的である。伝達はF因子内のoriT部位から始まるため、F因子の一部が最初に伝達され、その後染色体の残りの部分が伝達される。染色体全体が伝達される場合、F因子の他の部分も伝達される。F因子自体は、そのような組込みのための相同性がないという理由で、レシピエントに組み込まれないが、伝達された染色体DNAは相同組換えによって組み換わり得る。大腸菌染色体全体の伝達はおよそ100分を要するが、非常に頻繁に接合対の自発的破壊が起こる。そのような破壊は、後に伝達されるマーカーがしばしば全く伝達されず、10E3というオーダーになる傾向がある伝達の勾配が生じる(すなわち、早期マーカーは、大部分の遠位マーカーよりもおよそ10E3倍高い頻度で伝達される)ことを意味する。最終的な結果は、染色体全体を伝達することができない場合が多いということである。F'株とF-株との間の交差では、ドナーの遺伝子型に応じて、2つの可能な供与事象が起こり得る。ドナー株がRec-である場合には、プラスミドはドナー中に染色体外エレメントとして残存し、接合事象において伝達される唯一の遺伝情報となる。しかしながら、ドナー細胞がRec+である場合には、相同組換えによって、F'のいくらかがドナーの染色体中に組み込まれ、ひいてはHfrのように作用する。典型的には、この理由のために、そのような解析にはRec-ドナーが用いられる。]
[0099] 古典的なF因子の「限界」は、それらの使用が一般的に大腸菌およびその近縁種に限定されることである。これらの生物において、F'は、染色体移動が可能な大きな低コピー接合性プラスミドであるが、大きすぎるために物理的に容易に扱うことができない。新たな変種、例えば操作型が、記載の方法における使用のために作製されるか、または伝達の効率、発現、もしくは標的ファージによる感受性に関して最適化される。いくつかの好ましい新規変種は、天然F因子よりも小さく、例えばより少ないヌクレオチドを含む。古典的F因子の他の新規変種は、例えば、複製起点と、テクティウイルス受容体をコードする核酸との間のより密接な連結を提供する。]
[0100] 広範な特性を有する様々な他の不和合性群のプラスミドが、遺伝子解析において役立てられてきた。天然分離株は、コピー数(細胞当たりおよそ1〜数百個)、サイズ(数kB〜数百kB)、安定性、接合能、宿主域、および薬剤耐性の点で異なる。さらに、これらの特性の多くは、1つまたは少数の遺伝子の産物であるため、非常に多くのプラスミドが、多数のインビトロ操作用のユニークなクローニング部位を含む、有用な特性の特定のセットを有するように操作された。専門の手引書が一般的な選択について記載しており、また文献中に新たな型が絶えず記載され続けている。]
[0101] 「接合対形成システム」という用語は、例えば形質導入または形質転換によるDNAの効率的な伝達を可能にする他のシステムと共に、接合に関してプラスミドに適用される。例えば、Schrodera and Lankab (2005) 「The mating pair formation system of conjugative plasmids- A versatile secretion machinery for transfer of proteins and DNA」 Plasmid 54:1-25;Dale and Park (2004) Molecular Genetics of Bacteria (4th ed.) Wiley ISBN-10: 047085085X, ISBN-13: 978-0470850855;Brooks (2007) Medical Microbiology (24th ed.) McGraw-Hill Medical, ISBN-10: 0071476660, ISBN-13: 978-0071476669;Demuch and Lamont (eds. 2006) Bacterial Cell-to-Cell Communication: Role in Virulence and Pathogenesis (Advances in Molecular and Cellular Microbiology) Cambridge University Press, ISBN-10: 0521846382, ISBN-13: 978-0521846387;Phillips (ed. 2004) Plasmid Biology ASMPress; ISBN-10: 1555812651, ISBN-13: 978-1555812652;Thomas (2000) Horizontal Gene Pool: Bacterial Plasmids and Gene SpreadCRCPress, ISBN-10: 9057024624, ISBN-13: 978-9057024627;およびその他の微生物学または細菌学の教科書を参照されたい。]
[0102] 接合機構との関連において、細胞は集団中でF-からF+に変換され得る。プラスミドはまた耐性マーカーを保有する場合が多いため、抗生物質との関連における選択により、表現型を含むプラスミドが優勢となることが確実になる。プラスミドがまたファージに対する受容体をコードする場合には、耐性マーカーとファージ感受性マーカーとの連結によって、免疫系またはその他の宿主細菌排除システムが集団を最小限に抑えるのに十分である、細菌集団を有意に減少させるための抗生物質+ファージ曝露の組み合わせが提供される。多くの場合、組み合わせは相乗的に機能することができ、その結果、閾値以下の量の抗生物質およびファージで感染を効率的に制御することができる。加えて、ファージおよび抗生物質による時間的処理は、重複してもよいし、別々であってもよい。]
[0103] V. 広宿主域ファージ;テクティウイルス科属
古典的なファージ教義では、ファージの結合および感染は極めて狭い宿主域過程であること、ならびに大部分のファージは、多数の異なる宿主において結合するおよび/または複製する能力を欠いていることを述べている。テクティウイルス科のファージの記載から、広宿主域の特異な性質が並はずれていることが示唆される。狭宿主域の特異的機構は、選択的観察、ならびに宿主細胞結合機能、感染機能、複製機能、および溶解機能の典型的に高度に特殊化した相互作用の組み合わせに起因すると考えられる。]
[0104] 対照的に、広宿主域ファージの潜在的価値を認識することは、幅広い選択性の形質に関して選択を行うことができることを意味する。比較的広い宿主域を有するファージから開始し、その宿主特異性を広げるための選択方法を適用することができる。ファージ宿主特異性成分、例えば尾部線維の末端における特異性結合タンパク質の突然変異誘発を行うことができる。標準的な遺伝学的手段によって、結合特異性を付与する遺伝子を同定して、どのファージタンパク質が関与しているかを同定することができる。例えば、PRD1ファージでは、P2タンパク質が主要な標的細胞受容体として同定されている。ファージ受容体および宿主タンパク質の両方に関する複合研究によって、結合の範囲を広げることができ、バイオインフォマティクス解析によっても、類似のファージ受容体を発現する他の種を同定することができる。受容体-結合タンパク質相互作用の構造解析から、選択性の低い結合タンパク質によって認識される標的受容体の突然変異誘発または設計が可能になる。]
[0105] 結合特異性を除いて、宿主域制限のいくつかは、結合後の、ファージ感染における後の段階と関係していると考えられる。したがって、感染機能、複製機能、および溶解機能は、宿主株のより広い範囲でうまく起こるように、無差別さ(promiscuity)を広げるよう改変される。あるいは、これらの機能の制限的な調節は、突然変異誘発および選択の過程によって緩和され得る。]
[0106] 特に、細胞外壁構造間の構造的相違を反映するグラム陰性とグラム陽性の境界に、制限的な機能が及ぶようにする手段を見出すことが望ましい。特に、グラム陽性菌の細胞壁構造は、グラム陰性菌の細胞内壁構造と一見して類似している。したがって、グラム陰性菌内の宿主の共通した構造的特徴は、そのような構造に到達することができるファージに対して感受性を示す。そのため、グラム陰性株の細胞外壁の局所領域を消化するための手段を取り込むように、ファージを組み合わせるまたは改変することは有用であると考えられる。そのように働くための酵素活性は、細胞外壁の外側からグラム陰性菌を攻撃する正常ファージ上に存在する。Padmanabhan, et al. 「Phage Derived Antimicrobial Activities」 WO/2007/130655を参照されたい。酵素活性がファージに付着していようと、別々に投与されようと、細胞外壁の消化は、ファージが細胞内膜に接触するための到達性を提供し得る。]
[0107] ある特定の状況においては、宿主細胞は、不稔感染にかかわらず無能力化され得ることに留意されたい。感染過程は、複製機能または溶解機能の不全のために失敗する場合があるが、DNAの注入の感染過程は、さらなるファージを産生することなく、それ自体が細胞を無能力化し、死滅させ得る。ある特定の状況においては、このことによって、宿主細菌細胞をさらなる増殖もしくは毒性機能から防ぐ、または細菌細胞にファージ感受性および/もしくは抗生物質耐性を付与したプラスミドの貯蔵所として役立てるという意図した結果が達成される。]
[0108] テクティウイルス科ではない広宿主域ウイルスもまた、これと同様の様式で有用である。その受容体が、毒性因子または耐性因子をコードしているプラスミドに付随し得る他のファージも、使用可能である。抗生物質耐性であろうと毒性であろうと、関連の選択マーカーを、適切なバクテリオファージに対する受容体の成分に連結させるプラスミドを作製することは、特に有用である。例えば、Gaidelyte, et al. (2006) J. Bact. 188:5925-5934を参照されたい。]
[0109] 他の関連態様において、異なる供給源由来の関連ファージが結合し得る、無差別の(例えば、より広域のファージスペクトル)または複数の近縁受容体を設計または作製してもよい。多くの異なる宿主細菌に結合し得る「普遍的」ファージを構築してもよい。多くの異なる細菌宿主に適用可能な感染機構を、提供される最初の結合または認識機能と組み合わせてもよい。]
[0110] 移動性エレメントが、レシピエント標的細胞を標識するために用いられ得る異なるマーカーを伝達する場合の別の態様において、マーカーは、例えば、標的部分に対する受容体、または発現細胞を死滅させるための認識エレメントであってよい。例えば、受容体は、毒性複合体などの毒性実態に対する高親和性受容体であってもよいし、別の殺傷システム、例えばマクロファージ食作用または免疫成分に対する受容体であってもよい。]
[0111] VI. 人為的移動性エレメント構築物;受容体遺伝子を有するプラスミド
本発明の方法は、結果を達成するために天然の分離株を用いる代わりに人為的構築物を作製することによって、多くの場合に、より効率的に達成され得る。例えば、プラスミドまたはファージの天然分離株を向上させる特定の型を構築することができる。耐性マーカーまたは毒性マーカーに、改変を組み入れることができる。例えば治療的に有用な抗生物質に対抗するために天然で進化したマーカーからの変種操作型を用いて、別の関連選択手段に対する耐性に関して、選択性の増大を提供することができる。異なる抗生物質、例えば関連成分を用いて、発現のために1つまたは複数の所望の受容体により密接に連結され得る変種マーカーをコードするプラスミドを選択することができる。細菌の集団を別の選択マーカーに供して、広域スペクトルファージによる宿主破壊のより良い効率を提供する所望の型の移動性エレメントをより強力に選択することができる。あるいは、変種マーカーを、より高い発現レベルの受容体に、または対応するファージによる宿主死滅においてより高い親和性もしくは効率を示す受容体に連結することができる。所定の受容体を発現している宿主の死滅に際して、より良い効率または特徴を有するファージを構築してもよい。]
[0112] 他の態様では、記載の方法に関して有利な特徴を有するように、移動性エレメントを操作することができる。例えば、新規宿主へのより高効率の伝達、宿主内でのより良好な発現、受容体特性の改善、コードされている核酸の発現レベルの変化をもたらすDNAメチル化の効率の変化、外来性プラスミドのサイズまたは構造の除去、さらなる追跡可能な特徴等を示すように、プラスミドを設計することができる。使用の条件下で、例えば使用の化学的または物理的条件下でより効率的に機能するように、ファージまたは移動性エレメントを設計することができる。局所、表面、粘膜、溶液等にかかわらず、使用の特定の環境に対して、材料の製剤を設計することもできる。]
[0113] 異なるファージによって認識されるより広域スペクトルの受容体を設計するまたは同定するための手段が存在する。したがって、多くの異なるテクティウイルスファージ等にわたって、受容体をスクリーニングするまたは選択することができる。選択されたまたは天然の変種をスクリーニングし、同定することができる。改変された親和性または選択性は、適切な使用下で重要となる。他の状況においては、所与の受容体の特徴を変更するための手段を適用してもよく、例えば、塩、pH、極性等によって物理的環境を変更することは、リガンド-受容体相互作用の機能に影響を及ぼす立体構造変化を引き起こし得る。上記のプラスミド依存性ファージおよび対応するプラスミドの説明を参照されたい。]
[0114] ある特定の状況において、通常の実験室条件と比較して極端な環境において機能するシステムを同定することは有用であると考えられる。例えば効率的な線毛発現といった、低温または高温で機能するシステムを選択することにより、実験室条件と比較して極端な環境条件下で、広範な集団に対してより効率的な伝達が可能になる。周囲の室温または環境温度は、本方法が環境復旧に適用される温度であってよい。]
[0115] 加えて、所望のファージ機能は、多くの場合、無傷のファージに満たないファージを用いて達成され得る。ファージの断片または部分、例えばピオシン、尾部、酵素等は、遺伝機能を効率的に損なう点で、無傷のテクティウイルスの代用となり得る。移動性エレメントの機能は、細胞が破壊された際に起こる核酸の間接的分解によって損なわれ得る。]
[0116] VII. 実用的適用
本発明の実用的適用には、例えば、公衆衛生上の水処理および廃棄物処理、病院設定における細菌の処理、食品加工処理、耐性または毒性コードプラスミドの治療的または環境的排除、感染の効率的な感作または評価/検出、ならびにプラスミドを獲得するための選択圧およびその後のプラスミド含有細胞を死滅させるための段階が含まれる。プラスミドを有する細菌種の低減を含む他の適用は、動物施設において、例えば有害な細菌の存在が望ましくない建物および設備の適切な表面上で、行うことができる。加えて、本方法は、望ましくないプラスミドエレメントを含む細菌の全存在を除去するために、家畜、例えば(乳牛および肉牛、ブタ、ニワトリ、魚、エビ等)に対する適用にも適用することができる。]
[0117] 1つの重要な適用は、通常の使用において汚染される可能性がある物品、例えばカテーテル、病院のモニターシステム、医療機器、および設備の処理である。標的細菌が公衆衛生上の危険要因となり得る場所、設備、環境等を、提供する方法および組成物を用いて処理することができる。関心対象となる場所には、標的細菌を含む材料、特に毒性マーカーまたは抗生物質耐性マーカーを含むものを処理する目的または機会が存在する公共施設、特に公共衛生施設が含まれる。これらの材料には、廃棄物、例えば液体、固体、または空気が含まれ得る。ドアの取手、蛇口、エレベーターのボタン等を含む、多くの人々が触れる表面が重要である。]
[0118] 水性廃棄物処理場は、廃液から標的宿主または移動性エレメントを除去するために、これらの方法を組み入れることができる。固体廃棄物処理場は、それらの遺伝子を誤った場所に伝播し得る移動性エレメントの感染または放出が大発生する可能性を最小限に抑えるために、これらの方法を導入することができる。逆に、食品を調理する区域または設備は、定期的に清掃する必要があり、本発明は、標的細菌、特に移動性エレメントを有する最も危険な標的細菌を効率的に排除するための組成物および手段を提供する。汚染されやすい医学的環境および他の公共の環境は、標的微生物の増殖および拡大、ならびに選択された移動性エレメントの伝達を最小限に抑えるために、同様の手段を保証し得る。本方法は、例えば、集中治療室、または航空機、潜水艦等のような循環が限られた環境用の空気ろ過システムを含む、標的細菌の滅菌排除が望ましい状況において用いることができる。]
[0119] 別の適用には、獣医学的状況または医学的状況における使用が含まれる。特定の細菌の存在を決定するため、または特定の標的を同定するための手段によって、これらの技法を用いるためのさらなる供給源も同定され得る。動物およびペットの洗浄を含め、洗浄剤に殺菌活性または静菌活性を含めることを、これらの技法と組み合わせて適用してもよい。]
[0120] ファージを用いて、感受性を付与するプラスミドを有する宿主を排除することができる。宿主が耐性遺伝子含有プラスミを有することを必要とする抗生物質選択条件下において、宿主はまたファージ受容体も発現し、これらの細胞はファージ感染に対して感受性となり、したがってプラスミドを含む細胞は死滅する。]
[0121] 本発明の方法を用いて、典型的には相互作用することのない細菌種間でファージ感受性を伝達することができる。例として、典型的に動物宿主、例えば脊椎動物宿主または哺乳動物宿主を有する細菌間で伝達される接合性プラスミドを、典型的に異なる宿主、例えば昆虫などの無脊椎動物、または植物に感染する細菌に伝達することができる。あるいは、典型的に植物または無脊椎動物に感染する細菌を、典型的に脊椎動物宿主または哺乳動物宿主を有する細菌に伝達するための接合性プラスミドの供給源として用いることができる。この伝達に適している例示的な種は、例えばサルモネラ属細菌およびキサントモナス属(Xanthomonas)細菌である。1つの態様では、テクティウイルスPRD1ファージに対する受容体をコードする接合性プラスミドが、ネズミチフス菌細菌細胞から、X.カンペストリス(X. campestris)細菌細胞に伝達される。接合性プラスミドの伝達により、X. カンペストリス宿主細胞は、テクティウイルスによる感染に対して、したがって死滅または細胞複製速度の低下に対して感受性となる。本明細書における実施例8は、サルモネラ属細菌からキサントモナス属細菌への接合性プラスミドの伝達の実証を提供する。]
[0122] 本方法論を用いて、抗生物質耐性マーカーを保有する集団中のプラスミドを排除することもできる。したがって、ある特定の状況では、本方法を用いて、所定の細菌集団または細菌培養物中の耐性遺伝子の蔓延を減少させることができる。これらの方法は、他の処理、例えば付加的な抗菌の方法もしくは組成物による処理と併用してもよいし、またはF線毛形成を誘導する化合物と併用してもよい。例えば、Hergenrother, et al. 「Methodsof Treating Drug-Resistant Bacterial Infections」米国特許出願公開第20030130169号、USSN 10/261,851、および関連の組成物を参照されたい。組み合わせたものは、共にまたは連続して投与することができる。]
[0123] プラスミドを用いて、さもなければ受容体を欠いている細胞に、受容体をコードする遺伝子を伝達することにより、ファージ感染に対する感受性を付与することもできる。このようにして、ファージ非感受性の宿主を感受性宿主に変換するための手段が提供される。]
[0124] VIII.治療的投与
適用する方法または投与経路および投与量は、感染させる細菌株、感染の部位および程度(例えば、局所または全身)、用いるマーカーまたは受容体、ならびに治療を受ける対象によって異なる。プラスミドであろうとファージであろうと、その投与経路には、経口、エアロゾルまたは肺に送達するための他の装置、点鼻用スプレー、静脈内(IV)、筋肉内、腹腔内、くも膜下腔内、眼内、腟内、直腸内、局所、腰椎穿刺、くも膜下腔内、ならびに脳および/または髄膜への直接適用が含まれるが、これらに限定されない。治療物質を送達するための媒体として用いることができる賦形剤は、当業者には明らかであろう。例えば、プラスミドまたはファージは凍結乾燥形態であってよく、静脈内注射による投与の直前に溶解することができる。投与用量は、宿主感染において細菌当たり約0.03、0.1、0.3、1、3、10、30、100、300、1000、3000、10000、またはそれ以上のプラスミド分子の範囲内になるように意図される。プラスミドはそれ自体がタンデムに会合していても、または複数のコピー形態(二量体、三量体、四量体、五量体等)であっても、または例えば断片もしくは異なるアジュバントのような1つもしくは複数の他の実態との組み合わせであってもよいが、そのプラスミドのサイズに応じて、用量は、約100万〜約10兆/kg/日、および好ましくは約1兆/kg/日であってよい。ファージ投与の後期段階において、用量は、宿主感染において細菌当たり約0.03、0.1、0.3、1、3、10、30、100、300、1000、3000、10000、もしくはそれ以上のファージ粒子、または約10E6殺菌単位/kg/日〜約10E13殺菌/kg/日であってよい。]
[0125] 殺傷能力を評価するための方法は、無傷の複製ファージ、例えばプラーク形成単位またはpfuを評価するために当業者によって用いられる方法に類似していてよいが、死滅単位は、死滅単位の力価測定後に生存細菌数を測定することによって、より良好に評価することができる。しかしながら、非複製ファージ粒子は細菌宿主叢上でプラークを形成しないと考えられるため、死滅の定量はより独特である。したがって、「死滅」単位の量を評価するための段階希釈法が、標準的なpfuの代わりに便宜的に用いられる。殺傷組成物に曝露した細菌培養物の段階希釈物により、死滅単位を定量することができる。あるいは、生存コロニー単位を有する全細菌数を比較することにより、どれだけの割合の細菌が実際に生存能力があるか、および暗に、どれだけの割合が殺傷構築物に対して感受性であったかを確証することができる。人工基質または特別に調製した基質に対する活性の他の測定値は、しばしば死滅単位の代用尺度として用いられ得る。]
[0126] 治療物質は典型的に、病原性プラスミドの排除が成功裏に達成されるまで投与または力価測定されるが、感染株の特異的診断が判定されている間、広域スペクトル製剤を用いてもよい。したがって、本発明は、本発明の組成物の単一の剤形および複数の剤形、ならびにこのような単一の剤形および複数の剤形を送達するための持続放出手段を遂行するための方法を意図する。殺傷ファージの遅延放出製剤を、早期または即時のプラスミド伝達、例えば移動性エレメント投与システムと併用してもよい。]
[0127] 肺または他の粘膜表面へのエアロゾル投与の場合、治療組成物は、投与のために特別に設計されたエアロゾル製剤中に組み入れられる。多くのこのようなエアロゾルは当技術分野において公知であり、本発明は特定の製剤に限定されない。このようなエアロゾルの例は、Schering-Plough社製のProventil吸入器であり、その噴霧剤は、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、およびオレイン酸を含む。他の態様は、対象または患者の鼻経路および副鼻腔経路に投与するために設計された吸入器を含む。噴霧剤成分および乳化剤の濃度は、治療に用いる特定の組成物に基づいて必要に応じて調整される。エアロゾル処置毎に投与されるべきファージ死滅単位の数は、典型的には約10E6〜10E13死滅単位の範囲内、および好ましくは約10E12死滅単位である。]
[0128] 典型的には、死滅により、宿主の複製能力は少なくとも約3分の1に低下し、約10分の1、30分の1、100分の1、300分の1等〜多数桁分の1まで影響を及ぼす場合もある。しかしながら、死滅させずに細菌複製速度を遅らせることでさえ、有意な治療的価値または商業的価値を有し得る。好ましい遺伝的不活化効率は、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、8、またはそれ以上の対数単位であってよい。同様に、増加速度、または宿主細菌細胞当たりの絶対的なプラスミド蔓延もしくはプラスミド数の減少も、有用な尺度であってよく、好ましくは未処理と比較して少なくとも約3分の1、10分の1、30分の1、100分の1、または300分の1に減少する。]
[0129] IX. 製剤
本発明はさらに、薬学的に許容される賦形剤中に提供される、本発明のプラスミドおよび/またはファージを含む薬学的組成物を意図する。したがって、本発明の製剤および薬学的組成物は、特定の細菌宿主に伝達され得る単離されたプラスミドセグメント;同じまたは典型的な細菌宿主に影響を及ぼす2種、3種、5種、10種、もしくは20種またはそれ以上の実体の混合物;あるいは、異なる細菌宿主または同じ細菌宿主の異なる株に影響を及ぼす2種、3種、5種、10種、もしくは20種またはそれ以上の受容体をコードするプラスミドを含む製剤を意図する。細菌、例えば黄色ブドウ球菌の複数の株の増殖をまとめて阻害するプラスミドのカクテル混合物を用いることが有用であるという例が存在し得る。この様式で、本発明の組成物を目的の使用の必要性に適応させることができる。化合物または組成物は、典型的には無菌またはほぼ無菌である。]
[0130] 本明細書における「治療有効量」とは、投与される対象に効果、例えば静菌性または好ましくは殺菌性の効果をもたらす用量を意味する。プラスミド排除との関連において、それは、細菌集団メンバーの間での数または増殖の割合の減少において測定され得る。厳密な用量は治療の目的に依存し、これは当業者が公知の技法を用いて確かめることができる。例えば、Ansel, et al. Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery; Lieberman (1992) Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1-3), Dekker, ISBN 0824770846, 082476918X, 0824712692, 0824716981;Lloyd (1999) The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding;およびPickar (1999) Dosage Calculationsを参照されたい。当技術分野において公知であるように、プラスミドまたはファージの分解、全身送達対局所送達、およびプラスミド伝達の速度、ならびに年齢、体重、全体的健康状態、性別、食生活、投与時間、薬物相互作用、コロニー中の細菌成分のスペクトル、および病態の重症度に対する調整が必要である場合があり、これは当業者が何らかの実験法を用いて確認することができる。]
[0131] 薬学的に許容される様々な賦形剤は、当技術分野において周知である。本明細書において用いる「薬学的に許容される賦形剤」は、組成物の有効成分と組み合わされた場合に、その成分が生物活性を保持することを可能にし、かつ対象の免疫系との破壊的反応を引き起こさない材料を含む。このようなものは、安定剤、保存剤、塩、または糖複合体もしくは結晶等を含んでよい。]
[0132] 例示的な薬学的担体には、無菌の水溶液または非水溶液、懸濁液、および乳濁液が含まれる。例として、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、油性/水性乳濁液などの乳濁液、および様々な種類の湿潤剤のような標準的な薬学的賦形剤が含まれるが、これらに限定されない。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体には、生理食塩水および緩衝培地を含む、水、アルコール/水溶液、乳濁液、または懸濁液が含まれる。非経口媒体には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル、または固定油が含まれる。静脈内用媒体には、液体および栄養補充液、電解質補充液(リンゲルデキストロースに基づくものなど)等が含まれる。他の態様において、組成物は、徐放粒子、ガラスビーズ、包帯、眼内挿入物、および局所用形態を含む固体マトリックス中に組み入れられる。]
[0133] 本発明の組成物を含む組成物はまた、例えば、本発明に従って後に再構成および使用するために、当技術分野において周知の手段を用いて凍結乾燥することもできる。]
[0134] リポソーム送達用の製剤、および糖結晶を含むマイクロカプセル化酵素を含む製剤もまた、関心対象である。このような賦形剤を含む組成物は、周知の従来法によって製剤化される(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Chapter 43, 14th Ed., Mack Publishing Col, Easton PA 18042, USAを参照されたい)。プラスミド移動の段階後に、ファージの遅延放出製剤が適用されてもよく、これによって単一の併用投与段階が可能になると考えられる。]
[0135] 一般に、薬学的組成物は、顆粒剤、錠剤、丸剤、坐剤、(例えば、経口送達用に適合化された)カプセル剤、マイクロビーズ、マイクロスフェア、リポソーム剤、懸濁剤、軟膏剤、ローション剤等の様々な形態で調製することができる。経口使用および局所使用に適した製薬等級の有機または無機の担体および/または希釈剤を用いて、治療活性化合物を含む組成物を構成することができる。当技術分野で公知の希釈剤には、水性媒体、植物性および動物性の油脂が含まれる。製剤には、安定剤、湿潤剤および乳化剤、浸透圧を変更するための塩、または適切なpH値を保証するための緩衝剤を組み入れてもよい。]
[0136] 薬学的組成物は、活性組成物に加えて他の成分を含み得る。加えて、薬学的組成物は、2種以上の有効成分、例えば2種もしくはそれ以上、3種もしくはそれ以上、5種もしくはそれ以上、または10種もしくはそれ以上の異なる実体を含んでよく、その際、異なるプラスミドまたはファージは同じ細菌、異なる細菌、または付随的な細菌に対して特異的であってよい。例えば、薬学的組成物は複数(例えば、少なくとも2種またはそれ以上)のプラスミドを含むことができ、その場合、組成物中のプラスミドのうち少なくとも2種は、伝達に関して異なる細菌宿主特異性を有する。このようにして、治療組成物を、異なる細菌の混合感染を治療するために適合化することができ、または治療組成物は、特定の施設環境において一般に見られる様々な種類の感染に対して有効となるように選択された組成物であってよい。例えば、感染に(例えば、感染部位に)存在すると推測される異なる細菌または重大な意味をもつ細菌(例えば、株、種等)に対して有効な少なくとも1つの成分を含むように、異なる群のプラスミド実体を選択することによって、選択の組み合わせが起こり得る。上記のように、組成物は、従来の抗菌剤のような他の薬剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの態様において、プラスミドおよびファージを、プラスミド成分およびファージ成分の異なる放出速度を有し得る同じ製剤内で投与することが望ましい場合がある。]
[0137] X.方法論
本発明を実施するいくつかの局面は、一般臨床微生物学の周知の方法、バクテリオファージを取り扱うための一般的方法、ならびにバイオテクノロジーの一般的基礎、原理、および方法を含む。このような方法に関する参考文献を下記に列挙するが、これらはあらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れられる。]
[0138] A.一般臨床微生物学
一般微生物学とは微生物の研究である。例えば、

を参照されたい。]
[0139] B.バクテリオファージを取り扱うための一般的方法
バクテリオファージを取り扱うための一般的方法は周知であり、例えば、

を参照されたい。]
[0140] C.バイオテクノロジーの一般的基礎、原理、および方法
バイオテクノロジーの一般的基礎、原理、および方法は、例えば、

に記載されている。]
[0141] D.タンパク質発現の転写調節
転写は、例えばベクター由来のDNA配列がRNAポリメラーゼによってコピーされて、産物のRNA、例えばメッセンジャーRNAまたはmRNAを産生する過程である。タンパク質またはペプチドの発現のために、mRNAの転写は潜在的に調節される段階であり、したがって、最終的に組換えタンパク質または組換えペプチドの発現レベルに影響を及ぼす。]
[0142] 転写は、RNAポリメラーゼがDNA配列内のプロモーター領域に結合することによって開始する。プロモーターは、転写されるべき遺伝子の上流(5'領域中)に位置する、DNA発現のための正の調節領域である。転写はまた、例えば、リプレッサータンパク質が、典型的にプロモーター配列の近傍に位置するリプレッサーDNA配列に結合することによって、負の様式で調節され得る。]
[0143] 組換えタンパク質の転写を調節するために、発現カセットは、複数のプロモーター、およびまた負の調節配列、例えばリプレッサータンパク質結合部位を含み得る。tacプロモーターは強力なプロモーターであると考えられており、de Boerら(de Boer et al., PNAS 80:21-25 (1983))によって記載されている。一般的に、核酸発現のレベルは、プロモーターが数および相対強度の両方の点で増加するにつれて、増加すると考えられている。用いられ得る他のプロモーターにはTacプロモーターが含まれ、他の例示的なプロモーターには、例えばT7プロモーター、T5プロモーター、PRプロモーター、PLプロモーター、trpプロモーター、lacプロモーター、araBプロモーター、およびgalプロモーターが含まれる。]
[0144] 本発明のいくつかの態様においては、ベクター中に、lacプロモーターおよびtacプロモーターの任意の数および組み合わせが設計される。]
[0145] E.突然変異誘発;部位特異的、ランダム、シャフリング
本明細書に提供する構造および機能の説明に基づいて、好ましい特徴を最適化し得る相同体および変種を単離するまたは作製することができる。したがって、構造相同性により、または特徴的な遺伝子構成モチーフ中に見出される実体を評価することにより、プラスミド伝達、受容体発現、ファージ結合、または標的宿主死滅の機能のさらなる触媒セグメントを見出すことができる。プラスミド、ファージ受容体、または宿主細胞認識の遺伝子は、典型的には特定の遺伝子配置中に見出され、例えばバイオインフォマティクス手段により利用可能な配列情報を評価することによって、対応する配置中に見出される他の実体を見出すことができる。これらはまた、構造物の変種をスクリーニングするための開始点としても役立つ場合があり、例えば、このような構造物を突然変異誘発し、所望の特徴、例えば、より広範なプラスミド伝達性、より広範なファージ受容体機能、またはより広範な宿主標的特異性を有するものをスクリーニングする。突然変異誘発の標準的方法を用いることができる。適切な変種を見出すには、遺伝子またはドメインのシャフリング技術も適用可能である。]
[0146] プラスミド宿主細胞適合性、ファージ受容体セグメント、またはファージの殺傷機能も同様に同定することができ、記載の方法に関して最適化するために、一般的なまたは特定の標的モチーフを同定することができる。そのような標的の多くは、様々な潜在的標的株上に見出される、高度に発現されるタンパク質、炭水化物、または脂質含有構造であってよい。細菌細胞の外側に見出される線毛構造は、タンパク質が結合のために標的とする別の構造であってよい。突然変異誘発により、結合選択性を広げるか、またはセグメントもしくは構築物全体の安定性を高めることができ、欠失戦略により、外来性セグメントを排除することができる。]
[0147] グラム陽性菌細胞壁の成分は、グラム陰性細胞壁の成分と、または場合によっては他のマイコバクテリアもしくは胞子と共有され得る。しかしながら、グラム陰性菌には、ファージの接近に対する付加的な障壁としても役立ち得る、壁の付加的な層が存在し得る。より複雑なグラム陰性細胞壁構造を透過させるために、ファージまたは他所に由来する他の活性を組み合わせてもよい。特に、複数の触媒セグメントは複数の活性を提供することができ、それらは単一の構築物内で相乗的に機能し得るか、または別の治療物質、例えば抗生物質または抗菌剤と併用した場合に相乗効果を提供し得る。]
[0148] ターゲティング部分は触媒断片の局所濃度を上昇させ得るが、適切な長さのリンカーもまた、壁分解事象の数を局所的に増加させ得る。したがって、標的モチーフおよび触媒モチーフと適合性があるか、または適切な長さのリンカーは有用な場合があり、標的細菌の静止または死滅をもたらす触媒的透過活性を増加させ得る。]
[0149] 当業者は、ポリペプチドの触媒ドメインまたは機能ドメインに対して、それらの生物活性を減少させることなく、ある種の改変を作製することができることを認識すると考えられる。いくつかの改変は、触媒ドメインのクローニング、発現、または融合ポリペプチド中への組込みを容易にするために、作製することができる。このような改変は当業者に周知であり、これには例えば、触媒ドメインをコードするポリヌクレオチドのいずれかの末端へのコドン付加、例えば、開始部位を提供するためにアミノ末端に付加されるメチオニン、または便宜的に位置づけられる制限酵素部位もしくは終始コドンもしくは精製配列を作製するためにいずれかの末端に配置される付加的なアミノ酸(例えば、ポリHis)が含まれる。]
[0150] 本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する単数形「1つの」、「および」、および「その」は、文脈上明らかに他の意味を示す場合を除き、その対象物の複数形も含むことに留意されたい。したがって、例えば「1つのバクテリオファージ」への言及は複数のそのようなバクテリオファージを含み、1つの「宿主細菌」への言及は、1つまたは複数の宿主細菌および当業者に公知であるその等価物への言及を含み、以下同様である。]
[0151] 本明細書で考察する出版物は、単に本出願の出願日よりも前にそれらが開示されたというだけの理由で提供されている。本明細書中のいかなるものも、本発明が先行発明のせいでそのような出版物を先行できないことを認めると解釈されるべきではない。さらに、提供する出版物の日付は実際の出版日と異なる場合があり、別個に確認する必要がある場合がある。引用は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。]
[0152] 本明細書に引用した出版物および特許出願はすべて、個々の出版物または特許出願がそれぞれ詳細にかつ個別に参照により組み入れられることが示されるかのように、参照により本明細書に組み入れられる。]
[0153] 明確に理解できるように説明および実施例により本発明をある程度詳細に記述してきたが、添付の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく、それらに対していくらかの変更および修正を行い得ることは、本発明の教示に照らして当業者には容易に明白であろう。]
[0154] 実施例1:F因子接合
特定のプラスミドおよび宿主に関する接合条件のために最適化すべき重要なパラメータには、例えば、ドナー細胞およびレシピエント細胞の対数増殖期、接合のためのインキュベーション温度、および他の条件が含まれる。したがって、接合の頻度または効率に影響を及ぼし得る様々な成分には、温度が含まれてよく、適切な範囲にわたって力価測定することができる。温血動物のための治療的使用の場合には、温度範囲はおそらく摂氏約25〜45度であってよく、環境状況の場合には、温度範囲はおそらく外気温よりも20度高いまたは低い範囲であってよい。混合、撹拌、イオン強度、イオン濃度等の局面もまた、最適化することができる。最適化は、F+宿主とF-宿主のモル関係等に関して試験される。]
[0155] ある特定の状況において、接合は、線毛またはそのような構造の実際の発現を必要としない場合がある。接合は他の「接合関連」生物学に依存してよく、線毛依存的でないと考えられ得る過程には、別の特徴が存在し得る。これは、現在の技術および方法を用いて調べることができる。]
[0156] 実施例2:プラスミドの伝達/F-からF+への細胞の変換
F-宿主のF+宿主への変換の実証は、標準的な接合実験を用いて示すことができる。例えば、Paranchych and Frost (1988) 「The Physiology and Biochemistry of Pili」 Advances in Microbial Physiology 29:53-114;Low and Porter (1978) 「Modes of Gene Transfer and Recombination in Bacteria」 Ann. Rev. Genetics 12: 249-287;Rowbury (1977) 「Bacterial Plasmidswith Particular Reference to their Replication and Transfer Properties」 Progress in Biophysics & Molecular Biology 31: 271-317;Simon, et al. (1983) 「A Broad Host Range Mobilization System for In Vivo Genetic Engineering: Transposon Mutagenesis in Gram Negative Bacteria」. Nature Biotechnology 1: 784-791;Clewell, et al (1993). Bacterial Conjugation. Plenum Press, New York. ISBN 0-306-44376-7;Grohmann, et al. (2003). 「Conjugative Plasmid Transfer in Gram-Positive Bacteria」. Microbiology and Molecular Biology Reviews 67(2):277-301を参照されたい。特定のプラスミドおよび宿主に関する効率、伝達速度、条件の最適化等を評価することができる。]
[0157] 例えば、方法論は、ある量、例えば5 mlのドナー細胞およびレシピエント細胞をOD0.5〜0.7まで増殖させるという方針に沿ってよい。これらの培養物から、少量、例えば100マイクロリットルのドナー培養物とレシピエント培養物を混合する。(対照:100マイクロリットルのドナー細胞のみおよびレシピエント細胞のみ)。典型的には、遠心分離、および例えば0.85%生理食塩水による2回の洗浄によって、洗浄を行う。ペレットを例えば20マイクロリットルの生理食塩水に再懸濁し、十分に乾燥した例えばLBのようなペトリプレート上にスポットする。プレートを乾燥させ、例えば30度で一晩インキュベートする。]
[0158] 増殖期間の後、培養物を掻き取り、例えば生理食塩水500マイクロリットルなどの媒体中に入れ、ボルテックスして接合対を破壊する。懸濁液を、例えば二重抗生物質プレートなどの各選択プレート上に、様々な適切な希釈でプレーティングする。あるいは、検出可能マーカー(GFP等)を用いて、抗生物質の使用を回避してもよい。典型的には、例えば接合性プラスミドの存在に関するPCRを用いて、適切なコロニーを接合に関して確認する。]
权利要求:

請求項1
以下の段階を含む、ファージ受容体に連結された抗生物質マーカーまたは毒性マーカーをコードするプラスミドの蔓延を減少させる方法であって、該プラスミドが不均一な細菌培養物中の細胞内に保有されている、方法:a) 該細菌培養物を、ファージ受容体に結合し得る十分なファージ受容体特異的殺傷剤と接触させる段階であって、該接触段階により、該受容体特異的殺傷剤の該ファージ受容体への結合、および接合性の該プラスミドを含む宿主細菌の死滅が可能になり、それによって、不均一な細菌培養物中の、抗生物質または毒性因子をコードする接合性プラスミドの蔓延が減少する、段階。
請求項2
蔓延の減少がa)細菌培養物中の接合性プラスミドの絶対数の減少;またはb) 細菌培養物のメンバー当たりの接合性プラスミドの数の減少である、請求項1記載の方法。
請求項3
蔓延の減少が少なくとも2分の1である、請求項1記載の方法。
請求項4
細菌培養物がa)対数増殖期にある;b)定常状態増殖期にある;c)ラクトバチルス培養物もしくは乳製品加工培養物である;d)水処理施設中に存在する;e)真核細胞もしくは器官培養物中に存在する;f)真核生物宿主中に存在する;g)脊椎動物生物中もしくは脊椎動物生物上に存在する;またはh)哺乳動物中もしくは哺乳動物上に存在する、請求項1記載の方法。
請求項5
ファージ受容体特異的殺傷剤がa)テクティウイルス(tectivirus)である;b) 広宿主域脂質含有ファージである;c) RPD1ファージ群のメンバーである;d)プラスミド依存性広宿主域バクテリオファージである;e) テクティウイルス科(tectiviridae)である、f)正二十面体形態、脂質含量、直径55〜65 nmの頭部、および12〜130 nmの尾部のうちの少なくとも1つまたは複数を特徴とするファージである;g) PRD1、PRR1、PR3、PR4、PR5、L17、PR772、GILO1、pGILO1、BAM35、またはGIL 16と称されるファージの群より選択される、請求項1記載の方法。
請求項6
細菌培養物を、前記受容体をコードする少なくとも1つの接合性プラスミドを細菌培養物のドナーメンバーからレシピエントメンバーへ伝達することを提供する接合対形成システムに曝露し、該システムによる、該接合性プラスミドの、該細菌培養物の該ドナーメンバーから該レシピエントメンバーへ伝達の達成を可能にすることによって、該接合性プラスミドを含みかつ該ファージ受容体を発現する宿主細菌を生成する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
請求項7
接合性プラスミドがa)不和合性群N、P、もしくはWプラスミドより選択される;b)ファージの複製に重要な1つもしくは複数の付加的遺伝子をコードする;c) 1つもしくは複数の抗生物質耐性マーカーもしくは毒性マーカーをコードする;d) 前記メンバーの染色体とは別のDNAの形態である;またはe) 1つもしくは複数の線毛遺伝子をコードする、請求項6記載の方法。
請求項8
接合対形成システムがa) 少なくとも1つの線毛接合遺伝子;b) 別の移動性エレメント伝達系を含む、請求項6記載の方法。
請求項9
a) 前記可能にすることが、少なくとも摂氏30度の温度で起こる;b) 前記可能にすることが、複数の線毛遺伝子が発現される温度で起こる;c) 前記達成が、少なくとも2時間という時間で起こる;d)ドナーがF+細菌細胞である;e)レシピエントがF-細菌細胞である;f) 前記可能にすることが、接合性プラスミドを含む細菌培養物のメンバーの増加をもたらす、g) ドナーが非病原菌株である;またはh) ドナーとレシピエントが1:1の2対数単位内の比である、請求項6記載の方法。
請求項10
接触段階がa) 前記受容体をコードする接合性プラスミドを含む各細菌細胞に対して少なくとも10個のファージ;b) 接合性プラスミドの数を減少させ得るファージ;c) 該プラスミドを含む前記メンバー中で複製ができないファージ;またはd) 接合性プラスミドを含む前記培養物のメンバー中で、その核酸を複製することができないファージとの接触である、請求項6記載の方法。
請求項11
不均一な細菌培養物内で、ファージ結合に対する感受性を付与する移動性遺伝子エレメントを伝達する方法であって、該不均一な細菌細胞が、該ファージ結合に感受性のあるドナー細菌細胞、および該ファージ結合に非感受性のレシピエント細菌細胞を含み、該ドナー細菌細胞が、該移動性遺伝子エレメントが該ドナー細胞から該レシピエント細胞に伝達され得る条件下にあり、それによって、該移動性エレメントがレシピエント細胞に伝達されて、ドナー細胞上のテクティウイルスファージの結合に対する感受性が付与される、方法。
請求項12
a)移動性エレメントが、i)テクティウイルスファージ受容体遺伝子;またはii)線毛遺伝子の少なくとも1つをコードするプラスミドである;b) プラスミドがi) F、R386、R1、Col B-K99、Col B-K166、R124、R62、R64、R483、R391、R46、R724、RP4、RK2、R751、RSF1010、R401、R388、もしくはS-aより選択される;またはii) Inc群N、P、もしくはWの中にある;またはiii) Inc群D、M、X、P1、U、W、C、もしくはJの中にある;c)ファージに感受性のあるドナー細胞がi) F+細胞である;またはii)グラム陰性菌種に由来する;またはiii)エシェリキア属(Escherichia)、シュードモナス属(Pseudomonas)、サルモネラ属(Salmonella)、プロテウス属(Proteus)、ビブリオ属(Vibrio)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、バチルス属(Bacillus)、もしくはミクロコッカス属(Micrococcus)より選択される属に由来する;d)レシピエント細菌細胞がi) F-細胞である;ii) グラム陰性菌種に由来する;iii) エシェリキア属、シュードモナス属、サルモネラ属、プロテウス属、ビブリオ属、アシネトバクター属、バチルス属、もしくはミクロコッカス属より選択される属に由来する;またはiv)抗生物質耐性遺伝子もしくは毒性遺伝子の運搬体である;e) 方法によって、コロニーまたは感染物中のファージ結合細胞の割合が増加する;f) ファージが、PRD1、AP50、Bam35、NS11、PR3、PR4、PR5、PR722、L17、もしくはP37-14より選択される1つを含むテクティウイルスである;あるいはg) 条件によって、ドナー細胞からレシピエント細胞への線毛タンパク質発現表現型の伝達が可能になる、請求項11記載の方法。
請求項13
ドナー細胞とレシピエント細胞が異なる細菌種に由来する、請求項11記載の方法。
請求項14
ファージを投与して、受容体発現細胞に感染させる段階をさらに含む方法であって、a) 該感染によって感受性細胞の死滅が起こる;b) 該方法によって、抗生物質耐性遺伝子または細菌毒性遺伝子をコードする移動性エレメントの数が減少する;またはc) 該方法が、細菌細胞を、抗生物質、またはF線毛形成を誘導する化合物に曝露する段階をさらに含む、請求項11記載の方法。
請求項15
テクティウイルス受容体を用いて、テクティウイルスの宿主として役立ち得る標的細菌内で機能的である強力な異種プロモーターによって駆動される、テクティウイルス受容体成分をコードするセグメントを含む遺伝子構築物。
請求項16
a) 前記強力なプロモーターが前記成分の高発現を誘導し、これによって、宿主に対するテクティウイルスの結合が少なくとも5倍増加する;b) 前記プロモーターが誘導性プロモーターである;c) 前記構築物が、前記受容体成分に密接に連結された選択可能マーカーをさらに含む;d) 前記標的細菌がグラム陰性菌である;またはe) 前記構築物により、感染において細菌がトランスフェクションされ得る、請求項15記載の方法。
請求項17
溶菌ファージに結合するファージ受容体をコードする伝達性DNA、および薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物であって、該溶菌ファージが、該ファージ受容体を発現する細菌細胞を死滅させる、薬学的組成物。
請求項18
a) 前記伝達性DNAが、N、P、W、D、M、X、P1、U、W、C、もしくはJより選択されるIncプラスミドである;またはb) 前記溶菌ファージが、PRD1、PRR1、PR3、PR4、PR5、L17、PR772、GIL01、pGIL01、BAM35、もしくはGIL16と称されるファージである、請求項17記載の薬学的組成物。
請求項19
請求項16記載の溶菌ファージおよび前記薬学的組成物を伴う1つまたは複数の区画を含むキット。
請求項20
以下の段階を含む、接合性プラスミドをドナー細菌細胞からレシピエント細菌細胞に伝達する方法であって、接合性プラスミドがファージ受容体成分をコードし、ドナー細菌細胞が脊椎動物に感染し、かつレシピエント細菌細胞が昆虫または植物に感染する、方法:レシピエント細菌細胞をドナー細菌細胞と接触させる段階であって、それによって、接合性プラスミドのレシピエント細菌細胞への伝達が可能になる、段階。
請求項21
ファージ受容体がテクティウイルス受容体である、請求項20記載の方法。
請求項22
接合性プラスミドを含むレシピエント細菌細胞を、前記受容体成分に結合するファージと接触させる段階をさらに含み、該接触段階により、ファージのファージ受容体成分への結合、および接合性プラスミドを含むレシピエント細菌細胞の死滅が可能になる、請求項20記載の方法。
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