专利摘要:
本発明は、スクロースを主炭素源として用いることができ、L−アミノ酸生産能を有する形質転換された微生物、および該微生物を用いてL−アミノ酸を生産する方法に関する。
公开号:JP2011512867A
申请号:JP2010550616
申请日:2010-02-11
公开日:2011-04-28
发明作者:ヒュン;アー キム;ヒョー;ジン キム;ジェ;ヨン ジュー;キュー;スー チョー;ヒュン;アエ バエ;ヒェ;ミン パク;ヨン;ビン ファン;クアン;ホー リー;ケウン;チュル リー
申请人:シージェイチェイルジェダンコーポレーション;
IPC主号:C12N1-21
专利说明:

[0001] 本発明は、スクロースを主炭素源として用いて高収率のL−アミノ酸を生産する、形質転換された微生物およびこれを用いたL−アミノ酸生産方法に関する。]
背景技術

[0002] 発酵産業に主に用いられる澱粉糖は、最近、バイオ燃料の開発が加速化されるにつれて需要が急増し、異常気候による作物の凶作により価格が急上昇している。このような澱粉糖に比べて安いスクロース、またはスクロースを多量含む糖蜜を発酵産業の炭素源として用いる場合、より高い原価競争力を確保することができるという長所がある。自然界に存在する大腸菌の約50%程度はスクロースを代謝することが可能な能力を持っているが、発酵産業に主に用いられている大腸菌K12菌株、B菌株およびC菌株などはスクロースの同化能がない(Mol. Microbiol. (1998) 2:1-8, Can. J. Microbiol. (1999) 45:418-422)。よって、スクロースの同化能に関連した遺伝子を究明し、これを改良して強化されたスクロース同化能関連遺伝子を確保すること、およびこれらをスクロース非同化性の産業用大腸菌に導入して目的の代謝産物を生産することは発酵産業の最も重要な研究主題の一つである。]
[0003] 産業用大腸菌にスクロースの同化能(Sucrose-assimilating ability)を与えることが可能な方法として、スクロースの同化能がある微生物由来のスクロース利用性遺伝子または遺伝子群を導入する方法が主に用いられている。例えば、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)に属するサルモネラ(Salmonella)種(J. Bacteriol. (1982) 151:68-76, Mol. Microbiol. (1998) 2:1-8, J. Bacteriol. (1991) 173:7464-7470, 米国特許第7,179,623号) 、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)(J. Gen. Microbiol. (1988) 134:1635-1644)、エルウィニアアミロボーラ(Erwinia amylovora)(J. Bacteriol. (2000) 182:5351-5358)に存在するscrレギュロンを大腸菌K12に形質転換してスクロースの同化能を与えたことは、既に当業界によく知られている。また、スクロースの同化能を有するnon−K12大腸菌または病原性大腸菌(Appl. Environ. Microbiol. (1992) 58:2081-2088, 米国特許第6,960,455号)由来のcscレギュロンを導入した場合、大腸菌AB1281(米国特許第4,806,480号)の接合性プラスミド(conjugative plasmid)scr53に存在するスクロース利用性遺伝子群を導入した場合、並びにグラム陽性微生物としてのストレプトコッカスミュータンス(Streptococcus mutans)(J. Bacteriol. (1989) 171:263-271)およびバチルスサブティリス(Bacillus subtilis)(J. Bactreriol.(1989) 171:1519-1523)由来のscrレギュロン、sacオペロン(operon)を導入した場合も知られている。]
[0004] 従来、L−アミノ酸は、自然界から収得された微生物菌株またはL−アミノ酸生産性が増強されるように変形されたこれら菌株の変異株を用いた発酵方法に従って工業的に生産されてきた。L−アミノ酸の生産能を増強させるための多くの技術が開発されており、例えば、アミノ酸の生合成に関与する酵素の活性を増加させ或いはL−アミノ酸の生産によるフィードバック作用を抑制する技術などが主を成している。一方、L−アミノ酸生産株のアミノ酸生産能の増加は、アミノ酸排出活性の増強に応じて改良することができる。例えば、L−リシン排出遺伝子の発現が増強されたコリネバクテリウム属細菌のリシン生産株、L−システイン、L−シスチン、N−アセチルセリンまたはチアゾリジン誘導体の分泌に適した流出タンパク質を暗号化する遺伝子の発現を調節することによりL−アミノ酸の生産能を増加させる方法も用いられている。]
[0005] L−アミノ酸スクロースを利用することが可能なシステムは、Scr−PTSシステムとScr−non PTSシステムに大別される。大部分のスクロースを利用することが可能な微生物はScr−PTS(phosphoenolpyruvate dependent sucrose phosphotransferase)システムを有する。Scr−PTSシステムは、低濃度のスクロースまで効率よく流入させることができるという長所はあるが、PEP(Phosphoenolpyruvate)を消耗してスクロースを流入させるので、細胞内のPEPプール(pool)を減少させるという短所がある。Scr−non PTSシステムは、プロトン共輸送タイプのスクロースパーミアーゼ(proton symport-type sucrose permease)を用いるシステムであって、このスクロースパーミアーゼをコードするcscBを含むcsc遺伝子菌がよく知られている。cscレギュロンは、cscB(sucrose permease or proton symport-type sucrose permease)、cscK(fuctokinase)、cscA(sucrose hydrolase)、およびcscR(sucrose transcriptional regulator)から構成されており、2つのオペロン、すなわちcscKBとcscRによって陰性的に調節される(Jahreis K et al., J. Bacteriol. (2002) 184:5307-5316)。]
[0006] PEPは、中央代謝経路で重要な中間体あって、糖PTSシステムのリン酸供与体の役割だけでなく、ピルビン酸キーナーゼによって触媒されるATP生成反応に関与するうえ、幾つかのアミノ酸またはオキサロ酢酸(oxaloacetate、OAA)の直接前駆体としても作用する(Metab. Eng. (2002) 4:124-137, Microb. Cell Fact. (2005) 4:14)。特に、OAAはトレオニン、イソロイシンメチオニン、リシン、アスパラギンおよびアスパラギン酸などのアミノ酸の炭素骨格(carbon skeleton)として用いられる(米国特許第6,960,455号)。PEPの大部分は糖PTSシステムによって最も多く消耗されるものと知られている。炭素源としてグルコースが含有された最小培地でグルコースPTSシステムに消耗されるPEPの量は、全体PEPの50%に達すると報告されている(Microb. Cell Fact. (2005) 4:14)。よって、糖PTSシステムに代えて糖non−PTSシステムを用いる場合、細胞内のPEPプールを増加させることができ、増加したPEPを発酵産物の生合成に用いることにより生産性および収率を向上させることができる。]
[0007] したがって、スクロースの利用においても、Scr−PTSシステムよりはスクロース流入の際にPEPを消耗しないScr−non PTSシステムを用いることがさらに好ましいだろう。実際に、味の素社の場合、EC3132由来のcscBKAを大腸菌に導入してトレオニン、イソロイシンおよびトリプトファンなどの生産に用いた(米国特許第6,960,455号)。また、DuPont社は、大腸菌ATCC13281由来のcscBKARを大腸菌K12に導入し、スクロースを用いてチロシンを生産したこともあった(Appl. Microbiol. Biotechol. (2007) 74:1031-1040)。
一方、マンノキナーゼ(Mannokinase、Mak)は、ATPを消耗し、マンノース、フルクトースを含むヘキソースを6−ホスホ−エステル(6-phospho-ester)形態に転換するキナーセ活性を有する。特に、腸内細菌(enteric bacteria)の野生型Mak(Mak−o)をコードする遺伝子(makまたはyajF)は、潜在(cryptic)遺伝子として知られており、makのプロモーター−35部位の塩基配列変異によるMak(Mak+)は活性が大きく増加すると知られている(Kornberg HL, J.Mol. Microbiol. Biotechnol. (2001) 3:355-359; Miller BG & RainesRT, Biochemistry (2005) 44:10776-10783)。Makは、マンノース、フルクトース以外にも、別の基質のグルコース、ソルボースおよびグルコサミンをリン酸化させることができる。ところが、前記Makがスクロース代謝に影響するとう事実は、未だ解明されていない。]
[0008] 米国特許第7,179,623号
米国特許第6,960,455号
米国特許第4,806,480号]
先行技術

[0009] Mol. Microbiol. (1998) 2:1-8
Can. J. Microbiol.(1999) 45:418-422
J. Bacteriol. (1982) 151:68-76
J. Bacteriol. (1991) 173:7464-7470
J. Gen. Microbiol. (1988) 134:1635-1644
J. Bacteriol. (2000) 182:5351-5358
Appl. Environ. Microbiol. (1992) 58:2081-2088
J. Bacteriol.(1989) 171:263-271
J. Bactreriol. (1989) 171:1519-1523
Jahreis K et al., J. Bacteriol. (2002) 184:5307-5316
Metab. Eng.(2002) 4:124-137,
Microb. Cell Fact.(2005) 4:14
Appl. Microbiol. Biotechol.(2007) 74:1031-1040
Kornberg HL, J.Mol. Microbiol. Biotechnol. (2001) 3:355-359
Miller BG & RainesRT, Biochemistry (2005) 44:10776-10783]
発明が解決しようとする課題

[0010] 上述した背景の下で、本発明者は、スクロースを高効率的に利用する微生物を開発するための一環として、スクロース代謝に関与するものと予想される遺伝子を探索する研究を行ったところ、スクロース代謝においてマンノキナーゼが重要な役割をするという事実を発見した。すなわち、マンノキナーゼが不活性化されている大腸菌に完全なcscレギュロンを導入しても、マンノキナーゼが不活性化されていない野生型大腸菌に比べてスクロース利用速度が減少するという事実を見出し、これに基づいて、本発明を完成するに至った。]
課題を解決するための手段

[0011] 本発明の目的は、スクロースを主炭素源として用いるL−アミノ酸生産能が向上したエシェリキア属微生物を提供することにある。より具体的に、スクロース非同化性微生物にスクロースパーミアーゼ(sucrose permease)、スクロースヒドロラーゼ(sucrose hydrolase)およびスクロース転写調節制御因子(sucrose transcriptional regulator)の活性を付与し、マンノキナーゼ(mannokinase)の活性が強化されたことを特徴とする、増加したL−アミノ酸生産能およびスクロース同化能を有するエシェリキア属微生物を提供することにある。
本発明の他の目的は、前記エシェリキア属微生物を用いてL−アミノ酸を製造する方法を提供することにある。]
発明の効果

[0012] 本発明に係る向上したL−アミノ酸生産能およびスクロース同化能を有するエシェリキア属微生物を用いてL−アミノ酸を生産する場合、発酵産業に主に使用された澱粉糖以外にスクロースを主炭素源として用いることにより急変する世界の穀物価額に柔軟に対処することができるうえ、高収率のL−アミノ酸を生産することができる。]
図面の簡単な説明

[0013] 図1はscrレギュロンの概要を示す図である。pはプロモーター(promoters)、Ko1およびYo2o3はオペーレーター(operators)、tはターミネータ(terminators)をそれぞれ意味する。
図2はcscBAR’−makを含む組み換えプラスミドpAcscBAR’−makの作製図である。] 図1 図2
実施例

[0014] 上記目的を達成するための一つの様態として、本発明は、スクロース非同化性微生物にスクロースパーミアーゼ(sucrose permease:cscB)、スクロースヒドロラーゼ(sucrose hydrolase:cscA)、およびスクロース転写制御因子(sucrose transcriptional regulator:cscR)の活性を付与し、マンノキナーゼ(mannokinase)の活性が強化されたことを特徴とする、増加したL−アミノ酸生産能およびスクロース同化能を有するエシェリキア属微生物に関する。
本発明において、スクロースパーミアーゼは外部のスクロースを細胞内に流入させる活性を有するペプチドであり、スクロースヒドロラーゼはスクロースをグルコースとフルクトースに加水分解する活性を有し、スクロース転写制御因子はスクロースパーミアーゼおよびスクロースヒドロラーゼをコードする遺伝子の転写を調節する活性を有する。前記スクロースパーミアーゼ、スクロースヒドロラーゼおよびスクロース転写制御因子の活性は、スクロース同化能のある微生物に存在するが、エシェリキア属微生物、特に産業的に利用される産業用大腸菌K12菌株、B菌株およびC菌株には存在しない。]
[0015] 前記スクロース非同化性エシェリキア属微生物にスクロースパーミアーゼ、スクロースヒドロラーゼおよびスクロース転写制御因子の活性を与えるようにする方法は、当該分野でよく知られている多様な方法の適用が可能である。好ましい活性付与方法は、スクロースパーミアーゼ、スクロースヒドロラーゼおよびスクロース転写制御因子を暗号化する遺伝子をベクターに導入し、その組み換えベクターによって、スクロース非同化性L−アミノ酸生産能を有するエシェリキア属微生物を形質転換させることである。前記スクロースパーミアーゼをコードする遺伝子、スクロースヒドロラーゼをコードする遺伝子、スクロース転写制御因子をコードする遺伝子は、スクロース同化能のある微生物、好ましくはスクロース同化能のあるエシェリキア属微生物、より好ましくはスクロース同化能のある大腸菌に由来することができる。スクロース同化能のある大腸菌としては、例えば大腸菌ATCC9637(Alterthum F & Ingram LO, Appl. Environ. Microbiol. (1989) 55:1943-1948)などがある。前記大腸菌ATCC9637から得られるスクロースパーミアーゼをコードする遺伝子(cscB)を配列番号4、スクロースヒドロラーゼをコードする遺伝子(cscA)配列番号6、スクロース転写制御因子をコードする遺伝子(cscR)を配列番号7にそれぞれ示した。]
[0016] 一つの具体的な実施において、本発明者は、スクロースパーミアーゼ、スクロースヒドロラーゼおよびスクロース転写制御因子を暗号化する遺伝子であって、cscレギュロンに由来した配列番号4、6および7のcscB、cscAおよびcscR遺伝子を含むcscBAR遺伝子をベクターに導入し、その組み換えベクターによって、スクロース非同化性L−アミノ酸生産能を有するエシェリキア属微生物を形質転換させて製造することができる。
本発明において、マンノキナーゼは、ATPを用いてマンノースなどのヘキソースを6−ホスホ−エステル形態に転換する活性を有するペプチドを意味する。本発明は、スクロース非同化性エシェリキア属微生物においてマンノキナーゼの活性が本来の活性より強化(または増加)されたことを特徴とする。前記「本来の活性」とは、何らの遺伝子操作または変形もないスクロース非同化性エシェリキア属微生物が持っている活性を意味する。また、前記「強化」または「増加」は、スクロース非同化性エシェリキア属微生物の本来の活性より向上したことを意味する。]
[0017] 本発明のマンノキナーゼ活性を強化(または増加)させる方法は、当該分野における公知の多様な方法の適用が可能である。その方法の例は、これに限定されないが、マンノキナーゼをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドをさらに染色体に挿入する方法、または前記ポリヌクレオチドをベクターシステムに導入する方法などによって、マンノキナーゼをコードする塩基配列のコピー数を増加させる方法、強いプロモーターで取り替える方法、プロモーターに変異を導入する方法、および遺伝子変異による方法などがある。一つの具体的な実施において、アミノ酸生産能を有するエシェリキア属微生物のマンノキナーゼの活性を強化させるために、マンノキナーゼを暗号化する遺伝子をベクターに導入し、エシェリキア属微生物を形質転換させることにより、前記遺伝子のコピー数を増加させる方法を使用することができる。]
[0018] マンノキナーゼを暗号化する遺伝子は、スクロース非同化性エシェリキア属微生物に作動可能な塩基配列を有する遺伝子であればいずれでもよく、好ましくは腸内細菌(enteric bacteria)の野生型Mak(Mak−o)をコードするmak遺伝子である。具体的な一実施例では、大腸菌に由来し、好ましくは配列番号15の塩基配列(GenBankaccession number AC000091)を有するポリヌクレオチドを使用した。一方、前記マンノキナーゼをコードする塩基配列は、その活性を維持する限りはある程度変形が可能であるのは、当業者にとっては自明なことである。当業者であれば、このような人為的変形によって70%以上の相同性が維持される塩基配列が、本発明で目的とする遺伝子の活性を保有する限りは、本発明の前記塩基配列に由来したものと均等であることを容易に理解するであろう。]
[0019] 本発明において、L−アミノ酸生産能およびスクロース同化能をさらに向上させるために、前記マンノキナーゼ、スクロースパーミアーゼ、スクロースヒドロラーゼおよびスクロース転写制御因子の活性を保有したペプチドをコードする遺伝子のコピー数を増加させる方法、プロモーターを改良する方法、ランダム変異導入法(random mutagenesis)、または部位特異的突然変異誘発法(site-directed mutagenesis)などを用いる方法などを使用することができる。本発明の具体的実施では、マンノキナーゼ、スクロースパーミアーゼ、スクロースヒドロラーゼおよびスクロース転写制御因子をコードする塩基配列を含む遺伝子群にヒドロキシルアミンを処理してランダム変異を誘発する方法(Sikorski RS & Boeke JD, MethodsEnzymol. (1991) 194:302-318)を用いた。]
[0020] したがって、好適な一様態として、本発明は、前記変異誘発方法による塩基配列またはアミノ酸配列に変異がある、向上したL−アミノ酸生産能およびスクロース同化能を有するエシェリキア属微生物に関するものである。好ましくは、前記変異体は、マンノキナーゼ、スクロースパーミアーゼ、スクロースヒドロラーゼおよびスクロース転写制御因子のうちの塩基配列に一つまたはそれ以上の変異が存在する変異体である。より好ましくは、マンノキナーゼ、スクロースパーミアーゼ、スクロースヒドロラーゼおよびスクロース転写制御因子のうちのアミノ酸配列に一つまたはそれ以上の変異が存在する変異体である。最も好ましくは、スクロース転写制御因子の130番目のアミノ酸がヒスチジンからチロシンへ置換された変異体であり、好ましくは、このような変異体は配列番号17に示される塩基配列で暗号化される、変異されたスクロース転写制御因子を有する。]
[0021] このような変異体をベクターに導入し、その組み換えベクターを、スクロース非同化性L−アミノ酸生産能を有するエシェリキア属微生物に導入して形質転換させる方法によって、本発明に係る向上したL−アミノ酸生産能およびスクロース同化能を有するエシェリキア属微生物を提供することができる。具体的な一実施において、本発明者は、配列番号18に示される塩基配列を含むpAcscBAR’−makプラスミドを用いて、スクロース非同化性エシェリキア属微生物を、向上したL−アミノ酸生産能およびスクロース同化能を有するエシェリキア属微生物に形質転換させることができる。]
[0022] 本発明において、「ベクター」とは、スクロースパーミアーゼ、スクロースヒドロラーゼ、スクロース転写制御因子およびマンノキナーゼを暗号化する遺伝子を宿主細胞としてのスクロース非同化性エシェリキア属微生物に導入し、本発明に係るエシェリキア属微生物を提供するのに用いられるヘキサン化合物であって、目的のタンパク質を発現するための通常の必須的な発現要素を含む。具体的に、プロモーターやオペレーター、開始コドン、終止コドン、ポリアデニル化配列などの調節配列を有し、その多様な変形が可能である。また、エンハンサー配列または分泌配列を含むことができる。通常使用されるベクターの例としては、天然状態または組み換え状態のプラスミド、コスミド、ウイルスおよびバクテリオファージを挙げることができる。例えば、ファージベクターまたはコスミドベクターとして、pWE15、M13、λEMBL3、λEMBL4、λFIXII、λDASHII、λZAPII、λgt10、λgt11、Charon4A、およびCharon21Aなどを使用することができ、プラスミドベクターとして、pBR系、pUC系、pBluescriptII系、pGEM系、pTZ系、pCL系およびpET系などを使用することができる。使用可能なベクターは、特に制限されず、公知の発現ベクターを使用することができる。好ましくは、pACYC177、pACYC184、pCL、pECCG117、pUC19、pBR322およびpMW118ベクターなどを使用することができる。]
[0023] 本発明において、用語「形質転換」は、遺伝子を宿主細胞内に導入して宿主細胞内で発現し得るようにすることを意味する。形質転換された遺伝子は、宿主細胞内で発現できるさえすれば、宿主細胞の染色体内に挿入されて位置するものであれ、染色体外に位置するものであれ全てを含む。また、前記遺伝子は、ポリペプチドをコードすることが可能なポリヌクレオチドであって、DNAおよびRNAを含む。前記遺伝子は、宿主細胞内に導入されて発現できるものであれば、いずれの形態で導入されるものでも構わない。例えば、前記遺伝子は、自体的な発現に必要な全ての要素を含むポリヌクレオチド構造体である発現カセットの形態で宿主細胞に導入できる。前記発現カセットは、通常、前記遺伝子に作動可能に連結されているプロモーター、転写終結信号、リボソーム結合部位および翻訳終結信号を含む。前記発現カセットは、自体複製が可能な発現ベクター形態であってもよい。また、前記遺伝子は、その自体またはポリヌクレオチド構造体の形態で宿主細胞に導入され、宿主細胞において発現に必要な配列と作動可能に連結されているものであってもよい。]
[0024] 本発明の微生物は、スクロース非同化性を有するL−アミノ酸生産可能微生物にスクロースパーミアーゼ、スクロースヒドロラーゼおよびスクロース転写制御因子の活性が与えられ、マンノキナーゼの活性が強化されてL−アミノ酸生産能が向上すると同時にスクロース同化能を有する微生物を意味する。したがって、本発明の微生物は、前記特性を保有する限りは、原核微生物および真核微生物のいずれも含み、その例としては、エシェリキア属(Escherichia)、エルウィニア(Erwinia)属、セラシア(Serratia)属、プロビデンシア(Providencia)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属およびブレビバクテリウム(Brevibacterium)属に属する微生物菌株がある。本発明の微生物は、好ましくはシェリキア属に属する微生物であり、より好ましくは大腸菌である。
本発明において、「L−アミノ酸」は、L−トレオニン、O−スクシニル−ホモセリン、O−アセチル−ホモセリン、L−メチオニン、L−リシン、L−ホモセリン、L−イソロイシン、L−バリンおよびL−トリプトファンなどである。好ましくは、前記L−アミノ酸はL−トレオニン、O−スクシニル−ホモセリン、O−アセチル−ホモセリンおよびL−トリプトファンである。]
[0025] 具体的な一実施において、本発明者は、特にL−トレオニン生産能を有する大腸菌がcscBAR’−mak遺伝子群を含む配列番号18の塩基配列を有するベクターによって、L−トレオニン生産能を有する大腸菌ABA5G菌株を形質転換し、製作された菌株を大腸菌CA03−0308と命名し、2008年12月23日付で、韓国ソウル市西大門区弘済1洞361−221番地に所在の国際寄託機関である韓国種菌協会付設の韓国微生物保存センターに受託番号KCCM−10978Pで寄託した。
別の様態として、本発明は、前記向上したL−アミノ酸生産能およびスクロース同化能を有するエシェリキア属微生物を、スクロースが主炭素源として含まれている培地に培養することにより、アミノ酸を生産する方法に関する。
具体的に、本発明は、炭素源としてスクロースが全体または一部含まれた培養培地に、前記スクロース同化能を有し且つL−アミノ酸を生産する微生物を接種して培養する段階と、前記培養物からL−アミノ酸を分離する段階とを含む、スクロースを含む炭素源から前記エシェリキア属微生物を用いてL−アミノ酸を生産する方法に関する。]
[0026] 本発明の前記培養過程は、当業界における公知の適切な培地と培養条件に応じて行われ得る。このような培養過程は、当業者であれば、選択される菌株に応じて容易に調整して使用することができる。前記培養方法の例にはバッチ式培養、連続式培養および流加式培養が含まれるが、これに限定されない。培養に使用される培地は、特定な菌株の要求条件を適切に満足させなければならない。
本発明で使用される培地は、スクロースを主炭素源として使用する。主炭素源として使用されるスクロースはスクロースを多量含む糖蜜などの形態で炭素源として提供できる。スクロースまたは糖蜜の他にも、適量の炭素源を制限なく様々に含むことができる。これらの窒素源は単独でまたは組み合わせて使用することができる。前記培地に含まれるリン源として、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムおよび対応するナトリウム含有塩を含むことができる。また、硫酸マグネシウムや硫酸鉄などの金属塩を含むことができる。その他に、アミノ酸、ビタミンおよび適切な前駆体などを含むことができる。これらの培地または前駆体は培養物にバッチ式または連続式で添加できる。]
[0027] 培養中に水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、アンモニア、リン酸および硫酸などの化合物を培養物に適切な方式で添加することにより、培養物のpHを調整することができる。また、培養中には脂肪酸ポリグリコールエステルなどの消泡剤を用いて気泡の生成を抑えることができる。また、培養物の好気状態を保つためには培養物内に酸素または酸素含有気体を注入し、嫌気および未好気状態を維持するためには、気体を注入せず、或いは窒素、水素または二酸化炭素ガスを注入する。培養物の温度は通常27℃〜37℃、好ましくは30℃〜35℃である。培養期間は所望の物質の生成量が得られるまで続けられてもよいが、好ましくは10〜100時間である。
本発明の前記培養段階で生産されたアミノ酸を収集および回収する方法は、培養方法、例えばバッチ式、連続式または流加式培養方法などによって当該分野における公知の適切な方法を用いて培養液から目的のアミノ酸を収集することができる。]
[0028] 以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明する。ところが、これらの実施例は本発明を例示的に説明するためのもので、本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1:スクロース同化性遺伝子cscレギュロンの獲得およびクローニング
スクロール流入の際にPEP(phosphoenolpyruvate)を所望しないScr−nonPTSシステムを暗号化する、cscBKAR遺伝子(GenBankaccesiion number X81461)を含むレギュロンは、大腸菌W菌株(ATCC9637、USA)のゲノムDNAを鋳型としてPCR法によって増幅した。制限酵素EagI部位を有する配列番号1のプライマー、およびXbaI部位を有する配列番号2のプライマーを用いて、ゲノム上に連続的に存在する4種の遺伝子を全て単一ポリヌクレオチドに増幅した。
配列番号1:5’−CTTACGGCCGGAGTACATTTGAGCGACTGT−3’
配列番号2:5’−CGACTCTAGACTCGTTGGCGAGAACAGAGG−3’]
[0029] PCR条件は、94℃で3分間の変性後、94℃の変性30秒間、56℃のアニーリング30秒間、72℃の重合5分間を1サイクルとして25サイクル繰り返し行い、最後に72℃の重合反応を7分間行った。その結果、5199bpのポリヌクレオチドを獲得することができた。収得したポリヌクレオチドにEagIおよびXbaIの制限酵素処理を施した後、pACYC184ベクターにクローニングした。その後、前記ベクターを大腸菌DH5αに導入して形質転換体を得た後、これを1%スクロースの含まれているMacConkey agar plateに塗抹した。コロニーの中でも濃い紫色のコロニーを選別した後、前記コロニーからプラスミドを収得した。]
[0030] 実施例2:獲得されたcscBKAR遺伝子の塩基配列の決定
収得したプラスミドをpAcscBKARと命名し、EagIおよびXbaI部位にクローニングされたcscBKARのDNA塩基配列(配列番号3)を決定したとき、141番目〜1388番目の塩基配列はcscB(配列番号4)、1460番目〜2374番目の塩基配列はcscK(配列番号5)、2590番目〜4023番目の塩基配列はcscA(配列番号6)、4031番目〜5026番目の塩基配列はcscR(配列番号7)と明らかになった。]
[0031] 実施例3:MG1655 mak遺伝子欠損菌株の製作
スクロース代謝に主要な影響を及ぼす遺伝子を探索するために、スクロース代謝に関与するものと予想される幾つかの遺伝子を選別し、その遺伝子がそれぞれ欠損している変異大腸菌K12を製作した。各遺伝子が欠損している変異体大腸菌K12は、ワンステップ不活性化方法(Proc. Natl. Acad. Sci. (2000) 97:6640-6645)によって製作し、抗生剤耐性付与標識遺伝子を除去した。特に、mak欠損菌株を製作するために、配列番号8と配列番号9のプライマー対と、pKD4プラスミド(GenBankNo.AY048743)を用いてPCR反応を行い、その結果獲得したDNA断片をpKD46(GenBank No.AY048746)を含有する野生型大腸菌K12のコンピテント細胞にエレクトロポレーションした。その後、カナマイシン(kanamycine)耐性を示す細胞株を対象としてPCR反応を行い、mak遺伝子の欠失有無を確認し、pCP20プラスミドを導入して抗生剤耐性標識遺伝子を除去した。
配列番号8:5’−GTGCGTATAGGTATCGATTTAGGCGGCACCAAAACTGAAGTGATTGCACTGTTGCAGCATTACACGTCTTG−3’
配列番号9:5’−TTACTCTTGTGGCCATAACCACGCAGCGCCGCGTACGCCGCTGGAATCACCACTTAACGGCTGACATGGGA−3’]
[0032] 実施例4:MG1655 mak遺伝子欠損菌株へのpAcscBKARの導入およびスクロース同化性の確認
スクロース代謝に主要な影響を及ぼすものと予想されるmak遺伝子が欠失している変異大腸菌K12を実施例3の方法で製作した後、pAcscBKARプラスミドを導入して形質転換体を得た。得られた形質転換体を33℃の培養器でLB固体培地で一晩培養した菌株を、スクロースが含有された表1の25mL力価培地に1白金耳ずつ接種した後、これを33℃、200rpmの培養器で36時間培養した。その後、前記培養液のOD値および糖消耗量を測定した。その結果を表2に示す。]
[0033] ]
[0034] その結果、表2に示すように、makが欠損し且つcscレギュロンが形質導入された菌株は36時間スクロースを24.9g/L用い、makが欠損せず且つcscレギュロンが形質導入された野生型菌株は33.1g/Lのスクロースを用いることにより、makが欠損した菌株はmak非欠損菌株に比べてスクロース利用速度が約1.3倍減少することを確認することができた。これはmakがスクロース代謝において重要な遺伝子であることを示唆する。]
[0035] 実施例5:pAcscBAR−makの製作
効率的なスクロース利用性菌株を開発するために、makとcscレギュロンを同時に過発現させるためのベクターを製作した。この際、cscレギュロンのうち、cskKは除外させた。まず、pAcscBARを製作した後、pAcscBARにmak遺伝子をクローニングする方法を使用した。
具体的に、配列番号10と11のプライマーを用いて実施例1と同一条件のPCR方法によって、cscK部位の除去されたcscB部位のポリヌクレオチドを増幅した。その結果、1521bpのポリヌクレオチドを収得した。
配列番号10:5’−CGCGATATCTAGCATATGCCGGGTACCGCACTAGTTGAGAGTAAACGGCGAAGT−3’
配列番号11:5’−ATTCGGCCGGAGCCCTGCAGGTGCACGAGTACATTTGAGCGACTGT−3’
前記収得したポリヌクレオチドとpAcscBKARをそれぞれEcoRVとEagIで制限酵素処理した後、連結してpAcscBARプラスミドを製作した。前記プラスミドを大腸菌DH5αに導入して形質転換した後、LB培地で成長したコロニーを用いたPCR法によって、pAcscBARの含まれたコロニーを選別し、このコロニーからpAcscBARプラスミドを獲得した。獲得されたpAcscBARプラスミドのXbaIとEagI部位に連結されたcscBARの塩基配列(配列番号12)分析によって、変異がないことを確認した。]
[0036] その後、大腸菌W3110のゲノムDNAを鋳型として配列番号13と14のプライマー対を用いて実施例1と同一の方法でPCRを行うことにより、makの含まれたポリヌクレオチドを増幅した結果、1388bpのポリヌクレオチド(配列番号15)を収得した。前記PCR産物をpAcscBARのPstIとEagIの制限酵素部位にクローニングすることにより、pAcscBAR−makを製作した。
配列番号13:5’−CACTGCAGTGGGGTAAATGCCATCG−3’
配列番号14:5’−AACGGCCGTCTCGGTGCTCATTACT−3’
前記pAcscBAR−makを大腸菌DH5αに導入して形質転換した後、LB培地で成長したコロニーを用いたPCR法によって、pAcscBAR−makの含まれたコロニーを選別し、選別されたコロニーをpAcscBAR−makプラスミドを獲得した。獲得されたpAcscBAR−makプラスミドのXbaIとEagI部位に連結されたcscBAR−makの塩基配列(配列番号16)分析によって、変異がないことを確認した。]
[0037] 実施例6:トレオニン生産株へのpAcscBAR−makの導入
pAcscBAR−makを、トレオニンを生産する大腸菌に導入したとき、スクロースを用いて成長するうえ、実際効率的なトレオニン生産が可能なのかを確認するために、通常の形質転換法によってトレオニン生産菌株、ABA5G(KFCC10718)に導入した。獲得されたコロニーに対してPCRクローニング法によって、スクロース利用関連遺伝子の含まれたプラスミドを持っているコロニーを獲得した。獲得したコロニーを33℃の培養器でLB固体培地中に一晩培養した後、表1の25mL力価培地に1白金耳ずつ接種し、しかる後に、これを33℃、200rpmの培養器で30時間培養した。その後、前記培養液のOD値および糖消耗量を測定した。その結果は表3に示した。]
[0038] その結果、表3に示すように、pAcscBKARを含むABA5G菌株は、30時間培養した場合、18.7g/Lのスクロースを用い、6.0g/LのL−トレオニンを生産したが、pAcscBAR−makを含むABA5G菌株は、27.7g/Lのスクロースを用い、9.7g/LのL−トレオニンを生産した。すなわち、pAcscBAR−makが含まれたABA5Gは、pAcscBKARを含むABA5G菌株に比べてスクロース利用速度が約1.5倍増加し、トレオニン生産性も3.7g/L上昇した。]
[0039] 実施例7:cscBAR−makの導入によるMak活性強化の確認
親菌株ABA5Gと比較してpAcscBAR−makの含まれたABA5G菌株でマンノキナーゼの活性の増大または強化を確認するための一つの方法として、フルクトキナーゼ活性測定(Copeland L et al., Plant Physiol. (1978) 62:291-294)を行った。この酵素活性測定法は、フルクトースを最初基質とし、マンノキナーゼとホスホグルコースイソメラーゼおよびグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼを用いたカップリング反応(coupling reaction)によってマンノキナーゼのフルクトキナーゼ活性を測定することが可能な方法である。酵素液は、LBで24時間培養したpAcscBARとpAcscBAR−makがそれぞれ含まれたABA5G菌株をソニゲーターを用いて破砕した後、遠心分離した上澄み液を使用した。タンパク質濃度測定はブラドフォード分析法(Bradford assay)を用いた。酵素反応は30分間維持しながらOD340mmで吸光度の変化量を測定した。これにより、カップリング反応によって生成されたNADPHの量を測定したと共に、NADPHの吸光係数6.22cm−1mM−1を用いて活性を計算した。マンノキナーゼの1unitは、前記酵素活性測定法によって、1分当り全体タンパク質1mgを用いて1nMのNADPHを生成させる酵素量と定義し、その結果は表4に示した。]
[0040] ]
[0041] 表4に示すように、pAcscBAR−makが含まれたABA5Gのマンノキナーゼの活性は、pAcscBARのみ含まれたABA5Gに比べて酵素活性が約12倍増加または強化されたことを確認することができた。]
[0042] 実施例8:cscBAR−makの突然変異導入
スクロース利用性を向上させ且つトレオニン生産性を向上させるために、ヒドロキシルアミンを処理することにより変異されたスクロース利用性遺伝子を得る化学的ランダム変異導入法(chemical random mutagenesis)を行った(Sikorski RS & Boeke JD, MethodsEnzymol. (1991) 194:302-318)。まず、1Mヒドロキシルアミン、2mMEDTA、100mM塩化ナトリウム、50mMピロリン酸ナトリウムを添加して変異誘発液を製造した後、1mLの変異誘発液に目的のDNAを0.2mg/mLの濃度で25μL入れた。pAcscBAR−makプラスミドからEagIとXbaIの制限酵素を用いて収得した、5887bpのcscBAR−makが含まれたDNA断片を目的のDNAとして使用した。変異誘発液を添加したDNA断片を75℃で30分、1時間、2時間、4時間毎に500μLずつ精製カラムを用いて精製した。ヒドロキシルアミンの処理されたDNAと、EagIおよびXbaIの制限酵素が処理されたpACYC184ベクターとをT4DNAリガーゼを用いて連結した後、トレオニン生産株ABA5Gに形質転換した。形質転換された菌株を0.1%の低濃度スクロースが含まれたMacConkey固体培地に塗抹して37℃で一日培養した後、濃い紫色のコロニーを選別した。
選別されたコロニーを表1の力価培地で培養しながらトレオニン生産性とスクロース利用速度を評価し、最終的にトレオニン生産性とスクロース利用性に最も優れた菌株を選別した。選別された菌株からプラスミドを得た後、塩基配列分析を行った。その結果、前記菌株のcscRの388番目の塩基がCからTに置換された。それにより、130番目のアミノ酸がヒスチジンからチロシンに変異された。この変異を持つスクロース転写制御因子cscRは、配列番号17の塩基配列によって暗号化される。]
[0043] 実施例9:pAcscBAR’−makの導入によるL−トレオニン生産性の向上
cscR変異(配列番号17)の含まれたpAcscBAR’−mak(配列番号18)プラスミドをABA5Gに新たに形質転換してフラスコ力価評価を行った。33℃の培養器でLB固体培地中に一晩培養した菌株を表1の25mLの力価培地に1白金耳ずつ接種した後、これを33℃、200rpmの培養器で30時間培養した。その結果を表5に示す。]
[0044] ]
[0045] 表5に示すように、pAcscBKARを含むABA5G菌株は、30時間培養した場合、18.7g/Lのスクロースを用い、6.0g/LのL−トレオニンを生産したが、pAcscBAR’−makを含むABA5G菌株は、33.4g/Lのスクロースを用い、12.4g/LのL−トレオニンを生産した。すなわち、pAcscBAR’−makが含まれたABA5Gは、pAcscBKARを含むABA5G菌株に比べてスクロース利用速度が約1.8倍、トレオニン生産性が6.4g/L程度それぞれ上昇し、pAcscBAR−makの含まれたABA5Gに比べてもスクロース利用速度が約1.2倍、トレオニン生産性が2.7g/L程度それぞれ増加した。したがって、cscBAR’−makを含む組み換え菌株の場合、スクロース利用性およびL−トレオニンの生産性が向上することを確認することができた。前記形質転換された微生物をCA03−0308と命名し、これを2008年12月23日付で韓国ソウル市西大門区弘済1洞361−221番地に所在の国際寄託機関である韓国種菌協会付設の韓国微生物保存センターに受託番号KCCM−10978Pで寄託した。]
[0046] 実施例10:pAcscBAR’−makの導入によるO−スクシニル−ホモセリン生産性の向上
実施例8で製作されたpAcscBAR’−makを、米国公開特許第2009/0253187号に記載されたO−スクシニル−ホモセリン生産菌株としてのCJM−11A(KCCM−10922P)に形質転換し、0.1%の低濃度スクロースが含まれたMacConkey固体培地に塗抹して37℃で一日培養した後、濃い紫色のコロニーを選別した。
選別された形質転換体を33℃の培養器でLB固体培地中に一晩培養した菌株を、スクロースが含有された表1の25mL力価培地に1白金耳ずつ接種した後、これを33℃、200rpmの培養器で培養した。その結果を表6に示す。]
[0047] 表6に示すように、親菌株としてのpAcscBKARを含むCJM−11A菌株は、48時間培養した場合、30.2g/Lのスクロースを用い、12.3g/LのO−スクシニル−ホモセリンを生産したが、pAcscBAR’−makを含むCJM−11A菌株は、50.4g/Lのスクロースを用い、20.5g/LのO−スクシニル−ホモセリンを生産して、pAcscBKARを含むCJM−11に比べてスクロース利用速度が1.7倍増加し、8.2g/Lの向上したO−スクシニル−ホモセリン生産性を示した。すなわち、cscBAR’−makを含む組み換え菌株の場合、スクロース利用性およびO−スクシニル−ホモセリンの生産性が向上することを確認することができた。]
[0048] 実施例11:pAcscBAR’−makの導入によるO−アセチル−ホモセリン生産性の向上
実施例8で製作されたpAcscBAR’−makを、米国公開特許第2009/0253186号に記載されたO−アセチル−ホモセリン生産菌株としてのCJM−X(KCCM−10921P)に形質転換し、0.1%の低濃度スクロースが含まれたMacConkey固体培地に塗抹して37℃で一日培養した後、濃い紫色のコロニーを選別した。
選別された形質転換体を33℃の培養器でLB固体培地中に一晩培養した菌株を、スクロースが含有された表1の25mL力価培地に1白金耳ずつ接種した後、これを33℃、200rpmの培養器で培養した。その結果を表7に示す。]
[0049] ]
[0050] 表7に示すように、親菌株pAcscBKARを含むCJM−X菌株は、48時間培養した場合、29.9g/Lのスクロースを用い、10.7g/LのO−アセチル−ホモセリン(以下、OAH)を生産したが、pAcscBAR’−makを含むCJM−X菌株は、53.5g/Lのスクロースを用い、15.4g/LのOAHを生産して、pAcscBKARを含むCJM−Xに比べてスクロース利用速度が1.8倍増加し、8.8g/Lの向上したOAH生産性を示した。すなわち、cscBAR’−makを含む組み換え菌株の場合、スクロース利用性およびOAHの生産性が向上することを確認することができた。]
[0051] 実施例12:pAcscBAR’−makの導入によるL−トリプトファン生産性の向上
実施例8で製作されたpAcscBAR’−makをL−トリプトファン生産菌株としてのCJ285(KCCM−10534、韓国微生物保存センターに2003年11月28日付で寄託)に形質転換し、0.1%の低濃度スクロースが含まれたMacConkey固体培地に塗抹して37℃で一日培養した後、濃い紫色のコロニーを選別した。
選別された形質転換体を33℃の培養器でLB固体培地中に一晩培養した菌株を、スクロースが含有された表8の25mL力価培地に1白金耳ずつ接種した後、これを33℃、200rpmの培養器で培養した。その結果を表9に示す。]
[0052] ]
[0053] ]
[0054] 表9に示すように、親菌株pAcscBKARを含むCJ285菌株を60時間培養した場合、24.7g/Lのスクロースを用い、4.9g/LのL−トリプトファンを生産したが、pAcscBAR’−makを含むCJ285菌株は、37.1g/Lのスクロースを用い、8.9g/LのL−トリプトファンを生産して、pAcscBKARを含むCJ285に比べてスクロース利用速度が1.5倍増加し、4.0g/Lの向上したL−トリプトファン生産性を示した。すなわち、cscBAR’−makを含む組み換え菌株の場合、スクロース利用性およびL−トリプトファンの生産性が向上することを確認することができた。]
[0055] 以上の説明より、当業者であれば、本発明はその技術的思想または必須的特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。これに関連し、以上述べた実施例は全ての面で例示的なもので、限定的なものではないと理解すべきである。本発明の範囲は、前記詳細な説明よりは特許請求の範囲の意味および範囲、そしてその等価概念から導入される全ての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。]
[0056] 本発明に係る向上したL−アミノ酸生産能およびスクロース同化能を有するエシェリキア属微生物を用いてL−アミノ酸を生産する場合、発酵産業に主に用いられた澱粉糖以外にスクロースを主炭素源として用いることにより、急変する世界の穀物価格に柔軟に対処することができるうえ、高収率のL−アミノ酸を生産することができる。]
权利要求:

請求項1
スクロース非同化性微生物にスクロースパーミアーゼ、スクロースヒドロラーゼおよびスクロース転写制御因子の活性を付与し、マンノキナーゼの活性を強化させたことを特徴とする、増加したL−アミノ酸生産能およびスクロース同化能を有するエシェリキア属微生物。
請求項2
マンノキナーゼの活性強化は、マンノキナーゼ遺伝子のコピー数増加、プロモーター交換、プロモーター変異、および遺伝子変異よりなる群から少なくとも一つ選ばれる方法によることを特徴とする、請求項1に記載の増加したL−アミノ酸生産能およびスクロース同化能を有するエシェリキア属微生物。
請求項3
マンノキナーゼ遺伝子のコピー数の増加は、染色体の挿入、およびマンノキナーゼをコードするポリヌクレオチドを含むベクターの形質導入によることを特徴とする、請求項2に記載の増加したL−アミノ酸生産能およびスクロース同化能を有するエシェリキア属微生物。
請求項4
前記ベクターは、配列番号15の塩基配列を含むことを特徴とする、請求項3に記載の増加したL−アミノ酸生産能およびスクロース同化能を有するエシェリキア属微生物。
請求項5
スクロースパーミアーゼ、スクロースヒドロラーゼおよびスクロース転写制御因子の活性付与がスクロースパーミアーゼ、スクロースヒドロラーゼおよびスクロース転写制御因子を暗号化する塩基配列を含むベクターで形質転換されたことを特徴とする、請求項1に記載の増加したL−アミノ酸生産能およびスクロース同化能を有するエシェリキア属微生物。
請求項6
前記塩基配列はそれぞれ配列番号4、6および7の塩基配列であることを特徴とする、請求項5に記載の増加したL−アミノ酸生産能およびスクロース同化能を有するエシェリキア属微生物。
請求項7
スクロース転写制御因子の130番目のアミノ酸がチロシンで置換されたことを特徴とする、請求項6に記載の増加したL−アミノ酸生産能およびスクロース同化能を有するエシェリキア属微生物。
請求項8
スクロース転写制御因子が配列番号17の塩基配列で暗号化されたことを特徴とする、請求項7に記載の増加したL−アミノ酸生産能およびスクロース同化能を有するエシェリキア属微生物。
請求項9
スクロースパーミアーゼ、スクロースヒドロラーゼ、スクロース転写制御因子およびマンノキナーゼを暗号化する塩基配列を全て含むベクターで形質転換したことを特徴とする、請求項1に記載の増加したL−アミノ酸生産能およびスクロース同化能を有するエシェリキア属微生物。
請求項10
前記ベクターが配列番号18の塩基配列で暗号化されたことを特徴とする、請求項9に記載の増加したL−アミノ酸生産能およびスクロース同化能を有するエシェリキア属微生物。
請求項11
エシェリキア属微生物が大腸菌であることを特徴とする、請求項1に記載の 増加したL−アミノ酸生産能およびスクロース同化能を有するエシェリキア属微生物。
請求項12
大腸菌が大腸菌CA03−0308(受託番号KCCM10978P)であることを特徴とする、請求項11に記載の増加したL−アミノ酸生産能およびスクロース同化能を有するエシェリキア属微生物。
請求項13
L−アミノ酸が、L−トレオニン、O−スクシニル−ホモセリン、O−アセチル−ホモセリン、L−メチオニン、L−リシン、L−ホモセリン、L−イソロイシン、L−バリンおよびL−トリプトファンよりなる群から選択されたことを特徴とする、請求項1に記載の増加したL−アミノ酸生産能およびスクロース同化能を有するエシェリア属微生物。
請求項14
L−アミノ酸が、L−トレオニン、O−スクシニル−ホモセリン、O−アセチル−ホモセリンおよびL−トリプトファンよりなる群から選択されたことを特徴とする、請求項13に記載の増加したL−アミノ酸生産能およびスクロース同化能を有するエシェリア属微生物。
請求項15
炭素源としてスクロースが全体または一部含まれた培養培地に、請求項1〜14のいずれか1項による増加したL−アミノ酸生産能およびスクロース同化能を有するエシェリキア属微生物を接種して培養する段階と、前記段階で得られる培養物からL−アミノ酸を分離する段階とを含むことを特徴とする、L−アミノ酸の生産方法。
請求項16
L−アミノ酸が、L−トレオニン、O−スクシニル−ホモセリン、O−アセチル−ホモセリン、L−メチオニン、L−リシン、L−ホモセリン、L−イソロイシン、L−バリンおよびL−トリプトファンよりなる群から選択されたことを特徴とする、請求項15に記載のL−アミノ酸の生産方法。
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