专利摘要:
本発明は、自己免疫疾患及びアレルギー疾患を治療及び予防するための改善された方法及び組成物を提供する。更に具体的には、本発明は、細菌エンドトキシンの変異サブユニット、特定の細胞受容体と結合し得るペプチド、並びに自己免疫疾患又はアレルギー性疾患と関連する1種以上のエピトープを含む融合タンパク質である、新規な免疫調節複合体に関する。なし
公开号:JP2011507511A
申请号:JP2010539377
申请日:2008-12-15
公开日:2011-03-10
发明作者:リケ,ニルス
申请人:ミヴァック ディベロップメント アクティエボラグ;
IPC主号:C12N15-09
专利说明:

[0001] 本発明は、免疫学及び医学の分野に関する。本発明は、自己免疫疾患及びアレルギー性疾患の治療及び予防のための改善された方法及び組成物を提供する。具体的には、本発明は、細菌エンドトキシンの変異サブユニット、特定の細胞受容体に結合し得るペプチド、並びに自己免疫疾患又はアレルギー疾患と関連する、1種以上の自己抗原又はアレルギー誘発エピトープを含む融合タンパク質である、新規な免疫修飾複合体に関する。]
背景技術

[0002] 自己免疫疾患及び免疫反応の調節
自己免疫疾患は、身体の正常細胞及び/又は組織において誤った方向に行くようになった免疫細胞によって起こる任意の疾患である。自己免疫疾患は、米国の人口の3%に影響を及ぼし、先進工業国の同様の割合の人口にも影響を及ぼしていると思われる(Jacobson et al.Clin Immunol Immunopathol 84:223−43,1997)。自己免疫疾患は、疾患の臨床症状を引き起こす、身体(例えば、膵臓、脳、甲状腺又は消化管)内の器官、組織又は細胞型の損傷及び/又は機能不全を起こす自己タンパク質、自己ポリペプチド、自己ペプチド及び/又は他の自己分子を異常に標的とするT及びBリンパ球により特徴づけられる(Marrack et al.Nat Med 7:899−905 2001)。自己免疫疾患には、特定の組織に影響を及ぼす疾患、並びに複数の組織に影響を及ぼし得る疾患が含まれる。これは、部分的に、自己免疫反応が、特定の組織に限定される抗原又は身体内に広く分布している抗原に向けられるかどうかに依存するいくつかの疾患についてであり得る。組織特異的自己免疫の特性は、単一の組織又は個々の細胞型の選択的標的である。それにもかかわらず、偏在する自己タンパク質を標的とする特定の自己免疫疾患も特定の組織に影響を及ぼし得る。例えば、多発性肺炎においては、自己免疫反応は、偏在するタンパク質ヒスチジル−tRNAシンテターゼを標的とするが、主に関与する臨床症状は筋肉の自己免疫性破壊である。]
[0003] 免疫系は、種々の外来病原体に対して哺乳動物を保護するが、同時に自己抗原に対する保護反応を生じるように設計された、高度な複合体メカニズムを使用する。応答するかどうか(抗原特異性)を決定することに加え、免疫系は、各病原体を処理する適切なエフェクター機能(エフェクター特異性)をも選択しなければならない。これらのエフェクター機能を臨界的に媒介及び制御する細胞はCD4+T細胞である。更に、それはT細胞がこれらの機能を媒介することによる主要なメカニズムであるように思われる、CD4+T細胞からの特定のサイトカインの生成である。従って、CD4+T細胞により製造されるサイトカインのタイプの特徴づけ、並びにどのようにしてその分泌が制御されるかは、どのようにして免疫反応が制御されるかの理解において非常に重要である。]
[0004] 長期間飼育マウスCD4+T細胞クローンから産生したサイトカインの特徴づけは、20年以上に初めて公表された(Mosmann et al.J Immunol 136:2348−2357,1986)。これらの研究においては、CD4+T細胞が、ヘルパーT1(Th1)及びヘルパーT2(Th2)と命名された、2種の異なるパターンのサイトカインを産生することが示されている。Th1細胞は、インターロイキン−2(IL−2)、インターフェロン−γ(IFN−γ)及びリンホトキシン(LT)を産生するが、Th2クローンはIL−4、IL−5、IL−6及びIL−13を優先的に産生することがわかった(Cherwinski et al.J Exp Med 169:1229−1244,1987)。多少遅れて、更なるサイトカイン、IL−9及びIL−10がTh2クローンから分離された(Van Snick et al.J Exp Med 169:363−368,1989)(Fiorentino et al.J Exp Med 170:2081−2095,1989)。最終的に、IL−3、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)及び腫瘍壊死因子−α(TNF−α)などのさらなるサイトカインが、Th1及びTh2細胞の両方から分泌されることがわかった。最近、ライム病患者の炎症関節から分離されたCD4+T細胞が、Th1及びTh2と異なるIL−17産生CD4+T細胞のサブセットを含むことが報告された(Infante−Duarte et al.J.Immunol 165:6107−6115,2000)。これらのIL−17産生CD4+T細胞はT細胞プライミングを高め、IL−1、IL−6、TNF−α、NOS−2、金属プロテアーゼ及びケモカインを含む、複数の炎症性メディエータを産生する線維芽細胞、内皮細胞、マクロファージ及び上皮細胞を刺激し、炎症の誘導をもたらす活性化T細胞によって優先的に産生される炎症性サイトカイン、Th17.IL−17と呼ばれている。IL−17の発現は、RA、MS、炎症性腸疾患(IBD)及びぜん息のような種々のアレルギー性及び自己免疫疾患の患者内で上昇し、これは、このような疾患の誘導及び/又は発達に対するIL−17の寄与を示唆している。]
[0005] 今は調節性T細胞(Treg細胞)と呼ばれているサプレッサT細胞は、末梢性免疫寛容の能動機構として自己反応性T細胞を抑制することを示す十分な証拠がある。Treg細胞は、今までのところ、その起源に従い、2種のサブタイプ、すなわち、天然(又は構成的)及び誘導(適応性)に分類することができる(Mills,Nat Rev Immunol 4:841−855,2004)。更に、表面マーカー又はサイトカイン生成物に従い、CD4+Treg細胞(天然のCD4+CD25+Treg細胞、IL−10産生Tr1細胞及びTGF−β産生Th3細胞)、CD8+Treg細胞、Veto CD8+細胞、γδT細胞、NKT(NK1.1+CD4−CD8−)細胞、NK1.1−CD4−CD8−細胞等のような、種々のTreg細胞サブセットが特定されている。累積証拠は、天然のCD4+CD25+Treg細胞が、病原性自己免疫反応の下方制御及び免疫ホメオスタシスの維持において積極的な役割を果たすことを示す(Akbari et al.Curr Opin Immunol 15:627−633,2003)。]
[0006] 自己免疫疾患には、身体内の多くの異なる器官及び組織に影響し得る広範囲の疾患が包含される(例えば、Paul,W.E.(1999)Fundamental Immunology,Fourth Edition, Lippincott−Raven,New Yorkを参照されたい)。]
[0007] ヒトの自己免疫疾患の最新の治療法には、グルココルチコイド、細胞毒性薬が含まれ、最近、生物学的治療法が開発された。一般に、ヒトの全身性自己免疫疾患の管理は経験的であり不十分である。大部分、コルチコステロイドのような広範囲の免疫抑制剤は、多種多様の重度の自己免疫疾患及び炎症性疾患において用いられる。コルチコステロイドに加え、他の免疫抑制剤が、全身性自己免疫疾患の管理に用いられる。シクロホスファミドは、T−及びBリンパ球の両方の広範囲の消耗、並びに細胞性免疫の機能障害を引き起こすアルキル化剤である。サイクロスポリン、タクロリムス及びミコフェノール酸モフェチルは、T−リンパ球抑制の特性を有する天然の生成物であり、それらは、全身性エリテマトーデス(SLE)、リウマチ様関節炎(RA)を治療するために用いられ、血管炎及び筋肉炎の範囲を限定する。これらの薬剤は重大な腎臓毒性と関連している。メトトレキサートも、疾患の進行を少なくすることを目的とし、RAにおける「二次」治療薬として用いられる。それは、多発性筋炎及び他の結合組織疾患においても用いられる。試みられてきた他の方法には、サイトカインの作用を阻害し、又はリンパ球を消耗することを意図するモノクローナル抗体が含まれる(Fox,Am J Med 99:82−88,1995)。多発性硬化症(MS)の治療には、再発率を20〜30%まで低下させる、インターフェロンβ及びコポリマー1が含まれ、疾患の進行について適度の効果のみを与える。MSは、メチルプレドニゾロン、他のステロイド類、メトトレキサート、クラドリビン及びシクロホスファミドを含む免疫抑制剤によっても治療される。これらの免疫抑制剤は、MSの治療において最小の効果を有する。MSの治療法としての抗体Tysabri(ナタリズマブ)、アルファ−4−インテグリンアンタゴニストの導入は、治療を受けている患者における進行性多巣性白質脳症(PML)の発生により見劣りしてしまう。RAのための最新の治療は、メトトレキサート、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、ロイフロナミド、プレドニゾン、最近開発されたTNFαアンタゴニスト、エタネルセプト及びインフリキシマブのような免疫機能を非特異的に抑制又は調節する薬剤を用いる(Moreland et al.J Rheumatol 28:1431−52,2001)。エタネルセプト及びインフリキシマブは、全世界的にTNFαを阻害し、患者に、敗血症による死、慢性マイコバクテリア感染及び脱髄性の事象の影響を受けやすくする。]
[0008] 器官特異的自己免疫の場合、多くの異なる治療法が試みられてきた。可溶性タンパク質抗原を全身に投与し、それに続く抗原に対する免疫反応を阻害する。このような療法には、実験的自己免疫脳脊髄炎を患っている動物及び多発性硬化症を患っているヒトへの、ミエリン塩基性タンパク質、その優性ペプチド又はミエリンタンパク質の混合物の送達(Brocke et al.Nature 379:343−6,1996;Critchfield et al.Science 263:1139−43,1994;Weiner et al.Annu Rev Immunol 12:809−37,1994)、コラーゲン誘発関節炎を患っている動物及びリウマチ様関節炎を患っているヒトへの、II型コラーゲン又はコラーゲンタンパク質混合物の投与(Gumanovskaya et al.Immunology 91:466−73,1999;McKown et al.Arthritis Rheum 42:1204−8,1999;Trentham et al.Science 261:1727−30,1993)、自己免疫性糖尿病を患っている動物及びヒトへのインシュリンの送達(Pozzilli and Gisella Cavallo,Diabetes Metab Res Rev 16:306−7,2000)、並びに自己免疫性ブドウ膜炎を患っている動物及びヒトへのS−抗原の送達(Nussenblatt et al.Am J Ophthalmol 123:583−92,1997)が含まれる。他のアプローチは、T細胞受容体及びMHC分子に結合したペプチドの間の特異的相互作用に基づくペプチド抗原の全身投与のための合理的治療法を設計する試みである。糖尿病の動物モデルにおけるペプチドアプローチを用いた1つの研究は自己ペプチドに対する抗体産生の開発をもたらした(Hurtenbach et al.J Exp Med 177:1499,1993)。他のアプローチはT細胞受容体(TCR)ペプチド免疫の投与である(例えば、Vandenbark et al.Nature 341:541,1989を参照されたい)。更に他のアプローチは自己ペプチド又はタンパク質抗原の経口摂取による経口免疫寛容の誘導である(例えば、Weiner,Immmunol Today 18:335,1997を参照されたい)。]
[0009] 粘膜免疫寛容は、粘膜経路により、通常、経口、経鼻又は鼻−呼吸器により(膣及び直腸でもよい)、前もって投与された抗原を投与するための全身性の免疫寛容の現象を意味する(Weiner et al.Annu Rev Immunol 12:809−837,1994)。粘膜免疫寛容は、モルモットにおいて、遅延型又は接触過敏症反応のモデル中で20世紀の初期に発見されたが、寛容のメカニズムは、現代免疫学の時代まで定義されていないままで残っていた。細胞分離技術、サイトカイン産生試験、及び抗原特異的T細胞が生体内で追跡される遺伝子組換えモデルの使用は、粘膜免疫寛容のメカニズムを徐々に明らかにしてきた(Garside and Mowat.Crit Rev Immunol 17:119−137,1997)。粘膜経路による抗原投与が、抗原の投与経路及び投与量に依存する、異なるタイプの寛容をもたらし得ることが明らかになってきた。例えば、高濃度の経口抗原は、T細胞の活性化、それに続いて、高濃度の可溶性抗原の非経口的投与に類似する反応性T細胞の欠失又はアネルギーを誘発する(Chen et al.Nature 376:177−180,1995)。これは、その抗原に特定のT細胞の死滅、その後の抗原投与に対する無反応、すなわち、受動寛容をもたらす。対照的に、低濃度の経口抗原は欠失又はアネルギーを誘発しないが、繰り返し投与した場合は抗炎症サイトカインを分泌する調節性保護T細胞、Treg細胞の出現、すなわち、能動寛容により特徴づけられる異なるタイプの免疫反応を誘発する(von Herrath,Res Immunol.148:541−554,1997)。これらのTreg細胞は、通常、CD4(ヘルパー)T細胞のクラスに属する。損傷を受けていないタンパク質抗原の鼻咽頭粘膜への点滴も、保護的であるTreg細胞を誘導する。この場合には、CD4及びCD8 T細胞はいずれも誘導され得る。経口又は鼻腔内抗原投与後の調節性Treg細胞は、IL−4、IL−10及びTGF−βのような抗炎症性サイトカインを産生する。粘膜免疫寛容を誘導するために、抗原をエアロゾルの形態で投与することもできる。これら3種の経路、経口、鼻腔内及びエアロゾル吸入は、それぞれのケースにおいて、抗原摂取をもたらし、異なるリンパ様部分の提示をもたらす。従って、経口抗原は、大部分no
T細胞は腸間膜リンパ節に、ある程度はパイエル板に提示され、鼻腔内抗原は深頸{しんけい}リンパ節に、吸入した抗原は縦隔リンパ節に提示される。それぞれのケースにおいて、抗原への繰り返し暴露は、調節性T細胞を誘発することができるが、これらの細胞の性質は、抗原の経路及び形態に依存して異なる。経口抗原により誘発される調節性細胞はCD4 T細胞であり、αβヘテロ二量体からなるT細胞受容体(TCR)を発現するが、鼻腔吸入抗原の場合は、調節性細胞は、γδヘテロ二量体を発現するCD8 T受容体(すなわち、γδT細胞でもあり得る。これらの細胞のいくつかは、従来のαβ−ヘテロ二量体TCRの代わりにααホモ二量体であるCD8受容体を有していてもよい。CD8αα及びγδTCRを有する大部分の細胞は皮膚又は粘膜組織中に存在する。]
[0010] 過去数十年にわたって、西側諸国においては、アレルギー性疾患の発生及び流行のいずれもが顕著に増加した。アレルギー性鼻炎は、人口の15〜20%に影響を及ぼす、最も一般的な疾患である。アレルギー反応は、肥満細胞表面での特異的IgEのアレルゲン媒介架橋、並びにヒスタミン及び他のメディエータの遊離を誘導し、急性アレルギー反応を引き起こす好塩基球、それに続く、IL−4、IL−5及びIL−13を産生する好酸球、好中球及びTh2細胞の流入により特徴づけられる遅発相反応により誘発される。]
[0011] 特定の免疫療法(SIT)は、アレルギー性鼻炎の効果的治療法として認識されている。伝統的に、SITは少量の特定アレルゲンの皮下投与の繰り返しによって実施されてきた。この治療法の形態は効果的な治療の選択肢であり得るが、この免疫療法の形態の安全性、並びにワクチンとして用いられるアレルゲン抽出物の統一の困難性は重要である。従って、アレルギー性疾患に対する、代わりの新規な治療法の開発に強い関心がある。アプローチの1つは、粘膜ワクチンの使用である(Widermann,Curr Drug Targets Inflamm Allergy 4,577−583,2005)。他の代替え手段は、ワクチンとして低下したアレルギー誘発性あるいはアレルギー誘発性を全く伴わないアレルゲン誘導体の使用を基本としている(Vrtala et al.Methods32,313−320,2004)。これらには、アレルゲンの腫瘍抗原T細胞エピトープを表わすタンパク質工学及び合成ペプチドにより得られるアレルゲンが含まれる。例えば、Oleらは、オリーブの花粉の最も関連するアレルゲンとして特定している(Wheeler et al.Mol Immunol 27,631−636,1990)。]
[0012] 免疫反応は、一般に自己ポリペプチドを、単独で、又はアジュバント(免疫調節薬)と組み合わせて送達することにより変化する。例えば、B型肝炎ウイルスワクチンは、アジュバントとしての役割を果たす水酸化アルミニウム中に製剤化された組換え型B型肝炎ウイルス表面抗原、非自己抗原を含む。このワクチンは、感染から保護するためにB型肝炎ウイルス表面抗原に対する免疫反応を誘発する。他のアプローチは、弱毒化し、複製欠損性、及び/又は非病原性の形態のウイルス又は細菌の送達を含み、各非自己抗原は病原体に対する宿主保護免疫反応を誘発する。例えば、経口用ポリオワクチンは、弱毒化した生ウイルス、非自己抗原からなり、細胞に感染し、ワクチン接種した個体内で複製し、臨床疾患を起こすことなく、ポリオウイルス、外来性又は非自己抗原に対する効果的な免疫を誘発する。また、不活化ポリオワクチンは、感染又は複製することができない不活性化又は「死滅」ウイルスを含み、皮下投与され、ポリオウイルスに対する保護的免疫を誘導する。]
[0013] 自己免疫疾患の治療のためにDNA療法が開示されている。このようなDNA療法には、自己免疫反応を促進する自己反応性T細胞のレベルを変化させるT細胞受容体の抗原結合領域をコードするDNAが含まれる(Waisman et al.Nat Med 2:899−905,1996;米国特許第5,939,400号)。自己抗原をコードするDNAが粒子に結合し、遺伝子銃によってMS及びコラーゲン誘発関節炎を予防するために皮膚に送達される(WO 97/46253;Ramshaw et al.Immunol Cell Biol 75:409−413,1997)。接着分子、サイトカイン(例えば、TNFα)、ケモカイン(例えば、C−Cケモカイン)及び他の免疫分子(例えば、Fas−リガンド)をコードするDNAは動物モデルにおいて自己免疫疾患を治療するために用いられてきた(Youssef et al.J Clin Invest 106:361−371,2000;Wildbaum et al.J Clin Invest 106:671−679,2000;Wildbaum et al.J Immunol 165:5860−5866,2000)。]
[0014] 1種以上の自己抗原をコードする核酸を投与することによる自己免疫疾患の治療法は、WO 00/53019、WO 2003/045316及びWO 2004/047734に開示されている。これらの方法は成功しているが、更なる改善が必要である。]
[0015] 細菌エンテロトキシンは、感染症の予防のためのワクチンにおいて免疫賦活アジュバントとして用いられる。コレラ毒素(CT)及び密接に関連のあるE.coli非耐熱性毒素(LT)は、おそらく、今日では実験的使用における、最も強力かつ最も研究された粘膜アジュバントである(Rappuoli et al.Immunol Today 20:493−500)が、診療所で利用された時に、その潜在毒性及びベル麻痺(顔面神経の麻痺)の場合と関連していることから、市場から撤退するに至った(Gluck et al.J Infect Dis 181:1129−1132,2000;Gluck et al.Vaccine 20(Suppl.l):S42−44,2001;Mutsch et al. N Engl J Med.350:896−903,2004)。細菌エンテロトキシンCT及びLTは、実験動物並びにヒトにおいて効果的な免疫促進物質であることが示された(Freytag et al.Curr Top Microbiol Immunol 236:215−236,1999)。構造的に、これらのエンテロトキシンはAB5複合体であり、1個のADP−リボシルトランスフェラーゼ活性A1サブユニットと、BサブユニットのペンタマーにA1が結合しているA2サブユニットとからなる。ホロトキシンは、Bサブユニット(CTB)を介して、ほとんどの哺乳動物細胞と結合し、特に、細胞膜中のGM1−ガングリオシド受容体と相互作用する。ホロトキシンは粘膜免疫反応を向上させることがわかったが、CTB及び抗原の間の複合体は免疫系を特異的に寛容化するために用いられてきた(Holmgren et al.Am J Trop Med Hyg 50:42−54,1994)。マウスにおける研究は、CT及びLTが鼻腔内に投与された時に嗅神経及び嗅球内に蓄積し、CT及びLTのBサブユニットのGM1−ガングリオシド受容体に結合する能力に依存するメカニズムは、全ての有核哺乳動物細胞上に存在することを示した(Fujihashi et al.Vaccine 20:2431−2438,2002)。CT及びLTの毒性の低い変異体は十分なアジュバント機能により設計されたが、このような分子は、未だに、特にCT及びLTのアジュバント活性がAサブユニットのADP−リボシルトランスフェラーゼ活性と標的細胞上におけるガングリオシド受容体と結合する(Soriani et al.Microbiology 148:667−676,2002)能力の組み合わせであるように思われていると考えられる場合に有害反応を引き起こすという重大な危険を伴っている(Giuliani et al.J Exp Med 187:1123−1132,1998;Yamamoto et al.J Exp Med 185:1203−1210,1997)。これらの観察及び他の観察は、ヒトのためのワクチンにおけるCT又はLTホロトキシンの使用を除外する。一方、最近の観察は、A1サブユニットについてコードする遺伝子内に部位特異的な突然変異を導入することにより毒性をなくし、又は大いに低下させて、これらの分子のアジュバント機能を維持することが可能であることを証明した。効果的なアジュバントであることを示す突然変異分子の具体例はLTK63及びLTR72であり(Giuliani et al.J Exp Med 187:1123−1132,1998)、前者は酵素活性を有さず、後者はADP−リボシル化能力が顕著に低下している。これにもかかわらず、GM1−ガングリオシド受容体依存結合は、これらの変異に問題を残し、その結果、神経細胞蓄積及び神経毒性をいまだに引き起こし得る。]
[0016] この毒性に対する有効性のジレンマに対する、よりよい解決法は、非常に効果的な粘膜及び全身性アジュバントであることが証明されたCTA1−DD分子である(Agren et al.J Immunol 158:3936−3946,1997;米国特許第5,917,026号)。このユニークなアジュバントは、黄色ブドウ球菌のプロテインAに由来する免疫グロブリン結合成分の二量体と組み合わせた、CTの酵素的に活性なA1サブユニットをベースとする。その結果、この分子は、全ての有核細胞への結合を回避し、望ましくない反応をもたらし、ホロトキシンにおけるCTA1−酵素を完全に利用する。従って、今までの全ての研究は、CTA1−DDが非毒性であり、優れた免疫増強機能を維持していることを見出した。全身的に与えた場合、CTA1−DDは、無傷のCTの効果と同等のアジュバント効果を提供し、アジュバントと一緒に投与した特定の免疫原に対する細胞性及び体液性免疫のいずれをも非常に増大させる。CTホロトキシンの毒性の要件であるBサブユニットの欠失であるように、それは、粘膜アジュバントとしても機能し、安全であるべきである。CTA1−DDはガングリオシド受容体と結合できず、むしろ、それはB細胞を標的とし、相互作用し得る細胞の制限されたレパートリーに対するCAT1−DDアジュバントを限定する。しかし、アジュバント効果はB細胞欠失マウスにおけるCAT1−DDアジュバントを用いた鼻腔内免疫に続く、特異的なCD4T細胞免疫の強力な誘導において示されるように、B細胞に完全に依存しているというわけではない(Eliasson et al Vaccine 25:1243−52,2008,Akhiani et al.Scand J.Immunol 63:97−105,2006)。]
[0017] CTA1−DDのアジュバント効果は、ADP−リボシル化酵素活性を欠くCTA1−E112K−DD変異体及びCTA1−R7K−DDには存在しない(Lycke,Immunol Lett 97:193−198,2005)。]
[0018] CTA1−R7K−DDと、オブアルブミン(OVA−p323−339)に由来するペプチドとの融合をベースとする実験系を用いるWadell及びLycke(FASEB Journal 15(5),A1230,2001)は、脾臓のCD4T細胞集団における免疫寛容の刺激が、CTA1−R7K−OVA−DD融合タンパク質の投与に続くことを観察したと主張した。しかし、このミーティングの要約は実験の詳細及び結果を提供せず、どのような実験が実施されたか、どのような結果が得られたかの疑念を読者に残す。このOVAペプチドが自己免疫疾患又はアレルギー性疾患と関連するペプチドでないので、このOVAペプチドを用いた非生理的システムにおいて得られるあらゆる結果が、自己免疫疾患又はアレルギー性疾患の病態生理学に対するあらゆる妥当性にまで拡大し得るかどうかも疑わしい。]
[0019] 米国特許第5,939,400号
WO 97/46253
WO 00/53019
WO 2003/045316
WO 2004/047734
米国特許第5,917,026号]
先行技術

[0020] Jacobson et al.Clin Immunol Immunopathol 84:223−43,1997
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Giuliani et al.J Exp Med 187:1123−1132,1998
Agren et al.J Immunol 158:3936−3946,1997
Eliasson et al Vaccine 25:1243−52,2008,Akhiani et al.Scand J.Immunol 63:97−105,2006
Lycke,Immunol Lett 97:193−198,2005
FASEB Journal 15(5),A1230,2001]
発明が解決しようとする課題

[0021] CTB及びウシコラーゲンII由来のペプチドの複合体は、コラーゲン誘発性自己免疫性の耳疾患、並びにコラーゲン誘発性関節炎の発症からマウスを保護し得ることがわかった(Kim et al.Ann Otol Rhinol Laryngol 110:646−654,2001;Tarkowski et al.Arthritis Rheum 42:1628−34,1999)。しかし、前記で議論したように、CTBは、GM1−ガングリオシド結合特性及び潜在的な神経毒性効果のためにヒトへの使用には適していない。]
課題を解決するための手段

[0022] 本発明は、免疫調節複合体を投与することを含み、免疫調節複合体が、細菌エンテロトキシンの変異サブユニット、特定の細胞受容体と結合し得るペプチド、及び疾患と関連する1種以上のエピトープを含む融合タンパク質である、自己免疫疾患又はアレルギー性疾患の予防、防止及び/又は治療のための改善された方法及び組成物に関する。治療的又は予防的有効量の免疫調節複合体の患者への投与は、疾患と関連する抗原に対する免疫反応の抑制を誘発し、その結果、疾患を治療又は予防する。]
[0023] 治療すべき疾患が自己免疫疾患である場合、エピトープは自己免疫エピトープであり得、治療すべき疾患がアレルギー性疾患である場合、エピトープはアレルギー誘発性エピトープであり得る。]
[0024] 一実施態様においては、本発明は、細菌エンテロトキシンのADP−リボシル化サブユニットの変異サブユニットを含む融合タンパク質である免疫調節複合体を提供する。好ましくは、ADP−リボシル化サブユニットは、コレラ毒素(CT)のA1サブユニット、E.coli非耐熱性エンテロトキシン(LT)のA1サブユニット、百日咳毒素(PTX)のS1サブユニット、並びにクロストリジウム、赤痢菌及びシュードモナス菌毒素のADP−リボシル化サブユニットから選択される。更に好ましくは、細菌エンテロトキシンのADP−リボシル化サブユニットは、コレラ毒素(CT)のA1サブユニット、E.coli非耐熱性エンテロトキシン(LT)のA1サブユニット、及び百日咳毒素(PTX)のS1サブユニットから選択される。]
[0025] 細菌エンテロトキシンのADP−リボシル化サブユニットは、ADP−リボシル化サブユニットのADP−リボシル化活性が、対応する野生型のADP−リボシル化サブユニットのADP−リボシル化活性の10%未満、好ましくは、対応する野生型のADP−リボシル化サブユニットのADP−リボシル化活性の5%未満、更に好ましくは、対応する野生型のADP−リボシル化サブユニットのADP−リボシル化活性の1%未満であるように変異している。]
[0026] 好ましい一実施態様においては、融合タンパク質は、天然のCTA1の7位のアミノ酸、アルギニンがリジンに置換されたCTA1−R7K変異体(配列番号:1)を含む。]
[0027] 一実施態様においては、融合タンパク質は、抗原提示し得る細胞、特にMHCクラスI又はMHCクラスII抗原を発現する細胞上で発現する受容体に特異的に結合するペプチドを含む。抗原提示細胞は、Bリンパ球のようなリンパ球、T細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、上皮細胞及び内皮細胞からなる群から選択し得る。]
[0028] 自己ペプチドは、前記細胞の受容体、好ましくは前記抗原提示細胞により発現するIg又はFc受容体、最も好ましくはBリンパ球及び樹状細胞の受容体と結合するペプチドである。]
[0029] 特異的な標的ペプチドの具体例は、
(i)単球、好中球、好酸球、線維芽細胞及び内皮細胞に存在するGM−CSF受容体α/βヘテロ二量体と結合し得る顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、
(ii)それぞれ、MHCクラスII及びMHCクラスI分子のコレセプターとして機能するT細胞受容体(TcR)と共にT細胞上で発現するCD4及びCD8(MHCクラスIはほとんどの有核細胞で発現するが、MHCクラスII分子は、樹状細胞、B細胞、単球、マクロファージ、骨髄球及び赤血球前駆細胞及びいくらかの上皮細胞で発現する)、
(iii)B細胞上で発現するCD80及びCD86B7と結合するT細胞上で主に発現する2種のホモ二量体タンパク質、CD28及びCTLA−4、
(iv)T細胞上で発現するCD40L(gp39又はCD154)と相互作用する成熟B細胞の表面に主に存在するCD40、
(v)肥満細胞、好塩基球、好酸球、血小板、樹状細胞、マクロファージ、NK細胞及びB細胞上に存在する、多くの高又は低親和性Fc受容体と相互作用する、Ig重鎖定常領域の種々のアイソタイプ、
(vi)正常な液性免疫反応の発生に重要であり、自己免疫の発生にも関与していると思われるB−細胞上で発現する、補体受容体(CRs)、CR1及びCR2、
(vii)樹状細胞上で発現するデクチン−1のようなC型レクチン受容体(CLRs)、
(viii)抗原の取り込み、及び樹状細胞のサブセット上において高レベルで発現するエンドサイトーシス受容体、DEC205、
(ix)骨髄性細胞で主として見いだされる、多くの可溶性因子及びタンパク質(LPS、フィブリノーゲン、iC3b)についての細胞表面受容体、CD11c、
(x)樹状細胞、マクロファージ及び他の抗原提示細胞上に存在するマンノース受容体、
(xi)マクロファージ上に存在する、特定のHSP60、
(xii)樹状細胞のサブセットにより発現するインテグリンアルファ鎖、CD103の受容体と結合し得るペプチドである。]
[0030] 本発明の特に好ましい実施態様によれば、前記ペプチドは、単一、又は1個以上のDサブユニットのような複数コピーで、プロテインA又はその断片により構成されている。
本発明の他の特に好ましい実施態様によれば、前記ペプチドは、抗原を提示し得る細胞上で発現する受容体と特異的に結合する、一本鎖抗体断片のような抗体断片により構成される。]
[0031] 自己ペプチドは、好ましくは、得られる融合タンパク質が水溶性を保持し、融合タンパク質が、天然の毒素に結合する受容体と異なる特定の細胞受容体を標的とすることができ;その結果、少なくとも前記サブユニットの細胞体取り込みを介在する。]
[0032] 自己抗原エピトープは、インシュリン依存性糖尿病(IDDM)、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス(SLE)又はリウマチ様関節炎(RA)、シェーグレン症候群(SS)のような自己免疫疾患と関連し得る。]
[0033] いくつかの実施態様においては、IDDMと関連する自己抗原エピトープは、プレプロインシュリン、プロインシュリン、インシュリン及びインシュリンB鎖;グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)−65及び−67;チロシンホスファターゼIA−2;膵島特異的グルコース−6−ホスファターゼ関連タンパク質(IGRP)及び膵島細胞抗原69kDからなる群から由来するエピトープである。]
[0034] いくつかの実施態様においては、MSと関連する自己抗原エピトープは、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、プレテオリピドタンパク質(PLP)、ミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質(MOBP)、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)及びミエリン関連糖タンパク質(MAG)からなる群から由来するエピトープである。]
[0035] いくつかの実施態様においては、RAと関連する自己抗原エピトープは、I、II、III、IV、V、IX及びXI型コラーゲン、GP−39、フィラグリン及びフィブリンからなる群から由来するエピトープである。好ましい一実施態様においては、エピトープはII型コラーゲンに由来し、好ましくは、エピトープは、260〜273位のアミノ酸を含む、共有の免疫優性II型コラーゲンペプチド(shared immunodominant collagen II peptide)(CII260−273)である。]
[0036] アレルギー性エピトープは、アレルギー性ぜん息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性胞隔炎、アトピー性皮膚炎又は食品に対する過敏症と関連し得る。ある実施態様においては、アレルギー性エピトープは、オリーブの花粉からのOle e1アレルゲン、スギ花粉からのCry jI及びCry jIIアレルゲン、オオアワガエリ花粉のnPh1 p4、又は主要なカバの木の花粉のBet v1、ヨモギの花粉の主要なアレルゲンArt v1のような植物の花粉、ネコアレルゲンFel d1又はイヌアレルゲンCan f1、イエダニアレルゲンDer f1、Der p1、Der m1、Blo t4のような動物、アルテルナリア抗原Alt a1、アスペルギルス抗原Asp f1、クラドスポリウム抗原ClA h1及びCla h2、ペニシリウム抗原Pen ch13のような真菌抗原;若しくは鶏卵白アレルゲンGal d1、Gal d2及びGal d3、ピーナツアレルゲンAra h2、大豆アレルゲンGly m1、Gly m5及びGly m6、魚アレルゲンGad c1又はエビアレルゲンPen a1のような食物アレルゲンから由来するエピトープである。]
[0037] 好ましい一実施態様においては、免疫調節複合体は、融合タンパク質CTA1−R7K−COL−DD(配列番号:3)であり、ここで、COLは、260〜273位のアミノ酸を含む、共有の免疫優性II型コラーゲンペプチド(CII260−273)(配列番号:4)である。]
[0038] 本発明は、疾患と関連する1種以上の自己抗原エピトープを含む、本発明の免疫調節複合体を患者に投与することを含む、多発性硬化症、リウマチ様関節炎、インシュリン依存性糖尿病、自己免疫性ブドウ膜炎、ベーチェット病、原発性胆汁性肝硬変、重症筋無力症、シェーグレン症候群、尋常性天疱瘡、強皮症、悪性貧血、全身性エリテマトーデス(SLE)及びグレーブス病のような自己免疫疾患の治療、予防及び/又は防止のための方法及び組成物を提供する。]
[0039] 特定の実施態様においては、本発明は、インシュリン依存性糖尿病(IDDM)と関連する1種以上の自己抗原エピトープを含む、本発明の免疫調節複合体を患者に投与することを含む、自己免疫疾患、IDDMの治療、予防及び/又は防止のための改善方法を提供する。ある実施態様においては、IDDMと関連する自己抗原エピトープは、プレプロインシュリン、プロインシュリン、インシュリン及びインシュリンB鎖;グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)−65及び−67;チロシンホスファターゼIA−2;膵島特異的グルコース−6−ホスファターゼ関連タンパク質(IGRP)及び膵島細胞抗原69kDからなる群から由来するエピトープである。]
[0040] 他の実施態様においては、本発明は、多発性硬化症(MS)と関連する1種以上の自己抗原エピトープを含む、本発明の免疫調節複合体を患者に投与することを含む、MSの治療、予防及び/又は防止のための改善方法を提供する。ある実施態様においては、自己抗原エピトープは、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、プレテオリピドタンパク質(PLP)、ミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質(MOBP)、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)及びミエリン関連糖タンパク質(MAG)からなる群から由来するエピトープである。]
[0041] 他の実施態様においては、本発明は、リウマチ様関節炎(RA)と関連する1種以上の自己抗原エピトープを含む、本発明の免疫調節複合体を患者に投与することを含む、RAの治療、予防及び/又は防止のための改善方法を提供する。ある実施態様においては、自己抗原エピトープは、I、II、III、IV、V、IX及びXI型コラーゲン、GP−39、フィラグリン及びフィブリンからなる群から由来するエピトープである。好ましい一実施態様においては、エピトープはII型コラーゲンに由来し、好ましくは、エピトープは、260〜273位のアミノ酸を含む、共有の免疫優性II型コラーゲンペプチド(CII260−273)である。]
[0042] 本発明の特に好ましい実施態様によれば、前記ペプチドは、単一、又は1個以上のDサブユニットのような複数コピーで、プロテインA又はその断片により構成されている。本発明の他の特に好ましい実施態様によれば、前記ペプチドは、抗原を提示し得る細胞上で発現する受容体と特異的に結合する、一本鎖抗体断片のような抗体断片により構成される。]
[0043] 異なる自己抗原エピトープを含む、複数の免疫調節複合体は混合物として投与することができ、それぞれ個々の免疫調節複合体は、複数の自己抗原エピトープを含んでいてもよい。同様に、異なるアレルギー性エピトープを含む複数の免疫調節複合体は混合物として投与することができ、それぞれ個々の免疫調節複合体は、複数のアレルギー誘発エピトープを含んでいてもよい。]
[0044] 特定の変形においては、自己免疫疾患又はアレルギー性疾患の治療、予防及び/又は防止のための方法及び組成物は、更に、他の薬剤、例えば、免疫調節配列を含むポリヌクレオチド、薬理作用のある物質、アジュバント、サイトカイン、サイトカインをコードするベクターと組み合わせて本発明の免疫調節複合体を投与することを含む。]
[0045] 本発明の更に他の実施態様は、本発明の免疫調節複合体を含む医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、アレルギー性疾患又は自己免疫疾患の予防、防止及び/又は治療に用いることができる。自己免疫疾患は、インシュリン依存性糖尿病、多発性硬化症、リウマチ様関節炎、自己免疫性ブドウ膜炎、原発性胆汁性肝硬変、重症筋無力症、シェーグレン症候群、尋常性天疱瘡、強皮症、悪性貧血、全身性エリテマトーデス及びグレーブス病からなる群から選択することができる。アレルギー性疾患は、アレルギー性ぜん息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性胞隔炎、アトピー性皮膚炎又は食物に対する過敏症からなる群から選択することができる。]
[0046] 本発明の更に他の実施態様は、自己免疫疾患又はアレルギー性疾患の予防、防止及び/又は治療のための医薬品の製造のための本発明の免疫調節複合体の使用を提供する。自己免疫疾患は、インシュリン依存性糖尿病、多発性硬化症、リウマチ様関節炎、自己免疫性ブドウ膜炎、原発性胆汁性肝硬変、重症筋無力症、シェーグレン症候群、尋常性天疱瘡、強皮症、悪性貧血、全身性エリテマトーデス及びグレーブス病からなる群から選択することができる。アレルギー性疾患は、アレルギー性ぜん息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性胞隔炎、アトピー性皮膚炎又は食物に対する過敏症からなる群から選択することができる。]
[0047] 更に他の実施態様においては、本発明は、本発明の免疫調節複合体をコードする分離核酸配列を提供する。従って、本発明は、細菌エンテロトキシンの変異サブユニット、特定の細胞受容体と結合し得るペプチド、及び自己免疫疾患又はアレルギー性疾患と関連する1種以上のエピトープを含む融合タンパク質である免疫調節複合体をコードする分離核酸配列を提供する。]
[0048] 一実施態様においては、本発明の核酸は、細菌エンテロトキシンのADP−リボシル化サブユニットの変異サブユニットを含む融合タンパク質をコードする。好ましくは、v−サブユニットは、コレラ毒素(CT)のA1サブユニット、E.coli非耐熱性エンテロトキシン(LT)のA1サブユニット、百日咳毒素(PTX)のS1サブユニット、並びにクロストリジウム、赤痢菌及びシュードモナス菌毒素のADP−リボシル化サブユニットから選択される。最も好ましくは、細菌エンテロトキシンのADP−リボシル化サブユニットは、コレラ毒素(CT)のA1サブユニット、E.coli非耐熱性エンテロトキシン(LT)のA1サブユニット、及び百日咳毒素(PTX)のS1サブユニットから選択される。細菌エンテロトキシンのADP−リボシル化サブユニットは、ADP−リボシル化サブユニットのADP−リボシル化活性が、対応する野生型のADP−リボシル化サブユニットのADP−リボシル化活性の10%未満、好ましくは、対応する野生型のADP−リボシル化サブユニットのADP−リボシル化活性の5%未満、更に好ましくは、対応する野生型のADP−リボシル化サブユニットのADP−リボシル化活性の1%未満であるように変異している。]
[0049] 一実施態様においては、本発明の核酸は、MHCクラスI又はMHCクラスII分子を特異的に発現する、抗原を提示し得る細胞上で発現する受容体に特異的に結合するペプチドを含む融合タンパク質をコードする。抗原提示細胞は、Bリンパ球のようなリンパ球、T細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、上皮細胞及び内皮細胞からなる群から選択することができる。]
[0050] 一実施態様においては、本発明の核酸は、インシュリン依存性糖尿病(IDDM)、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、又はリウマチ様関節炎(RA)又はシェーグレン症候群(SS)のような自己免疫疾患と関連する自己抗原エピトープを含む融合タンパク質をコードする。]
[0051] 他の実施態様においては、本発明の核酸は、アレルギー性ぜん息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性胞隔炎、アトピー性皮膚炎又は食物に対する過敏症のようなアレルギー性疾患と関連するアレルギー性エピトープを含む融合タンパク質をコードする。]
[0052] ある実施態様においては、IDDMと関連する自己抗原エピトープは、プレプロインシュリン、プロインシュリン、インシュリン及びインシュリンB鎖;グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)−65及び−67;チロシンホスファターゼIA−2;膵島特異的グルコース−6−ホスファターゼ関連タンパク質(IGRP)及び膵島細胞抗原69kDからなる群から由来するエピトープである。ある実施態様においては、MSと関連する自己抗原エピトープは、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、プレテオリピドタンパク質(PLP)、ミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質(MOBP)、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)及びミエリン関連糖タンパク質(MAG)からなる群から由来するエピトープである。ある実施態様においては、RAと関連する自己抗原エピトープは、I、II、III、IV、V、IX及びXI型コラーゲン、GP−39、フィラグリン及びフィブリンからなる群から由来するエピトープである。ある実施態様においては、SSと関連する自己抗原エピトープは、熱ショックタンパク質HSP60、フォドリン、Ro(又はSSA)及びLa(又はSSP)リボ核タンパク質からなる群から由来する。]
[0053] 本発明の核酸はDNA又はRNAであり得る。]
[0054] 他の実施態様においては、本発明は、本発明の核酸を含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、アレルギー性疾患又は自己免疫疾患の予防、防止及び/又は治療に用いることができる。更に、本発明は、本発明の核酸の有効量を患者に投与することを含む、患者における自己免疫疾患又はアレルギー性疾患の予防、防止及び/又は治療方法を提供する。]
[0055] 更に他の実施態様においては、本発明は、本発明の核酸を含む組換えプラスミド、ベクター及び発現系を提供する。組換え型発現系は、好ましくは細菌の発現に適用される。本発明は、更に、本発明のプラスミド、ベクター又は発現系を含む形質転換細胞を提供する。形質転換細胞は、好ましくは形質転換細菌細胞である。]
[0056] 定義
特に定義しない限り、本明細書で用いられる、全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者により普通に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で用いられる場合、以下の用語及び表現は特に記載しない限り下記のものとみなす。]
[0057] 「ポリヌクレオチド」及び「核酸」なる用語は、ホスホジエステル結合により結合する複数のヌクレオチド単位(リボヌクレオチド、又はデオキシリボヌクレオチド又は関連する構造変異体)からなるポリマーを意味する。ポリヌクレオチド又は核酸は、実質的に任意の長さであってもよく、通常は約6ヌクレオチド〜109ヌクレオチド又はそれ以上の長さであってもよい。ポリヌクレオチド及び核酸には、RNA、DNA、合成型及び混合ポリマー、センス及びアンチセンス鎖の両方、二本鎖及び一本鎖が含まれ、当業者に容易に認識されるように、化学的又は生化学的に修飾されてもよく、非天然又は誘導体化されたヌクレオチド塩基を含んでいてもよい。]
[0058] 本明細書で用いられる場合、「抗原」は、B細胞又はT細胞又は両者により、免疫系により認識され得るあらゆる分子を意味する。]
[0059] 本明細書で用いられる場合、「自己抗原」は、病原性免疫反応を誘発する内因性分子、通常は、多糖類又はタンパク質若しくはそれらの断片を意味する。自己抗原には、シトルリン化ペプチドを含む、他の形態の翻訳後修飾を含む、グリコシル化タンパク質及びペプチド、並びにタンパク質及びペプチドが含まれる。「自己免疫疾患に関連する」ような自己抗原又はそのエピトープを意味する場合、病態生理学を誘導し(すなわち、疾患の原因と関連する)、又は病態生理学的過程を媒介又は促進することにより;及び/又は病態生理学的過程の標的となることにより、自己抗原又はエピトープが疾患の病態生理に関与することを意味することが理解される。例えば、自己免疫疾患においては、免疫系は異常に自己抗原を標的とし、自己抗原が発現し、及び/又は存在する細胞及び組織の損傷および機能障害を起こす。正常な生理的条件下では、自己抗原は、「免疫寛容」と命名される工程により自己抗原を認識する能力を有する免疫細胞の排除、不活性化又は活性の欠失を通して宿主免疫系により無視される。]
[0060] 本明細書で用いられる場合、「アレルゲン」は、病原性免疫反応を誘発する外因性分子、通常は、多糖類又はタンパク質若しくはそれらの断片を意味する。アレルゲンには、他の形態の翻訳後修飾を含む、グリコシル化タンパク質及びペプチド、並びにタンパク質及びペプチドが含まれる。アレルゲンは、例えば、花粉、真菌、昆虫毒、ふけ、カビ、食品に由来する。ピーナッツのAra h1、Ara h2、Ara h3及びAra h6;鶏卵白のGal d1、Gal d2及びGal d3;大豆のGly m1;魚のGad c1;及びエビのPen a1のような多くの食物アレルゲンが精製され、十分に特徴づけられている。多くのネコ(Fel d1)及びイヌ(Can f1)アレルゲン、並びにイエダニアレルゲンDer f1及びDer p1が十分に特徴づけられている。野生型のオオアワガエリの花粉nPh1 p4、並びに多くの関連組換え型アレルゲン、rPh1 1p、rPh1 2p、rPh1 5p、rPh1 6p、rPh1 7p、rPh1 11p、rPh1 12p、主要なカバの木の花粉のアレルゲンBet v1、主要なオオバコの花粉のアレルゲンPla I1、主要なオリーブの花粉のアレルゲンOle e1、主要なブタクサの花粉のアレルゲンAmb a1、主要なヨモギの花粉のアレルゲンArt v1及びArt v3が十分に定義されている。]
[0061] 本明細書で用いられる場合、「エピトープ」なる用語は、動物の免疫系のB−細胞又はT細胞のいずれかにより認識される特定の形状又は構造を有すると理解される。ピオトープは糖化ペプチドのような多糖類又はポリペプチドの一部を含む。]
[0062] 「自己抗原エピトープ」は、病原性免疫反応を誘発する自己抗原のエピトープを意味する。]
[0063] 「アレルギー誘発エピトープ」は、病原性免疫反応を誘発するアレルゲンのエピトープを意味する。]
[0064] 「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」なる用語は、アミノ酸残基のポリマーを意味するために本明細書において置換可能に用いられる。この用語は、1種以上のアミノ酸残基が、対応する天然のアミノ酸の人工的な化学的模倣物、並びに天然のアミノ酸ポリマー及び非天然のアミノ酸ポリマーである、アミノ酸のポリマーに適用される。]
[0065] 「自己タンパク質」、「自己ポリペプチド」又は「自己ペプチド」は本明細書において置換可能に用いられ、動物のゲノム内にコードされ;動物内で産生又は生成され;動物の一生の間のいずれかの時に後翻訳的に修飾され、動物内で非生理的に存在する、あらゆるタンパク質自己ポリペプチド又はペプチド又は断片、若しくはそれらの誘導体を意味する。本発明の自己タンパク質、自己ポリペプチド又は自己ペプチドを記載するために用いられる「非生理的」又は「非生理的に」なる用語は自己タンパク質、自己ポリペプチド又は自己ペプチドについての動物における正常な役割又は過程からの離脱又は逸脱を意味する。「疾患と関連する」又は「疾患に関与する」ような自己タンパク質、自己ポリペプチド又は自己ペプチドを意味する場合、自己タンパク質、自己ポリペプチド又は自己ペプチドが形状又は構造において修飾されていてもよく、その結果、生理的役割又は過程を実施することができず、又は病態生理を誘発し、病態生理過程を媒介又は促進することにより、及び/又は病態生理的過程の標的であることにより病状又は疾患の病態生理に関与することを意味することが理解される。例えば、自己免疫疾患において、免疫系は自己タンパク質が発現及び/又は存在する細胞及び組織の損傷及び機能障害を引き起こす自己タンパク質を異常に攻撃する。また自己タンパク質、自己ポリペプチド又は自己ペプチドは、非生理的レベルにおいて、それ自体で発現することができ、非生理的に機能し得る。例えば、神経変性疾患においては、自己タンパク質は異常に発現し、脳内の損傷において凝集し、その結果、神経機能障害を起こす。他のケースにおいては自己タンパク質は、消耗でない病状又は過程を悪化させる。例えば、変形性関節症においては、コラゲナーゼ及びマトリクスメタロプロテイナーゼは、関節の関節面を覆う軟骨を異常に分解する。自己タンパク質、自己ポリペプチド又は自己ペプチドの翻訳後修飾の具体例は、グリコシル化、脂質基の付加、可逆的リン酸化、ジメチルアルギニン残基の付加、シトルリン化及びタンパク質分解であり、特には、ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD)によるフィラグリン及びフィブリンのシトルリン化、α−β−クリスタリンリン酸化、MBPのシトルリン化、並びにキャスパーゼ及びグランザイムによるSLE自己抗原タンパク質分解である。免疫学的には、自己タンパク質、自己ポリペプチド又は自己ペプチドは、全て宿主の自己抗原であると考えられ、正常な生理的条件下では、「免疫慣用」と命名された過程を通して自己抗原を認識する能力を有する免疫細胞の活性の排除、不活性化又は欠失を通した宿主の免疫系により無視される。自己タンパク質、自己ポリペプチド又は自己ペプチドは、免疫機能を制御するための免疫系の細胞により生理的排他的に発現する分子である免疫タンパク質自己ポリペプチド又はペプチドを含まない。免疫系は、動物界に存在する無数の潜在的に病原性の微生物に対する、迅速で非常に特異的で保護的な反応を引き起こす手段を提供する防御メカニズムである。免疫タンパク質自己ポリペプチド又はペプチドの具体例は、T細胞受容外、免疫グロブリン、1型インターロイキンを含むサイトカイン、インターフェロン及びIL−10を含む2型サイトカイン、TNF、リンホトキシン、並びにマクロファージ炎症性タンパク質−1アルファ及びベータ、単球走化性タンパク質及びRANTESのようなケモカイン、並びにFas−リガンドのような免疫機能に直接関与する他の分子を含むタンパク質である。本発明の自己タンパク質、自己ポリペプチド又は自己ペプチドに含まれる、特定の免疫タンパク質自己ポリペプチド又はペプチドがあり、それらは、クラスIMHC膜糖タンパク質、クラスII MHC糖タンパク質及びオステオポンチンである。自己タンパク質、自己ポリペプチド又は自己ペプチドは、代謝性又は機能障害を引き起こす遺伝的又は後天性の欠損症のために、患者に完全又は実質的に存在しないタンパク質自己ポリペプチド及びペプチドを含まず、前記タンパク質自己ポリペプチド又はペプチドを投与するか、又は前記タンパク質自己ポリペプチド又はペプチドをコードするポリヌクレオチドを投与するかのいずれかにより置換される(遺伝子治療)。このような障害の具体例には、デュシェーヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、嚢胞性線維症、フェニルケトン尿症、ガラクトース血症、メープルシロップ尿症及びホモシスチン尿症が含まれる。]
[0066] 本明細書で用いられる場合、「調節」、「調節する」又は「免疫反応を変化させる」は、自己免疫又はアレルギー誘発性エピトープには、例えば、免疫調節複合体、又は免疫複合体をコードするポリヌクレオチドの投与の結果として生じる、核酸、脂質、リン脂質、炭水化物、自己自己ポリペプチド、タンパク質複合体、又はリボ核タンパク質複合体が含まれる。このような調節には、免疫反応に関与し、又は関与し得る、あらゆる免疫細胞の存在、能力又は機能の任意の変化が含まれる。免疫細胞には、B細胞、T細胞、NK細胞、NKT細胞、プロフェッショナル抗原提示細胞、非プロフェッショナル抗原提示細胞、炎症性細胞、又は免疫反応に関与し、若しくは影響し得る任意の他の細胞が含まれる。「調節」には、存在する免疫反応、発現する免疫反応、潜在的な免疫反応に与えられる、又は免疫反応を誘導し、調節し、影響を及ぼし又は応答する能力の任意の変化が含まれる。調節には、免疫反応の一部として免疫細胞内の遺伝子、タンパク質及び/又は他の分子の発現及び/又は機能における任意の変化が含まれる。]
[0067] 「免疫反応の調節」には、例えば、以下の:免疫細胞の排除、欠失又は隔離;自己反応性リンパ球、抗原提示細胞又は炎症細胞のような他の細胞の機能的能力を調節し得る免疫細胞の生成又は誘発;免疫細胞における反応しない状態の誘発(すなわち、アネルギー);免疫細胞の活性又は機能、若しくはそのようにする能力(これらの細胞により発現するタンパク質のパターンの変化を含むが、これに限定されない)の増大、低下又は変化が含まれる。具体例には、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、転写因子、キナーゼ、副刺激因子又は他の細胞用面受容体、若しくはこれらの調節事象の任意の組み合わせのような、特定のクラスの分子の産生及び/又は分泌の変化が含まれる。]
[0068] 例えば、免疫調節複合体、又は免疫調節複合体をコードするポリヌクレオチドは、所望でない免疫反応を媒介するか、又は媒介し得る免疫細胞を排除、隔離又は不活性化し;防御免疫反応を媒介するか、又は媒介し得る免疫細胞を誘発、生成又は刺激し;免疫細胞の物理的又は機能特性を変化し;若しくはこれらの効果の組み合わせを実施することにより、免疫反応を調節することができる。免疫反応の調節の測定の具体例には、免疫細胞集団の存在又は非存在の検査(フローサイトメトリー、免疫組織化学、組織学、電子顕微鏡、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いる);シグナルに対する反応において増殖又は分裂する能力又は抵抗力を含む、免疫細胞の機能的能力の測定(抗−CD3抗体、抗−T細胞受容体抗体、抗−CD28抗体、カルシウムイオノフォア、PMA自己ペプチド又はタンパク質抗原に保持した抗原提示細胞;B細胞増殖アッセイを用いるような);他の細胞を死滅又は溶解する能力の測定(細胞毒性T細胞アッセイ等);サイトカイン、ケモカイン、細胞表面分子、抗体及び他の細胞の産物の測定(例えば、フローサイトメトリー、酵素免疫測定法(ELISA)、ウェスタンブロット解析、タンパク質マイクロアレイ解析による);免疫細胞中の免疫細胞又はシグナル経路の活性化の生化学的マーカーの測定(例えば、チロシン、セリン又はスレオニンのリン酸化、若しくはポリペプチド開裂のウェスタンブロット及び免疫沈降解析、及びタンパク質複合体の生成・解離;タンパク質アレイ解析;DNA転写、DNAアレイを用いた増殖又はサブトラクティブハイブリダイゼーション);アポトーシス、壊死又は他のメカニズム(例えば、アネクシンV染色、TUNELアッセイ、DNAラダーを測定するためのゲル電気泳動、組織学;蛍光性キャスパーゼアッセイ、キャスパーゼ基質のウェスタンブロット解析)による細胞死の測定;遺伝子、タンパク質及び免疫細胞により産生される他の分子の測定(例えば、ノーザンブロット解析、ポリメラーゼ連鎖反応、DNAマイクロアレイ、タンパク質マイクロアレイ、2−次元電気泳動、ウェスタンブロット解析、酵素免疫測定法、フローサイトメトリー);並びに、例えば、多発性硬化症の場合には、疾病重症度または再発率を測定し(当業者に高知の臨床スコアを用いて)、1型糖尿病の場合には血中グルコースを測定し、リウマチ様関節炎の場合には関節炎症による自己タンパク質又は自己ポリペプチドに関与する自己免疫、神経変性又は他の疾患の改善のような臨床症状又は転帰の測定(臨床スコア追加治療の使用の要求、機能状態、画像研究)が含まれるが、これらに限定されない。]
[0069] 「患者」は、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ウシ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット又はウサギのような動物を意味する。]
[0070] 疾患又は障害を「治療する」、「治療」又は「治療法」は、免疫調節複合体又は免疫調節複合体をコードするポリヌクレオチドを、単独で又は本明細書に開示される他の化合物と併用して投与することにより、臨床上又は診断上のいずれかの症状の減少、停止又は消失により証明されるように、疾患の進行を遅くし、停止し、又は回復することを意味する。「治療する」、「治療」又は「治療法」は、急性又は慢性の疾患又は障害における症状の重症度の減少、例えば、自己免疫疾患の経過の再発又は寛解の場合に再発率を低下し、自己免疫疾患の症状の場合に炎症を減少させることを意味する。好ましい実施態様においては、疾患の治療は、疾患の進行を回復し、停止し、又は軽減し、理想的には疾患自体を排除する点である。本明細書で用いられる場合、疾患の寛解と疾患の治療とは同等である。]
[0071] 本発明との関連で用いられるように、疾患又は障害を「予防する」、「予防」又は「防止」は、免疫調節複合体又は免疫調節複合体をコードするポリヌクレオチドを、単独で又は本明細書に開示される他の化合物と併用して投与し、疾患若しくは障害、又は疾患若しくは障害の一部又は全ての症状の発生又は発症を防止し、疾患又は障害の発症の可能性を少なくすることを意味する。]
[0072] 免疫調節複合体の「治療的又は予防的有効量」は、例えば、疾患の症状及び/又は原因を改善することにより、疾患を治療又は予防するのに十分な免疫調節複合体の量を意味する。例えば、治療的有効量は広い範囲に含まれ、臨床試験により決定され、特定の患者については、例えば、疾患の重症度、患者の体重、年齢及び他の因子を含む当業者に公知の因子に基づいて決定される。]
[0073] (図1)
免疫調節複合体CTA1−R7K−COL−DDをコードするDNA構築物
pCTA1−DDプラスミドは、trpプロモータの制御下に、HindIII−BamHIにクローニングされるコレラ毒素A1遺伝子(aa1−194)、及びブドウ球菌プロテインAからの2個のDフラグメントを含む。CTA1及びDDフラグメントの間にコラーゲンペプチドを挿入し、pCTA1−COL−DDを得る。インビトロ突然変異誘発によりR7K変異を構築し、pCTA1−R7K−COL−DDを得る。Ptr=trpプロモータ。COL=コラーゲンペプチド、D=ブドウ球菌(S.aureus)プロテインAからのIg−結合成分。] 図1
[0074] (図2)
ADPリボシルトランスフェラーゼ活性
CT、CTA1−DD及びCTA1−R7K−COL−DDのADPリボシルトランスフェラーゼ活性を、[U−14C]アデニンの取り込みによるADPリボシルアグマチンの生成についてアッセイした。値は平均cpmを表す。] 図2
[0075] (図3)
IgG結合
固相上において、CTA1−R7K−COL−DDのヒトIgG1に結合する能力をELISAにより測定した。すなわち、96ウェルのプレートを、PBS中10μg/mLで、室温で一晩コーティングし、次いで、洗浄し、5%BSA/PBSでブロックした。連続希釈したCTA1−R7K−COL−DDを、対応するサブウェル内でインキュベートした。2時間後、ウェルを広範囲に洗浄し、1/100に希釈した、ホスファターゼ標識したウサギ抗−マウスIgGを各ウェルに加えた。基質を加え、CTA1−R7K−COL−DDのヒトIgG1への結合を酵素反応により検出し、分光光度計を用いて450nmにおけるODとして評価した。] 図3
[0076] (図4)
不活性又は活性CTA1−COL−DDアジュバントを用いた鼻腔内投与
DBA/1マウスに、5μgのCTA1−COL−DD又はCTA1−R7K−COL−DDを鼻腔内投与した。コントロールのマウスにはPBSを投与した。1週間後、腹腔注射によりRibi−アジュバント中のコラーゲンタンパク質を全てのマウスに抗原投与した。鼻腔内投与の16日後にマウスを犠牲にし、インビトロにおけるリコール抗原に対して反応するコラーゲン特異的T細胞のレベルを評価した。培養72時間後の増殖を評価し、ウェルあたりの組み込まれた[3H]TcRの取り込みのレベルとして測定した。データを、平均c.p.m±SDとして表した。グループあたり5頭のマウスを用いた3回の実験からの代表的な結果。] 図4
[0077] (図5)
不活性及び活性CTA1−COL−DDアジュバントを用いた鼻腔内投与
DBA/1マウスに、5μgのCTA1−COL−DD又はCTA1−R7K−COL−DDを鼻腔内投与した。コントロールのマウスにはPBSを投与した。1週間後、腹腔注射によりRibi−アジュバント中のコラーゲンを全てのマウスに抗原投与し、次いで、更に8日後、リコール抗原に対するコラーゲン特異的T細胞のレベルをインビトロで評価した。培養上清中の96時間刺激した細胞からのサイトカイン(IFN−γ)産生を測定し、未処理のマウスからの細胞を用いた培養物からのバックグラウンドレベルを上回る、ng/mL±SDで表した平均のサイトカイン濃度として表した。グループあたり5頭のマウスを用いた3回の実験からの代表的な結果。] 図5
[0078] (図6)
流入領域リンパ節における局所寛容の誘発
DBA/1受容体に、PBS、又は5μgのCTA1−COL−DD若しくはCTA1−R7K−COL−DDを投与した。1週間後、腹腔注射により、Ribi−アジュバント中のコラーゲンを用いて全てのマウスを免疫した。鼻腔内投与の16日後にマウスを犠牲にし、頸部リンパ節中のT細胞増殖を測定した。培養72時間に増殖反応を記録し、[3H]TcRの取り込みにより評価し、c.p.m±SDとして与えた。グループあたり5頭のマウスを用いた3回の実験の1つの代表的な実験。] 図6
[0079] (図7)
抗−II型コラーゲン抗体産生の阻害
DBA/1受容体に、PBS、又は5μgのCTA1−COL−DD若しくはCTA1−R7K−COL−DDを投与した。1週間後、腹腔注射により、Ribi−アジュバント中のコラーゲンを用いて全てのマウスに抗原投与した。コラーゲン特異的な全IgG及びIgAの力価をELISAにより測定した。A)IgAの力価。B)IgGの力価。結果は、グループあたり5頭の動物を用いた3回の実験の代表例であり、値は、log10の力価±s.e.mとして表わす。]
[0080] (図8)
CTA1−R7K−COL−DDを用いた粘膜処理
コラーゲン誘導関節炎(CIA)の誘導のために、完全フロイントアジュバントで乳化したラットII型コラーゲン(CII)をマウスの尾に注射した。21日後、不完全フロイントアジュバントで乳化したCIIを、関節内の疾患を誘発するための追加免疫として尾に注射した。マウスを、予防的並びに治療的に鼻腔内処理し、関節組織障害及び破壊の程度を記録し、以下の疾患の誘発を42日目に評価した。コラーゲン免疫の前後に3日間連続し、マウスをPBS、CTA1−R7K−DD又はCTA1−R7K−COL−DDで鼻腔内処理した。A)経時的な関節炎の頻度。B)45日における関節炎の頻度。C)45日目における関節炎スコア。]
[0081] (図9)
組織学的レベルでの関節におけるCTA1−R7K−COL−DDの影響
CIAコントロール(A)(PBS)及びCTA1−R7K−COL−DD(B)処理したマウスの関節を除去し、ホルマリン中に固定し、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。CIA関節の1つの低い出力及び1つの高い出力のイメージが示され、細胞の浸潤及び軟骨/骨の破壊が明らかに見える。]
[0082] (図10)
DBA/1マウスの粘膜CTA1−R7K−COL−DD処理後の組織学的変化
CIAコントロール(A)(PBS)及びCTA1−R7K−COL−DD(B)処理したマウス。関節を除去し、ホルマリン中に固定し、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。組織学的顕微鏡写真は、2人の別々の研究者により知らない状態で記録され、平均的なグレードの結果が得られる。] 図10
[0083] (図11)
CTA1R7K−COL−DD処理したCIAマウスにおけるIL−10の大いな増大及びIL−6産生の減少
未処理(PBS)(白色四角)CIAマウスあるいは5μgのCTA1R7K−DD(灰色四角)又はCTA1R7K−COL−DD(黒色四角)で処理されたマウスを犠牲にして血清を集め、IL−10(A)及びIL−6(B)の濃度について分析した。サイトカインレベルは、グループあたり10〜12頭のマウスの平均pg/mL±SDで表した。これは、同じ結果を与える2つの実験の代表の1つである。P−値は、未処理コントロールCIAマウスにおける結果と有意に匹敵することを示す。]
[0084] (図12)
制御性T細胞及びIL−10に対する、CII−特異的CD4 T細胞応答の歪み(skewing)
未処理(PBS)(白色四角)CIAマウス、5μgのCTA1R7K−DD(灰色四角)又はCTA1R7K−COL−DD(黒色四角)で処理されたマウスから、膵臓リンパ球を分離し、リコールCOL自己ペプチドの存在下又は非存在下、インビトロで活性化した。96時間後に上清を集め、IL−10(A)及びIL−6(B)の含有量について分析した。値は、各実験において、10〜12頭のマウスのグループについて、平均pg/mL±SDとして表わす。結果は、同じ結果を与える、2つの独立の実験の平均である。]
図面の簡単な説明

[0085] 免疫調節複合体CTA1−R7K−COL−DDをコードするDNA構築物
ADPリボシルトランスフェラーゼ活性
IgG結合
不活性又は活性CTA1−COL−DDアジュバントを用いた鼻腔内投与
不活性及び活性CTA1−COL−DDアジュバントを用いた鼻腔内投与
流入領域リンパ節における局所寛容の誘発
抗−II型コラーゲン抗体産生の阻害
CTA1−R7K−COL−DDを用いた粘膜処理
組織学的レベルでの関節におけるCTA1−R7K−COL−DDの影響
組織学的レベルでの関節におけるCTA1−R7K−COL−DDの影響
CTA1R7K−COL−DD処理したCIAマウスにおけるIL−10の大いな増大及びIL−6産生の減少
制御性T細胞及びIL−10に対する、CII−特異的CD4 T細胞応答の歪み(skewing)]
[0086] 本発明は、患者内に存在し、非生理学的状態に関与する1種以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド又は自己ペプチドと関連する疾患の、患者内での予防、防止及び/又は治療のための方法及び組成物に関する。本発明は、特に、多発性硬化症、リウマチ様関節炎、インシュリン依存性糖尿病、自己免疫性ブドウ膜炎、原発性胆汁性肝硬変、重症筋無力症、シェーグレン症候群、尋常性天疱瘡、強皮症、悪性貧血、全身性エリテマトーデス及びグレーブス病のような、非生理学的状態における患者内に存在する1種以上の自己ポリペプチドと関連する自己免疫疾患の予防、防止及び/又は治療のための方法及び組成物に関する。本発明は、前記疾患と関連する1種以上の自己抗原エピトープを含む免疫調節複合体を患者に投与することを含む、自己免疫疾患の改善された予防、防止及び/又は治療方法を提供する。1種以上の自己抗原エピトープを含む免疫調節複合体の治療的又は予防的有効量の患者への投与は、自己免疫疾患と関連する自己抗原に対する免疫反応の抑制を誘発し、その結果、前記疾患の治療を誘発する。]
[0087] 自己免疫疾患
自己抗原と関連する自己免疫疾患の具体例を表1に示し、特定の具体例を本明細書において以下に更に詳細に説明する。
具体的な自己免疫疾患及び関連自己抗原]
[0088] ]
[0089] リウマチ様関節炎
リウマチ様関節炎(RA)は、世界の人口の0.8%に影響を及ぼす、慢性の自己免疫性滑膜炎である。リウマチ様関節炎は、浸食性の破壊を起こす慢性の炎症性滑膜炎によって特徴づけられる。RAは、T細胞、B細胞及びマクロファージにより介在される。]
[0090] T細胞がRAにおいて重大な役割を担っているという証拠には、(1)滑膜に浸透するCD4+T細胞の支配、(2)シクロスポリンのような薬剤を用いて機能するT細胞の抑制と関連する臨床改善、及び(3)特定のHLA−DR対立遺伝子とRAとの関連性が含まれる。RAと関連するHLA−DR対立遺伝子は自己ペプチド結合及びT細胞への提示に関与する、β鎖の第三の超可変領域内の67〜74位と同じアミノ酸配列を含む。RAは、自己タンパク質又は修飾自己タンパク質を認識し、滑膜関節内に存在する自己反応性T細胞により介在される。RAにおいて標的とされる自己抗原には、例えば、II型コラーゲン由来のエピトープ;hnRNP;A2/RA33;Sa;フィラグリン、ケラチン、シトルリン;gp39を含む軟骨タンパク質、I5、III、IV、V、IX、XI型コラーゲン;HSP−65/60;IgM(リウマチ因子);RNAポリメラーゼ;hnRNP−B1;hnRNP−D;カルジオリピン;アルドラーゼA;シトルリン−修飾フィラグリン及びフィブリンが含まれる。修飾アルギニン残基を含むフィラグリンペプチドを認識する自己抗体(脱イミン化してシトルリンを生成)は、高比率のRA患者の血清内で特定された。自己反応性T及びB細胞応答は、いずれも複数の患者において、同じ免疫優勢II型コラーゲン(CII)ペプチド257−270に対して配向する。]
[0091] 多発性硬化症
多発性硬化症(MS)は、最も一般的なCNSの脱髄性疾患であり、350,000人のアメリカ人及び世界の百万人の人に影響を及ぼしている。症状の発症は、通常20〜40歳で発生し、片側の視力障害、筋力低下、知覚異常、運動失調、めまい、尿失禁、構音障害又は精神障害(頻度の減少する順に)の急性又は亜急性の発作として現れる。これらの症状は、遅い軸索伝導によるネガティブな伝導異常性、及び異所性刺激の生成によるポジティブな伝導異常性(例えば、レルミット症候群)の両方を起こす脱髄の局所性病変に由来する。MSの診断は、時間により異なり、神経機能障害の客観的な臨床上の証拠をもたらし、CNS白質の別個の領域に関与する、神経機能障害の少なくとも2種の異なる発作を含む病歴を基準とする。研究室の研究は、CNS白質損傷の磁気共鳴画像(MRI)、脳脊髄液(CSF)、IgGのオリゴクローナルな結合、及び異常な誘発応答を含む、MSの診断を指示する、追加の客観的証拠を提供する。多くの患者は、徐々に進行する再発寛解型の疾患の経過を経験するが、MSの臨床経過は個人の間で非常に変化し、劇症の慢性の進行性疾患に対して生涯にわたり、さまざまな穏やかないくつかの発作に限定される範囲であり得る。IFN−ガンマを分泌する能力を備えるミエリン−自己反応性T細胞の定量的増加は、MS及びEAFの原因と関連する。]
[0092] 多発性硬化症及び実験的自己免疫性脳脊髄炎のような自己免疫脱髄疾患自己免疫反応の自己抗原標的は、プロテオリピドタンパク質(PLP);ミエリン塩基性タンパク質(MBP);ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG);サイクリックヌクレオチドホスホジエステラーゼ(CNPアーゼ);ミエリン関連糖タンパク質(MAG)5及びミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質(MBOP);アルファ−B−クリスタリン(熱ショックタンパク質);ウイルス及び細菌、例えば、インフルエンザ、ヘルペスウイルス、B型肝炎ウイルス等の模倣ペプチド;OSP(オリゴデンドロサイト特異的タンパク質);シトルリン修飾MBP(6個のアルギニンがシトルリンに脱イミノ化されている、MBPのC8イソ型)等を含んでいてもよい。内在性膜タンパク質PLPは、ミエリンの優性な自己抗原である。PLPの抗原性の抗原決定基はいくつかのマウスの株において確認され、残基139451、103−116、215−232、43−64及び178−191を含む。少なくとも26種のMBPエピトープが報告されている(Meinl et al,J Clin Invest 92, 2633−43,1993)。注目に値すべきは、残基1−11、59−76及び87−99である。いくつかのマウスで確認された免疫優性MOGエピトープは、残基1−22、35−55、64−96を含む。]
[0093] ヒトのMS患者においては、以下のミエリンタンパク質及びエピトープが、自己免疫T及びB細胞反応の標的として特定された。MSの脳プラークから溶出する抗体は、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)ペプチド83−97を認識した(Wucherpfennig et al.J Clin Invest 100:1114−1122,1997)。他の研究は、MS患者の約50%がミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)に対する末梢血リンパ球(PBL)T細胞の反応性を(6〜10%コントロール)、20%がMBPに対する反応性を(8〜12%コントロール);8%がPLPに対する反応性を(0%コントロール)、0%がMAGに対する反応する(0%コントロール)ことを見出した。この研究においては、10名のMOG反応性患者のうち7名が、MOG1−22、MOG34−56、MOG64−96を含む3種のペプチドエピトープのうちの1種に焦点を合わせたT細胞増殖反応を有していた(Kerlero de Rosbo et al.Eur J Immunol 27:3059−69,1997)。T及びB細胞(脳障害溶出Ab)は、MBP87−99に焦点を合わせて反応する(Oksenberg et al.Nature 362:68−70,1993)。MBP87−99においては、アミノ酸モチーフHFFKが、T及びB細胞両方の反応の主要な標的である(Wucherpfennig et al.J Clin Invest 100:1114−22,1997)。他の研究は、残基MOBP21−39及びMOBP37−60を含む、ミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質(MOBP)に対するリンパ球反応を観察した(Holz et al.J Immunol 164:1103−9,2000)。
MSを染色し、脳を制御するためのMOG及びMBPペプチドの免疫金複合体を用いて、MBP及びMOGの両ペプチドは、MSプラーク結合Absにより認識された(Genain and Hauser,Methods10:420−34,1996)。]
[0094] インシュリン依存性糖尿病
ヒトI型又はインシュリン依存性糖尿病(IDDM)は、ランゲルハンス細胞の膵臓組織内のβ細胞の自己免疫破壊により特徴づけられる。β細胞の消耗は、血中グルコースレベルを制御の不能をもたらす。顕性糖尿病は、血中グルコース濃度が特定のレベル、通常は約250mg/dLを超えて上昇した場合に発生する。ヒトにおいては、長い発症前期間が糖尿病の発症に先行する。この期間に、膵臓ベータ細胞機能が徐々に失われる。疾患の発生は、インシュリン、グルタミン酸デカルボキシラーゼ及びチロシンホスファターゼIA2(IA2)に対する自己抗体の存在と関連している。]
[0095] 発症前状態の間に評価され得るマーカーは、膵臓中の膵島炎の存在、島細胞抗体のレベル及び頻度、島細胞表面抗体、膵臓ベータ細胞上のクラスIIMHC分子の異常な発現、血中グルコース濃度及びインシュリンの血漿濃度である。膵臓中のTリンパ球数、島細胞抗体の増加及び血中グルコースの上昇は、インシュリン濃度の低下のように、前記疾患を示す。]
[0096] 非肥満性糖尿病(NOD)マウスは、ヒトIDDMと同様に、多くの臨床的、免疫学的及び組織病理的特徴を備える動物モデルである。NODマウスは、島の炎症及びベータ細胞の破壊を自然に発生し、高血糖及び顕性糖尿病を誘発する。糖尿病が発症するにはCD4+及びCD8+T細胞が必要であるが、それぞれの役割は不明瞭なままである。NODマウスを寛容化する条件下における、タンパク質としてインシュリン又はGAD5の投与は疾患を予防し、他の自己抗原に対する応答を下方制御する。]
[0097] 血清中で種々の特異性を有する自己抗体との組み合わせの存在は非常に感受性であり、ヒトのI型糖尿病に特異的である。例えば、GAD及び/又はIA−2に対する抗体の存在は、コントロール血清由来のI型糖尿病を特定するのに98%感受性であり、制御された血清からのI型糖尿病の特定に99%特異的である。糖尿病でない、1型糖尿病患者の一等親血縁者においては、GAD、インシュリン及びIA−2を含む3種の自己抗原のうちの2種についての抗体特異性の存在は、5年以内のIDMの発現について90%を超える陽性予測値を示唆する。]
[0098] ヒトにおいてインシュリン依存性糖尿病を標的とする抗原には、例えば、チロシンホスファターゼIA−2;IA−2[ベータ];65kDa及び67kDaの両方の形態のグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD);カルボキシペプチダーゼH;インシュリン、熱ショックタンパク質(HSP);グリマ38;島細胞抗原69KDa(ICA69);p52;2種のガングリオシド抗原(GT3及びGM2−1);島細胞特異的グルコース−6−ホスファターゼ関連タンパク質(IGRP);及び島細胞グルコーストランスポーター(GLUT2)が含まれる。]
[0099] ヒトIDDMは、現在、組換え型インシュリンのガイドインジェクション又はポンプをベースとする送達に対する血中グルコース濃度を観察することによって処理されている。適切な血中グルコース制御を達成するために食事及び運動療法が寄与する。]
[0100] 自己免疫性ブドウ膜炎
自己免疫性ブドウ膜炎は、米国において400,000人の人々が影響され、1年に43,000人の新規なケースが発生すると推定される目のT細胞媒介性自己免疫疾患である。自己免疫性ブドウ膜炎は、現在、ステロイド、メトトレキサート及びシクロスポリンのような免疫抑制剤、静脈への免疫グロブリン及びTNFα−アンタゴニストで治療されている。]
[0101] 実験的自己免疫性ブドウ膜炎(EAU)は、神経網膜、ブドウ膜及び目の中の関連組織を標的とする疾患である。EAUは、ヒトの自己免疫性ブドウ膜炎と、多くの臨床的及び免疫学的特徴を共有し、完全フロイントアジュバント(CFA)中で乳化したブドウ膜炎誘発性ペプチドの末梢投与により誘発される。]
[0102] ヒトの自己免疫性ブドウ膜炎における自己免疫反応に標的とされる自己抗原には、S−抗原、光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)、ロドプシン及びレコベリンが含まれる。]
[0103] 原発性胆汁性肝硬変
原発性胆汁性肝硬変(PBC)は、主に40〜60歳の女性に影響を及ぼす、器官特異的自己免疫疾患である。このグループ内の患者数は1,000人あたり1人と報告されている。PBCは、小さい肝内胆管の内側を覆う肝内胆管上皮細胞(IBEC)の進行性破壊により特徴づけられる。これは、閉塞及び胆汁の分泌の障害を誘発し、最終的に肝硬変を起こす。上皮細胞ライニング/分泌系の損傷により特徴づけられる、シェーグレン症候群、CREST症候群、自己免疫性甲状腺疾患及びリウマチ様関節炎を含む他の自己免疫疾患との関連が報告されている。機動性抗原(driving antigen)に関する注意は、50年の間、抗ミトコンドリア抗体(AMA)の発見を誘導する、ミトコンドリアに集中している(Gershwin et al.Immunol Rev 174:210−225,2000;Mackay et al.Immunol Rev 174:226−237,2000)。臨床症状が出現するよりずっと前から90〜95%の患者の血清中に存在するAMAは、すぐにPBCの実験室診断の基礎になった。ミトコンドリアにおける自己抗原反応性はM1及びM2と命名された。M2反応性は、48〜74kDaの成分のファミリーに関する。M2は2−オキソ酸デヒドロゲナーゼ複合体(2−OADC)の酵素の複数の自己抗原サブユニットを表し、本発明の自己タンパク質、自己ポリペプチド又は自己ペプチドの他の具体例である。PBCの原因病理論におけるピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体(PDC)複合体の役割を特定する研究は、PDCが疾患の誘発において中心的役割を演じることを支持する。PBCの95%の場合における最も多い反応性は、PDC−E2に属するE2 74kDaサブユニットである。2−オキソグルタレートデヒドロゲナーゼ複合体(OGDC)及び分岐鎖(BC)2−OADCを含む、関連するが異なる複合体が存在する。3種の構成要素の酵素(E1,2,3)は、NAD+のNADHへの還元を伴い、2−オキソ酸基質をアシル補酵素A(CoA)に変換する触媒機能に寄与する。哺乳類のPDCは、プロテインX又はE−3結合タンパク質:(E3BP)と呼ばれる追加成分を含む。PBCの患者においては、主要な抗原反応は、PDC−E2及びE3BPに関する。E2ポリペプチドは、2個の縦列反復リポイルドメインを含むが、E3BPは、1個のリポイルドメインを含む。リポイルドメインは、PBCの複数の自己抗原標的内に見いだされ、本明細書において、「PBCリポイルドメイン」と呼ばれる。PBCは、グルココルチコイド、並びにメトトレキサート及びシクロスポリンAを含む免疫抑制剤と処理される。]
[0104] シェーグレン症候群
シェーグレン症候群(SS)は、主として唾液腺及び涙腺に影響を及ぼし、ドライアイ(乾性角結膜炎)及び口渇(口内乾燥)を誘発する慢性自己免疫疾患である。関与するかもしれない他の器官には、気管支樹、腎臓、肝臓、血管、末梢神経及び膵臓が含まれる。特に興味のあるものは、SSの二重表示:40代及び50代の女性における原発性疾患として単独(原発性SS)、又は他の自己免疫疾患との関連(続発性SS)のいずれかであり:分泌腺(乾燥症状)及び全身性(腺外)の臨床症状が存在し得る。SSの特徴は、リウマチ因子、抗核及び沈降抗体の存在である。細胞質/核リボ核タンパク質粒子(Ro/SSA及びLa/SSB)は、SSの自己免疫反応において顕著な役割を有する。免疫蛍光によりポジティブな核パターンに関与する他の抗原には、以下の:Ku、NOR−90(核小体形成部位)、p−80コイリン、HMG−17(高移動度群)、Ki/SLが含まれる。更に、抗チログロブリン、抗赤血球及び抗唾液腺上皮抗体を含む、器官特異的自己抗体も認識される(Clioら、Int Arch Allergy Immunol 123:46−57,200における総説)。120kDの器官特異的自己抗原が、細胞骨格タンパク質α−フォドリンとして特定されている(Haneji et al.Science 276:604−607,1997)。HSP60は、SSに関与することが示唆されている他の自己抗原である。HSP60又はHSP60に由来するペプチド(アミノ酸残基437−460)が、SSの動物モデルにおいてSS−関連組織病理的特徴を減少することがわかった(Dalaleu εt al.Arthritis Rheum 58:2318−2328,2008)。主要な標的抗原Ro/SSA、La/SSB及び関連する抗体は分子レベルで広範囲に定義されている。So/SSAは、小さい細胞質RNAを含むリボ核タンパク質である。Ro/SSA抗原、60kDタンパク質(60kD Ro/SSA、Ro60)は、いくつかの小さい細胞質RNA分子の1種と結合する。52kDペプチドは、Ro/SSA抗原(52kD Ro/SSA;Ro52)のもう一方の成分である。La/SSB抗原は、408個のアミノ酸からなるポリペプチドからなる。60kD Ro/SSA及びLa/SSBタンパク質は、いずれもRNA認識モチーフ(RNP)として知られている80個のアミノ酸配列を含むRNA結合タンパク質のファミリーのメンバーである。いくつかの方法を用いる、60kD Ro/SSA、52kD Ro/SSA及びLa/SSB分子のB細胞エピトープマッピングは、いくつかの研究において特定のエピトープを示す。60kD Ro/SSA自己抗原のB細胞エピトープは、分子の中央部及びカルボキシ末端部分に位置すると思われる。2種の特異的エピトープ:TKYKQRNGWSHKDLLRSHLKP(169−190)及びELYKEKALSVETEKLLKYLEAV(211−232)領域が特定された(Routsias et al.Eur J Clin Invest 26:514−521,1996)。52kD Ro/SSAタンパク質の抗原決定基は、分子の中心部では主として線状である。4種のペプチド(アミノ酸2−11、107−126、277−292及び365−382)が、抗Ro/SSA血清により認識されることが報告された(Ricchiuti et al.Clin Exp Immunol 95:397−407,1994)。精製IgGとの反応性に富む4種のペプチドが、La/SSBタンパク質の145−164、289−308、301−320及び349−368の領域にわたることが報告された(Tzioufas et al.Clin Exp Immunol 108:191−198,1997)。]
[0105] 他の自己免疫疾患及び関連自己抗原
重症筋無力症についての自己抗原には、アセチルコリン受容体中のエピトープが含まれる。尋常性天疱瘡において標的とされる自己抗原には、デスモグレイン−3が含まれる。尋常性天疱瘡についての主要な自己抗原にはデスモグレイン−3が含まれる。筋肉炎のパネリストには、tRNAシンテターゼ(例えば、スレオニル、ヒスチジル、アラニル、イソロイシル及びグリシル);Ku;ScI;SSA;U1 Snリボ核タンパク質;Mi−I;Mi−I;Jo−I;Ku;及びSRPが含まれる。強皮症のパネリストには、Scl−70;セントロメア;U1リボ核タンパク質;及びフィブリラリンが含まれる。悪性貧血のパネリストには、内因子;胃のH/KATPアーゼの糖タンパク質ベータサブユニットが含まれる。全身性エリトマトーデス(SLE)のエピトープ抗原には、DNA;リン脂質;核抗原;Ro;La;U1リボタンパク質;Ro60(SS−A);Ro52(SS−A);La(SS−B);カルレティキュリン;Grp78;Scl−70;ヒストン;Smタンパク質;及びクロマチン等が含まれる。グレーブス病については、エピトープには、Na+/I−共輸送体;甲状腺刺激ホルモン受容体;Tg;及びTPOが含まれる。]
[0106] 移植片対宿主病
ヒトにおける組織及び器官移植の大いな限定は、受容体の免疫系による組織移植の拒絶である。供与者及び受容者の間のMHCクラスI及びII(HLA−A、HLA−B及びHLA−DR)対立遺伝子の一致が大きければ大きいほど移植片がより残存する。移植片対宿主病(GVHD)は、同種造血細胞を含む移植片を受け取る患者における有意な罹患率及び死亡率を引き起こす。造血細胞は、骨髄移植片、幹細胞片及び他の移植片中に存在する。HLA適合同胞種からの移植片を受け取った患者の約50%は、中程度から重度のGVHDを発症し、非HLA適合移植片よりも頻度は高い。中程度から重症のGVHDを発症した患者の3分の1は結果として死亡する。供与者の移植片中のTリンパ球及び他の免疫細胞は、そのアミノ酸配列に変異、特に、ヒトの第6染色体上の主要組織適合複合体(MHC)内にコードされるタンパク質における変異を有するポリペプチドを発現する受容者の細胞を攻撃する。同種造血細胞を必要とする移植片内のGVHDの最も影響力のあるタンパク質は、高度に重合した(ヒトの間における広範囲なアミノ酸変異)クラスIタンパク質(HLA−A、−B及び−C)及びクラスIIタンパク質(DRB1、DQB1及びDPB1)である(Appelbaum,Nature 411,385−389,2001)。MHCクラスI対立遺伝子が、供与者及び受容者の間で血清学的に適合する場合であっても、DNA配列は、適合する供与者及び受容者対においてさえ、クラス−Iを標的とするGVHDについての基礎を供給するクラスの30%において対立遺伝子レベルで不一致があることを示す。少量の組織適合性自己抗原GVHDは、しばしば、皮膚、腸、肝臓、肺及び膵臓に損傷を起こす。GVHDは、グルココルチコイド、シクロスポリン、メトトレキサート、フルダラビン及びOKT3により処理される。]
[0107] 組織移植拒絶反応
肺、心臓、肝臓、腎臓、膵臓、並びにその他の器官及び組織を含む組織移植の免疫拒絶反応は、移植した器官に対する移植片受容者における免疫反応により媒介される。同種の移植された器官は、移植受容者のアミノ酸配列と比較した場合に、そのアミノ酸配列中に変異を有するタンパク質を含む。移植された器官のアミノ酸配列は、移植された受容者のものと異なるので、移植された器官に対して受容者内で、しばしば免疫反応を誘発する。
移植された器官の拒絶反応は主要な合併症並びに組織移植の限界であり、受容者における器官の移植の失敗を引き起こし得る。拒絶反応から起こる慢性的な炎症は、しばしば移植された組織内の機能障害を誘発する。移植片受容者は、現在では、拒絶反応を予防及び抑制するための種々の免疫抑制剤で処理されている。これらの薬剤には、グルココルチコイド、シクロスポリンA、セルセプト、FK−506及びOKT3が含まれる。]
[0108] 治療のための組成物及び方法
本発明は、自己免疫疾患又はアレルギー性疾患と関連する1種以上のエピトープを含む免疫調節複合体を含む、前記疾患の治療、予防及び/又は防止のための改善された方法及び組成物を提供する。本発明の免疫調節複合体は、自己免疫疾患又はアレルギー性疾患と関連する1種以上のエピトープを含む、前記疾患と関連する1種以上のエピトープを含む免疫調節複合体の投与を含む。]
[0109] 特定の実施態様においては、本発明は、インシュリン依存性糖尿病(IDDM)と関連する1種以上の自己抗原エピトープを含む免疫調節複合体を患者に投与することを含む、IDDMの治療、予防及び/又は防止のための改善された方法を提供する。]
[0110] IDDMを治療又は予防するために投与される免疫調節複合体には、1種以上の自己タンパク質、例えば、プレプロインシュリン、プロインシュリン、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)−65及び−67;チロシンホスファターゼIA−2;島細胞特異的グルコース−6−ホスファターゼ関連タンパク質(IGRP);及び/又は島細胞抗原69kDに由来する自己抗原エピトープが含まれる。また、IDDMを治療又は予防するために投与される免疫調節複合体には、同一又は異なる自己タンパク質、自己ポリペプチド、又は自己ペプチドに由来する複数の自己抗原エピトープが含まれる。好ましい実施態様においては、IDDMを治療又は予防するために投与される免疫調節複合体には、自己ポリペプチド、プリプロインシュリン又はプロインシュリンに由来する自己免疫エピトープが含まれる。]
[0111] 他の実施態様においては、本発明は、多発性硬化症(MS)と関連する1種以上の自己抗原エピトープを含む免疫調節複合体を患者に投与することを含む、MSの治療、予防及び/又は防止のための改善された方法を提供する。MSを治療するために投与される免疫調節複合体には、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、プロテオリピドタンパク質(PLP)5ミエリン−関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質(MOBP)、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)及び/又はミエリン関連糖タンパク質(MAG)を含むが、これらに限定されない1種以上の自己ポリペプチドに由来する自己抗原エピトープが含まれる。また、免疫調節複合体は、前記疾患と関連する、同一又は異なる自己タンパク質、自己ポリペプチド、又は自己ペプチドに由来する複数の自己抗原エピトープを含む。]
[0112] 他の実施態様においては、本発明は、リウマチ様関節炎(RA)と関連する1種以上の自己抗原エピトープを含む本発明の免疫調節複合体を患者に投与することを含む、RAの治療、予防及び/又は防止のための改善された方法を提供する。ある実施態様においては、自己抗原エピトープは、I、II、III、IV、V、IX及びXI型コラーゲン、GP−39、フィラグリン及びフィブリンからなる群から由来するエピトープである。好ましい一実施態様においては、エピトープは、II型コラーゲンに由来し、好ましくは、エピトープはアミノ酸260−273を含む共有の免疫優性II型コラーゲンペプチド(CII260−273)である。]
[0113] また、異なる自己ポリペプチドに由来する自己抗原エピトープを含む、複数の免疫調節複合体を投与してもよい。]
[0114] 更に他の実施態様においては、本発明は、本発明の免疫調節複合体をコードするDNA及びRNA配列を含む核酸配列、並びにこのような核酸配列を含むプラスミド、ベクター及び発現系を提供する。]
[0115] 本発明の免疫調節複合体は、組換えDNA技術により製造することができる。]
[0116] プラスミド、ベクター及び発現系を構築するための技術は当該技術分野において周知であり、当業者は、特定の条件及び方法を開示する標準的な供給源材料を熟知している。]
[0117] 本発明のプラスミド、ベクター及び発現系は、当該技術分野において周知である標準的な核酸連結及び制限技術を使用する(例えば、Ausubel,et al,Current Protocols in Molecular Biology,Wiley Interscience,1989;Sambrook and Russell,Molecular Cloning,A Laboratory Manual 3rd ed.2001を参照されたい)。分離したプラスミド、DNA配列又は合成オリゴヌクレオチドは、所望の形態に切断、調製及び分類される。DNA構築物の配列は、例えば、DNA配列分析の標準的方法(例えば、Sanger et al.(1977)Proc.Natl.Acad.Sci.,74,5463−5467を参照されたい)を用いて確認することができる。]
[0118] 特定の核酸分子を分離するための更に他の好都合な方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(Mullis et al.MethodsEnzymol 155:335−350,1987)又は逆転写PCR(RT−PCR)である。特定の核酸配列は、RT−PCRによりRNAから分離することができる。RNAは、例えば、当業者に公知の技術により、細胞、組織又は全有機体から分離することができる。次いで、ポリ−dT又はランダムな6量体プライマー、デオキシヌクレオチド及び安定な逆転写酵素を用いて、相補的DNA(cDNA)を生成する。次いで、PCRにより、生成したcDNAから所望のポリヌクレオチドを増幅することができる。また、興味のあるポリヌクレオチドを、適切なcDNAライブラリーから容易に増幅することができる。興味のあるポリヌクレオチド配列の5’及び3’の両末端とハイブリダイズするプライマーを合成し、PCRのために用いる。プライマーは、同様に制限消化したプラスミドベクター内への増幅配列の容易な消化及び連結のために、5’末端に特定の制限酵素部位を含んでいてもよい。]
[0119] 免疫調節複合体の送達
免疫調節複合体の治療的及び予防的有効量は、約1μg〜約10mgの範囲である。免疫調節複合体の好ましい治療的又は予防的有効量は、約5μg〜約1mgの範囲である。免疫調節複合体の最も好ましい治療的有効量は約10μg〜100μgの範囲である。特定の実施態様においては、免疫調節複合体は、1ヶ月に1回、6〜12ヶ月間、また、維持投与として3〜12ヶ月毎に投与する。他の治療計画が開発され、毎日から週1回、1ヶ月に1回〜年に1回の範囲であり、疾患の重症度、患者の年齢、通常に訓練された医師により考慮されるような他の因子に依存し、免疫調節複合体が投与される。]
[0120] 一実施態様においては、免疫調節複合体は鼻腔内に送達される。他の変形においては、免疫調節複合体は、経口、舌下、皮下、経皮、皮内、静脈、粘膜又は筋肉内に送達される。]
[0121] 製剤
免疫調節複合体は、他の物質、例えば、薬物、アジュバント、サイトカイン又は免疫促進複合体(ISCOMS)と併用して投与することができる。]
[0122] 実施例
以下の実施例は、本発明を実施するための特定の実施態様である。実施例は説明の目的のためにのみ提供され、多少なりとも本発明の範囲を限定することを意図しない。]
[0123] 免疫調節複合体CTA1−R7K−COL−DD
CTA1−DD変異体の構築、融合タンパク質の発現及び精製は、基本的にÅgren(J Immunol 1999,162:2432−2440)に開示されたようにして実施した。]
[0124] pCTA1−DDプラスミドは、trpプロモータの制御下に、HindIII−BamHIにクローニングされたコレラ毒素A1遺伝子(aa1−194)、及びブドウ球菌プロテインAからの2本のD断片をコードするDNAを含む。コラーゲンペプチド、共有の免疫優性II型コラーゲンペプチド(CII260−273)をコードするDNAを、CTA1及びDD部分をコードするDNAの間に挿入し、pCTA1−R7K−COL−DDプラスミドを得た(図1)。] 図1
[0125] ADPリボシル化活性
分子設計における変化がCTA1の酵素活性についての機能的結果を有するかどうかを調べた。無細胞NAD:アグマチン−アッセイを用いて、ADPリボシルトランスフェラーゼ活性を分析した。CTA1−COL−DDの線形容量応答活性が見られた。一方、CTA1−R7K−COL−DDを用いて、ADP−リボシル化活性が見られた(図2)。これらの結果は、CTA1−R7K−DDがその酵素活性を失っていることを明白に証明する。] 図2
[0126] IgGへの結合
IgGの結合はELISAにより測定した。CTA1−R7K−COL−DD変異体は
固相においてヒトIgGへの結合能力を保持しており、これはDD−成分がCTA1内の変異により影響を受けないことを示す(図3)。] 図3
[0127] 不活性又は活性CTA1−COL−DDアジュバントを用いた鼻腔内投与
CTA1−R7K−COL−DD変異体は、インビボにおけるT細胞寛容を促進するために用いられた。DBA/1マウスに、5μgのCTA1−COL−DD又はCTA1−R7K−COL−DDを鼻腔内投与した。コントロールのマウスにはPBSを投与した。1週間後、全てのマウスに、Ribiアジュバント内のコラーゲンタンパク質を腹腔内に抗原投与した。鼻腔内投与の16日後にマウスを犠牲にし、インビトロにおけるリコール抗原に対するコラーゲン特異的T細胞応答のレベルを評価した。インビトロでのペプチドに対するCD4+T細胞リコール反応を調べた。脾臓から細胞を分離し、COL又は全コラーゲンタンパク質に対するT細胞増殖反応に供する。コラーゲンII(CII)に対するT細胞の増殖反応が、CTA1−R7K−COL−DD処理マウスの脾臓から分離した細胞内においては、未処理(PBS)のコントロールマウスからの細胞内と比較して有意に低いことがわかった(図4)。一方、酵素的に活性なCTA1−COL−DD融合タンパク質は、インビトロにおけるリコール抗原暴露に対する増強した増殖反応から明らかなようにT細胞プライミングの強い増強を誘発する(図4)。鼻腔内投与に続き、酵素的に不活性な構築物は、インビボにおけるT細胞応答の障害を一貫して証明する。CTA1−R7K−COL−DDの投与に対する副作用は記録されず;平均体重で影響はなく、又は塗布部位における作用若しくは局所的な炎症作用に影響しなかった。従って、CTA1−R7K−COL−DDは、安全かつ無毒の、特定のT細胞寛容を促進する手段であると思われる。] 図4
[0128] CTA1−R7K−COL−DDの鼻腔内投与後の寛容化T細胞におけるIFN−γ産生の減少
リコール抗原暴露に対する免疫T細胞のサイトカイン活性における鼻腔内のCTA1−R7K−COL−DD投与の影響を調べるため、上清中のIFN−γの産生量を測定した。CTA1−R7K−COL−DD寛容原で処理したマウスからのT細胞のIFN−γレベルの減少が観察された。一方、活性CTA1−COL−DDを投与されたマウスは、未処理のコントロールマウスよりも多くのIFN−γを産生した。従って、鼻腔内処理後のリコール抗原に対するIFN−γの産生の減少は、マウスがCTA1−R7K−COL−DDにより有効に寛容化されることを裏付けた。]
[0129] CTA1−R7K−COL−DDで鼻腔内投与した後の寛容
脾臓のT細胞中で検出された全身性寛容が、流入領域リンパ節内のT細胞中においても誘発されるかどうかを調べるため、マウスをCTA1−R7K−COL−DDで鼻腔内処理し、1週間後、マウスを犠牲にし、頸部リンパ節からリンパ球を調製した。リコールAgに対するT細胞反応が強力に抑制されることがわかった(図6)。] 図6
[0130] 抗II型コラーゲン抗体産生の阻害
CTA1−R7K−COL−DD処理により誘発される寛容の程度についての良好な理解を得るため、鼻腔内処理に続く抗原投与免疫に対する血清反応を解析した。DBA/1受容者に、PBS又は5μgのCTA1−COL−DD又はCTA1−R7K−COL−DDを投与した。1週間後、全てのマウスの腹腔内に、コラーゲン及びRibi−アジュバントを抗原投与した。コラーゲン特異的IgG及びIgAの全力価をELISAにより測定した。抗コラーゲン反応は大いに低下し、抗コラーゲンIgG及びIgAはいずれも数倍低下した(図7)。]
[0131] マウスにおけるCIA処理
RAのマウスCIAモデルを、CTA1−R7K−COL−DD寛容源による鼻腔内処理の臨床的価値を測定するために用いた。CIAモデルは、RAが原因である、多くの臨床的、組織学的及び免疫学的特徴を共有しており、そのためRAに対する潜在的治療法を試験するためにもっとも用いられているモデルである。完全フロイントアジュバント(FCA)内のコラーゲンによる抗原投与免疫前後に、PBS、CTA1−R7K−DD又はCTA1−R7K−COL−DDでDBA1マウスを鼻腔内処理し、21日目に不完全フロイントアジュバント(IFA)で追加免疫した。次いで、マウスを犠牲にし、CIAの関節炎の発生率及び関節炎の関節指数を測定した。]
[0132] マウスのCTA1−R7K−COL−DD処理の治療的効果は、足の肥大及び臨床スコアにより評価されるように、コントロール群(PBS)と比較し、CIAの発生率(図8A、8B)及び重症度(図8C)の低下をもたらした。26、27及び28日におけるCTA1−R7K−COL−DDの治療後、それほど多くない肥大が認められた。] 図8A 図8C
[0133] コントロールのPBS群における関節炎指数は、コラーゲン免疫の3週間後に劇的に症状し、6週後にピークに達した。一方、CTA1−R7K−COL−DD群においては、顕著に低い関節炎指数が記録され、多くの動物は全く症状がなかった。実験の完了時において、CTA1−R7K−COL−DDで処理したグループにおいては40%のマウスが関節炎を発症したが、100%のコントロールマウスが影響を受けた。更に、関節炎指数は、処理群における関節炎について陽性と記録されたマウスについて、大部分のマウスが疾患に苦しめられていないことを示した(図8C)。自己ペプチドを用いず、CTA1−R7K−DDで処理したコントロールマウスはPBSコントロールマウスのように影響されず、これは、疾患を予防するCOLに特異的な効果であり、CTA1−R7K−DDはそのような効果を有しないことを示す(図8B)。興味深いことに、CTA1−R7K−COL−DDキャリアの治療的及び予防的処理は、いずれも有意な保護作用を有していた。] 図8B 図8C
[0134] CTA1−R7K−COL−DDは、CIAマウスモデルにおいて組織学的変化を予防する
関節炎を記録したデータは、CTA1−R7K−COL−DDの処理後に採取される試料の組織学的解析により更に確認された。マウスを犠牲にし、関節をホルマリン中に固定し、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。軟骨の腐食及び滑膜細胞浸潤、並びに軟骨及び骨の破壊は、未処理のマウスにおいては更に重症であった(図9A)。一方、CTA1−R7K−COL−DD処理マウスは、疾患の有意な減少又は症状のないことを明らかにした(図9B)。マウスからの組織切片は、CTA1−R7K−COL−DD処理が、100%が、関節において重度の組織破壊に苦しめられる未処理のコントロールマウスと比較し、疾患を完全に予防し、又は有意に減少することを裏付けた。重要なことに、骨及び軟骨の破壊は、コントロールマウスと比較し、CTA1−R7K−COL−DD処理において有意に低かった(図10)。注目すべきは、これらの実験の間に、体重における有意な差は観察されなかった(データは示さない)。これらの組織学的結果は、CTA1−R7K−COL−DDにより粘膜処理が、RAのマウスCIAモデルにおける免疫病理的過程を効率的に抑制することを明らかに示した。] 図10 図9A 図9B
[0135] CTA1−R7K−COL−DD処理したCIAマウスにおけるIL−10の強力な増強及びIL−6産生の減少
未処理(PBS)CIAマウス、若しくは5μgのCTA1−R7K−DD又はCTA1−R7K−COL−DDで処理したマウスを犠牲にし、血清を集め、IL−10(図11A)及びIL−6(図11B)の濃度について分析した。著しく、処理マウス中のIL−10の血清レベルは、未処理又はCTA1−R7K−DDで処理したマウスよりもかなり上昇していた(図11A)。一方、血清に含まれるIL−6は、未処理のCIA疾患マウスと比較し、治療的に処理したマウスにおいて、有意に低下していた(図11B)。IL−6のレベルは、CTA1−R7K−DD群においては、未処理マウスで観察されたのと同様であった(データは示さず)。更に、未処理のCIA疾患マウスにおいて検出されるレベルに対抗するように、CTA1−R7K−COL−DD処理は、抗CII特異的IgG1、IgG2a、IgG2b及びIgG3血清力価の有意な減少をもたらした。従って、個々のマウスにおける、高IL−10及び低IL−6血清濃度は、低関節炎指数により評価されるように、CIA疾患に対する、CTA1−R7K−COL−DD誘発性の防御と十分に相関関係がある。] 図11A 図11B
[0136] 制御性T細胞及びIL−10に関するCII特異的CD4T細胞応答の歪み
未処理(PBS)のマウス、若しくは5μgのCTA1−R7K−DD又はCTA1−R7K−COL−DDで処理したマウスから脾臓リンパ球を分離し、リコールCOL自己ペプチドの存在下又は非存在下、インビトロで刺激した。96時間後に上清を集め、IL−10(図12A)及びIL−6(図12B)の含有量について分析した。] 図12A 図12B
実施例

[0137] MHCクラスIIで制限された、リコールペプチド−抗原投与(COL)に対し、血清IL−10の劇的な増加、及び脾臓T細胞により産生されたIL−10の増加が、CTA1−R7K−COL−DDで処理したマウスにおいて観察された。実際、これは、サイトカインのT細胞起源、それ故、制御性T細胞の誘発を示唆する。いくつかの、CIAモデルの以前の研究は、経口寛容がFoxP3+CD25+(16,46)であるIL−10産生CD4+制御性T細胞を誘発し得ることを証明した。粘膜免疫寛容の更に他の研究においては、制御性T細胞がIL−10を産生するCD4+CD25−FoxP3−細胞であることがわかった。従って、天然CD25+及び誘導性CD25−制御性T細胞が、いずれもCIA、及びおそらくRAの抑制に関与しているかもしれない。予備研究(データは示さず)は、更に、CTA1−R7K−COL−DDを用いた鼻腔内処理が、このようなCD4+CD25−FoxP3−Tr1型の細胞を促進することを示した。従って、鼻腔内の治療のためのCTA1−R7K−COL−DD処理は、Th1及びTh17細胞を含むCD4+エフェクタT細胞の機能を制御するTregの発症を刺激し、その結果、滑膜への浸透を抑制し、CIAを効果的に予防すると結論される。]
权利要求:

請求項1
(a)細菌エンテロトキシンの変異サブユニット、(b)特定の細胞受容体と結合し得るペプチド、及び(c)自己免疫疾患又はアレルギー性疾患と関連する1種以上のエピトープを含む融合タンパク質である免疫調節複合体。
請求項2
1種以上のエピトープが、自己免疫疾患と関連する自己免疫エピトープである、請求項1記載の免疫調節複合体。
請求項3
自己免疫疾患が、インシュリン依存性糖尿病、多発性硬化症、リウマチ様関節炎、自己免疫性ブドウ膜炎、原発性胆汁性肝硬変、重症筋無力症、シェーグレン症候群、尋常性天疱瘡、強皮症、悪性貧血、全身性エリテマトーデス及びグレーブス病から選択される、請求項2記載の免疫調節複合体。
請求項4
1種以上のエピトープが、アレルギー誘発疾患と関連するアレルギー誘発性エピトープである、請求項1記載の免疫調節複合体。
請求項5
アレルギー性疾患が、アレルギー性ぜん息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎及び食品に対する過敏症から選択される、請求項4記載の免疫調節複合体。
請求項6
融合タンパク質が、細菌エンテロトキシンのADP−リボシル化サブユニットの変異サブユニットを含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の免疫調節複合体。
請求項7
ADP−リボシル化サブユニットが、コレラ毒素(CT)のA1サブユニット、E.coli非耐熱性エンテロトキシン(LT)のA1サブユニット、百日咳毒素(PTX)のS1サブユニット、並びにクロストリジウム、赤痢菌及びシュードモナス菌毒素のADP−リボシル化サブユニットから選択される、請求項6記載の免疫調節複合体。
請求項8
ADP−リボシル化サブユニットが、コレラ毒素(CT)のA1サブユニット、E.coli非耐熱性エンテロトキシン(LT)のA1サブユニット、及び百日咳毒素(PTX)のS1サブユニットから選択される、請求項7記載の免疫調節複合体。
請求項9
細菌エンテロトキシンの変異サブユニットが配列番号:1のCTA1−R7Kである、請求項8記載の免疫調節複合体。
請求項10
細菌エンテロトキシンのADP−リボシル化サブユニットが、ADP−リボシル化サブユニットのADP−リボシル化活性が、対応する野生型のADP−リボシル化サブユニットのADP−リボシル化活性の10%未満、好ましくは、対応する野生型のADP−リボシル化サブユニットのADP−リボシル化活性の5%未満、更に好ましくは、対応する野生型のADP−リボシル化サブユニットのADP−リボシル化活性の1%未満であるように変異している、請求項6記載の免疫調節複合体。
請求項11
融合タンパク質が、抗原提示し得る細胞上で発現する受容体に特異的に結合するペプチドを含む、請求項1〜10のいずれか1項記載の免疫調節複合体。
請求項12
融合タンパク質が、MHCクラスI又はMHCクラスII分子を発現する細胞上で発現する受容体に特異的に結合するペプチドを含む、請求項11記載の免疫調節複合体。
請求項13
融合タンパク質が、Bリンパ球のようなリンパ球、T細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、上皮細胞及び内皮細胞からなる群から選択される細胞上で発現する受容体に特異的に結合する、請求項12記載の免疫調節複合体。
請求項14
前記ペプチドが、単一、又は1個以上のDサブユニットのような単一又は複数コピーで、プロテインA又はその断片により構成されている、請求項13記載の免疫調節複合体。
請求項15
配列番号:3の免疫調節複合体CTA1−R7K−COL−DD。
請求項16
請求項1〜15のいずれか1項記載の免疫調節複合体をコードする、分離核酸。
請求項17
請求項16記載の核酸を含む発現システム。
請求項18
請求項17記載の発現システムを含む、形質転換細胞。
請求項19
請求項1〜15のいずれか1項記載の免疫調節複合体を含む医薬組成物。
請求項20
自己免疫疾患又はアレルギー性疾患の予防、防止及び/又は治療のための請求項19記載の医薬組成物。
請求項21
自己免疫疾患が、インシュリン依存性糖尿病、多発性硬化症、リウマチ様関節炎、自己免疫性ブドウ膜炎、原発性胆汁性肝硬変、重症筋無力症、シェーグレン症候群、尋常性天疱瘡、強皮症、悪性貧血、全身性エリテマトーデス及びグレーブス病から選択される、請求項20記載の医薬組成物。
請求項22
アレルギー性疾患が、アレルギー性ぜん息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎及び食品に対する過敏症から選択される、請求項20記載の医薬組成物。
請求項23
自己免疫疾患又はアレルギー性疾患の予防、防止及び/又は治療のための医薬品の製造のための、請求項1〜15のいずれか1項記載の免疫調節複合体の使用。
請求項24
自己免疫疾患が、インシュリン依存性糖尿病、多発性硬化症、リウマチ様関節炎、自己免疫性ブドウ膜炎、原発性胆汁性肝硬変、重症筋無力症、シェーグレン症候群、尋常性天疱瘡、強皮症、悪性貧血、全身性エリテマトーデス及びグレーブス病から選択される、請求項23記載の使用。
請求項25
アレルギー性疾患が、アレルギー性ぜん息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎及び食品に対する過敏症から選択される、請求項23記載の使用。
請求項26
請求項1〜15のいずれか1項記載の免疫調節複合体の有効量を患者に投与することを含む、患者における自己免疫疾患又はアレルギー性疾患の予防、防止及び/又は治療のための方法。
請求項27
自己免疫疾患が、インシュリン依存性糖尿病、多発性硬化症、リウマチ様関節炎、自己免疫性ブドウ膜炎、原発性胆汁性肝硬変、重症筋無力症、シェーグレン症候群、尋常性天疱瘡、強皮症、悪性貧血、全身性エリテマトーデス及びグレーブス病から選択される、請求項26記載の方法。
請求項28
アレルギー性疾患が、アレルギー性ぜん息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎及び食品に対する過敏症から選択される、請求項26記載の方法。
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同族专利:
公开号 | 公开日
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